ヒーローライクヒール
その3・ようこそ私
ハゼットが指を指した方角。
そこには、子供くらいの身長の人型の生物がいた。
人間と言わないのは、間違いなく人間ではないからだ。
玄野「あれって…」
ハゼット「ゴブリンだ。正確にはゴブリンの中でもミニゴブリンというのだが、見るのは初めてだろう?」
玄野「当たり前っすよ…」
全身緑色で、額には鋭い角が生えている。
ハゼット「あいつは人間を見るとすぐに襲ってきてな。中々すばしっこくて、力も強い。戦う手段を持たない者にとって脅威だ。」
玄野「それ俺らもヤバイんじゃ⁉︎」
戦う手段がないどころか、戦い方を知らない一般人である。
ハゼット「そんなことはない。」
言い終わるか終わらないかのうちにミニゴブリンが走ってくる。
玄野「ちょちょちょ来てる来てる‼︎」
世界陸上の金メダル選手が試合を放棄しそうなくらいの速さで迫り、玄野の顔めがけて額の角を突き出す。
玄野「ひっ⁉︎」
当たるか当たらないかのところで角が止まる。
ハゼット「こんな風に分かりやすい動きしかしないから対処はしやすい。」
ハゼットがゴブリンの体を掴んでいた。
ハゼット「まぁ、弱い部類さ。」
掴んだその手でそのままゴブリンを投げ捨てる。
地面を何回かバウンドして吹っ飛ばされたゴブリンはそそくさと逃げていった。
ハゼット「勝てないと思った相手には近づかないんだが、明日には忘れてる頭の悪さも特徴だ。大丈夫だったか?」
玄野「もっと早く止めてくれませんか…?」
ハゼット「良い機会さ。」
玄野「はぁ…何が?」
ハゼット「そろそろ察してくれるとは思うんだが…まぁ、この森を抜けたら信じざるを得ないだろう。」
思わせぶりな発言をするが、玄野には一体何を言おうとしているのか見当がつかない。
(いや、つかないというか…そんなわけないだろうっていうか…)
ハゼットに従って歩いていく。
●
ハゼット「そろそろ出るぞ。」
だんだん外の明かりが見えてきた。
玄野「うわぁ…」
森を抜けたそこには大平原が広がっていた。
大きな街が1つあるのを除けば、他には何もない。
強いて言うなら、見たことないような謎の動物や馬車らしきものが走っているのは見える。
玄野「なんだここ…」
ハゼット「やはりな。」
(日本にこんなとこあったかよ…いや、あるわけねぇよな…こんなだだっ広い土地…)
日本にこれだけの広さがあるといえば、北海道ならギリギリ信じられるかも知れないが、それ以前に先ほど出会ったゴブリンがそもそも信じられない。
(それ以前に、地面の中に落ちたら森の中ってのがおかしいっていうか、そもそも地面の中に落ちるってのがありえないんだよな…)
玄野「ここってなんて国すか…?」
ハゼット「ここは国ではない。あの街が国さ。この平原や森はどこの国のものではない。」
(地球上にどこの国のものでもない土地ってあるのか?それくらいあるかもしんないけど、えぇ…)
玄野「なんてゆーか…まるで…」
ハゼット「異世界に来てしまったようだ、か?」
玄野「え?」
言おうとしたセリフを先読みで言われる。
ハゼット「お前がここに来る前。今までの人生で、さっきのゴブリンやあそこにいるあれらを見たことがあるか?」
指を指した方向には、ぶよぶよとしたゼリー状の何かが小川から出てきているのがいる。
玄野「何なんすかあれ…」
ハゼット「スライムと呼ばれる魔獣だ。」
玄野「スライムってゲームとかで見るような…アレ?」
ハゼット「あいつも同じことを言っていた。ゲームってのが何かは知らんが。」
玄野「あいつ?」
自分の他にも誰かが来たかのような口ぶり。
ハゼット「お前と同じところから来た奴だ。何が言いたいか分かるか?」
玄野「いやそんな回りくどいこと言わずに教えてくださいよ…」
仕方ないな、という風にため息をつかれる。
