ヒーローライクヒール
その2・森+ゾンビ=
翌朝、ハゼットが馬車を用意してきた。
ハゼット「マキノから借りてきた。」
クロノ「あの人何でも用意出来るんですか?」
ハゼット「作れる物なら何でも、というのが奴の方針だそうだ。」
クロノ「すげぇなぁ…」
(ってことは作ったのか…)
ハゼット「そのマキノにゾンビの事を話したんだが、サンプルとして死体でもいいから一体持ってきてほしい、だそうだ。」
クロノ「何ですか?薬でも作るとか?」
ハゼット「あぁ。」
エリー「薬?」
●
アクアが手綱を握り、急いだペースで馬を走らせる。
エリー「この事って、王様には言ったんですか?」
エリーから質問が飛んでくる。
ハゼット「この事?レイネデに向かうことか?」
エリー「それもですけど、ゾンビのことも。」
ハゼット「ゾンビに関しては、ガイアに任せた。だが、レイネデに関しては、クロノが言うなと言っていたから言っていない。」
クロノ「言いました。」
エリー「何故です?」
クロノ「ゾンビは大抵陰謀論とセット、みたいな話は前にしましたよね?」
アクア「なんだい、まさか王様疑ってんのかい?」
クロノ「確証はないんですけどね。ただ怪しいと思ったことは一応。」
エリー「なんでです?」
ハゼット「国がゾンビの事に関して、何も発表していないんだ。」
エリー「発表していない?」
首を傾げながら復唱する。
ハゼット「ゾンビは戦闘力こそ少ないものの、噛まれたら感染するという超が付くほど危険な魔獣だ。いや、病気だったか。とにかくそんな危険なものが近くで現れたら、注意喚起するはずだ。だが実際は、近くで巨大なゴブリンが現れ、ギルドと軍が協力して撃退した、ということしか言っていない。」
アクア「ほーう。そりゃ確かに怪しい。あたしもその辺のやつがゾンビの話してるのは聞いたことがない。」
クロノ「もし国が何か企んでるなら、ヤバいです。」
エリー「ヤバいの一言で済むんですか…」
クロノ「逆に、企んでで欲しい、とも思ってます。」
エリー「と、言いますと?」
クロノ「俺がこの世界に来た事に、絶対関係していると確定するからです。」
エリー「すごい自信ですね。」
クロノ「というか、ゾンビに関わってるなら絶対関わってて欲しいです。じゃないと戻るヒントも得られないし。」
アクア「どっちにしろ面倒だねぇ。」
ハゼット「ところで、2人はゾンビの対処法は分かっているのか?」
アクア「近づかれる前に頭を射抜く。」
エリー「近づかれたら顔を抑えて何かされる前に攻撃、ですよね?」
クロノ「まぁそんな感じですかね。ただ、奴ら無駄に力が強いんで注意してください。」
●
レイネデから少し離れた場所に着く。
既に何体か、フラフラと歩いているゾンビがいた。
村の方は、広さだけはなかなかあるが、外から見る限り建物は全て木造といった感じの、あまり繁栄しているとは言えない村である。
生存者がいないからか、とても静かになっている。
エリー「活気を感じませんね。」
ハゼット「中々広い村だ。散開した方が早いだろうが…」
ふと、村の横にある大きな森の方を見る。
(森の中にもゾンビが…)
クロノ「いや、森の中から来てる?」
森の中からゾンビが次々と出てきている。
ハゼット「森の中?ふむ、あそこの方に何かあるかもしれない、と。」
魔獣もチラホラ見かけるが、それらもゾンビ化している。
(森の中でピクニックでもしてて、そこで襲われたとかなら、中から来るのはあり得る。でも、ピクニックどころじゃない人数だし、そもそも魔獣がいるような森でピクニックもおかしいだろ。)
