異界に迷った能力持ちの殺人鬼はそこで頑張ることにしました
5話 デザールハザール王国の門
 日が落ちてしばらくして前方から明かりが広がっているのに気づく。
「あぁ、ようやく着きましたよ。あそこがデザールハザール王国です」
 そう言ってシャデアが指差す場所には、大きなお城がそびえ立っており、その城下町からでる多くの明かりが王国の外にまで溢れ出すように、とにかく明るかった。
 王国の周りを囲む壁も、財があるからか立派な造りとなっており。城壁の上には松明で照らされて屈強な兵士が遠目からでも数がわかるほど多く見える。
「あれがデザールハザールか、本当にすごくでかいところなんだな」
 男は想像していた以上の大きさに驚きつつも、ハッと肝心なことを思い出してシャデアに聞く。
「そういえばこのあたりでデザールハザールと友好的な国って何か分かるか?」
「え?……そうですね、隣国のクアーデスト帝国とオータニア国……まぁたくさんありますが主な友好国はその辺ですね。でも急にこんなこと聞くなんてどうしたんですか?」
「いやな、さすがに国に入るのに門番に尋ねられて出身地がわかんなきゃ怪しまれるだろう、異世界出身なんて言ってもなおさら入れてもらえるわけもない、だからだ」
「なるほど、でも行商のような者たちですら許可証が必要なので入るのは難しいかと」
 それを聞いて男はマスクの表情で困った顔をする。
 経験上、確かに偽装パスポートがなければ渡航も出来なかったので、その許可証というものがどれほど大事なものか理解しているからだ。
 もうすぐ城門、デザールハザール王国に入る門の前だ。
この財に物を言わせた国だ。門番のチェックも厚いことだろう。
 さてどうするかと考えると、テラスが肩に手を置いて男の顔を覗き込んできた。
「良い方法があるのでそれを試してやろうと思うが、その前にある条件を飲んでもらおうか……」
 テラスがそう言うので、マジで殺してやりたくなる。
 城門に着くと、すぐさま門番の兵士が駆け寄ってくる。
「何者だ、行商の通って良い時間は過ぎているぞ」
「私たちはフィン・ローズヴェルト・グラウドベッツ様の護衛の騎士、ジゴズ騎士団所属のテラス・デルゴラ・サージ、同じくシャデア・パテルチアーノだ」
「フィン様だと? 確か馬車でここを出たはずではなかったか?」
「馬はフェギル草原で魔獣に食われ、そのため徒歩での帰還となり刻限が守れなかった、フィンお嬢様もお疲れだろうから早くお屋敷にお連れしたい」
 テラスが粛々と兵士に言うと、その兵士もフィンの顔を知っているのでシャデアの背から覗き込む不満そうな顔にビクつき、すぐさま槍を引っ込める。
「……わかった、フィン様がいるのであれば通すが、これは特例なので以後気をつけるように」
「ご協力感謝いたします」
 テラスがお辞儀をして、3人を連れて中に入ろうとするが、フィンの事で頭がいっぱいだった兵士が何かに気がついた。
「おい、この者はなんだ?」
 そう言われて足を止める一同。
 その中でも、一番嫌な汗を流していたのは、男自身だった。
 怪しまれているからではない。
 かといって怖がっているわけでもない。
 嫌だったからだ。
 しかし、テラスとフィンの視線、あとシャデアの少し笑いをこらえようと我慢する視線を感じ。男は口から言の葉を紡いだ。
「あ、お、オータニア王国から来た旅人……ナナシ……です」
 言った。
 とても恥ずかしい!
 だが兵士は「あぁ〜?」と訝しげに顎をさすって。
「名前の部分が聞こえなかったぞ、もう一度言え」
(鬼か!)
