ヒーローライクヒール

手頃羊

その4・How to

副隊長「…よって、支援攻撃隊は全員隊長の支援。残りで弱ったゴブリンを制圧する!」
副隊長が遊撃隊に指示をしている。

クロノ「すいません!」

副隊長「なんだ?」
副隊長の作戦指示に割り込む。

クロノ「あのゴブリンに近接戦闘のみで戦うつもりですか⁉︎」

副隊長「当然だ。あんな弱った敵にわざわざ力を割くことはない。」

クロノ「違います!あれ弱ってるわけじゃないです!」

副隊長「なに?」

兵士「何言ってんだ。あんなにフラフラじゃねーか!」

副隊長「まぁ待て。話を聞こうじゃないか。」

(良かった、話が通じる人だ!)
の割には結構大きな態度ではあった。

副隊長「お前は見ない顔だが、ギルドの新人か?」

クロノ「はい。カミヅキ・クロノと言います。」

副隊長「クロノか。私は第1遊撃隊副隊長のリューン・ウロル・フェンリルだ。それで、新人のお前が何故あれが弱ってないと言い切れる?」

クロノ「あれは弱ってるんじゃなくて、むしろ危険な状態になっています。」

リューン「その根拠は?」

クロノ「フレアが言ってたんですが、あのゴブリンは噛み付いてくるそうです。普通のゴブリンはそんなことしないのに。」

兵士「そりゃゴブリンだって、噛みつきたくなる時くらいあるさ。」

クロノ「それと、ゴブリンなのに統率が取れてないと。」

リューン「ふむ、それは私も思っていたことではあるが…それが?」

クロノ「僕が知ってる、とある現象…というか、病気と同じ状態なんです。」

リューン「ほう?それはどんな現象だ?」
話を聞いてくれる風ではあるが、いまいち信用されていない。

クロノ「ゾンビと言って、ゾンビは人を食べようと襲ってきます。あいつに噛まれた者は感染します。」

リューン「感染するとどうなる?」

クロノ「あのゴブリンと同じように、ゾンビになります。」
場がざわつく。

兵士「あれと…同じになる?」

兵士「おい、マジかよ…」

兵士「まさかあんだけ集団でフラフラしてるのって…」
ようやく事態の深刻さに気づいた。

兵士「証拠はあんのかよ!」

クロノ「僕の勘違いだったらそれでいいんですが、もしあれが本当にゾンビなら…」

リューン「近接戦闘は危険、と。噛まれなければ良いのか?」

クロノ「あいつの体液が体の中に入らなければ。返り血が口の中に入ってしまってもなってしまうかも。その辺は僕も分からないんですが、少なくとも、噛まれたら絶対に感染します。鎧の上からなら、鎧の硬さにもよりますけど、噛みつかれても歯が通らないかもしれません。ただ、鎧や兜を外そうという知能くらいはあるんじゃないかと。ゾンビは力も強いですから、押し倒されたらまず助かりません。」

リューン「なるほどな…」
ガイアとゾンビとを交互に見ながら考える。

(頼む!1番良いのはあれがゾンビじゃなくて弱ってるだけってオチだけど、もし本当にゾンビなら俺の言うこと聞いてくれ!)

リューン「自分が知っている状況に似ているだけという理由で作戦を変える、どれだけ馬鹿げた事か分かっているのか?」

クロノ「最悪の事態だけは避けられると断言します!」

リューン「…分かった。そうであるなら、作戦を変えるべきだな。」

(信じてくれたよ…)
即答したことで信用を得られた様子。

クロノ「2人1組で行動すれば、押し倒されてしまってももう1人が助けられると思います。」

リューン「ふむ。だが、あの数を相手に2人1組となると、時間がかかりそうだな。」
いつの間にか、30体以上はいる。

クロノ「うちのレオに、とっておきの広範囲攻撃の魔法を使ってもらいます。それまで数減らしと時間稼ぎをしてください。合図を出すんで、そしたら兵士を撤退させてください。」

