姉として失格おばさんのエゴ。
姉として失格おばさんのエゴ。
一昨日、久しぶりに妹のひなから電話があった。
『ね、姉ちゃん……ゴホッ、ゲホッ‼』
ずっと咳き込むひなに、
「どうしたん?病院は?」
「いや、昨日で、薬がのうなって……明日病院いけんのよ」
「仕事かね?」
「うん、他の新しく入った、バイトの子の指導の残業が残っとるんよ……ゴホッ……」
咳が止まらなくなったひなの、耳を疑う台詞に唖然とする。
は?あれだけ働いて、パートのまま契約社員にもしてもらってないひなが、バイトと言うと、夕方以降の大学の新入学生バイトの指導?
朝から仕事していたひなに、パートの人間に指導させる……どこまで最低なんだ。
「姉ちゃん……ごめん。悪いんやけど、私の代わりに薬だけでええけん、取りに行って貰えんやろか?この咳で、その上に眠れんし……苦しいんよ」
「お母さんに頼めば……」
「この咳とか、不眠の苦しさって……姉ちゃんにしかわからんやろ?」
だまりこむ。
言い返せない。
喘息とめまいにイライラと、不眠に悩まされていた。
「解った。会うけど、ひなは会社はお休み。病院に行って、ちゃんと診てもらわないけん。うちは明日別に行かないけんけん」
「ありがとう……姉ちゃん」
ゲホゲホッ……止まらなくなった咳に、
「無理したらいけん‼お休み。それじゃ明日」
電話を切り、翌日……昨日……ソーイング教室の帰りに会ったひなは、当然のように顔色が悪かった。
マスクをし、咳をしつつ待ち合わせたお店に来たひなに、
「病院で点滴とか注射とかしたの?」
「注射と、薬を貰った……」
「じゃぁ、薬ノート見せて」
「うん、あ、すみません。コーヒー下さい」
「いけん。すみません。コーヒーキャンセルでオレンジジュースを」
頼み、受け取ったノートの中身を見て絶句する。
慌てて自分の薬ノートを取りだし、昔のページを開けた。
そして確認する。
不眠症の薬が内科で出せる最強のもの。
不安神経症、ストレスの軽減用の薬が一緒……。
うちはアトピーの薬もあったけれど、ひなのはひどい喘息用と咳と痰のきれるものが多かった。
ひなも薬の量といい、薬の種類と良い……。
黙りこんだうちに、
「まぁ、明日からがんばろうわい。姉ちゃんも元気そうやね?」
ニコッと笑うひなに、笑い返す余裕はなかった。
返事もできなかった。
「オレンジジュースをお持ちしました」
「ありがとうございます」
ひなの声に、テーブルに置かれるジュース。
とんっと置かれた拍子に、コロッと氷が鳴った。
実家から逃げた兄ちゃん。
死んだばあちゃん、じいちゃん……。
いまだに実家にとりすがっとるおばはんたち……。
恨んでえぇやろか?
うちだけじゃあかんかったんか?
それだけうちらはいらなんだんか?
女やけん、使い捨てなんか?
うちがつぶれたけん、ひなの翼をもぎ取るんか?
ひなは、もうギリギリやで……?
これ以上働いたら、うつ病や……。
それでも働け言うんか?
あんたらそれこそ鬼や。
「ひな……仕事するんか?」
ふと尋ねた。
心のなかでは、願っている言葉を、言いたい言葉を言えない自分を憎みながら……。
ひなはジュースにストローを差しながら、
「仕方ないよ。頑張るよ」
マスクを外したひなの顔は、諦めたような顔をしていた。
帰ってから、うちは号泣した。
「ごめんなさい……ごめん、ごめんなぁぁ……」
うちの人生は、謝罪の一生になるのかもしれない。
もっと、何か出来なかったのか……もっと、ひなに……。
もっと……もっと……もっと……。
兄ちゃんだけが悪いわけやない。
でも、うちは良いけん。
ひなだけは救ってほしかった。
繰り返してほしくなかった……。
うちは良いけん。
ひなを……。
助けるだけの力を、誰か教えて下さい……。
『ね、姉ちゃん……ゴホッ、ゲホッ‼』
ずっと咳き込むひなに、
「どうしたん?病院は?」
「いや、昨日で、薬がのうなって……明日病院いけんのよ」
「仕事かね?」
「うん、他の新しく入った、バイトの子の指導の残業が残っとるんよ……ゴホッ……」
咳が止まらなくなったひなの、耳を疑う台詞に唖然とする。
は?あれだけ働いて、パートのまま契約社員にもしてもらってないひなが、バイトと言うと、夕方以降の大学の新入学生バイトの指導?
