学校一のオタクは死神でした。

ノベルバユーザー203842

第73話 ミスターあらっ子

*第73話 ミスターあらっ子*



放課後、新は夕食の買い物に近所のスーパーに立ち寄った。
広告によると今日のお買得は卵と鶏肉だそうだ。この2つが買得ということは、親子丼でも作れとスーパーのお告げだろうか?まぁ、親子丼は簡単に作れるから楽でいいのだが…。
因みに新の作る親子丼は卵固めではなく片栗粉を混ぜたトロトロ派である。トロトロだと米によく絡んで箸が止まらない。見栄えも黄金に光り輝くようである。

ふと、スーパーの放送がかかった。

『え~、只今から~豚バラ肉のタイムセールを行います。商品は無くなり次第終了とさせていただきます~。』

その瞬間、買い物をしていた主婦達の目がギラりと光った気がした。
チラリと肉コーナーを見てみると、主婦達が押し合い圧し合いの大騒ぎである。
主婦ってタイムセール好きだよな~…
新はそんな様子を横目で見ながら、人が居なくなった目当ての卵と鶏肉をカゴの中に入れる。タイムセールに人が流れたため、余裕を持って手に入れることが出来た。

「あ、ネギ忘れてた…」

忘れてた玉葱たまねぎを買うため、来た道を少し戻りカゴに入れた瞬間。猛スピードで何かが後ろを駆け抜けた。
スーパーの中を走り回るとはマナーがなってないと思いながら買い物を続けようとするが、少し止まって考える。

「………今の人って。」

走り去って言った方向を見ると、やはり知っている命の反応がある。しかも、そこは先程タイムセールが行われていた豚バラ肉の場所だ。
今頃行っても消化済みだと思うんだけどな…
そちらの方向へ歩いていってみると…

その人は真っ白に燃え尽きていた。
その姿はまるで試合に勝利した後のリングの1角のようだった…

「ええっと~……何してんですか…?“華菜先生”?」

「……豚バラ肉が…私の豚バラ肉が…」

「あー…うん。はい。売り切れですね。」

「私の食料がぁぁああ!!!!!!!!!!!!」

「いや、そんなに嘆くとじゃないですよね?」

「お前は私の冷蔵庫と財布の豊かさを知らないからそんなことが言えるんだ!!」

「は、はぁ…」

「想像してみろ!!家に帰って開けた冷蔵庫の中身がマーガリンと水しか入ってなかった時の悲しみを!!
財布の中に札が入ってるかと思ったら、ために溜め込んだ割引券とレシートの山だった時の絶望を!!」

「うわ~…」

もう、それしか返答しようがなかった…。

「どうしよぅううう!!!!!!今日のご飯どうしよう!!!!」

「いや、口座からお金下ろせば…」

「家のローンで心もとないんだよ!!」

「そうっすか…」

そんな半泣き状態で言われましても…
なんというか…踏んだり蹴ったりだな…
ってか、給料どこに消えてったんだよ…
などと、新の中でツッコミじみたものが飛び交う。
しばらく沈黙が続くとボソッと華奈が言う。

「……いいよな~学生は。」

「え?」

「……親に養ってもらえて。」

「え?え?」

「…私なんてクソ低い給料で日々のやりくりで精一杯なのに。」

「え~~…それ言っちゃいますか…?」

仮にも教師ですよね?この人教師ですよね?大丈夫なのこの人…
新の表情は、だんだん笑いが苦いのつく笑いへと変わりつつある。
どうしたもんかね~…

チラリと横目で肉コーナーを見る。
お買得の鶏肉がまだ残っていた。卵は流石にもう無いが、豚バラ肉を手に入れた主婦たちがホクホクとした表情で店から出ていく姿も見受けられる。
どうやら、豚バラ肉を買った後鶏肉への目は行かなかったようだ。
一つため息を漏らす…

確か、卵はまだ冷蔵庫の中に1パック残ってたよな… 

無言で鶏肉をかごの中に入れる。ついでに華奈をしばらく放置して玉葱たまねぎも追加でカゴに入れ、追加でレタスやらジャガイモやらをカゴに入れ、スタスタと戻ってくると、そこにはやはり未だ半泣き状態の華菜が居る。

「…ほら、いつまでも泣いてないで行きますよ。」

「でも、私の食料がぁ…」

「それはいいですから行きますよ。他のお客さんにも迷惑です。」

新は華菜の手を引き、無理矢理立たせる。
顔を見ると、目の辺りが赤くなっていた。いや、本当に泣くほどのことか…?

