引きこもり姫の恋愛事情~恋愛?そんなことより読書させてください!~
引きこもり虫とお兄ちゃん
地獄のパーティーも終わり、私はまた平穏なる読書ライフを……送れなかった。
「よし。今は御子柴さんがいないわね。さあ死神、もう助けてくれるお友達がいないわよ。大人しくしててね~?」
大人しくも何も私縛り上げられて口封じされてんだから何にも出来ないって。てかあんたらこれ見つかったら今度こそ殺されるよ。月海とか愛子姉さんとか。
んでもっていじめっこグループが持ってるのはソフトボール。
良かった水じゃなくて。本が濡れたら大惨事だし。
まあここから分かる通り……ね?
「じゃあ行くよ? せ~の!!」
いっせいにボールが飛んできて私の胸やら腹やら顔やら色んな所に当たった。痛い痛い。
紙が私に貼り付けられててそれが得点らしい。胸が九十点で最高だね。
「じゃあ二回戦ね。せ~の!!」
だから痛いって。ソフトボールの強さ知らんだろあんたら。う~んでもまだかかりそうだな。
この調子だと鼻血とか痣とかやばそうだな。気づかれたら姉さん達に尋問されるし。月海~助けて~。
「ねえ、何で悲鳴上げないのよ。もっと泣き叫んで跪いて助けて~って言いなさいよ。あ、でも喋れないか~。じゃあ私の靴に額を擦り付ける? そしたら思いっきり蹴っ飛ばしてあげる」
いや、誰がするか。結局解放してはくれないんじゃん。
そのまま黙りこくっているともう点数には飽きたのか全員で結構痛む場所――みぞおちとか?――をボールだけじゃなく普通に足で蹴ってくる。
おい、もうゲームじゃなくてただのいじめじゃねーか
「あーあつまんないの。あ、ねえ。裸にしてSNSにアップしたら流石に泣くんじゃない?」
取り巻きの一人が言う。
「いいねそれ。やってみよ」
いや、やるなよ。おまわりさーん犯罪でーす!
あ、叫べないんだわ。
とか言ってる間にもうワイシャツまで来ちゃってるし。ボタン外すな――! 幼児体型なんだよどうせ私は!
「……おい」
地を這うような声ですね。女の子ってこんな声だせんの?
「何やってるのかな君達?」
あら今度は少し高い……でも何か男っぽいけど。てか男? あ。
「まこちゃん、吉宗兄さん」
紛れもなく高三のお兄ちゃんズでした。いつもは帰る時間が違うから一緒には登下校してないけどね。学食も滅多に会わないし。
「兄さん? 死神に兄なんていたの?」
いますよはい。そこにいらっしゃる背の低い方が兄です。
「なあ。何してんのかって聞いてんだけど」
ちょ、吉宗兄さん怖い。愛子姉さんとか程じゃないけど何かの悪寒を感じる。
「何って死神に制裁を加えてんのよ。こいつ玉投げても蹴っても声出さないから裸にしてやれば泣くと思って……ひっ!!」
いじめっこよ。言い終わってから気づいちまったのかい? 六条家のメンツは怒らせるとそれはそれは怖いんだよ。まこちゃんもキレそうで頬がピクピクしてる。
「……真。凛音を庇っておけ」
「お手柔らかに」
え、いや止めなよまこちゃん。女の子だよ、後輩だよ。
「大丈夫かい音。シャツのボタンが取れてるから僕の上着着てて」
あ、はいあざす。え? 取れてんの? うわ~あいつら。月海になおしてもらわな……
「いや~~!! た、助けて死神!!」
う~わ~女に容赦ねえ~。思いっきりグーパンで頬殴ってんじゃん訴えられないかな? いや、六条家なら平気だわ。
「これ以上痛めつけられたくなかったら凛音への危害を止めろ。次やったらお前らの人生も狂わせてやるからな」
「ひ、ひゃい……ごめんなさい」
ああ~泣き出しちゃった。そして逃げてった。あのボールを片付けてくれませんか?
「チッ。あいつら恐怖だけ感じてまたいじめ始めるんだろうよ」
「まあまあ吉宗。それより今は凛音の体の方に心配してよ」
別に心配せんでも。
「大丈夫だよ。外傷も無いし」
あの、二人揃ってこっちを見ないでくれませんか?
「凛音、ちょっと脱げ」
え、やだセクハラ。あ、ごめんそんなキレた顔しないで。シャツと上着を脱いで……誰か覗いて無いだろうね?
