ヒーローライクヒール

手頃羊

その6・魔法使いにはなれるのか

クロノがこの世界に来て2日目。
クロノは重大なことを忘れていた。

クロノ「そうだ…俺、インフルなんだった…」
ギルドの二階の部屋を1つ借りて一晩過ごし、朝起きて熱を感じてようやく思い出した。

クロノ「やだなぁ…来て2日目で熱出ましたとか迷惑かけすぎだよなぁ、さすがに…」
かといって、インフルは隠し通せるものでもない。

コンコン、と扉がノックされる。

フレア「もしもーし、フレアだけどー。起きてるー?そろそろ起きたらー?」

(まずい…うつしたりはさすがにまずいぞ…!)
居候させてもらってる所の人にインフルをうつすというのはさすがに人としてやばいのではないか、と慌てる。

フレア「入るぞー。」
扉が少しだけ開き、顔を覗かせる。

フレア「なんだ起きてんじゃん。ってか顔赤っか!どうしたんだ?」

(やっぱり正直に言うべきか…)

クロノ「風邪…だね。」

フレア「風邪だァ?そんなもん治せよ。」

(治せって…)

フレア「何のために魔法があると思ってんだ?先降りてるぞ。」
扉を閉めて遠ざかっていく。

クロノ「魔法があれば治せるのか…俺はそんなもん使えないんだが…」

(しかし参ったぞ…インフルで降りるわけにはいかない…)
かといって、このままここにいるのも良くはない。

考えに考え抜いた結果、

(まぁ治せるって言ってるし、あの人達ならうつしちゃっても大丈夫でしょ。)
ということで一階に下りることにした。



一階に下りてさっそく全員に突っ込まれた。
マキノはいなかったため、マキノを除く全員である。

フレア「魔法使えないってわけじゃねぇだろ?」

クロノ「それは…」
問い詰められるものの、魔法が使えないと言いづらい。

ハゼット「仕方ないだろ。魔法が使えないどころか、そもそも魔力が無いんじゃあな。」
ハゼットがコップにお茶を入れて持ってきてくれた。

エリー「魔法が使えない、と言うと?」

ハゼット「そのままだよ。こいつは、この世界の人間じゃない。」

(あ、もう言うんだ。)
いつか言うとは言っていたが、こんなに早くなるとは思わなかった。

(この人たち、異世界って言って信じるのかな…)

アクア「へぇ、異世界ねぇ。」

エリー「異世界って、ハルカさんの時のような?」

ハゼット「そうだ。」

(あっ、みんな知ってた…)
一安心するクロノ。

レオ「じゃあ治せないの?」

ハゼット「無理だろうな。異世界には魔力が存在しない。当然魔法も使えないわけだし…」

(魔法が使えたら色々できるのかな…)
自分の手を見る。
熱を出しているからか、手がとても熱く感じる。
顔も熱いが、手も火を持ったように熱い。

フレア「にしても、初めから言ってくれりゃぁ良かったのに。」

ハゼット「タイミングを見計らってたのさ。」

フレア「別にいつでも…ってクロノ、お前、手…」
フレアがクロノの手を見て指差す。
全員がその方向を見る。

クロノ「え」
クロノの右手から炎が出ていた。

クロノ「うわあああ‼︎火が‼︎火が‼︎」

フレア「魔法使えんじゃん‼︎」

クロノ「知らない知らない‼︎ちょっと熱いんだけど‼︎」
右手の炎は勢いを増し、肘までを完全に覆い尽くす。

クロノ「どどどどどうすんのこれ⁉︎」

ハゼット「落ち着けクロノ。」

クロノ「落ち着くから方法‼︎どうすりゃいいか方法を‼︎」

ハゼット「落ち着いて、右手に炎が小さくなるようなイメージをしろ。」

(急に言われてできるか‼︎)
しかし、やらないわけにはいかない。

クロノ「落ち着いて…落ち着いて…小さく小さく…」
だんだんと炎が小さくなっていき、とうとう炎を消し去った。

クロノ「おお、意外と上手くいくもんだな…」

ハゼット「ふむ…」
顎に手を当て、考える仕草をする。

ハゼット「お前、魔法は使えなかったんだよな?」

クロノ「だと思ってたんですけど…少なくとも、ここに来るまでは。」

ハゼット「ということは、ここに来てから使えるようになった、ってことか。なるほど。」
何度かうなずくがクロノには何がなるほどなのか分からない。

クロノ「前にここに来たっていう人は魔法使えたんですか?」

ハゼット「いや、最後まで魔法は使えなかった。だから、お前も魔法は使えないかと思ったんだが…まぁ、原因は何となく推測している。」

クロノ「それは…」

ハゼット「お前が落ちた湖。まぁ規模的には池だが、この辺りの住人はあそこを魔力湖と呼んでいる。」

クロノ「魔力湖。」

ハゼット「あぁ。あそこの水には魔力が多分に含まれていてな。おそらく、それを飲んでしまったんだろう。」
思い出してみる。

クロノ「あぁ〜…飲みましたね、はい。」

ハゼット「ふむ…やはりそれが原因だろう。」

クロノ「あれを飲んだら魔法が使えるようになるんですか?」

ハゼット「さぁな。だが、お前がそうなったんならそうなんだろう。」

クロノ「分からないんすか?」

ハゼット「まぁな。なぜなら、あれを飲んで確かに効果が出たやつは、おそらくお前だけだ。」

クロノ「飲んで効果が?ってことは、以前に飲んだ人が?」

ハゼット「実はあの水は恐ろしいものでな。飲んだら死ぬ。少量でもな。毒のようなものなんだ。」
熱で火照っている顔が青ざめる。

クロノ「俺…実は死んでないよね…?」

ハゼット「生きてるさ。少量でも死ぬはずなのに、何故生きているか。おそらく、お前にはまだ容量があったんだな。」

クロノ「容量?」

ハゼット「あぁ。俺たち魔法が使える者は、魔力を持っている。既に魔力が大量にあるのに、魔力を含んだ水を飲むと、魔力が多くなりすぎて体を破壊していくということかもしれん。逆に、お前には魔力は無かった。だから、ある程度まで飲むと今まで無かった魔力が自分のものになるのだろう。」

クロノ「はぁ…じゃあ、魔法を使うには定期的に摂取する必要があるとか…?」

ハゼット「定期的?」

クロノ「いや、魔法使ったらその魔力を使うわけだから、たくさん魔法使ったら魔力を使い切ることになるわけですよね。」

ハゼット「使いたいなら考えてもいいが、やめとけ。もしわざわざ摂取する必要なくいくらでも魔法が使えるなら、俺たちと同じになる。飲んでしまったら…逆に言えば、お前の魔力は既に俺たちと同レベルという可能性もあるな。」

(俺…いよいよ戻れないところまで来ちゃってんのかな…)
元の世界が遠のいていくのを感じた。

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