そのまま手を引きながら買い物を進め、レジで大金を払う。
その際、店員の叔母さんに少し引き攣ったような笑で対応された。oh……そんな目で見ないで…
そのまま、スーパーから出る。

スーパーから出た後、手を引いたまま歩き続け目的地に到着する。
横を見ると泣き止んだ華奈がパチクリと目を丸くする。

「……ここは…?」

「“愛しの我が家です”。」

「へ?」

珍しくそんな声を上げながら、そのまま鍵を開け家に入る。

「さ、どうぞ。」

「は、はぁ…」

訳の分からないまま、華菜は言われるがまま家へとお邪魔しますと言って入る。

買い物袋を持ったままキッチンへと行き灯りをつける。

「あ、華菜先生はそこら辺でゆっくりしててください。30分程度で終わりますから。」

「あ、はい…?」

疑問形の返事をスルーして調理に取り掛かる。
買ってきた鶏肉と玉葱を切る。鶏肉は一口サイズ、玉葱は薄切りだ。
次に普段使うフライパンより大きめ深めのフライパンに水、砂糖、醤油、味醂、水で解いた片栗粉、更に隠し味に麺汁を少量入れ煮る。煮だったらそこに鶏肉と玉葱を投入し、鶏肉の中まで火が通るまで煮る。
最後に空気を入れるようにして溶いた卵を円を描くように入れ、蓋をした後、30秒程度で火を消し、卵を蒸し焼きにする。

その間に、簡単な汁物の調理にかかる。
主な具材は玉葱、コーン、キャベツ、ジャガイモ、ベーコン。先程と同様に玉葱は薄切りにし、鍋に水を貼った後沸騰させ、具材を入れある程度火が通った後、コンソメスープの元を入れしばらく煮込み、塩、コショウで味を整えた後、火を止める。

良い具合に卵が固まった頃を見計らい蓋を開け、あらかじめ用意しておいた大きめのタッパーにそれの1部を詰める。
それが少し冷めるまでの間、もう1つタッパーを用意し、冷蔵庫から作り置きしておいたポテトサラダとレタス、トマト、乾燥ナッツ類を取り出し、タッパーに詰め、仕上げに特性ドレッシングをかけ、蓋を占める。
最後に汁物用の蓋のしっかりしたタッパーにコンソメスープを入れ、3つのタッパーを重ねて袋に包み、それを華奈に渡す。

「一応、多めに作っておいたので余ったら冷蔵庫にでも保存してください。親子丼を電子レンジで温める時は温め過ぎないでください。卵が固まってしまうので。コンソメスープは半日は温かいままなので大丈夫です。お米は自分で準備すること。以上です。」

「え?…え?え?」

「いや、そんなにえ?を並べられても困ります。」

「い、いや、え?これ…」

「華菜の分の夕食です。“作り過ぎた”のでどうぞ。」

勿論、嘘である。因みに、ちゃっかり華菜と読んだことに華菜は気づいていないらしい。

「え?でも…」

「いいから。家帰ったら食べてください。冷蔵庫、空っぽなんでしょ?」

「そ、そうだけど…」

「俺は作り過ぎて困ってる、華奈は冷蔵庫が空っぽで夕食に困ってる。ならお互いウィンウィンでお終い。」

「……いいのか?」

「だから、そう言ってますって。」

「……あ、ありがとう。 」

「どういたしまして。」

結果的に夕食を押し付ける形になったが、時に問題は無いだろう。
生徒が先生に飯食わすというのは色々問題はありそうだが、誰かに見られていない限りは大丈夫だろう。
念の為、周囲を確認してから家に入ったから尚更だ。
その後、お邪魔しましたと華奈は帰って行った。