クロノ「村から森に逃げた人が森の中でゾンビにされた…」
エリー「本当ですか⁉︎」
クロノ「え?いやいや⁉︎想像ですよ‼︎」
アクア「でも怪しんでんだろ?」
クロノ「まぁそうですけど。」
ハゼット「どうするんだ?任せるぞ。」
(うわぁー、期待されると心臓が痛くなってくるな…)
クロノ「…ハゼットさんは2:2で分かれても戦えますよね?」
ハゼット「あぁ。どちらかというとお前の方が心配だ。」
クロノ「それはまぁ…じゃあ2:2に分かれましょう。僕は森の方を調べます。」
アクア「ならあたしがクロノについて行こう。」
クロノ「え?」
ハゼットに同行を頼もうとしたらアクアが立候補してきた。
ハゼット「ならアクアに任せよう。」
クロノ「え?」
ハゼットが許さないかと思っていたらサラッと許可した。
アクア「どうした?不満かい?」
クロノ「いや、そうじゃなくて、単純にハゼットが同行してくるんじゃないかなと…」
ハゼット「森の中でのアクアは最強だ。俺が行くより安心できる。」
クロノ「マジすか。」
アクア「森の中での方が動きやすいんだ。」
余程の自信があるのか、ドヤ顔をしてくる。
エリー「なら私はハゼットさんとですね。」
ハゼット「よし。何か注意する点は?」
クロノ「えっと…基本的には見つからないように。1体見つかると次々と押し寄せてきたりしますから。」
ハゼット「分かった。よし、行こう。」
●
クロノは森の方に向かう。
(でもなんで森に逃げたんだろ。普通に他の村の方まで逃げればいいのに。)
アクア「クロノ、あいつらは殺っちゃっていいのかい?」
クロノ「んぇ?」
こちらに気づいたゾンビ達が押し寄せてきた。
クロノ「おぉ…それじゃあお願いします。」
アクア「あいよ!」
弓を水平に構え、矢を同時に5本射る。
矢と矢の間を魔力が線のようにつながっている。
魔力の線に触れたゾンビから、切り裂かれていく。
クロノ「うっわ!レーザーかよ!」
アクア「どうだい!まだまだこんなもんじゃないさ!」
クロノ「すごい技術っすね…いやでも、森の中はどうなってるか分からないし、油断禁物ですよ?」
ゾンビ+森=超危険。
(鬼が出るか蛇が出るか…いっそそいつらが出てきてくれた方がいいのにな。)
●
アクアと共に森の中に入る。
森の中にもゾンビは見かけたが、気づかれる前にアクアが射抜くので何も問題なく進む。
時々、頭上でガサガサと音が鳴り、その度に警戒を強める。
アクア「やばいと思うかい?」
クロノ「かもしれませんねー…アクアさんは自分の身を守ることに集中してください。」
アクア「はいはい。暇だったら守ってやるから安心しな。」
(アクアさんの弓の腕前超やばいんだよなぁ…距離とか障害物とか関係なくちゃんと当てるし…)
実際、森に入ってから半径10メートル以内にゾンビが近づいてきていない。
●
森に入ってから少し時間は経ったものの、特に何かを発見する気配がない。
(俺の思い過ごしだったか?その方がありがたいっちゃあありがたいんだが…)
突然、上から何かが覆いかぶさってくる。
クロノ「うわっ!」
考え事に気を取られ、抵抗もできずに両手を抑えられて武器を手放してしまう。
クロノ「げぇっ!ゾンビ!」
ゾンビが大きく口を開ける。
クロノ「待て待て待て待て!」
間一髪矢が飛んできてゾンビの頭に命中し、ゾンビが倒れかかる。
クロノ「うおっ…おぉ…よいしょ。」