 心の中でツッコミ、殺人鬼として様々な人間を無感情に殺してきた男は、たった13歳の少女が提案した名前を口にするのが恥ずかしかった。
 さきほど、テラスが提案してきたのはこういった話だ。
 デザールハザール王国に入れる代わりに、フィンが考えた『ナナシ』という名を名乗って入国しろ、と。
  それにはさすがに拒否したのだが、そうでもしないと国に入れないと言う事なので、素直に従う事にする。
「お、俺はオータニア王国から来た旅人の……ナナシ!そうナナシって言います!」
「……お前変な名前だな、 名付け親の頭おかしいんじゃねーの?」
「あぁ、俺もそう思う」
 大人2人の罵倒に、シャデアの背中でまた泣き出しそうになるフィン。
 しかし、約束は約束なので守っるフィンは背中からくぐもった声で兵士に言った。
「そのお方は、私たちに襲いかかった魔獣を退治してくださった勇気ある旅人なのですの、ですので丁重に扱ってくださいまし」
「この変な名前の者がですか、これは失礼しました、フィン様をお救いいただきありがとうございます。どうぞ通ってください」
「ふふ、それでよろしいんですのよ……あとお前、街で会った時は覚えていろですわ……」
「え、今最後なにか……」
「さぁ皆のもの、行きますわ」
 顔を青ざめて困惑する兵士を置いていき、4人は城門をくぐる。
「あぁ、ようやく着きましたよ。あそこがデザールハザール王国です」
 そう言ってシャデアが指差す場所には、大きなお城がそびえ立っており、その城下町からでる多くの明かりが王国の外にまで溢れ出すように、とにかく明るかった。
 王国の周りを囲む壁も、財があるからか立派な造りとなっており。城壁の上には松明で照らされて屈強な兵士が遠目からでも数がわかるほど多く見える。
「あれがデザールハザールか、本当にすごくでかいところなんだな」
 男は想像していた以上の大きさに驚きつつも、ハッと肝心なことを思い出してシャデアに聞く。
「そういえばこのあたりでデザールハザールと友好的な国って何か分かるか?」
「え?……そうですね、隣国のクアーデスト帝国とオータニア国……まぁたくさんありますが主な友好国はその辺ですね。でも急にこんなこと聞くなんてどうしたんですか?」
「いやな、さすがに国に入るのに門番に尋ねられて出身地がわかんなきゃ怪しまれるだろう、異世界出身なんて言ってもなおさら入れてもらえるわけもない、だからだ」
「なるほど、でも行商のような者たちですら許可証が必要なので入るのは難しいかと」
 それを聞いて男はマスクの表情で困った顔をする。
 経験上、確かに偽装パスポートがなければ渡航も出来なかったので、その許可証というものがどれほど大事なものか理解しているからだ。
 もうすぐ城門、デザールハザール王国に入る門の前だ。
この財に物を言わせた国だ。門番のチェックも厚いことだろう。
 さてどうするかと考えると、テラスが肩に手を置いて男の顔を覗き込んできた。
「良い方法があるのでそれを試してやろうと思うが、その前にある条件を飲んでもらおうか……」
 テラスがそう言うので、マジで殺してやりたくなる。
 城門に着くと、すぐさま門番の兵士が駆け寄ってくる。
「何者だ、行商の通って良い時間は過ぎているぞ」
「私たちはフィン・ローズヴェルト・グラウドベッツ様の護衛の騎士、ジゴズ騎士団所属のテラス・デルゴラ・サージ、同じくシャデア・パテルチアーノだ」
「フィン様だと? 確か馬車でここを出たはずではなかったか?」
「馬はフェギル草原で魔獣に食われ、そのため徒歩での帰還となり刻限が守れなかった、フィンお嬢様もお疲れだろうから早くお屋敷にお連れしたい」
 テラスが粛々と兵士に言うと、その兵士もフィンの顔を知っているのでシャデアの背から覗き込む不満そうな顔にビクつき、すぐさま槍を引っ込める。
「……わかった、フィン様がいるのであれば通すが、これは特例なので以後気をつけるように」
「ご協力感謝いたします」
 テラスがお辞儀をして、3人を連れて中に入ろうとするが、フィンの事で頭がいっぱいだった兵士が何かに気がついた。
「おい、この者はなんだ?」
 そう言われて足を止める一同。
 その中でも、一番嫌な汗を流していたのは、男自身だった。
 怪しまれているからではない。
 かといって怖がっているわけでもない。
 嫌だったからだ。
 しかし、テラスとフィンの視線、あとシャデアの少し笑いをこらえようと我慢する視線を感じ。男は口から言の葉を紡いだ。
「あ、お、オータニア王国から来た旅人……ナナシ……です」
 言った。
 とても恥ずかしい!
 だが兵士は「あぁ〜?」と訝しげに顎をさすって。
「名前の部分が聞こえなかったぞ、もう一度言え」
(鬼か!)
 心の中でツッコミ、殺人鬼として様々な人間を無感情に殺してきた男は、たった13歳の少女が提案した名前を口にするのが恥ずかしかった。
 さきほど、テラスが提案してきたのはこういった話だ。
 デザールハザール王国に入れる代わりに、フィンが考えた『ナナシ』という名を名乗って入国しろ、と。
  それにはさすがに拒否したのだが、そうでもしないと国に入れないと言う事なので、素直に従う事にする。
「お、俺はオータニア王国から来た旅人の……ナナシ!そうナナシって言います!」
「……お前変な名前だな、 名付け親の頭おかしいんじゃねーの?」
「あぁ、俺もそう思う」
 大人2人の罵倒に、シャデアの背中でまた泣き出しそうになるフィン。
 しかし、約束は約束なので守っるフィンは背中からくぐもった声で兵士に言った。
「そのお方は、私たちに襲いかかった魔獣を退治してくださった勇気ある旅人なのですの、ですので丁重に扱ってくださいまし」
「この変な名前の者がですか、これは失礼しました、フィン様をお救いいただきありがとうございます。どうぞ通ってください」
「ふふ、それでよろしいんですのよ……あとお前、街で会った時は覚えていろですわ……」
「え、今最後なにか……」
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 顔を青ざめて困惑する兵士を置いていき、4人は城門をくぐる。
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