ヒーローライクヒール
その1・ニューオープン
ギルドのカウンター席でお茶を飲みながら考え事をする。
昨夜、とんでもないことを聞いてしまったクロノ。
(レオが…男の子…いや、男の娘か?)
可愛らしいフリフリの服をよく着ているから普通に女の子だと思っていた。
(握手した時に平気なのかって聞かれたのは…そういう意味だったのか?)
クロノ「このギルドには地雷しかないのか…」
嫌というわけではないが、面倒だとは思った。
アクア「どうしたんだい?」
アクアが隣に座ってくる。
フレアは用事があると言って出て行って、ガイアはそろそろ休暇が切れそうだと今のうちに買い物を済ませに、ハゼットはまだ任務から帰って来ず。
レオは買い物があると言って先ほど出て行った。
今ギルドにはクロノ、アクア、エリーしかいない。
クロノ「アクアさん…昼間から酒ですか。」
酒瓶を開けてコップに注ぐ。
アクア「別にいいじゃないか。お前も飲むか?」
クロノ「未成年です。遠慮します。」
アクア「ミセイネン?飲めないのかい?そらまた可哀想にねぇ…で、地雷って何さ?」
地雷というスラングはこちらの世界にはないものらしい。
クロノ「人の触れちゃいけない部分とか、関わると面倒なことになる部分ってな意味ですかね。」
アクア「なるほど、だから地雷か。確かに爆発物並に危険なことだね。」
地雷自体はこちらの世界にもあるらしい。
アクア「で、誰の何が地雷って?」
クロノ「今1番の悩みとしては、レオ…くんですかね。」
アクア「レオ?あいつがどうかしたのかい?」
エリー「クロノさん。」
エリーが2階から降りてくる。
エリー「あら、アクアさんも。」
アクア「おはよーさん。」
クロノ「おはようございます。」
エリー「おはようございます。」
アクア「どっか行くのかい?」
背中に大きな鎌を背負っている。
草を刈る鎌ではなく、死神が持っていそうな、魂を刈り取る類の鎌だ。
エリー「えぇ。ちょっと、マキノさんに用事があって。」
アクア「ほーん。」
エリー「それでその前に、クロノさん。」
クロノ「はい?」
マキノの前にクロノに用事がある様子。
クロノ「レオに聞いてみたんですけど…クロノさんは自分を女の子だと思ったままだと思っているそうです。」
クロノ「あぁ、マジか…」
泣き声で呻く。
(ややこしいことになってきた…)
エリー「打ち明ける勇気も出ないと。」
アクア「あぁ、なるほど。地雷か。うん、なるほどね。」
クロノ「アクアさんは知ってたんですか?」
アクア「まぁね。ってかギルドの連中はあんた以外みんな知ってるよ。」
クロノ「マジですか…」
アクア「あたしらはレオから言ってきてくれたんだがね。こんなんだけど仲良くしてくださいってさ。ウチの連中で気にする奴ァいないがな。」
クロノ「レオから言ってきた?」
アクア「言われてないのかい?」
クロノ「はい。」
アクア「…なんで?」
クロノ「…さぁ?」
エリー「とりあえず、このことは聞かなかったことにしてくださいね。レオに怒られちゃいますから。」
クロノ「はい。」
エリー「では、行ってきます。」
扉を開けて出て行った。
●
アクア「レオが、ねぇ…ふーん。ま、あたしの時も入ってから教えてくれるのにちょっと時間はかかったけど。3日くらい?ふーん。」
酒を飲みながら何度か頷く。
クロノ「アクアさん?」
アクア「なぁ、レオが男なのは嫌なのかい?」
クロノ「僕ですか?」
アクア「ここにゃああんたしかいないだろ。」
クロノ「…別に嫌ではないです。僕のいた世界にも結構いましたし。性同一障害って言葉もあるくらいだし。」
アクア「せいどう…ん?まぁそのナントカってのはなんなんだい?」
クロノ「身体としては男、或いは女として産まれたけど、精神的にはその逆、身体は男で心は女って感じですね。」
アクア「うん?」
クロノ「例えば、アクアさんは身体も心も女性ですよね。」
アクア「まぁね。」
クロノ「今の心のまま、身体が男のそれと考えてみてください。」
アクア「おう…おう…」
クロノ「自分は女なのに、周りからは男だと認識されたり…」
アクア「あぁ…」
クロノ「僕はそういうことになったことないし、そういう知り合いもいないからよく分かんないですけど。…私は女なのになんでこんな…もしくは僕は男なのになんで…みたいな。」
アクア「想像するだけでもなかなかキツイね…」
クロノ「精神的なものですから、こっちの世界にもいくらかいるとは思うんですけどね。」