朝から仕事していたひなに、パートの人間に指導させる……どこまで最低なんだ。
「姉ちゃん……ごめん。悪いんやけど、私の代わりに薬だけでええけん、取りに行って貰えんやろか?この咳で、その上に眠れんし……苦しいんよ」
「お母さんに頼めば……」
「この咳とか、不眠の苦しさって……姉ちゃんにしかわからんやろ?」
だまりこむ。
言い返せない。
喘息とめまいにイライラと、不眠に悩まされていた。
「解った。会うけど、ひなは会社はお休み。病院に行って、ちゃんと診てもらわないけん。うちは明日別に行かないけんけん」
「ありがとう……姉ちゃん」
ゲホゲホッ……止まらなくなった咳に、
「無理したらいけん‼お休み。それじゃ明日」
電話を切り、翌日……昨日……ソーイング教室の帰りに会ったひなは、当然のように顔色が悪かった。
マスクをし、咳をしつつ待ち合わせたお店に来たひなに、
「病院で点滴とか注射とかしたの?」
「注射と、薬を貰った……」
「じゃぁ、薬ノート見せて」
「うん、あ、すみません。コーヒー下さい」
「いけん。すみません。コーヒーキャンセルでオレンジジュースを」
頼み、受け取ったノートの中身を見て絶句する。
慌てて自分の薬ノートを取りだし、昔のページを開けた。
そして確認する。
不眠症の薬が内科で出せる最強のもの。
不安神経症、ストレスの軽減用の薬が一緒……。
うちはアトピーの薬もあったけれど、ひなのはひどい喘息用と咳と痰のきれるものが多かった。
ひなも薬の量といい、薬の種類と良い……。
黙りこんだうちに、
「まぁ、明日からがんばろうわい。姉ちゃんも元気そうやね?」
ニコッと笑うひなに、笑い返す余裕はなかった。
返事もできなかった。
「オレンジジュースをお持ちしました」
「ありがとうございます」
ひなの声に、テーブルに置かれるジュース。
とんっと置かれた拍子に、コロッと氷が鳴った。
実家から逃げた兄ちゃん。
死んだばあちゃん、じいちゃん……。
いまだに実家にとりすがっとるおばはんたち……。
恨んでえぇやろか?
うちだけじゃあかんかったんか?
それだけうちらはいらなんだんか?
女やけん、使い捨てなんか?
うちがつぶれたけん、ひなの翼をもぎ取るんか?
ひなは、もうギリギリやで……?
これ以上働いたら、うつ病や……。
それでも働け言うんか?
あんたらそれこそ鬼や。
「ひな……仕事するんか?」
ふと尋ねた。
心のなかでは、願っている言葉を、言いたい言葉を言えない自分を憎みながら……。
ひなはジュースにストローを差しながら、
「仕方ないよ。頑張るよ」
マスクを外したひなの顔は、諦めたような顔をしていた。
帰ってから、うちは号泣した。
「ごめんなさい……ごめん、ごめんなぁぁ……」
うちの人生は、謝罪の一生になるのかもしれない。
もっと、何か出来なかったのか……もっと、ひなに……。
もっと……もっと……もっと……。
兄ちゃんだけが悪いわけやない。
でも、うちは良いけん。
ひなだけは救ってほしかった。
繰り返してほしくなかった……。
うちは良いけん。
ひなを……。
助けるだけの力を、誰か教えて下さい……。
コメント
ノベルバユーザー603725
揺れ動く心理描写が本当に秀逸で見ている読者を引き込む力が本当に強い。
創造力を掻き立てられる!