リューン「なるほど分かった。それなら早く済むだろう。全員聞け!」
ザワザワしていた部隊が静かになる。

リューン「支援攻撃隊も含め、全員でゾンビの討伐を行う。敵を相手にする際は、一体ずつ、必ず2人1組で行動し、お互いを助け合いながら戦え。隊長を待たせない為に素早く、且つ慎重に戦うのだ!」
再び兵士達がざわつき始める。

兵士「おいマジかよ…」

兵士「確かにあれと同じになるのは嫌だけど…」

リューン「返事はどうした‼︎」

兵士「「了解‼︎」」

リューン「また、ギルドの魔導士に広範囲殲滅魔法を放ってもらう。我々はゾンビの数を減らすのに兼ねて、魔法の発動までの時間稼ぎをする。クロノから合図が出たら、全員撤退するのだ!」

兵士「「了解‼︎」」

リューン「では向かえ‼︎アリアンテ国軍の名に恥じぬ戦いを‼︎」
兵士達がゾンビの群れへと突撃する。

リューン「では私も向かうとしよう。」

クロノ「僕も行きます!」



ゾンビと人が戦う姿は地獄絵図である。
幸い、人間側に怪我をした者はいない。

(あんだけ怖いこと聞いたら、やっぱ真面目に戦うんだろうな。)

クロノ「レオの準備が早く整うと良いんだけど。」
レオは特大攻撃を放つ準備の為に、魔力を練っている。
それに少し時間がかかっている。

兵士A「ぐあっ‼︎こいつ…‼︎」

兵士B「大丈夫か‼︎アバン‼︎」

兵士A「大丈夫だ!噛まれたが、鎧は貫通してない!」
苦労しながらも懸命に戦っている。

(そういえば…今更な疑問が湧いてきたな…)
戦闘している兵士達の名前を聞きながら、不思議に感じていたことがあった。

(ここの言語って聞いたこと無いような、よく分からん言葉なはずなのに…名前とか技の名前とかは英語なのな。)
『ラフ』のメンツにも、アクアやフレアのように完全に英語であるような仲間もいる。

(異世界であるとはいえ、俺の世界と多少は関係があるのかな…?だとしたら、向こうの世界に戻るのも、少し希望アリ…だな。)

リューン「おい新人!ぼうっとしてないで戦え!」
レイピアを持って戦う副隊長に怒られる。

クロノ「あ、すいません。」

リューン「数が数だ。油断すれば囲まれるぞ!」

クロノ「はいはい!」

兵士D「チャーリー、危ない!」
1人の兵士が叫ぶ。

兵士C「え?うわ⁉︎」
兵士の1人がゾンビに押し倒されてしまった。
殴るように兜を外し、顔面が露わになる。

兵士C「ひぃっ‼︎やめてくれぇ‼︎」

リューン「はぁっ‼︎」
副隊長がゾンビに向かってレイピアを投げ、頭に刺さる。
そのままゾンビに向かって走り、レイピアごとゾンビの頭を蹴って兵士から引き剥がす。
その衝撃でレイピアは折れてしまったが、ゾンビを倒すことはできた。