「……今の誰…?」

一番初めに登場したのはビンだった。

「うちのクラスの担任だよ。」

「ふーん…」

何故か土偉く暗い顔をしているが、気のせいだろうか?
んーっ、と背伸びした後、ビンと共に部屋に戻る。



「「「「(にこ~~~~~~~~~~~…)」」」」



部屋に入ると今の今まで隠れていた奴らが、見事に勢ぞろいしていた。桜姬、母さん、アラクネ、セイレーン×2(いつの間に2人に戻ったんだ…?)、何故か居る会長さんが怖いほど口の避けた不吉な笑み(目は笑ってない)を浮かべて待っていた。
しかも、ビンと同様、酷く暗い顔をしていた。

「え、ええっと~…」

新が冷や汗を滲ませながらそう言うと。

「新…?」

「は、はい。」

「正座。」

「……はい…」

満面の笑みで死刑宣告せいざせんこくされ、その後、約1時間にわたる取り調べが行われた。
因みに、その後の夕食には、半強制的に会長さんが食べていくことになったのだが、夕食中、何故正座させられて説教を食らったのかはその時になっても分からなかった。



* * *



「はい、貴方。あ~ん。」

「いやいやいや、ヘラさん!?私は自分で食べられるからね!?」

食事中、ゼウスは妻であるヘラにリア充爆発しろの呪文「あーん」を迫られていた。
しかし、ゼウスはヘラから向けられる親子丼の乗ったスプーンを仰け反るようにして拒絶し続けている。

「私は貴方の妻です。」

「え?あ、はい?そうだね?」←少しよく分からないゼウス

「つまり、貴方は私のモノです。」

「はい?」←少し不安を感じるゼウス

「ですから他の悪い虫に手を出されないように、こうやって私の夫だと示さなければならないのです。」

「いやいやいやいやいやいや!?そんな必要ないよ!!」

「あります。………ああ、そうですか…。また、浮気しているんですね。だから私にあーんさせてくれないんですね。その相手に私にあーんされる姿を見せるのが嫌だから拒否するんですね。そうですか、次は誰ですか?私が消し炭にしてあげます。さぁ、誰ですか。私だけのゼウス様に手を出した泥棒猫は誰ですか。答えてください。私はもう必要ないんですか?私を愛してはくれないんですか?殺します。誰かに取られるくらいなら私が殺します。」