アクア「じゃあレオもその1人なのかい?」
クロノ「どうでしょうね…単に女装が趣味ならともかく、本当に心が女の子として生まれてきたのなら…」
突然、ドアがバンッ!と開く。
クロノ「うおっ!いらっしゃ…レオ?」
噂をすればレオが入ってきた。
レオ「お兄ちゃん!」
レオが駆け寄ってくる。
クロノ「どうしたんだ?」
キラキラしたような目で見てくる。
レオ「ついて来て欲しいところがあるの!」
外食好きな子供がファミレスに行きたいみたいなテンションの高さ。
手を胸の前で握りしめてピョンピョンする姿はまさしく女の子そのもの。
レオ「中央の方にね、すっごい可愛いスイーツのお店見つけたんだ!」
クロノ「スイーツ?」
レオ「うん!こないだオープンしたばっかりの新しいお店!可愛い店員さんが接客してくれるんだって!」
(それキャバクラかメイド喫茶かじゃねーの?)
クロノ「俺は別に良いけど…」
(レオのことを知る良い機会になるかもしれない。)
アクアの方を見ると、
アクア「あぁ、あたしはそういう店にはあんま興味わかないから2人で行ってきなよ。ここの留守番も必要だしね。」
と言って次の瓶を開けていた。
レオ「そっかぁ〜。じゃあお兄ちゃん行こ!」
手を引っ張られる。
●
街の中央部。
昼間から酔いつぶれたおっさんがいたりと、ギルドの周りより若干荒れ気味だが、他はマトモな感じではある。
クロノ「どこにあるの?」
レオ「うん。あの通りを曲がってすぐのところだよ。」
この辺りの人口がどれほどかは知らないが、どことなく人通りが多くなってきた気がする。
クロノ「新しい店なら客はまぁ、多いだろうな。」
レオ「さっき見た時はそうでもなかったかな…あ、ここ!」
見たところは 普通にカフェのような外観。
クロノ「並んでないな。」
オープンしたばかりな割には客が少ない。
看板があるが、なんて書いてあるか分からない。
(この世界の字か…目にも魔法かけてもらえば良かったかな…)
クロノ「なんて店なの?」
レオ「『アリアージュ』だって。早く入ろ?」
●
店員「「いらっしゃいませ〜」」
(わ〜お。)
メイド服を着た店員達が出迎えてくれる。
内装はカフェのように落ち着いた感じでもなく、メイド喫茶のようなピンクめな感じでもなく、ファミレスに近い感じである。
(レベル高いな〜、というか、このメイド服完全にウチの世界の奴じゃねえの?)
レオ「すっごーい‼︎」
レオは喜んでいる様子。
レオ「こんなお店初めて‼︎」
(そりゃあファンタジー世界にメイド喫茶があってたまるか。)
店員「お席、案内しますね〜。」
店員の誘導に従う。
レオの目を見てみると、完全にアイドルグループを前にしたファンのようにキラキラした目になっている。
●
店員「当店のご利用は初めてですか?」
レオ「は、はい!」
(緊張してるな〜。)
クロノにとっては、近くに新しくできたというファミレスに来た感覚である。
(でもレオはファミレス自体初めてか。)
店員「他のお店と同じように、注文が決まりましたら店員をお呼びください。こちらがメニュー表です。」
クロノ「あ、どうも。」
メニュー表を渡されるが、やはり字が読めない。
レオ「わー‼︎」
(どうしようかな…)
字が読めないと怪しい目で見られかねない。
クロノ「なんかオススメとかそういうのないですかね。」
字が読めないのがばれずに、且つ美味しい食べ物にありつける方法である。
店員「当店オリジナルのチーズケーキなどいかがでしょうか。」
クロノ「へぇ、そんなのが。んじゃあ俺はそれにしようかな。」
店員「かしこまりました。」
クロノ「ちなみにお値段は?」
店員「ケーキ1つがホールケーキの8分の1サイズとなっておりまして8バレのご提供となっております。」
バレ、というのはこの世界の通貨である。
8バレはだいたい400円。
(少し高めか?いや、ケーキとかロクに食ったことないから相場は知らんが。)
クロノ「レオは?」
レオ「うーん…他にオススメとかありませんか?」
店員「果物を使ったケーキもオススメですね。ブルーベリーやイチゴ、オレンジの3つから選べます。」
レオ「じゃあブルーベリーのやつで!」
店員「かしこまりました。ご注文は以上でしょうか?」
クロノ「そんなもんかな。」
店員「ありがとうございます。少々お待ちくださいませ。」
店員が店の奥へ消えていく。
レオ「可愛かったなぁ…」
クロノ「…そうだな。」
店の奥から視線があることに気づく。
(俺らを見てる…のか?)