ハゼット「ここは、お前から見て異世界というやつだ。」
玄野「は…?」
異世界と言われて唖然とする。
ハゼット「行くぞ。あの街に俺の家がある。」
気にしないふうに先に1人で歩いていくが、玄野はまだ混乱中である。
玄野「いやいやいやちょっと待って。何?これってドッキリ?」
ハゼット「なんだドッキリって。怪しむのは分かるが、本当のことだぞ。」
少し歩いて振り返る。
ハゼット「それとも、もっと分かりやすいのを見たいか?」
右手を開いて玄野の方へ向ける。
玄野「え?何?」
ハゼット「危ないから動くなよ。」
するとハゼットの右手の前に水のようなものが浮かび始める。
水はどんどん膨らみ、ハンドボールほどの大きさになると、今度は棒に形を変え、氷のようになる。
玄野「…………」
さらに唖然とする。
(魔法か何かかよ…)
何か言おうとすると、棒がハゼットの右手から発射され、左の耳を掠めて後ろの方へ飛ぶ。
声「ギギャァァァ‼︎」
玄野「うぇっ⁉︎」
後ろで叫び声が聞こえ振り向くと、さっきと同じミニゴブリンが頭を押さえて転げ回っていた。
玄野「さっきの⁉︎」
ハゼット「俺たちをつけて背後から狙おうとしていたようだな。俺が今こうして振り返らなければ全く気づかなかった。お前、中々運が良いな。」
肩をポンと叩かれる。
ハゼット「これで信じざるを得ないだろう?お前のいた世界では魔法なんてものは無かったらしいじゃないか。ここはお前のいた世界とは違う、別の世界だ。」
クロノ「別の世界、と言うと…?」
それでもやはり信じられない。
ハゼット「そのままの意味だ。お前のいた世界に魔法も魔獣も無かったらしいが、ここにはどちらもある。さぁ、そろそろ行こうか。俺のギルドへ案内しよう。」
後ろを振り返ると、先ほど転げ回っていたゴブリンが森の方へと入っていくのが見えた。
(もしかして、とんでもないことに巻き込まれてるんじゃ…)
そこには、子供くらいの身長の人型の生物がいた。
人間と言わないのは、間違いなく人間ではないからだ。
玄野「あれって…」
ハゼット「ゴブリンだ。正確にはゴブリンの中でもミニゴブリンというのだが、見るのは初めてだろう?」
玄野「当たり前っすよ…」
全身緑色で、額には鋭い角が生えている。
ハゼット「あいつは人間を見るとすぐに襲ってきてな。中々すばしっこくて、力も強い。戦う手段を持たない者にとって脅威だ。」
玄野「それ俺らもヤバイんじゃ⁉︎」
戦う手段がないどころか、戦い方を知らない一般人である。
ハゼット「そんなことはない。」
言い終わるか終わらないかのうちにミニゴブリンが走ってくる。
玄野「ちょちょちょ来てる来てる‼︎」
世界陸上の金メダル選手が試合を放棄しそうなくらいの速さで迫り、玄野の顔めがけて額の角を突き出す。
玄野「ひっ⁉︎」
当たるか当たらないかのところで角が止まる。
ハゼット「こんな風に分かりやすい動きしかしないから対処はしやすい。」
ハゼットがゴブリンの体を掴んでいた。
ハゼット「まぁ、弱い部類さ。」
掴んだその手でそのままゴブリンを投げ捨てる。
地面を何回かバウンドして吹っ飛ばされたゴブリンはそそくさと逃げていった。
ハゼット「勝てないと思った相手には近づかないんだが、明日には忘れてる頭の悪さも特徴だ。大丈夫だったか?」
玄野「もっと早く止めてくれませんか…?」
ハゼット「良い機会さ。」
玄野「はぁ…何が?」
ハゼット「そろそろ察してくれるとは思うんだが…まぁ、この森を抜けたら信じざるを得ないだろう。」
思わせぶりな発言をするが、玄野には一体何を言おうとしているのか見当がつかない。
(いや、つかないというか…そんなわけないだろうっていうか…)
ハゼットに従って歩いていく。
●
ハゼット「そろそろ出るぞ。」
だんだん外の明かりが見えてきた。
玄野「うわぁ…」
森を抜けたそこには大平原が広がっていた。