「いやいやいや!!浮気なんてしてないからね!?気恥しいだけです!!はい!!」

ゼウスの不倫を疑ったヘラの問い詰めに激しく首を横に振るゼウスが勢いよく正直なことを言う。

「では、あーんすること自体は問題ないんですね。」

「うんそうだよ!!……はい?」←誘導されていることに気づき始めたゼウス

「では、あーん。」

「う、うぅ……あ、あーん。」←覚悟を決めたゼウス

「(パクッ)」←スプーンに乗った親子丼を食べたヘラ

「…へ?」←驚くゼウス

「はい、あ~~~~~~ん。」←口に含んだ親子丼を見せながらゼウスに接近するヘラ

「いやいやいやいやいやいやいやいやいや!?口移しなんて聞いてないよ!?」

「あ~~ん。」←迷わず直行するヘラ

だが次の瞬間、ヘラの動きが停止する。
その原因は、異常な圧力。“殺気”である。

「今は食事中だ。そんな汚い食べ方をするなら追い出すぞ、ヘラ?」

「んぐっ…新さんにそれをする権利がありまして?」

1度口の中に入った物を呑み込んだヘラが新を睨みつける。

「俺はここの家の主だ。俺が作った飯をそんな巫山戯た食べ方をするなら問答無用で立ち去ってもらう。」

新も押されず殺気を強め、ヘラを押し潰す程の殺気をぶつける。
その衝撃で、平常心を保っていたヘラの顔に冷や汗が滲む。

「…………はい。」

しばらくして負けを認めたヘラが黙って食事を開始した。

「親父も。」

「は、はいっ!!」

「そういう事をしたいのなら他所でやれ。」

「はいっ!!すみませんした!!」

明らかに立場が逆転しているが、その場にいた誰もはスルーした。
何故なら、今新に余計な衝撃を与えれば、自分に余計な矛先が向けられることを心配したからである。

新以外のメンバーは思った。


食事中に新を怒らしたらヤバい。



* * *



場所が変わり、華菜の住むとある一軒家。
その家には壁に所々御札やら焼けたシミみたいなのが付いていたが、これでも憧れのマイホームである。
約5ヶ月程前、手頃価格の空き家を見つけた華奈は、予算が少なかった訳もあってそれに飛びついたが、いざ住んでみると事故物件であることがその後に判明した。
今のところ何ら問題はないので普通に暮らしているが、休日になると朝方に金縛りにあうことが多々あったが、そのまま二度寝しスルーしてきた。

我ながら鋼の精神だと思ってしまうが、それは置いておいて。
今問題にすべきは目の前のタッパーだ。
それは、先程神藤新に渡されたものであり、私の夕食だという。しかも、彼の手作りときた。
ゆっくりと手を伸ばし蓋に触れようとするが、すぐに首をブンブンと振り、腕を引っ込める。

華菜の頭の中ではこんな論争が巻き起こっている。
あくまでも私は教師だ。
うん。なりたてホヤホヤの新米教師だ。
うむ。いずれは誰もが想像する立派な教師になるであろうこの私が、生徒に飯を奢られても良いのだろうか?
しかも、持ち帰った後すぐにご飯と一緒に電子レンジでチンしてしまっても良かったのだろうか?

うーん、と唸りながら約一寸先でオレンジ色の光に照らされながらグルグルと回る丼に移し替えた親子丼を見る。
数秒後にチーンというお馴染みの音で温め完了の合図が鳴る。

「まぁ、食べてから考えるか…」

実のところ華菜の空腹はピークに達し、先程から腹の鳴る音が部屋に小さく響いているのだ。

電子レンジの扉に手をかけ、開けてまず驚いた。
その驚きの原因は親子丼の放つ香りである。
なんとも言えない醤油と卵の香りが食欲をそそる。

「親子丼ってこんなにも良い匂いだったっけ…?」

ゴクリと唾を飲み込んでから丼を取り出し、机の上に置く。それと一緒に、残り二つのサラダとコンソメスープのタッパーを並べる。
サラダという物は簡単そうに見えるが、実は見栄えを整えるのが意外と難しい。適当にやってしまうと雑草の山のように感じてしまう。
しかし、このサラダは違う。明らかに手慣れている。盛りつけを常日頃から行っているような出来栄え、店で出されても違和感を覚えない盛りつけである。

スープもだ。
普通にスーパーで売っているコンソメスープの元を使っていたようだが別物のように感じる。
何故なら、華菜の知っているコンソメスープとはスープの輝きが明らかに違う。透明な黄金のスープ。液体の中に沈む具材達が宝石のように見える。

「………。」

初めにスプーン1杯、コンソメスープを口に含む。
美味しい…!!
野菜の旨みがスープに溶け込んでおり、その味を極限まで引き立てている。口の中が幸せ。そう感じさせる程の美味しさである。
次はサラダだ。
シャキシャキとした野菜の食感に、ナッツの食感が加わり楽しい。味も良し。ドレッシングはポン酢に近いが明らかにコクが違う。これは…昆布?いや、昆布ではこんな旨味は生み出せない。
なんだろう…明日会ったら聞いてみるか…。

最後はメインである親子丼、トロトロの黄金の親子丼だ。
本当にどうやったらこんな輝きを生み出せるのか謎だが。それから発せられる香りが、これでもかと食欲をそそる。
もう我慢出来ないと、スプーンで多めに掬い取り、口に含む。