こちらに気づかれているのを悟られぬように気づいていないフリをする。
(じゃなければいいんだが。)
●
注文してから数分、すぐ後ろの席で男の客が騒ぎ出す。
男「なぁ、ちょっとくらいいいだろぉ?なぁって。」
振り返ると、酔っ払った中年らしい男が店員に絡んでいた。
(うわぁ…いるんだ、こういうの…昼なのに。)
店員「ちょっ、やめてください!ここはそういう店じゃ…!」
周りもざわつき始めている。
レオと向かい合って座っている為、レオは自分の目の前でこの有り様を見ていることになる。
男「んなわけねぇだろぉ?そんな派手な格好してさぁ…」
レオが不安な顔になっている。
(せっかくの楽しい時間をこんなのに潰されるのもたまらんな。)
立ち上がり、店員の手を引っ張る男の手を掴む。
クロノ「すいません。」
男「あ?」
クロノ「黙ってもらってていいすか?」
男「んだてめぇ?」
クロノ「ここそういうお店じゃないらしいんですよ。」
男「うっせぇなぁ、邪魔すんじゃねぇよ!」
店員の手を乱暴に離し、男も立ち上がる。
クロノの手も振りほどき、胸ぐらを掴みかかる。
男「あ?クソガキが。調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
クロノ「変態クソジジィが調子乗ってるんだし、多少はいいっしょ?」
さすがに周りの視線が痛くなってきた。
男が右手を振り上げる。
クロノ「あー、店内で喧嘩はマズイですよ?さすがにそれは」
男「喧嘩売ってきたのはそっちだろがぁ‼︎」
男の拳が頬に直撃、した瞬間カウンターの魔法を発動する。
この展開にする為にわざと煽っていた。
殴られた瞬間に生じたエネルギーを魔力に変換し、右手に魔力を流す。
その魔力に電撃の属性を付与し、胸ぐらを掴んでいる腕に触れ、魔力を流す。
男「あがががががががががががが‼︎」
身体中を電流が走り、痙攣して気絶。
そのままもたれかかってきた。
クロノ「さすがに強かったかな?」
男を担いで店の外に出て、人通りの少なそうなところに投げ捨てる。
●
もう一度店に戻ってくると、いつも通りの雰囲気に戻っていた。
クロノ「ただいま。」
レオ「大丈夫だったの?」
クロノ「余裕余裕。魔力の扱いにも結構慣れてきたし。」
周りはあんな出来事があったにも関わらず、何事も無かったような雰囲気だが、少し無理をしているような見える、気がする。
クロノ「あれの後で普通な空気に戻れてんのな。」
レオ「お兄ちゃんが出てってすぐ後に店主さんっぽい人が、通常の営業に戻りましょう、って言っててすぐに戻ったよ。」
クロノ「ほほう。そらまぁ、いつまでも気まずい空気にするのは店的にも客的にも嫌だろうな。」
レオ「あ、あの人だよ。」
バックヤードから女性が1人やってくる。
スーツのようにビシッと決まった格好のカッコいい系の女性。
というより着ている服が完全にスーツである。
クロノ達の席の前に来る。
クロノ「えーと?」
深く一礼をした後、背筋を伸ばし2人を見る。
店主「当店の店長のシレイノと申します。」
昨夜、とんでもないことを聞いてしまったクロノ。
(レオが…男の子…いや、男の娘か?)
