2度目の人生を、楽しく生きる

皐月 遊

34話 「入学者達」

「いやー、全員無事合格できてよかったな!」

「そうだね!」

あれからも試験を合格した者はこの部屋に転移させられ、続々と人数が増えていった。

俺達がこの部屋に転移させられてから30分くらい経った頃、アリスが転移してきた。

俺とセレナとクリスはアリスが来ないので心配していたが、無事合格した事を知って素直に喜んだ。

そしてアリスが転移させられてから十分後、ソーマが転移してきた、相変わらず態度が悪かったから俺は何も言わなかった。

「まさか第二試験があるなんて思いませんでしたよ」

「ビックリしたよな、しかも人数によって試験内容も違うんだもんな」

「筆記試験だったら、ルージュは危なかったかもね」

セレナが笑いながら言う。

そう、俺は勉強が苦手なのだ。

いや、日本では割と得意な方だった、だがこの世界では日本の知識が通用しないんだ。

セレナと一緒にフローラに勉強を教えてもらっていたが、全く分からなかった。

例をあげよう。

『問題: とても重い荷物があります。 1人では持つことが出来ません。 ですがここには自分1人しかいません。 この場合どうしますか?』

という質問があったとする、日本の常識で考えるならば、1人で持てないなら”誰かを呼びに行く”が正解だろう。

だがこの世界での答えはこうだ。

『風魔法で動かす』

分かるわけがないだろ。

確かに魔術は万能だ、万能だが、これはおかしいだろ。

もちろんこの問題が出た時、俺はフローラに言った。

『じゃあ自分が風魔法使えなかったらどうすればいいの?』

と、風魔法が使えない場合、荷物は動かせない、ならどうするか。

その時フローラはこう言った。

『それなら風魔法が使える人を連れて来ればいいだけよ?』

と、さも当然のように言ったんだ。

いや、協力して動かせよ。

なぜかこう言う問題をセレナは全部正解し、俺は一問も正解出来なかった。

「……そうだな、問題むずかしいから、俺は危なかったかもな」

「フローラさんから教わった事は簡単な事ばかりだったんだけどね」

「……そうなの…?」

「うん、あくまでもあれは基礎だよ。 これからはもっと難しい問題をやるんだよ?」

確かに、学校で勉強をしないほうがおかしいよな。

………赤点、取らないように頑張ろう。

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俺とセレナとアリスとクリスの4人で楽しく会話をしている間も、続々と合格者は増えていった。

そして、この部屋が結構狭くなってきた時、また1人が転移してきた。

その人物を見てみると…

「あれ? グレン先生?」

そう、グレンだった。

グレンがいきなりこの部屋に来たかは分からない。

グレンは周りをキョロキョロしている。

そして、俺と目があった。

………あれ? なんかこっちに歩いて来てるんだけど、何? めっちゃ真顔だから怖いんだが。

「よう黒いの! 無事合格したみたいだな」

グレンは俺の前に立つと、俺の頭をグシャグシャと撫でながらそう言ってきた。

なんだ、それが言いたかっただけかよ。

「はい、第二試験も突破しましたよ」

「そうかそうか、ソーマもいるみたいだし、これからが楽しみだ」

「ははは……よろしくお願いしますね」

俺は苦笑いしながら言った。

それを聞いたグレンはニッと笑ってから、離れていった。

なんだ、本当にあれを言いたかっただけかよ。

「ゴホンッ! あー…お前ら聞け」

グレンは転移されてきた位置に達、皆に向かって言った。

その瞬間、話していた奴らは話すのをやめ、ジッとグレンを見る。

「よし、静かになったな。 んじゃ重大発表だ、一回しか言わねぇからよく聞けよ」

この部屋が静かになる。

重大発表とはなんだろうか。

「今ここに居る300人を、正式にこの学園の生徒として認める。 そして、これにて剣魔学園入学試験を終了する」

「………え」

「「「「ええええええぇぇぇぇぇっ‼︎⁉︎」」」」

この部屋に皆の声が響き渡る。

試験終了? 早くないか、まだ300人だけなら……

「合格者は500人のはずじゃ…」

俺が思っていた事を誰かが言う。

グレンはダルそうに頭を掻きながら…

「あー、それはな、第一試験を突破出来る定員だ、んで第二試験の定員が300人ってわけだ」

再びこの部屋が静まる。

いくらなんでもいきなりすぎるだろ。

「話は以上だ、今からここにいる全員を学園の入り口に転移させる。 そしたら解散、んで明日入学式を行う。 クラス発表もその日行うから、朝8時までには来いよ」

そう言ってグレンの他に3人の教師が現れる。

現れた3人は何かブツブツと呟き……

「んじゃ、また明日な」

集団転移テレポート!』

3人がそう言った瞬間、本日3回目の光が、俺達を包み込んだ。


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