ヒーローライクヒール

手頃羊

その3・超える意志

(頼むよ…ただでさえ交渉事は苦手なんだ…せめて誤解のないように終わりたい…!)

レオ「知ってたの?」
震えた声で話し始める。

クロノ「知ってた。」

レオ「いつから?」

クロノ「昨日。」

レオ「……」

(沈黙が怖いぞ…質問責めされる方がマシだこれ…!)

レオ「そんな…」

クロノ「………」

レオ「なんでバレちゃうの…‼︎絶対知られたくなかったのに…‼︎」

クロノ「レオ。」

レオ「こんなの…女の子の格好する男なんか…」

クロノ「レオ。どうして女の子の格好してるの?」

レオ「……!」
怯えたような顔になる。

(やべっ!いや、違う!中途半端に止まっちゃいけない!)

クロノ「さっきも言ったけど、全然嫌じゃない。嫌いになんかならない。でもそれは理由次第なの。」
レオに向かって歩む。

レオ「…えっと……」

クロノ「みんなや、誰かに対して迷惑かけるようなこと?」

レオ「そんなことない!絶対そんなことしないよ!」

クロノ「じゃあ大丈夫。俺はレオの味方だ。だから聞かせて。何でも聞くよ。」
レオの目の前で座り、レオの手を取る。

レオ「…おに……クロノ、さん…」

クロノ「呼びやすい言い方でいいよ。」

レオ「…僕、なんで男なんだろうって…」

クロノ「なんで?」

レオ「ずっと女の子だと思ってた、自分のこと…でも、体は男で…」

(予想通りっちゃあ予想通り、か。)

クロノ「本当は女の子のハズだったのに、なぜか体は男の子だった。」

レオ「うん…」

クロノ「だから、せめて格好だけでも女の子になろうとしてたのか。」

レオ「うん…」

クロノ「そうか…」

レオ「嫌いに、ならないで…」
泣きそうな声で訴える。

クロノ「ならないよ。信じてくれるかは分からないけど、俺が元々いた世界でもレオみたいな人は結構いるんだ。」

レオ「そうなの?」

シレイノ「世界?」
シレイノが割り込んでくる。

クロノ「ごめん、後で。」

シレイノ「あ、ごめんなさい…」

クロノ「やっぱり、そういう人達は嫌われやすい。そこまでじゃなくても、良いと思わない人もいる。でも、理解してる人達もちゃんといる。俺も、理解しようとしてる。そりゃあ、他人の考え、しかも違う性別のハズだったのに、ってこと俺は思ったことなかったから完全に理解はできないけど、嫌いになったりはしない。」

レオ「でも気持ち悪いよ…?男が女の子の格好なんて…」

クロノ「見た目の話?それとも心の話?やってる事の話?」

レオ「え?」

クロノ「どれにしても、全然気持ち悪いとは思わない。本当に。そもそも、気持ち悪いとかどうって趣味の話じゃん。趣味が合わないものはそりゃあ気持ち悪いと思うだろうよ。だって自分がやろうとは思わないことだもん。男が女の格好、なんて、普通はしない。特にこの世界だと、あんまり考えられないだろうね。でも、色々なことに目を向けてみると分かるんだよ。この世には、自分には考えられないことがたくさんある。自分が、他人には考えられないような存在になることもある。というかそっちの方が多い。それを知っちゃうと、他人を気持ち悪いと思えなくなるんだ。自分は気持ち悪い存在だって肯定してるのと同じだからね。俺は、ちょっと人に嫌われたことがあるんだよ。」

レオ「お兄ちゃんが…?」

クロノ「そう。ちょっとトラウマ。だから、人に嫌われるのは嫌なんだ。自分が原因でもね。みんなに気持ち悪いって思われたくない。見た目に関しては、それはもうどうでもいい。多分、そこが1番変えられないし、そりゃあみんなイケメン美人が好きだよ。それはまぁ、置いといて。自分の趣味や、自分の考えを気持ち悪いだなんて思われたくない。絶対にありえない。だから、俺は絶対に思わない。みんなを好きになる。嫌われようが嫌われまいが。そうすれば、自分を肯定できる。レオ、今まで味方が少なかったかもしれないけど、俺とシレイノさんは味方だよ。ラフのみんなも。でも、まだ。次は、レオ自身がレオの味方になるんだ。」

レオ「僕自身が…?」

クロノ「そう。自分に対して怯えてるから、自分に自信が持てない。だから、レオが男の子だって俺が知った時に、嫌われちゃうって思ったんだ。というか、決めつけてたでしょ?」

レオ「…うん。絶対嫌われたって思った…」

クロノ「今までレオのこと分かったような口ぶりで言った後で言うのもなんだけど、人の頭の中なんてエスパーでもない限り絶対に分からないからね。99.9%の正確さでも100%分からないなら信用できない。この人はこう思ってる、なんて、当たるはずがないんだよ。だから、ちゃんと話そう。勘違いしないようにね。」

レオ「うん…うん!」

(適当にごまかしつつ、上手いこと丸まったかな?)

レオ「お兄ちゃんは僕のこと…」

クロノ「好きだよ。」

シレイノ「ちょ」

クロノ「来たばっかの俺に色々な教えてくれたし、接してくれたし、優しかったし。男とかなんとかってのは、そういうのとは関係ない。俺にまっすぐ接してきてくれたレオは好きだよ。良い友達だ。」

レオ「…お兄ちゃん‼︎」
レオが抱きついてくる。

シレイノ「あぁ〜…」
大きめのため息をつく。

クロノ「シレイノさん?」

シレイノ「いやなんでもない…あなたという人は…」

クロノ「え?俺なんかやらかした?」
こういう展開で下手に好きという勘違いされると思い、最後に『友達として』という前提を付け加えたはずだった。

シレイノ「何でもない…」
落ちていたドレスを持ち上げる。

シレイノ「さて、仲直りが済んだところで、お召しになりますか?」

クロノ「時間とかって大丈夫なんですか?」

シレイノ「店の準備や片付けのこともありますので、あと4時間ほどですね。」

クロノ「なら今のうちに着たいやつを着ていかないとな。」

レオ「うん!」
レオとシレイノが試着室へと入っていく。

(助かった…って感じか。今日のこと、ハゼットさんとエリーさんには言っとかないとな。)

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