ゾンビを押しのけて立ち上がる。
アクア「油断しないって言ったのはあんたじゃなかったっけ〜?」
クロノ「すいません…考え事してました…」
アクア「考え事?」
クロノ「いや、森の中探索に来たけど、何もないんじゃないかって。」
アクア「え?この奥にかなりゴツいのいるけど?」
逆に気づいていなかったのか、とでも言いたげな顔である。
クロノ「え?」
アクア「だから、多分この事にでも関係してそうな、森で生きてるには少し不自然な感じの魔獣の気配がすんのさ。てっきり、あんたも気づいてたかと思ったよ。」
妙に自信マンマンである。
クロノ「なんでそんなこと分かるんですか?」
アクア「あたしは森の中だったら通常の3倍の力を発揮すると思っておきな。森の中だったら、初めて入る場所でも大抵のことは分かる。どこに何がいるかとかな。」
クロノ「何そのチート。なんでそんなこと分かんの?」
アクア「魔獣が蔓延る森の中で1年間くらい狩りで生活してみな。イヤでも分かるようになるさ。」
(この人何して生きてきたんだよ…)
●
奥の方へと向かう。
だんだんと不気味な匂いがしてきた。
(これが死体の匂いってやつ?腐ったような…なんだこの匂い。)
空中を黄色い霧のような物が舞っているのも見える。
クロノ「花粉…の類じゃないっすよね…」
アクア「分からないが、少なくとも森の物ではないな。この奥にいる魔獣が出してるものと見た。」
(この状況でこんな物を出す魔獣…絶対嫌な予感しかしないんだよなぁ…)
●
少し開けた場所に出てきた。
そしてその中央に、あからさまに怪しいボスの雰囲気の巨大生物がいる。
球根のような体で、目と大きな口が胴体にドドンとある。
口から黄色い霧のようなものが出ており、これが発生源だと分かる。
巨大生物の周りにも結構な数のゾンビがウロウロしている。
クロノ「なんなんだよこれ…」
アクア「あからさまに…原因だろ。あそこ見てみな。」
巨大生物の口の中に何かいる。
クロノ「人間⁉︎食われてるのか⁉︎」
意識がないのか、全員グッタリと倒れている。
アクア「どうだろうね。人間だけじゃない。」
人間と共にゾンビが入っている。
しかし、ゾンビが人間を襲っている雰囲気はない。
クロノ「ゾンビに襲われていない…?大丈夫…ってわけでもないと思うけど…」
アクア「周りのゾンビ共、あたしらを見てもシカトしてるねぇ。」
クロノ「ホント?」
確かに、クロノ達には気づいていない様子。
(なんでだ?人を襲わないゾンビ?)
アクア「どう思う?あたしはこの霧みたいなのが怪しいと思うけど。」
クロノ「それは、ゾンビが襲ってこない理由ですか?」
アクア「あぁ。ゾンビになるってのは…」
口の中を見る。
口の中で灰色の液体が溜まっているのが見える。
クロノ「あいつの口の中に液体っぽいのがあるのが見えますか?」
アクア「ん?口?あぁ、なんかあるねぇ。」
クロノ「あれがゾンビ化する原因ではないかと。」
アクア「へぇ。この霧、あたしら大丈夫なのかね?」
クロノ「……やべぇ、全く考えてなかった。」
もしこの霧の方がゾンビ化する原因だった場合、大惨事である。
アクア「まぁその時はその時さ。」
巨大生物がこちらを捉えた。
クロノ「気づいた?」
武器を構えて警戒する。
(何か仕掛けてくるか…?)
巨大生物の背後から触手が3本伸びてきた。
クロノとアクアに目掛けて一本ずつ迫ってくる。
クロノ「よっと!」
触手を避ける。
(もう1本は?)