リューン「思ったより脆いが、所詮は使い捨てだ。予備はある。大丈夫か?」

兵士C「申し訳ありません!」

リューン「戦闘中だ!気を引き締めろ!」
予備のレイピアを抜いて、次のゾンビへと走っていく。

(あの人ちゃんと周り見ながら戦ってんだな…)
もしガイアがいなければ、この男が間違いなく隊長のポジションにいただろう。

レオ「クロノさーーん!」
レオに声をかけられる。

クロノ「はーーい?どこ?」
辺りを見回すが、見当たらない。

レオ「うえうえー!」
上を見上げると、レオがステッキの下のギリギリを持って高く掲げて宙に浮かんでいる。

レオ「準備できたよー!」

クロノ「分かった!全員退避ー‼︎」
兵士達に合図を出す。
ゾンビを振り払いながらバタバタと下がっていく。

リューン「全員撤退したか⁉︎」

兵士「点呼完了!全員の退避を確認!」

クロノ「マジか‼︎統率やべぇな‼︎」
一瞬で完了した点呼に思わず驚く。

リューン「よし、こちらはいいぞ!」

クロノ「り、了解!レオ、やっちゃえ‼︎」

レオ「よーーーし‼︎」
ステッキの先から魔力が溢れ出す。

クロノ「うお、なんだこれ!」
ビシビシとオーラが伝わってくる気がする。

レオ「喰らえ!」
ゾンビの頭上に、星型の黄色い塊のようなものが現れる。

レオ「グラビティスタープレス‼︎」
レオが杖を振り下ろすと、大きな星の形をした魔力の塊が降ってくる。
ゾンビを押しつぶし、ギリギリ範囲から逃れたゾンビも引き寄せ、触れたそばから強烈な魔力に切り刻まれていく。

クロノ「すっげぇ……」
首を振り、目の前の出来事を信じまいとしながらも感嘆する。

やがて星が消え、ゾンビの死体だけが残る。
森の方からもゾンビが湧いてくる様子もない。

レオ「どう?」
スカートを押さえながら降りてくる。

クロノ「あぁ、最高だよ‼︎ありがとう‼︎」

レオ「どういたしまして‼︎お兄ちゃん‼︎」

クロノ「お兄ちゃん?」
唐突にお兄ちゃん呼びされる。

レオ「あっ⁉︎ち、違うの‼︎その…えっと…」
顔を真っ赤にしながら慌てて手を振る。

レオ「その…なんだかお兄ちゃんみたいで…嬉しくて…」
恥ずかしそうに俯いてしまった。

(一人っ子特有の…兄弟とか姉妹が欲しかった的なやつか…?)

クロノ「別に、呼びやすいように呼んでくれていいんだぞ?」

(特に困らないし。)

レオ「いいの?ホントに⁉︎」
目を輝かせる。

(なんかエフェクトが見えるようだ。)

クロノ「あぁ。お疲れ、レオ。」

レオ「うん‼︎お兄ちゃん‼︎」

リューン「クロノ。」
良い空気の所で邪魔が入ってしまう。

クロノ「はい?」

リューン「これはもう終わりと見て良いのか?」

クロノ「そう、ですね。ゾンビが湧いてきそうにもないし…1度殺してしまえば復活することもないだろうし…ゾンビの脅威はひとまず去った、って所ですかね。」

兵士「よしっ‼︎やったぞ‼︎」
兵士達が喜ぶ。

リューン「まだ喜ぶには早いぞ‼︎ガイア隊長の援護に向かう‼︎」

クロノ「いっけね、忘れてた!レオ、行こう!」

レオ「うん!」



ガイアは手に武器が現れてはそれを使い、手を離すと武器が消え、また現れては使い…といった戦いをしていた。

(ハゼットさんと同じような戦い方なのかな…)
エリーも鎌を持ってクルクルと回りながら攻撃をしていた。
しかし、素人目から見ても決定打が叩き出せていないことが分かる。

(何か手伝えることはないか?)

クロノ「ガイアさん!」

ガイア「なんだ!もうそっちは終わったのか‼︎」

クロノ「はい!何か手伝いますか⁉︎」

ガイア「なら1個頼みたいことがある。」
ガイアが撤退してクロノ達の所まで来る。

ガイア「しばらく奴の動きを止めていてくれ。その間、強力な魔法をぶっ放す準備をする。」

クロノ「え?」

ガイア「大丈夫だ。エリーもいる。遊撃隊の援護もある。無理そうだったら引けばいい。それじゃあ頼むぞ。」
そう言って離れて行ってしまった。

(無茶言いやがって…)
と思いつつも、仕方なく巨大ゴブリンと相対しに行く。

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