「……やっぱり」
「何が?」
「痣が出来てるよ」
え? あ、ほんとだ。所々に赤黒い――青い?――印がいくつもある。
「保健室に行くか」
「え、やだ。流石に公衆の面前で下着姿はちょっと。事情話さなきゃいけないのも面倒臭いし」
「音にも恥ってあんだね」
「まこちゃんどういう意味?」
感情はあるっつってんだろーが……ん? 何かフワリとした。うぉ!? 吉宗兄さんの顔が近い。あ、お姫様抱っこされてる。すげえ~ふわふわしてる~じゃないよ!!
え、何で何で? せめてシャツだけでも被せてください!
「これでどうだ。凛音、ボタン付け終わったよ」
「ありがと月海」
三十分後。何とか保健室に行こうとする吉宗兄さんを説得して月海のいる被服室へ向かった。
早くねボタンつけ? 流石デザイナーの娘。
「月海。凛音を一人にするな。俺達が来るのが遅かったらもっと傷増えてたぞ」
「悪かったよ吉ちゃん。まさか少しの間席を外しただけでこんなんなってるとは思わなかったの」
気にしてないけど私。華ちゃんと風柳も他の用事で私にかまえなかったんだから。
「とにかくこれを愛子姉さん達に言うか」
「え、だめだよ吉宗兄さん」
当事者の私が言うから皆怪訝な目を向ける。
「音ちゃん、これは後々悪化するタイプだよ」
「そうだとしても考えてみてよ華ちゃん。あの鬼畜姉さん達だよ? それこそ中学の頃なんて一日でいじめっこの親の会社潰しちゃったじゃん。だから手遅れになる少し前まで待ってた方がいい気がする」
「むぅ~まあ恐ろしいからそれで我慢しよう」
上から目線だね。別に構わないけど。
「ならせめてハンムラビ法典式で行きますか」
「るーちゃんハンなんちゃらって?」
「目には目を、歯には歯を。ね?」
月海、何か怖い……私一話で温厚組っつったんだけどあれ撤回しようかな。
下駄箱到着。
「で、何すんの?」
「じゃじゃーん! 虫」
カサカサ言ってるよ。ビニール袋の中で「出せー」って言ってるよ。
「そしてこれをあいつらの上履きにいれます。はいハンムラビ法典の完成!!」
地味に傷つくねそれ。虫嫌いなら尚更。
忍び込ませてから何事もなく私達は帰った。その後の断末魔は聞きたくも無い。
「よし。今は御子柴さんがいないわね。さあ死神、もう助けてくれるお友達がいないわよ。大人しくしててね~?」
大人しくも何も私縛り上げられて口封じされてんだから何にも出来ないって。てかあんたらこれ見つかったら今度こそ殺されるよ。月海とか愛子姉さんとか。
んでもっていじめっこグループが持ってるのはソフトボール。
良かった水じゃなくて。本が濡れたら大惨事だし。
まあここから分かる通り……ね?
「じゃあ行くよ? せ~の!!」
いっせいにボールが飛んできて私の胸やら腹やら顔やら色んな所に当たった。痛い痛い。
紙が私に貼り付けられててそれが得点らしい。胸が九十点で最高だね。
「じゃあ二回戦ね。せ~の!!」
だから痛いって。ソフトボールの強さ知らんだろあんたら。う~んでもまだかかりそうだな。
この調子だと鼻血とか痣とかやばそうだな。気づかれたら姉さん達に尋問されるし。月海~助けて~。
「ねえ、何で悲鳴上げないのよ。もっと泣き叫んで跪いて助けて~って言いなさいよ。あ、でも喋れないか~。じゃあ私の靴に額を擦り付ける? そしたら思いっきり蹴っ飛ばしてあげる」
いや、誰がするか。結局解放してはくれないんじゃん。
そのまま黙りこくっているともう点数には飽きたのか全員で結構痛む場所――みぞおちとか?――をボールだけじゃなく普通に足で蹴ってくる。
おい、もうゲームじゃなくてただのいじめじゃねーか
「あーあつまんないの。あ、ねえ。裸にしてSNSにアップしたら流石に泣くんじゃない?」
取り巻きの一人が言う。
「いいねそれ。やってみよ」
いや、やるなよ。おまわりさーん犯罪でーす!
あ、叫べないんだわ。
とか言ってる間にもうワイシャツまで来ちゃってるし。ボタン外すな――! 幼児体型なんだよどうせ私は!
「……おい」
地を這うような声ですね。女の子ってこんな声だせんの?