その瞬間、一瞬だが衣服がはじけ飛ぶような感覚がした。
美味しい。
トロトロの卵が舌にねっとりと纒わり付き、味をいつまでも離さず舌を唸らせ、そこに柔らかくあっさりとした鶏の胸肉が口の中で混ざり合い、絶妙なバランスを作り上げている。
しかも、トロトロの卵達が良く米と合い、箸が止まらない。

気がつくと、綺麗に完食してしまった。
しばらく余韻に浸り、ふと思う…

「……なんで彼奴しんどうあらたはこんなにも料理が上手い。」

神藤新はオタクである。完全なる2次元オタクである。
それなのに料理ができるのは、あまりピンと来ない。

「ふむ……そういえば、彼奴は普段家事を担当していたんだったか…ならば納得か…」

うんうんと頷きながら納得の表情を浮かべる。

「ん?まてよ……“この味”…何処かで…」

食べた気がする…と呟こうとしたその時、パサッと何かが本棚から落ちた。
その方向へ目を向けると、そこには1冊のノートが落ちていた。随分と懐しい物である。薄ピンク色に花柄、華菜が高校時代に使っていたものだ。

それを手に取り、少しだけ中を読む。

「…………んん?」

手に取ったノートはどうやら授業の為に使っていたものではないらしい。
何故なら、そこに可愛らしいくまさんやら、大きめ口語文が書かれていたからだ。
そういえば華菜は一時期、“言葉を話すことが出来なかった”ことがある。
原因は…出来れば思い出したくはない…。
しかし、高校卒業後何故か普通に話せるようになっていたのだ。何故話せるようになったのかは不明。
恐らくこのノートは、その時に使っていたものだろうが、このノートは使った記憶が何故か全くと言っていいほど無い。
そして、気になる文章が書き記されていた…。

『言葉は話せないのか?』

『うん』

『それはずっとか?』

『違う』

『できるよ…?』

『じゃあ、これからは俺には口パクで話してみなよ。』

『え?』

『でも…』

『分かった』

途中会話がおかしい部分があるが、恐らくその部分は話している相手が口で言った部分が抜けているのであろう。
しかし…“口パク”…?何故口パクなんだ…?
俺、という事は相手は男性だろうが、記憶に無い。
首を傾げながらづきを読んでいく。

『すごい!!なんで分かるの!?』

『大丈夫、平気だから。』

『これからは俺には口パクで話してくれないか?練習のためにもさ。』

『うん。分かった。』

ふむ…どうやったかは分からないが、どうやら相手は口パクで言っていることが分かるらしい。
正直、読んでいて驚いている。なのに何故か記憶には無い。
そのままパラパラとめくるが、白紙が続いた。

「なるほど…彼(?)と口パクで話すようになったから、ノートを使わなくなったのか…」

つまりここから先は全て白紙…かと思われたが、最後の1ページだけ文章が書かれていた。


『好きです。私と付き合ってください。』


「ブフッ!!!!!!!!!?!?!?!?!?!?」

突然の告白に思わず吹いてしまう。
え?私はこの男に告白したのか!?
いやいやいや待て待て待て!!!そんな記憶忘れるはずがないだろう!?
し、しかも、こ、告白だと!?彼氏いない歴=年齢の私がか!?え!?返事は書かれていないのか!?どうなったんだ!?
記憶が無いという事は…ふられたのか?
…まぁ、そりゃそうだな。そもそも、声の出ない私などを好く奴などいるわけがない。

はぁ、とため息を零す。パタンとノートを閉じる。
すると、当然の如く背表紙が目に入る訳だ。
この時、華奈に大きな衝撃が走った。同時に、謎の頭痛に襲われる。
痛い。頭が割れるようだ。頭蓋骨に穴を開けハンドミキサーで中身をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているような感覚だ。

思わずノートから手を離し蹲る。

華菜の手から離れたノート。
その背表紙には…




赤黒い“血痕”が付着していたのである…。




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