世の中凡人を探す方が難しい

青キング

煩悩

 「あっいたいた」
 爽の見つめる先には朝集合した駅の前で談笑している三人がいる。
 近づく俺たちに気づいたのか秋菜がこちらに顔を向けてきた。
 しかめっ面の秋菜とその隣にいる露出しすぎの人物。
 「遅いわよ!」
 「ごめんね、宮魔さん」
 そんなことよりこの赤髪は誰だ。まぁ知ってるけど認識するのが難しいというか。
 視線が綺麗な脚に、胸元に、ああああどうした俺? 正気に戻れーーーーーー!
 このへその辺が見えるというのは、胸元をわざと見せびらかすというのは、男からするといろいろと大変なことに・・・・・・
 「ここに変態がいるわー」
 はっ! 
 秋菜の嫌みったらしい声で正気に戻る。
 「忍さんは胸の大きな人が好みなんですか? もしそうだとしたら最低ですね」
 虫けらを見るような視線をこちらにお送ってくる。
 闇オーラまで醸し出してるよ!
 「篠藁くんは変態ではありません!」
 後ろからはっきりとした声で爽が否定してくれる。
 「変態ではなく男として当然の事をしているだけなんです。自動的なんです。言ってしまえば可愛いからこそくずの目になるんです!」
 優しいと思ったのもつかの間、くずの目って言われた! 俺の中の爽の人物像が一変したよ!
 「茶番はこれくらいにしといて、このあと予定入ってるひと挙手」
 茶番? 俺からしたら一大事だったよ。
 というか今、思ったがミニスカの中は手鏡使えば拝見できそう・・・・・・ああもう!
 頭を掻いてイライラを紛らそうとする。
 「私、これからバイトあるから・・・・・・そういうことだからじゃあ」
 そう言って秋菜は行ってしまう。
 一瞬、眉が下がったような気がした。
 「どうします、忍さん
 「俺に聞かれてもなぁ」
 「まやは帰るっスヨ。帰って練習するっス」
 えっとあおいがまやを追いかける。
 あおいに気づいたのかまやは立ち止まりあおいが追い付くのを待って、並ぶと二人も帰ってしまう。
 ホントに仲良いよな。
 そして二人は秋菜とは逆方向の角を曲がっていった。
 後ろから何かを求める視線が
 振り向くと爽がこちらをじっーと瞳を潤ませて見つめている。
 なんなんだ?
 「ねぇねぇ篠藁くん」
 「捨てられた子犬みたいな目で拾ってほしいのか?」
  唇を尖らせて違う~、と批判してきた。
 「なんでいつもいじめるの?」
 「いじめてないよ。そんなことより本題へ移ってください」
 「分かったよ、このあと暇?」
 愚問だな、と言いたいところだがそうてもないのが俺の生活。
 帰って自分のサイトの更新を・・・・・・なんてあとでいいか。
 「暇ではないが用があるなら付き添うけど」
 「僕の家で遊ばない?」
 何? 新式の勧誘?
 「嫌そうな顔しないでよ!」
 「だって小学生頃とかに怪しい人には着いてくなってよく・・・・・・」
 「どっち?」
 俺の顔に迫ってくる。近い近い!
 そのせいか俺は少しのけ反り気味になりながら答えた。
 「分かった行くよ!」
 「ホント? ありがとう!」
 お礼されること何もされてないけど。
 普通ならこちらがする方では?
 「案内するから着いてきてね」
 嬉しそうに歩き出す。
 まぁ笑顔になってくれるなら俺はそれでいい。 
 他人の笑顔は俺の幸せだからな。
 
 「関東一の安打製造器」
 「誰のことそれ~?」
  あんただよ。
 無邪気な笑顔からするとホントに記憶がないんだな。
 二人で鬱憤を晴らすためにバッティングセンターへ行ったときのこと。
 「なにーここ」
 「日々のストレスを解消できる魔法の施設だ!」
 へぇ~、と少しワクワク気味になりながら理阿は入っていく。
 私も一緒に入店する。
 「十球だけだけど全力で振ってストレスを解消だー!」
 意気込む私を外から見守る理阿。
 十球終えて、理阿にバットを手渡す。 
 結果が思ったより悪かったので少し不機嫌な私は頬杖をつきながら理阿を眺める。
 理阿の目付きが変わっていた。
 闘志にみちあふれたその目付きに違和感を覚えながらも眺め続ける。
 そして一球目。
 キーンと金属の音が響き渡る。
 「手応えがない」
 理阿は球速設定の機械に近づき、設定を150キロにしてバッターボックスに入る。
 そのあと九球全部バットの真芯に当てていた。しかも広角にうちわけていた。
 だから安打製造器なのだ。

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