ヒーローライクヒール

手頃羊

その5・デカい敵にはデカい一撃を

ガイアに頼まれて巨大ゴブリンの足止めをしろと言われた。

(どうしろってんだよ…)

エリー「クロノさん!このゴブリン、大きいだけですよ!」
大きな鎌を担いで突貫していく。

クロノ「大きいだけってねぇ…」

(ってかあの人、あんな武器で戦えんのかよ…)
鎌は形が形なだけに使いづらい武器ではあるが、そこはやはり使い手との相性というのがあるらしい。

(まぁ、やってみますか。)
剣を2本構え、ゴブリンに向かって走る。
魔力を込め、ゴブリンのくるぶしの辺りを斬りつける。
が、全く刃が通らなない。
全く痛そうにせず、手を伸ばして掴もうとしてくる。
手を避け、その手を斬りつけてみるが、こちらも全く反応がない。

(どうする?なら上の方狙うか?)
ゴブリンの蹴りを避け、魔力を足に込めてジャンプする。
背中にしがみつき、腕に魔力を込めて自分の体をさらに上へと持ち上げ首元まで登る。

クロノ「これならどうだ‼︎」
首を斬る。
しかし、これも刃が通らない。

(じゃあ顔ならどうだ⁉︎顔なら誰だって弱点だろ‼︎)
が、上体を揺らして暴れるせいで顔の方まで移動できない。

クロノ「うおおおおおおおおお‼︎」
振り落とされないようにしがみつくので精一杯。
隙だらけになってしまった所をゴブリンが掴む。

クロノ「やっべ‼︎」

エリー「クロノさん‼︎」
腕を高く持ち上げる。

(あ、これそのまま落とされるやつだ‼︎)
このままではトマトのように潰れてしまう。

(何か手はないか何か手はないか⁉︎俺にできることっていったら⁉︎)
ゴブリンが手を振り下ろす。

(俺にできること…そうだ‼︎)
全身を魔力で包む。
そのすぐ後、ゴブリンの手から身体が放たれ、地面に向かって飛んでいく。
地面に激突する瞬間、

クロノ「うおおおおお‼︎」
左手を地面に触れさせる。
触れた瞬間にエネルギーを少しでも吸収し、左腕に溜め込む。
左手だけでは勢いを抑えきれず、仕方なく両膝をついて3点で着地する。
吸収した魔力は体の中を通さず、左手で吸収して左手から地面に向けて放出する。

クロノ「ううううう‼︎」
魔力を吸収しても、そのダメージは消しきれない。
しかし、『痛み』が残るだけで『外傷』はない。
あくまで、地面に思い切り叩きつけられた時と同じ痛みを感じるだけで、体に傷は残らない。
そのため、潰されもしない。

クロノ「うううああああ‼︎」
しかし、人間が死ぬようなダメージをそのまま味わうというのは、死ぬより辛いことでもある。

クロノ「ううううくそっ……がぁっ‼︎」
なんとか体を起き上がらせ、エリーの所まで走る。
走り始めた瞬間に背中に風のようなものを感じたので振り返ると、ゴブリンが蹴りを繰り出した後のような態勢になっていた。

(あっぶね‼︎いや、俺の体の方があぶねぇ‼︎)

エリー「クロノさん‼︎大丈夫ですか⁉︎」

クロノ「はい‼︎ギリギリ大丈夫です‼︎」
アクションゲームで例えるなら、ライフゲージが真っ赤になっているところだ。
しかし、上級者は体力が低くても動じない。

(まだいける…体が痛いだけだし、いずれおさまる…)

エリー「無茶をしては…」

クロノ「まだ無茶じゃないから大丈夫ですよ。それより、どうやって攻撃を通すか…」
足元を斬りつけてもダメ。
首もダメ。
顔は斬る前にそこまで登る隙がない。

(なら考えを変えてみようか…)
斬るのではなく、殴る。

(巨大な化け物と戦うときは、こっちも巨大化するか…特撮やゲームでもよくあるが…いや、そんな魔法は知らん。後は…)
ゲームの定番がまだ残っている。

クロノ「強敵には、威力の高い武器で火力で押し切る…これだ!」

エリー「火力?でもあんな巨大な敵に勝てる力なんか…剣だって通らないし…」

クロノ「時間稼ぎなんです。仕上げはガイアさんがやってくれる。斬ってダメなら、殴って動けなくさせる。例えば…」

エリー「例えば…?」
一撃で相手に超絶火力を出せる攻撃。

クロノ「………パイルバンカー。」

エリー「パイルバンカー?」

クロノ「パイルバンカーだ!」
簡単に言うと、工事現場でたまに見かける、鉄の棒を高速で振動させて地面を掘るドリル。
あれを連続で振動させるのではなく、1発に全てを集中させて大きな一撃を与える強力な武器だ。

