異界に迷った能力持ちの殺人鬼はそこで頑張ることにしました
21話 殺人鬼vs殺人鬼①
深夜 未明。
フェルド街の真ん中にある広場では銀色の甲冑を着た屈強な騎士たちが100名以上も集まっていた。
全員が各々様々な武器を装備しその身から気迫が出ている。
まるで戦でもしそうな雰囲気を醸し出していた彼らだったが、彼らが集まり戦う相手はただ一人だ。
その騎士たちが真っ直ぐと隊列を組み、目の前に立っているある人物の方を向いていた。
ジゴズ騎士団団長、ジゴズ・クァンジュ。
このフェルド街の治安を維持する騎士団の団長である彼は、その鋭い目で自分の騎士団員たちを見ながら響く声で言った。
「諸君、昨日の夜この街で私の部下が死んだのは知っているだろう! 見習いの騎士でありながら誰よりも向上心があったその者は、二人の命を助けて死んだ! 」
ジゴズが口にすると騎士たちの口元からギリギリと、歯ぎしりのような強く歯噛んだ音が漏れる。
「名はシャデア・パテルチアーノ。女でありながら勇敢な騎士だった彼女を、手に掛けて殺した魔獣を俺は許さん! 未来ある騎士を欺き殺す忌まわしき悪を俺は許さん!」
ジゴズは腰に帯刀していた鞘から剣を抜き出すと、それを黒く雲で覆われた夜空に向けて高らかに掲げる。
それだけで、騎士たちも同じように様々な武器を掲げる。
「これはジゴズ騎士団、いやデザールハザール王国のための決戦だ!! 魔獣は2日連続でフェルド街に出現すると俺は見ている。 奴の討伐は俺たちの仲間に対する弔いだ! 殺されてきたこの国の者たちの復讐だ! さぁいざ行かん!」
彼は大きい声で号令を出すと騎士たちも同じように呼応し、雄叫びをあげた。
そして指示もなしに彼らは5人編成で班を作ってフェルド街の裏路地につながる狭い道に向かっていく。
騎士たちがほとんど、魔獣討伐のためだけに強化装備して街の見回りに行った。
あたりが静かになり、ジゴズは側近の騎士たちに向かってい小声で言った。
「こうも大仰にやれば、本当にこの街には現れないんだよな?」
「はい、サツキ様が言うには魔獣は人目を恐れる存在だとことで、他の街でも同じように騎士たちが大勢で見回りを強化しております。おそらく今日は現れないでしょう」
側近が落ち着いたように言うが、ジゴズはその言葉にいささか疑問を感じていた。
「…だといいんだが」
そう思いながら、この集会に来ていなかった見習いの騎士を一人思い出す。
彼は、右大臣の娘に頼んでシャデア・パテルチアーノの葬儀を次の日に遅らせた。
そして参列者たち、騎士団長としてその場にいたジゴズにも向かって魔獣は自分が討つと明言した。
その言葉に参列者や騎士たちのほとんどは信じていなかったが、ジゴズにはその見習い騎士の言うことに強い思いが込められているのを感じた。
もし魔獣を討てたらの話なのだが。
ジゴズは考えながら、自分の部下である彼の身を案じていた。
この場に来なかった彼は、いったい今どこにいるのだろうか?