大きな街が1つあるのを除けば、他には何もない。
強いて言うなら、見たことないような謎の動物や馬車らしきものが走っているのは見える。
玄野「なんだここ…」
ハゼット「やはりな。」
(日本にこんなとこあったかよ…いや、あるわけねぇよな…こんなだだっ広い土地…)
日本にこれだけの広さがあるといえば、北海道ならギリギリ信じられるかも知れないが、それ以前に先ほど出会ったゴブリンがそもそも信じられない。
(それ以前に、地面の中に落ちたら森の中ってのがおかしいっていうか、そもそも地面の中に落ちるってのがありえないんだよな…)
玄野「ここってなんて国すか…?」
ハゼット「ここは国ではない。あの街が国さ。この平原や森はどこの国のものではない。」
(地球上にどこの国のものでもない土地ってあるのか?それくらいあるかもしんないけど、えぇ…)
玄野「なんてゆーか…まるで…」
ハゼット「異世界に来てしまったようだ、か?」
玄野「え?」
言おうとしたセリフを先読みで言われる。
ハゼット「お前がここに来る前。今までの人生で、さっきのゴブリンやあそこにいるあれらを見たことがあるか?」
指を指した方向には、ぶよぶよとしたゼリー状の何かが小川から出てきているのがいる。
玄野「何なんすかあれ…」
ハゼット「スライムと呼ばれる魔獣だ。」
玄野「スライムってゲームとかで見るような…アレ?」
ハゼット「あいつも同じことを言っていた。ゲームってのが何かは知らんが。」
玄野「あいつ?」
自分の他にも誰かが来たかのような口ぶり。
ハゼット「お前と同じところから来た奴だ。何が言いたいか分かるか?」
玄野「いやそんな回りくどいこと言わずに教えてくださいよ…」
仕方ないな、という風にため息をつかれる。
ハゼット「ここは、お前から見て異世界というやつだ。」
玄野「は…?」
異世界と言われて唖然とする。
ハゼット「行くぞ。あの街に俺の家がある。」
気にしないふうに先に1人で歩いていくが、玄野はまだ混乱中である。
玄野「いやいやいやちょっと待って。何?これってドッキリ?」
ハゼット「なんだドッキリって。怪しむのは分かるが、本当のことだぞ。」
少し歩いて振り返る。
ハゼット「それとも、もっと分かりやすいのを見たいか?」
右手を開いて玄野の方へ向ける。
玄野「え?何?」
ハゼット「危ないから動くなよ。」
するとハゼットの右手の前に水のようなものが浮かび始める。
水はどんどん膨らみ、ハンドボールほどの大きさになると、今度は棒に形を変え、氷のようになる。
玄野「…………」
さらに唖然とする。
(魔法か何かかよ…)
何か言おうとすると、棒がハゼットの右手から発射され、左の耳を掠めて後ろの方へ飛ぶ。
声「ギギャァァァ‼︎」
玄野「うぇっ⁉︎」
後ろで叫び声が聞こえ振り向くと、さっきと同じミニゴブリンが頭を押さえて転げ回っていた。
玄野「さっきの⁉︎」
ハゼット「俺たちをつけて背後から狙おうとしていたようだな。俺が今こうして振り返らなければ全く気づかなかった。お前、中々運が良いな。」
肩をポンと叩かれる。
ハゼット「これで信じざるを得ないだろう?お前のいた世界では魔法なんてものは無かったらしいじゃないか。ここはお前のいた世界とは違う、別の世界だ。」
クロノ「別の世界、と言うと…?」
それでもやはり信じられない。
ハゼット「そのままの意味だ。お前のいた世界に魔法も魔獣も無かったらしいが、ここにはどちらもある。さぁ、そろそろ行こうか。俺のギルドへ案内しよう。」
後ろを振り返ると、先ほど転げ回っていたゴブリンが森の方へと入っていくのが見えた。
(もしかして、とんでもないことに巻き込まれてるんじゃ…)
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