クロノ「剣と剣で…いや、銃同士を合体させて…」
剣二本を銃に変える。
銃口と肩に当てる部分を合わせて、銃口が接している側の銃の右側に付いているレバーを引っ張る。
銃が、もう1つの銃を包み、大きな銃となる。

クロノ「即席だが…パイルバンカーの完成‼︎」

エリー「それでどうするんです?」

クロノ「あいつの足にぶち当てるんです!」

エリー「足に?当たるんですか?」

クロノ「足にたどり着きさえすりゃあいけますよ。」

エリー「たどり着くって、接近するつもりですか⁉︎無茶ですよ‼︎」

クロノ「無茶しなきゃ本気で戦えませんの‼︎」
魔力を込めてゴブリンに向かって走る。
ゴブリンが蹴りを放つが、何もなしにただ蹴ってくるだけの攻撃は避けられる。
放たれた右足を躱し、体を支えている左足に走り寄る。

クロノ「今度はこっちの番だオラァ‼︎」
左足のくるぶしに銃口を付ける。

クロノ「パァァァァァイル、バンカアアアアアア‼︎」
ゴキン!と何かが折れるような音がしてゴブリンの足から大量の血が噴き出す。

クロノ「うおっ‼︎おおっ‼︎」

(まさか、くるぶしの骨割っちゃった…?)
さすがのゴブリンも骨を壊されたら立ってはおられず、片膝をつく。

ガイア「でかした‼︎準備はできたぞ‼︎」
ゴブリンから離れ、ガイアの方を見る。
両腕を横に出すと、ガイアの頭上に2つの魔法陣が出現する。
星の各頂点を線で結び、更に円を描いて星を囲んだような魔法陣。
その中心に、剣が重なってアスタリスクマークのようになっている印がある。

ガイア「鉄鬼剛拳てっきごうけん…」
右手を前に突き出す。
ガイアの右側の魔法陣から鎧に包まれた巨大な右腕が出てくる。
右腕がゴブリンの首を掴み、持ち上げる。
左手を前に突き出す。
左側の魔法陣から、鎧に包まれた巨大な左腕が出てくる。
拳を握り、大きく振りかぶる。

ガイア「剛断ごうだん‼︎」
左腕が放たれ、ゴブリンの頬にジャストミート、そのまま殴り抜く。
首が180°回って動かなくなってしまった。

クロノ「うげぇ…」

ゴブリンの体が小さくなっていき、最終的に一般的な、人間と同じくらいの体格になった。

エリー「これは…」

ガイア「どうやら新種の魔獣ではなく、単に体が大きくなったということだな。」

クロノ「そんな突然変異的なことあります?」

ガイア「突然変異自体は起きるだろうが、こんな変異はありえない。おそらく、誰かが何かをしたんだ。その辺のザコだって。」
辺りを見回す。
大量のゴブリンの死体が転がっており、ゴブリン側に生き残りはいない模様。

ガイア「さっきお前らが戦ってる時にリューンから聞いた。ゾンビだってな。そんなものがいきなり現れたのも気になる。」

クロノ「……」

ガイア「うちの奴らや、フレア達が知らなかったのに、クロノが知っている…」

クロノ「あっ…」

(それってつまり、ゾンビは俺の世界から来たってこと?)

ガイア「何か知っているか?」
ガイアの目が鋭く光る。
敵意を向けられているわけではないが、怪しまれているのは分かる。

クロノ「いえ、僕も何が何だか…」

(いや、ありえないって。俺の世界ですらファンタジーの生き物だぞ?)

ガイア「まぁいい。誰かが森でゴブリンに何かし、巨大化して、そこをフレア達が気づき、アクアが伝えに来た、といった感じだろうな。」

クロノ「それはまた…」
陰謀論も、そうではないという証拠が無いと信じてしまう。

ガイア「何はともあれ、こんな緊急事態で被害が0というのは素晴らしい成果だ。クロノのおかげだな。」

クロノ「え?」

ガイア「当たり前だ。ゾンビ然り、巨大ゴブリンの足止め然り。お前がいなければ、街まで被害が出ていたかもしれん。」

クロノ「ははは…そうすか。」

ガイア「まだ剣を持って数日だったか?よくやったなんてものじゃないな。お前はこの部隊を、いや、街を救ったんだ。」

クロノ「そんな大げさな…おっと」
目眩がして、少し倒れそうになる。

エリー「クロノさん!」

クロノ「大丈夫です…はい。」

ガイア「おいおい…あぁ、そういえばお前はまだ新米なのに重い役目を任せてしまったんだったな。」

クロノ「いえ、みんなを守れたんなら…」

ガイア「……うん。今日はゆっくり休め。」

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