フェルド街。
人も寝静まった暗い夜道に、一人の少女がこそこそと歩いてくる。
『マリエル』の1人娘であるコローネだ。
バスケットを持ちながらコローネはゆっくりと歩く。
やがて、暗い建物と建物の間の路地裏に足を運びだす。
コローネは心配そうにキョロキョロと辺りを見回しながら、路地裏を進んでいく。
ぞくり、と自分の背中に何やら嫌な気配を感じた。
コローネはそれが何か気になって、振り返る。
そこはさっき自分が入ってきた道が見えただけで何も変化はなかった。
ホッとした表情を浮かべて、クルリと正面を向く。
その先に、つばの長い帽子と全身を覆うような黒マントを着た男が立っていた。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ー…お嬢さん昨日ぶりですねぇ! 良い子にしておりましたか?悪いことはしていませんか? 悪い人について行ってはいけないですよ? 悪い人は悪い人なので私ではなく私以外の人間ですが♪」
男は心底気持ち悪い声を出して、コローネに近づいてくる。
コローネは、今にも襲ってきそうな男に不思議そうに尋ねてみる。
「あなたは誰なの?」
「ア"〜♪それは良い質問ですね! 私はジャック! ジャック・ザ・リッパーと呼ばれる神の意向を悪人たちに知らしめる良い人です! ア"ア"ア"〜〜気持ジィィィィ〜〜♪ 名前を言うと自分が何かを思い出せるから良いですね♪」
それを聞いて、コローネは不意にある疑問を口にする。
それは、とある国の名前だった。
「もしかして、イギリスにいたって言うジャック・ザ・リッパーか?」
その瞬間、ジャックはゾクッと自分が与えていたはずのプレッシャーが跳ね返ったと思い込み、目の前にいる昨日襲った少女に瓜二つの何かにすかさずナイフを投げつける。
それは人が反応できない速度で射出されたはずだったが、少女はそのナイフを軽々と横に移動して避けた。
今の行動で分かった。
人間とは思えなかった。
「昨日であったお嬢さんじゃないですね。アナタ何者でしょうか?」
ジャックは急いで距離をとって、自分以上に得体の知れない化け物に警戒する。
「…あなたは私を知っている。私がいた世界から来たからですか?笑えません。笑えませよソレ!!」
さっきまで楽しそうに笑い狂人のフリをした魔獣は、今では人相応の態度になっており、それがおかしくてコローネは笑ってしまう。
「クハハハ、まさか化け物が化け物に怯えるなんてな。つか、俺の他にもこの世界にきているやつなんているんだな」
コローネはバスケットを放って懐からあるものを取り出す。
それは小型のナイフだったが、グリップの作りを見てジャックにはこの世界では作られた物ではないことが分かった。
それだけでジャックは目の前にいる自分と同じ世界から来た何者かに恐怖する。
「な、何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ!!」
そう言いながらジャックは自分の得物であるナイフを振るってコローネに向かっていく。
人には見切れない速度で斬りかかるジャックに対して、コローネは全て避けているように思えた。
「斬り方は素人並に下手くそ、ただ力任せに腕をふるってるだけでつまらん。お前に教えてやる、斬るってのはこういうことだ」
そう言ってコローネは子供とは思えない冷酷な瞳をジャックの視線に合わせ、そこからブレることなくジャックの腕の中をひらりひらりと躱しながら進み、そのままジャックの顔を真っ二つに切り裂いた。
「ぎゃァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーー!!!!! 」
ジャックは顔を斬られたことで絶叫し、ナイフを手放して自分の顔を手で覆いながらながらのたうちまわった。
その光景を、コローネは静かで冷酷な瞳で見下す。
フェルド街の真ん中にある広場では銀色の甲冑を着た屈強な騎士たちが100名以上も集まっていた。
全員が各々様々な武器を装備しその身から気迫が出ている。
まるで戦でもしそうな雰囲気を醸し出していた彼らだったが、彼らが集まり戦う相手はただ一人だ。
その騎士たちが真っ直ぐと隊列を組み、目の前に立っているある人物の方を向いていた。
ジゴズ騎士団団長、ジゴズ・クァンジュ。
このフェルド街の治安を維持する騎士団の団長である彼は、その鋭い目で自分の騎士団員たちを見ながら響く声で言った。
「諸君、昨日の夜この街で私の部下が死んだのは知っているだろう! 見習いの騎士でありながら誰よりも向上心があったその者は、二人の命を助けて死んだ! 」
ジゴズが口にすると騎士たちの口元からギリギリと、歯ぎしりのような強く歯噛んだ音が漏れる。
「名はシャデア・パテルチアーノ。女でありながら勇敢な騎士だった彼女を、手に掛けて殺した魔獣を俺は許さん! 未来ある騎士を欺き殺す忌まわしき悪を俺は許さん!」
ジゴズは腰に帯刀していた鞘から剣を抜き出すと、それを黒く雲で覆われた夜空に向けて高らかに掲げる。
それだけで、騎士たちも同じように様々な武器を掲げる。
「これはジゴズ騎士団、いやデザールハザール王国のための決戦だ!! 魔獣は2日連続でフェルド街に出現すると俺は見ている。 奴の討伐は俺たちの仲間に対する弔いだ! 殺されてきたこの国の者たちの復讐だ! さぁいざ行かん!」
彼は大きい声で号令を出すと騎士たちも同じように呼応し、雄叫びをあげた。
そして指示もなしに彼らは5人編成で班を作ってフェルド街の裏路地につながる狭い道に向かっていく。
騎士たちがほとんど、魔獣討伐のためだけに強化装備して街の見回りに行った。
あたりが静かになり、ジゴズは側近の騎士たちに向かってい小声で言った。
「こうも大仰にやれば、本当にこの街には現れないんだよな?」
「はい、サツキ様が言うには魔獣は人目を恐れる存在だとことで、他の街でも同じように騎士たちが大勢で見回りを強化しております。おそらく今日は現れないでしょう」
側近が落ち着いたように言うが、ジゴズはその言葉にいささか疑問を感じていた。
「…だといいんだが」
そう思いながら、この集会に来ていなかった見習いの騎士を一人思い出す。
彼は、右大臣の娘に頼んでシャデア・パテルチアーノの葬儀を次の日に遅らせた。
そして参列者たち、騎士団長としてその場にいたジゴズにも向かって魔獣は自分が討つと明言した。
その言葉に参列者や騎士たちのほとんどは信じていなかったが、ジゴズにはその見習い騎士の言うことに強い思いが込められているのを感じた。
もし魔獣を討てたらの話なのだが。
ジゴズは考えながら、自分の部下である彼の身を案じていた。
この場に来なかった彼は、いったい今どこにいるのだろうか?