可愛らしいフリフリの服をよく着ているから普通に女の子だと思っていた。
(握手した時に平気なのかって聞かれたのは…そういう意味だったのか?)
クロノ「このギルドには地雷しかないのか…」
嫌というわけではないが、面倒だとは思った。
アクア「どうしたんだい?」
アクアが隣に座ってくる。
フレアは用事があると言って出て行って、ガイアはそろそろ休暇が切れそうだと今のうちに買い物を済ませに、ハゼットはまだ任務から帰って来ず。
レオは買い物があると言って先ほど出て行った。
今ギルドにはクロノ、アクア、エリーしかいない。
クロノ「アクアさん…昼間から酒ですか。」
酒瓶を開けてコップに注ぐ。
アクア「別にいいじゃないか。お前も飲むか?」
クロノ「未成年です。遠慮します。」
アクア「ミセイネン?飲めないのかい?そらまた可哀想にねぇ…で、地雷って何さ?」
地雷というスラングはこちらの世界にはないものらしい。
クロノ「人の触れちゃいけない部分とか、関わると面倒なことになる部分ってな意味ですかね。」
アクア「なるほど、だから地雷か。確かに爆発物並に危険なことだね。」
地雷自体はこちらの世界にもあるらしい。
アクア「で、誰の何が地雷って?」
クロノ「今1番の悩みとしては、レオ…くんですかね。」
アクア「レオ?あいつがどうかしたのかい?」
エリー「クロノさん。」
エリーが2階から降りてくる。
エリー「あら、アクアさんも。」
アクア「おはよーさん。」
クロノ「おはようございます。」
エリー「おはようございます。」
アクア「どっか行くのかい?」
背中に大きな鎌を背負っている。
草を刈る鎌ではなく、死神が持っていそうな、魂を刈り取る類の鎌だ。
エリー「えぇ。ちょっと、マキノさんに用事があって。」
アクア「ほーん。」
エリー「それでその前に、クロノさん。」
クロノ「はい?」
マキノの前にクロノに用事がある様子。
クロノ「レオに聞いてみたんですけど…クロノさんは自分を女の子だと思ったままだと思っているそうです。」
クロノ「あぁ、マジか…」
泣き声で呻く。
(ややこしいことになってきた…)
エリー「打ち明ける勇気も出ないと。」
アクア「あぁ、なるほど。地雷か。うん、なるほどね。」
クロノ「アクアさんは知ってたんですか?」
アクア「まぁね。ってかギルドの連中はあんた以外みんな知ってるよ。」
クロノ「マジですか…」
アクア「あたしらはレオから言ってきてくれたんだがね。こんなんだけど仲良くしてくださいってさ。ウチの連中で気にする奴ァいないがな。」
クロノ「レオから言ってきた?」
アクア「言われてないのかい?」
クロノ「はい。」
アクア「…なんで?」
クロノ「…さぁ?」
エリー「とりあえず、このことは聞かなかったことにしてくださいね。レオに怒られちゃいますから。」
クロノ「はい。」
エリー「では、行ってきます。」
扉を開けて出て行った。
●
アクア「レオが、ねぇ…ふーん。ま、あたしの時も入ってから教えてくれるのにちょっと時間はかかったけど。3日くらい?ふーん。」
酒を飲みながら何度か頷く。
クロノ「アクアさん?」
アクア「なぁ、レオが男なのは嫌なのかい?」
クロノ「僕ですか?」
アクア「ここにゃああんたしかいないだろ。」
クロノ「…別に嫌ではないです。僕のいた世界にも結構いましたし。性同一障害って言葉もあるくらいだし。」
アクア「せいどう…ん?まぁそのナントカってのはなんなんだい?」
クロノ「身体としては男、或いは女として産まれたけど、精神的にはその逆、身体は男で心は女って感じですね。」
アクア「うん?」
クロノ「例えば、アクアさんは身体も心も女性ですよね。」
アクア「まぁね。」
クロノ「今の心のまま、身体が男のそれと考えてみてください。」
アクア「おう…おう…」
クロノ「自分は女なのに、周りからは男だと認識されたり…」
アクア「あぁ…」
クロノ「僕はそういうことになったことないし、そういう知り合いもいないからよく分かんないですけど。…私は女なのになんでこんな…もしくは僕は男なのになんで…みたいな。」
アクア「想像するだけでもなかなかキツイね…」
クロノ「精神的なものですから、こっちの世界にもいくらかいるとは思うんですけどね。」
アクア「じゃあレオもその1人なのかい?」
クロノ「どうでしょうね…単に女装が趣味ならともかく、本当に心が女の子として生まれてきたのなら…」