「何やってるのかな君達?」
あら今度は少し高い……でも何か男っぽいけど。てか男? あ。
「まこちゃん、吉宗兄さん」
紛れもなく高三のお兄ちゃんズでした。いつもは帰る時間が違うから一緒には登下校してないけどね。学食も滅多に会わないし。
「兄さん? 死神に兄なんていたの?」
いますよはい。そこにいらっしゃる背の低い方が兄です。
「なあ。何してんのかって聞いてんだけど」
ちょ、吉宗兄さん怖い。愛子姉さんとか程じゃないけど何かの悪寒を感じる。
「何って死神に制裁を加えてんのよ。こいつ玉投げても蹴っても声出さないから裸にしてやれば泣くと思って……ひっ!!」
いじめっこよ。言い終わってから気づいちまったのかい? 六条家のメンツは怒らせるとそれはそれは怖いんだよ。まこちゃんもキレそうで頬がピクピクしてる。
「……真。凛音を庇っておけ」
「お手柔らかに」
え、いや止めなよまこちゃん。女の子だよ、後輩だよ。
「大丈夫かい音。シャツのボタンが取れてるから僕の上着着てて」
あ、はいあざす。え? 取れてんの? うわ~あいつら。月海になおしてもらわな……
「いや~~!! た、助けて死神!!」
う~わ~女に容赦ねえ~。思いっきりグーパンで頬殴ってんじゃん訴えられないかな? いや、六条家なら平気だわ。
「これ以上痛めつけられたくなかったら凛音への危害を止めろ。次やったらお前らの人生も狂わせてやるからな」
「ひ、ひゃい……ごめんなさい」
ああ~泣き出しちゃった。そして逃げてった。あのボールを片付けてくれませんか?
「チッ。あいつら恐怖だけ感じてまたいじめ始めるんだろうよ」
「まあまあ吉宗。それより今は凛音の体の方に心配してよ」
別に心配せんでも。
「大丈夫だよ。外傷も無いし」
あの、二人揃ってこっちを見ないでくれませんか?
「凛音、ちょっと脱げ」
え、やだセクハラ。あ、ごめんそんなキレた顔しないで。シャツと上着を脱いで……誰か覗いて無いだろうね?
「……やっぱり」
「何が?」
「痣が出来てるよ」
え? あ、ほんとだ。所々に赤黒い――青い?――印がいくつもある。
「保健室に行くか」
「え、やだ。流石に公衆の面前で下着姿はちょっと。事情話さなきゃいけないのも面倒臭いし」
「音にも恥ってあんだね」
「まこちゃんどういう意味?」
感情はあるっつってんだろーが……ん? 何かフワリとした。うぉ!? 吉宗兄さんの顔が近い。あ、お姫様抱っこされてる。すげえ~ふわふわしてる~じゃないよ!!
え、何で何で? せめてシャツだけでも被せてください!
「これでどうだ。凛音、ボタン付け終わったよ」
「ありがと月海」
三十分後。何とか保健室に行こうとする吉宗兄さんを説得して月海のいる被服室へ向かった。
早くねボタンつけ? 流石デザイナーの娘。
「月海。凛音を一人にするな。俺達が来るのが遅かったらもっと傷増えてたぞ」
「悪かったよ吉ちゃん。まさか少しの間席を外しただけでこんなんなってるとは思わなかったの」
気にしてないけど私。華ちゃんと風柳も他の用事で私にかまえなかったんだから。
「とにかくこれを愛子姉さん達に言うか」
「え、だめだよ吉宗兄さん」
当事者の私が言うから皆怪訝な目を向ける。
「音ちゃん、これは後々悪化するタイプだよ」
「そうだとしても考えてみてよ華ちゃん。あの鬼畜姉さん達だよ? それこそ中学の頃なんて一日でいじめっこの親の会社潰しちゃったじゃん。だから手遅れになる少し前まで待ってた方がいい気がする」
「むぅ~まあ恐ろしいからそれで我慢しよう」
上から目線だね。別に構わないけど。
「ならせめてハンムラビ法典式で行きますか」
「るーちゃんハンなんちゃらって?」
「目には目を、歯には歯を。ね?」
月海、何か怖い……私一話で温厚組っつったんだけどあれ撤回しようかな。
下駄箱到着。
「で、何すんの?」
「じゃじゃーん! 虫」
カサカサ言ってるよ。ビニール袋の中で「出せー」って言ってるよ。
「そしてこれをあいつらの上履きにいれます。はいハンムラビ法典の完成!!」
地味に傷つくねそれ。虫嫌いなら尚更。
忍び込ませてから何事もなく私達は帰った。その後の断末魔は聞きたくも無い。
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