2度目の人生を、楽しく生きる

皐月 遊

30話 「強行突破」

「いやぁ〜、それにしても回復魔法は凄いな! 外れた肩も治せるんだな!」

「そうだね……」

俺は先程爆発魔法の衝撃によって右肩が外れてしまったので、セレナに回復魔法で治してもらった。

あれからセレナとフィリアの俺を見る目が冷たい気がする。

「さて! 目的通り壁は壊せたし、外に出るか!」

「ねぇルージュ」

「なんだ?」

「外に出るっていうのは賛成だったんだけどさ、わざわざ壁を壊さなくても、窓を割って出れば良かったんじゃないの?」

………………。

………それは全然思いつかなかった。

そうだよ、最初から窓を割れば良かったんだ。 そうすれば爆発魔法を使う事も、肩が外れる事も無かったはずだ。

「………い、いや……窓を割ってもしガラスの破片で怪我したら大変だろ? 俺はそれを心配して……」

「肩が外れるよりはマシだと思うよ?」

「うん…そうだな…」

言い訳は通用しなかった。

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「あなたの言ったとおりに外に出たけど、これからどうするのよ」

外に出た所で、フィリアが口を開いた。

先程校舎内でセレナとフィリアに話した事は、「外から三階へ向かう」という事だけだ。

「俺達が目指してるのは三階だろ?」

「えぇ、そうね」

「でもいくら校舎内を進んでも階段は現れなかった。 それはなんでだと思う?」

「知らないわよ。 分かってたらとっくに突破してるわ。 あなたは分かるの?」

そんなの、決まってるだろ。

どれだけ進んでも階段どころか別れ道すらない。 そして元来た道を戻る事すら出来ない。

そんなの……

「いや、俺にも分からん」

「……はぁ?」

「ただ、あのまま進んでも意味がないって事はさっき話しただろ?」

俺は三階を指差して、言う。

「だから、校舎の中からじゃなく、外から直接三階へ向かうんだ」

「手段は?」

「もちろん魔術を使う。 あっという間に三階に連れてってやるよ 」

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俺は校舎から大分離れ、魔力を溜める。

「ねぇルージュ、私達は何をすればいいかな?」

「いや、何もしなくていいぞ、俺の近くで教師が来ないか見ててくれ」

「……わ、分かった。 頑張ってね!」

「おう、任せとけ! 」

イメージはさっきの大氷壁だ。

その大氷壁を登れるくらいの斜面にして……高さはちょうど三階くらいに……

難しいな、こんなに繊細なイメージをしたのは初めてだ、いつもはただ威力をあげるイメージしかしてこなかったからな。

「物は試しだ、やるしかない」

やってみなくちゃ分からん。

失敗したら次の手段を考えればいいだけだ。

俺は地面に右手を付け、溜めた魔力を一気に使う。

大氷壁だいひょうへき!」

パキッ! 

と言う音と共に、辺りの気温が一気に下がった。

口からは白い息が出始める。 ザイルに使った時と同じだ。

俺はゆっくり顔をあげる。

「お、おぉ……」

そこには、ちょうど登りやすそうな斜面になっている大氷壁があった。

大氷壁の先はちょうど三階に届いており、俺のイメージした通りだった。

流石に魔力を使いすぎたのか、クラクラしてきたので俺は地面に座り込んだ。

「ルージュ! 大丈夫⁉︎」

「あぁ、魔力が切れたわけじゃないから大丈夫だ」

これは多分、消費魔力の多い魔術を連続で使ったからだろう。

運動しすぎてクラクラするみたいなもんだな。

俺はセレナの手を借りて立ち上がり、大氷壁を見る。

「さて、足場も出来たし、さっさと三階へ行こうぜ」

「こ、コレを足場に使うなんて……相変わらずすごい事を考えるね…」

「俺が氷魔法を使える事には驚かないんだな」

「うん……爆発魔法を使える時点で、大体予想できてたしね」

「ははは……」

俺は苦笑いしながら、大氷壁を登り始める。

氷なだけあって滑りやすいが、登れない事はない。

「転ばないように気をつけろよー」

「うん!」

「これ…消費魔力どれくらいなのかしら……」

大氷壁を登り初めてから、あっという間に三階へついた。

「あとは中に入るだけだな」

「もう爆発魔法はやめてね」

「分かってるって、次は窓から入るよ」

窓に石弾を撃ち、窓を割る。

壁と違って窓は脆いんだな。

「破片で怪我しないようにしろよ」

「大丈夫だよ」

俺、セレナ、フィリアの順で校舎に入る。

三階に入ってから辺りを見回す。

目の前に扉がある、これは教室に入るとびらだろう。

「よし、ここは一階とは違うな」

「なんで分かるの?」

「ほら、あっちを見てみろよ、行き止まりがあるだろ?」

俺は廊下の右奥を指差す、そこには壁があり、その横には下りの階段があった。

「一階は進んでも戻っても行き止まりが無かった、でも三階にはちゃんと行き止まりがある。 
だからここはさっきいた場所とは違うってわけだ」

「なるほど……」

「あとは第一試験会場を目指すだけだな」

「やっとだね!」

それにしても、未だに一階の謎が解けない。

やはりあれは魔術の一種だろうか。

グレンの使っていた空間魔術というのも初めて見たし、まだまだ知らない魔術があるかもしれない。

そんな事を考えながら、俺達は西棟へと歩き出した。


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