突然、ドアがバンッ!と開く。
クロノ「うおっ!いらっしゃ…レオ?」
噂をすればレオが入ってきた。
レオ「お兄ちゃん!」
レオが駆け寄ってくる。
クロノ「どうしたんだ?」
キラキラしたような目で見てくる。
レオ「ついて来て欲しいところがあるの!」
外食好きな子供がファミレスに行きたいみたいなテンションの高さ。
手を胸の前で握りしめてピョンピョンする姿はまさしく女の子そのもの。
レオ「中央の方にね、すっごい可愛いスイーツのお店見つけたんだ!」
クロノ「スイーツ?」
レオ「うん!こないだオープンしたばっかりの新しいお店!可愛い店員さんが接客してくれるんだって!」
(それキャバクラかメイド喫茶かじゃねーの?)
クロノ「俺は別に良いけど…」
(レオのことを知る良い機会になるかもしれない。)
アクアの方を見ると、
アクア「あぁ、あたしはそういう店にはあんま興味わかないから2人で行ってきなよ。ここの留守番も必要だしね。」
と言って次の瓶を開けていた。
レオ「そっかぁ〜。じゃあお兄ちゃん行こ!」
手を引っ張られる。
●
街の中央部。
昼間から酔いつぶれたおっさんがいたりと、ギルドの周りより若干荒れ気味だが、他はマトモな感じではある。
クロノ「どこにあるの?」
レオ「うん。あの通りを曲がってすぐのところだよ。」
この辺りの人口がどれほどかは知らないが、どことなく人通りが多くなってきた気がする。
クロノ「新しい店なら客はまぁ、多いだろうな。」
レオ「さっき見た時はそうでもなかったかな…あ、ここ!」
見たところは 普通にカフェのような外観。
クロノ「並んでないな。」
オープンしたばかりな割には客が少ない。
看板があるが、なんて書いてあるか分からない。
(この世界の字か…目にも魔法かけてもらえば良かったかな…)
クロノ「なんて店なの?」
レオ「『アリアージュ』だって。早く入ろ?」
●
店員「「いらっしゃいませ〜」」
(わ〜お。)
メイド服を着た店員達が出迎えてくれる。
内装はカフェのように落ち着いた感じでもなく、メイド喫茶のようなピンクめな感じでもなく、ファミレスに近い感じである。
(レベル高いな〜、というか、このメイド服完全にウチの世界の奴じゃねえの?)
レオ「すっごーい‼︎」
レオは喜んでいる様子。
レオ「こんなお店初めて‼︎」
(そりゃあファンタジー世界にメイド喫茶があってたまるか。)
店員「お席、案内しますね〜。」
店員の誘導に従う。
レオの目を見てみると、完全にアイドルグループを前にしたファンのようにキラキラした目になっている。
●
店員「当店のご利用は初めてですか?」
レオ「は、はい!」
(緊張してるな〜。)
クロノにとっては、近くに新しくできたというファミレスに来た感覚である。
(でもレオはファミレス自体初めてか。)
店員「他のお店と同じように、注文が決まりましたら店員をお呼びください。こちらがメニュー表です。」
クロノ「あ、どうも。」
メニュー表を渡されるが、やはり字が読めない。
レオ「わー‼︎」
(どうしようかな…)
字が読めないと怪しい目で見られかねない。
クロノ「なんかオススメとかそういうのないですかね。」
字が読めないのがばれずに、且つ美味しい食べ物にありつける方法である。
店員「当店オリジナルのチーズケーキなどいかがでしょうか。」
クロノ「へぇ、そんなのが。んじゃあ俺はそれにしようかな。」
店員「かしこまりました。」
クロノ「ちなみにお値段は?」
店員「ケーキ1つがホールケーキの8分の1サイズとなっておりまして8バレのご提供となっております。」
バレ、というのはこの世界の通貨である。
8バレはだいたい400円。
(少し高めか?いや、ケーキとかロクに食ったことないから相場は知らんが。)
クロノ「レオは?」
レオ「うーん…他にオススメとかありませんか?」
店員「果物を使ったケーキもオススメですね。ブルーベリーやイチゴ、オレンジの3つから選べます。」
レオ「じゃあブルーベリーのやつで!」
店員「かしこまりました。ご注文は以上でしょうか?」
クロノ「そんなもんかな。」
店員「ありがとうございます。少々お待ちくださいませ。」
店員が店の奥へ消えていく。
レオ「可愛かったなぁ…」
クロノ「…そうだな。」
店の奥から視線があることに気づく。
(俺らを見てる…のか?)
