異界に迷った能力持ちの殺人鬼はそこで頑張ることにしました

鬼怒川 ますず

15話 対峙(後編)

そう言ってシャデアは剣を片手に、懐から鉄で出来たホイッスルを取り出すと口にくわえて吹く。


ピィィィィィィーーーーーーーーーー!!!


うるさく耳を鳴らすそのホイッスルの音に、その場にいた全員が顔を歪ませる。


「……いまので市中を見回りしていた騎士と兵士がこちらに来るでしょう。もって五分、その間おとなしくしてもらいますよ」


シャデアは剣を構えて目の前の魔獣に集中する。
相手は手負い。
こちらは無傷。

勝てる……。

そう思っていた。




「……まずいマズイ不味いまずいまずい! このままではいけない! ふしだらな女たちを罰して、それをバラバラにして食すわたしの存在がバレてしまう!?……あれ? バレてるかな? バレてるバレてる!! いいですね! ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"アーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」




急に発狂したかのように左手で自分の体を抱きしめ大声を上げる目の前の魔獣に、今度こそ恐怖するシャデア。


-まずい、何かしてくる!-


直感がそう悟り、急いで自分の背にるテラスに叫ぶ。


「逃げてください! 」


シャデアの声に、今まで黙って見ていたテラスが「は?」と間抜けな声を上げる。その時だった。
シャデアの右足が、太ももの半ばから切り飛ばされた。

かなりの速度で切ったのか血があたりに飛び散り、テラスの顔と抱かれているコローネの髪にかかる。

「……え?」


いきなりのことで痛みが走る前に驚くシャデア。
前のめりに倒れる彼女は、倒れた衝撃も勿論だが斬り落とされて多量の血を噴き出す右足の痛みがようやく脳に走り、かなりの痛みで叫ぶ。


「……イヤァッァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーー!!!!痛い痛いイタイィィィィーーーーーーー!!!!?」


あまりの痛みに涙も鼻水も出る。
血は止まらない。
思考がクリアにならない。

だが声は聞こえる。
あの弾けたような声が。


「……まったく、わたしを本気にするその度量、イッヒッヒッヒー!!気"持"ぢい"い"ー♪」


痛みに頭がおかしくなりそうになるシャデアだったが、その両目で確かに見た。
魔獣の本当の姿を……。


身体は変化し、首が伸びて顔も変わりまるで芋虫のような口と昨日見た蜘蛛の魔獣のように4つの目をギラギラに光らせていた。


極め付けは腹から伸びる15本もの腕だ。
それぞれ黒く変色し包帯を巻いているが、握る多種多様な刃物がそれぞれが得意とする得物のようにランタンの明かりを反射して怪しく光らせる。


もう分かった。
こいつは異常だ。
他に例を見ない化け物だ。

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