まだ伸び続けている触手の先を見ると、ゴブリンが1匹捕まっていた。
ゴブリンを口まで運び、放りこんだ。
(なるほど、ああやって口の中に入れられる、と。)
今度は4本の触手が飛んでくる。
クロノ「またか!」
2本ずつ飛んでくる触手を避けるのは難しく、剣で斬りつけながら避ける。
アクアも魔力で矢を作り、触手に突き刺しながら避ける。
巨大生物「グォォォォォォォォォォ‼︎」
叫び声を上げ、宙を舞っていた霧が吹き飛ばされる。
クロノ「うるっせ‼︎」
アクア「クロノ!周りを見ろ!」
クロノ「え?」
ゾンビが明らかにこちらに気づき、迫ってきている。
アクア「やっぱあれはゾンビを抑制するなんかだったんだ!」
巨大生物の口の中から叫び声が聞こえてくる。
クロノ「口…そういや口の中から出てたんだっけ…」
口の中のゾンビが人間を襲っている。
クロノ「アクアさん!」
アクア「こうも敵が多くちゃ、好き勝手動けないねぇ。」
クロノ「俺があのデカイのの相手をします。アクアさんは周りのゾンビを倒しといてください。終わったら、援護お願いします。」
アクア「よし、任せときな!」
ハゼット「マキノから借りてきた。」
クロノ「あの人何でも用意出来るんですか?」
ハゼット「作れる物なら何でも、というのが奴の方針だそうだ。」
クロノ「すげぇなぁ…」
(ってことは作ったのか…)
ハゼット「そのマキノにゾンビの事を話したんだが、サンプルとして死体でもいいから一体持ってきてほしい、だそうだ。」
クロノ「何ですか?薬でも作るとか?」
ハゼット「あぁ。」
エリー「薬?」
●
アクアが手綱を握り、急いだペースで馬を走らせる。
エリー「この事って、王様には言ったんですか?」
エリーから質問が飛んでくる。
ハゼット「この事?レイネデに向かうことか?」
エリー「それもですけど、ゾンビのことも。」
ハゼット「ゾンビに関しては、ガイアに任せた。だが、レイネデに関しては、クロノが言うなと言っていたから言っていない。」
クロノ「言いました。」
エリー「何故です?」
クロノ「ゾンビは大抵陰謀論とセット、みたいな話は前にしましたよね?」
アクア「なんだい、まさか王様疑ってんのかい?」
クロノ「確証はないんですけどね。ただ怪しいと思ったことは一応。」
エリー「なんでです?」
ハゼット「国がゾンビの事に関して、何も発表していないんだ。」
エリー「発表していない?」
首を傾げながら復唱する。
ハゼット「ゾンビは戦闘力こそ少ないものの、噛まれたら感染するという超が付くほど危険な魔獣だ。いや、病気だったか。とにかくそんな危険なものが近くで現れたら、注意喚起するはずだ。だが実際は、近くで巨大なゴブリンが現れ、ギルドと軍が協力して撃退した、ということしか言っていない。」
アクア「ほーう。そりゃ確かに怪しい。あたしもその辺のやつがゾンビの話してるのは聞いたことがない。」
クロノ「もし国が何か企んでるなら、ヤバいです。」
エリー「ヤバいの一言で済むんですか…」
クロノ「逆に、企んでで欲しい、とも思ってます。」
エリー「と、言いますと?」
クロノ「俺がこの世界に来た事に、絶対関係していると確定するからです。」
エリー「すごい自信ですね。」
クロノ「というか、ゾンビに関わってるなら絶対関わってて欲しいです。じゃないと戻るヒントも得られないし。」
アクア「どっちにしろ面倒だねぇ。」
ハゼット「ところで、2人はゾンビの対処法は分かっているのか?」
アクア「近づかれる前に頭を射抜く。」
エリー「近づかれたら顔を抑えて何かされる前に攻撃、ですよね?」
クロノ「まぁそんな感じですかね。ただ、奴ら無駄に力が強いんで注意してください。」
●
レイネデから少し離れた場所に着く。
既に何体か、フラフラと歩いているゾンビがいた。
村の方は、広さだけはなかなかあるが、外から見る限り建物は全て木造といった感じの、あまり繁栄しているとは言えない村である。
生存者がいないからか、とても静かになっている。
エリー「活気を感じませんね。」
ハゼット「中々広い村だ。散開した方が早いだろうが…」
ふと、村の横にある大きな森の方を見る。
(森の中にもゾンビが…)
クロノ「いや、森の中から来てる?」
森の中からゾンビが次々と出てきている。