こちらに気づかれているのを悟られぬように気づいていないフリをする。
(じゃなければいいんだが。)
●
注文してから数分、すぐ後ろの席で男の客が騒ぎ出す。
男「なぁ、ちょっとくらいいいだろぉ?なぁって。」
振り返ると、酔っ払った中年らしい男が店員に絡んでいた。
(うわぁ…いるんだ、こういうの…昼なのに。)
店員「ちょっ、やめてください!ここはそういう店じゃ…!」
周りもざわつき始めている。
レオと向かい合って座っている為、レオは自分の目の前でこの有り様を見ていることになる。
男「んなわけねぇだろぉ?そんな派手な格好してさぁ…」
レオが不安な顔になっている。
(せっかくの楽しい時間をこんなのに潰されるのもたまらんな。)
立ち上がり、店員の手を引っ張る男の手を掴む。
クロノ「すいません。」
男「あ?」
クロノ「黙ってもらってていいすか?」
男「んだてめぇ?」
クロノ「ここそういうお店じゃないらしいんですよ。」
男「うっせぇなぁ、邪魔すんじゃねぇよ!」
店員の手を乱暴に離し、男も立ち上がる。
クロノの手も振りほどき、胸ぐらを掴みかかる。
男「あ?クソガキが。調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
クロノ「変態クソジジィが調子乗ってるんだし、多少はいいっしょ?」
さすがに周りの視線が痛くなってきた。
男が右手を振り上げる。
クロノ「あー、店内で喧嘩はマズイですよ?さすがにそれは」
男「喧嘩売ってきたのはそっちだろがぁ‼︎」
男の拳が頬に直撃、した瞬間カウンターの魔法を発動する。
この展開にする為にわざと煽っていた。
殴られた瞬間に生じたエネルギーを魔力に変換し、右手に魔力を流す。
その魔力に電撃の属性を付与し、胸ぐらを掴んでいる腕に触れ、魔力を流す。
男「あがががががががががががが‼︎」
身体中を電流が走り、痙攣して気絶。
そのままもたれかかってきた。
クロノ「さすがに強かったかな?」
男を担いで店の外に出て、人通りの少なそうなところに投げ捨てる。
●
もう一度店に戻ってくると、いつも通りの雰囲気に戻っていた。
クロノ「ただいま。」
レオ「大丈夫だったの?」
クロノ「余裕余裕。魔力の扱いにも結構慣れてきたし。」
周りはあんな出来事があったにも関わらず、何事も無かったような雰囲気だが、少し無理をしているような見える、気がする。
クロノ「あれの後で普通な空気に戻れてんのな。」
レオ「お兄ちゃんが出てってすぐ後に店主さんっぽい人が、通常の営業に戻りましょう、って言っててすぐに戻ったよ。」
クロノ「ほほう。そらまぁ、いつまでも気まずい空気にするのは店的にも客的にも嫌だろうな。」
レオ「あ、あの人だよ。」
バックヤードから女性が1人やってくる。
スーツのようにビシッと決まった格好のカッコいい系の女性。
というより着ている服が完全にスーツである。
クロノ達の席の前に来る。
クロノ「えーと?」
深く一礼をした後、背筋を伸ばし2人を見る。
店主「当店の店長のシレイノと申します。」
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