フェルド街。
人も寝静まった暗い夜道に、一人の少女がこそこそと歩いてくる。
『マリエル』の1人娘であるコローネだ。
バスケットを持ちながらコローネはゆっくりと歩く。
やがて、暗い建物と建物の間の路地裏に足を運びだす。
コローネは心配そうにキョロキョロと辺りを見回しながら、路地裏を進んでいく。
ぞくり、と自分の背中に何やら嫌な気配を感じた。
コローネはそれが何か気になって、振り返る。
そこはさっき自分が入ってきた道が見えただけで何も変化はなかった。
ホッとした表情を浮かべて、クルリと正面を向く。
その先に、つばの長い帽子と全身を覆うような黒マントを着た男が立っていた。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ー…お嬢さん昨日ぶりですねぇ! 良い子にしておりましたか?悪いことはしていませんか? 悪い人について行ってはいけないですよ? 悪い人は悪い人なので私ではなく私以外の人間ですが♪」
男は心底気持ち悪い声を出して、コローネに近づいてくる。
コローネは、今にも襲ってきそうな男に不思議そうに尋ねてみる。
「あなたは誰なの?」
「ア"〜♪それは良い質問ですね! 私はジャック! ジャック・ザ・リッパーと呼ばれる神の意向を悪人たちに知らしめる良い人です! ア"ア"ア"〜〜気持ジィィィィ〜〜♪ 名前を言うと自分が何かを思い出せるから良いですね♪」
それを聞いて、コローネは不意にある疑問を口にする。
それは、とある国の名前だった。
「もしかして、イギリスにいたって言うジャック・ザ・リッパーか?」
その瞬間、ジャックはゾクッと自分が与えていたはずのプレッシャーが跳ね返ったと思い込み、目の前にいる昨日襲った少女に瓜二つの何かにすかさずナイフを投げつける。
それは人が反応できない速度で射出されたはずだったが、少女はそのナイフを軽々と横に移動して避けた。
今の行動で分かった。
人間とは思えなかった。
「昨日であったお嬢さんじゃないですね。アナタ何者でしょうか?」
ジャックは急いで距離をとって、自分以上に得体の知れない化け物に警戒する。
「…あなたは私を知っている。私がいた世界から来たからですか?笑えません。笑えませよソレ!!」
さっきまで楽しそうに笑い狂人のフリをした魔獣は、今では人相応の態度になっており、それがおかしくてコローネは笑ってしまう。
「クハハハ、まさか化け物が化け物に怯えるなんてな。つか、俺の他にもこの世界にきているやつなんているんだな」
コローネはバスケットを放って懐からあるものを取り出す。
それは小型のナイフだったが、グリップの作りを見てジャックにはこの世界では作られた物ではないことが分かった。
それだけでジャックは目の前にいる自分と同じ世界から来た何者かに恐怖する。
「な、何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ!!」
そう言いながらジャックは自分の得物であるナイフを振るってコローネに向かっていく。
人には見切れない速度で斬りかかるジャックに対して、コローネは全て避けているように思えた。
「斬り方は素人並に下手くそ、ただ力任せに腕をふるってるだけでつまらん。お前に教えてやる、斬るってのはこういうことだ」
そう言ってコローネは子供とは思えない冷酷な瞳をジャックの視線に合わせ、そこからブレることなくジャックの腕の中をひらりひらりと躱しながら進み、そのままジャックの顔を真っ二つに切り裂いた。
「ぎゃァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーー!!!!! 」
ジャックは顔を斬られたことで絶叫し、ナイフを手放して自分の顔を手で覆いながらながらのたうちまわった。
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