ハゼット「森の中?ふむ、あそこの方に何かあるかもしれない、と。」
魔獣もチラホラ見かけるが、それらもゾンビ化している。
(森の中でピクニックでもしてて、そこで襲われたとかなら、中から来るのはあり得る。でも、ピクニックどころじゃない人数だし、そもそも魔獣がいるような森でピクニックもおかしいだろ。)
クロノ「村から森に逃げた人が森の中でゾンビにされた…」
エリー「本当ですか⁉︎」
クロノ「え?いやいや⁉︎想像ですよ‼︎」
アクア「でも怪しんでんだろ?」
クロノ「まぁそうですけど。」
ハゼット「どうするんだ?任せるぞ。」
(うわぁー、期待されると心臓が痛くなってくるな…)
クロノ「…ハゼットさんは2:2で分かれても戦えますよね?」
ハゼット「あぁ。どちらかというとお前の方が心配だ。」
クロノ「それはまぁ…じゃあ2:2に分かれましょう。僕は森の方を調べます。」
アクア「ならあたしがクロノについて行こう。」
クロノ「え?」
ハゼットに同行を頼もうとしたらアクアが立候補してきた。
ハゼット「ならアクアに任せよう。」
クロノ「え?」
ハゼットが許さないかと思っていたらサラッと許可した。
アクア「どうした?不満かい?」
クロノ「いや、そうじゃなくて、単純にハゼットが同行してくるんじゃないかなと…」
ハゼット「森の中でのアクアは最強だ。俺が行くより安心できる。」
クロノ「マジすか。」
アクア「森の中での方が動きやすいんだ。」
余程の自信があるのか、ドヤ顔をしてくる。
エリー「なら私はハゼットさんとですね。」
ハゼット「よし。何か注意する点は?」
クロノ「えっと…基本的には見つからないように。1体見つかると次々と押し寄せてきたりしますから。」
ハゼット「分かった。よし、行こう。」
●
クロノは森の方に向かう。
(でもなんで森に逃げたんだろ。普通に他の村の方まで逃げればいいのに。)
アクア「クロノ、あいつらは殺っちゃっていいのかい?」
クロノ「んぇ?」
こちらに気づいたゾンビ達が押し寄せてきた。
クロノ「おぉ…それじゃあお願いします。」
アクア「あいよ!」
弓を水平に構え、矢を同時に5本射る。
矢と矢の間を魔力が線のようにつながっている。
魔力の線に触れたゾンビから、切り裂かれていく。
クロノ「うっわ!レーザーかよ!」
アクア「どうだい!まだまだこんなもんじゃないさ!」
クロノ「すごい技術っすね…いやでも、森の中はどうなってるか分からないし、油断禁物ですよ?」
ゾンビ+森=超危険。
(鬼が出るか蛇が出るか…いっそそいつらが出てきてくれた方がいいのにな。)
●
アクアと共に森の中に入る。
森の中にもゾンビは見かけたが、気づかれる前にアクアが射抜くので何も問題なく進む。
時々、頭上でガサガサと音が鳴り、その度に警戒を強める。
アクア「やばいと思うかい?」
クロノ「かもしれませんねー…アクアさんは自分の身を守ることに集中してください。」
アクア「はいはい。暇だったら守ってやるから安心しな。」
(アクアさんの弓の腕前超やばいんだよなぁ…距離とか障害物とか関係なくちゃんと当てるし…)
実際、森に入ってから半径10メートル以内にゾンビが近づいてきていない。
●
森に入ってから少し時間は経ったものの、特に何かを発見する気配がない。
(俺の思い過ごしだったか?その方がありがたいっちゃあありがたいんだが…)
突然、上から何かが覆いかぶさってくる。
クロノ「うわっ!」
考え事に気を取られ、抵抗もできずに両手を抑えられて武器を手放してしまう。
クロノ「げぇっ!ゾンビ!」
ゾンビが大きく口を開ける。
クロノ「待て待て待て待て!」
間一髪矢が飛んできてゾンビの頭に命中し、ゾンビが倒れかかる。
クロノ「うおっ…おぉ…よいしょ。」
ゾンビを押しのけて立ち上がる。
アクア「油断しないって言ったのはあんたじゃなかったっけ〜?」
クロノ「すいません…考え事してました…」
アクア「考え事?」
クロノ「いや、森の中探索に来たけど、何もないんじゃないかって。」
アクア「え?この奥にかなりゴツいのいるけど?」
逆に気づいていなかったのか、とでも言いたげな顔である。
クロノ「え?」
アクア「だから、多分この事にでも関係してそうな、森で生きてるには少し不自然な感じの魔獣の気配がすんのさ。てっきり、あんたも気づいてたかと思ったよ。」
妙に自信マンマンである。
クロノ「なんでそんなこと分かるんですか?」
アクア「あたしは森の中だったら通常の3倍の力を発揮すると思っておきな。森の中だったら、初めて入る場所でも大抵のことは分かる。どこに何がいるかとかな。」
クロノ「何そのチート。なんでそんなこと分かんの?」
アクア「魔獣が蔓延る森の中で1年間くらい狩りで生活してみな。イヤでも分かるようになるさ。」
(この人何して生きてきたんだよ…)
●
奥の方へと向かう。
だんだんと不気味な匂いがしてきた。
(これが死体の匂いってやつ?腐ったような…なんだこの匂い。)
空中を黄色い霧のような物が舞っているのも見える。
クロノ「花粉…の類じゃないっすよね…」
アクア「分からないが、少なくとも森の物ではないな。この奥にいる魔獣が出してるものと見た。」
(この状況でこんな物を出す魔獣…絶対嫌な予感しかしないんだよなぁ…)
●
少し開けた場所に出てきた。
そしてその中央に、あからさまに怪しいボスの雰囲気の巨大生物がいる。
球根のような体で、目と大きな口が胴体にドドンとある。
口から黄色い霧のようなものが出ており、これが発生源だと分かる。
巨大生物の周りにも結構な数のゾンビがウロウロしている。
クロノ「なんなんだよこれ…」
アクア「あからさまに…原因だろ。あそこ見てみな。」
巨大生物の口の中に何かいる。
クロノ「人間⁉︎食われてるのか⁉︎」
意識がないのか、全員グッタリと倒れている。
アクア「どうだろうね。人間だけじゃない。」
人間と共にゾンビが入っている。
しかし、ゾンビが人間を襲っている雰囲気はない。
クロノ「ゾンビに襲われていない…?大丈夫…ってわけでもないと思うけど…」
アクア「周りのゾンビ共、あたしらを見てもシカトしてるねぇ。」
クロノ「ホント?」
確かに、クロノ達には気づいていない様子。
(なんでだ?人を襲わないゾンビ?)
アクア「どう思う?あたしはこの霧みたいなのが怪しいと思うけど。」
クロノ「それは、ゾンビが襲ってこない理由ですか?」
アクア「あぁ。ゾンビになるってのは…」
口の中を見る。
口の中で灰色の液体が溜まっているのが見える。
クロノ「あいつの口の中に液体っぽいのがあるのが見えますか?」
アクア「ん?口?あぁ、なんかあるねぇ。」
クロノ「あれがゾンビ化する原因ではないかと。」
アクア「へぇ。この霧、あたしら大丈夫なのかね?」
クロノ「……やべぇ、全く考えてなかった。」
もしこの霧の方がゾンビ化する原因だった場合、大惨事である。
アクア「まぁその時はその時さ。」
巨大生物がこちらを捉えた。
クロノ「気づいた?」
武器を構えて警戒する。
(何か仕掛けてくるか…?)
巨大生物の背後から触手が3本伸びてきた。
クロノとアクアに目掛けて一本ずつ迫ってくる。
クロノ「よっと!」
触手を避ける。
(もう1本は?)
まだ伸び続けている触手の先を見ると、ゴブリンが1匹捕まっていた。
ゴブリンを口まで運び、放りこんだ。
(なるほど、ああやって口の中に入れられる、と。)
今度は4本の触手が飛んでくる。
クロノ「またか!」
2本ずつ飛んでくる触手を避けるのは難しく、剣で斬りつけながら避ける。
アクアも魔力で矢を作り、触手に突き刺しながら避ける。
巨大生物「グォォォォォォォォォォ‼︎」
叫び声を上げ、宙を舞っていた霧が吹き飛ばされる。
クロノ「うるっせ‼︎」
アクア「クロノ!周りを見ろ!」
クロノ「え?」
ゾンビが明らかにこちらに気づき、迫ってきている。
アクア「やっぱあれはゾンビを抑制するなんかだったんだ!」
巨大生物の口の中から叫び声が聞こえてくる。
クロノ「口…そういや口の中から出てたんだっけ…」
口の中のゾンビが人間を襲っている。
クロノ「アクアさん!」
アクア「こうも敵が多くちゃ、好き勝手動けないねぇ。」
クロノ「俺があのデカイのの相手をします。アクアさんは周りのゾンビを倒しといてください。終わったら、援護お願いします。」
アクア「よし、任せときな!」
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