異世界八険伝

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26.ノースリンクへの道2

「ねぇ、リンネちゃんメルちゃん! いきなり変なこと聞いてもいい? 」

 順調に進む馬車の中、メルちゃんの膝枕でまどろんでいるボクを、可愛いエルフの顔が覗き込んでくる。

「ん? どうしたの? 」
「どうぞ、アユナちゃん」

「えっと――2人は、トイレ行かないの? 」

「「えっ!? 」」

「だって、2人がトイレに行くところ、見たことない! 」

 そりゃそうだ、トイレに何の用もないもん。

「まぁ、隠すことじゃないかな」

「トイレは隠さないとダメ! 恥ずかしい! 」

「まぁ、スキルですよ」

「隠れてトイレに行くスキル!? 」

「違うー! トイレに行かなくても良いスキル! 」

「えぇ!? ズルい! そんなスキルあるなら欲しい!! 」


 足をバタバタさせて暴れる小学生に、馭者のティミーさんの優しい雷が落ちる。

「勇者様方――朝から何て話をしてるんですか!? 」

 さすがに男性が居る所での話題じゃないよね! アユナちゃんが口をパクパクさせ、メルちゃんは顔を赤くして俯いちゃったよ。



 ★☆★



 チロルを出発してから2日目。

 朝5時から休み休みに進む馬車は、既に行程の半分を過ぎていた。魔物殲滅速度が早いからだろうか、目的地へは今日中に到着可能らしい。

 そうは言っても、魔物の襲撃は相変わらずで、1時間に10匹以上は確実に退治している。その中でも、ガルーダやサイクロプスは格段に強かったけど、アユナちゃんの風魔法が活躍してくれて何とかなったよ。やはりシルフと契約できたことが大きいのかもしれない。


 しばらく街道を進むと、右手側の森の奥、数百mほど入った所に巨木が見えてきた。すると、アユナちゃんが突然叫び始めた。

「いるよ、いる! いる!! 」

 この可愛い小学生、頭が沸き過ぎて、見えてはいけないモノが見えちゃったのか!?

「何が居ました? 」

 優しいメルちゃんが優しく尋ねる。

「森の中級精霊ドライアード! 中級精霊と契約できたら精霊魔法使いとしてレベルアップできる! 」

 なるほど、あの巨木の主みたいな感じかな? よし、ここは仲間のため、頑張ろう!


 ボクはアユナちゃんと手を繋ぎ、森に分け入って巨木を目指した。途中、転がりながら逃げるゴブリンたちに手を振りながら――。



 森を進むこと約500m、ボクたちは例の巨木の根元まで辿り着く。

「うわぁ、こんな大きな木、初めて見た! 」

 どのくらい太いんだろう――直径はボクが両手を広げた幅の3倍はある。そして、見上げた先には、天を衝くような幹! 東京タワーくらいは軽くありそうな高さだ!!

「ふふっ。ここは古くて優しい森ね。この木は1000年も生きてるんだって。ちょっと登ってくるね! 」

「えっ!? ここを登るの!? 気を付けてね――」

 言い終わる前には、既にアユナちゃんはボクの頭より上に居た。ドライアードは木のかなり上に棲んでいるらしい。ふと見上げると、スカートからパンツがチラチラ見える。護衛さんたちを連れてこなくて良かった。貴重なエルフっ娘のパンチラはこの世の宝ですからね。

 ん?

 白と水色の縞模様――リザさんと同じ!?
 エルフって、もしかしたら全員あのパンツなのかな――ボクの頭の中で、白と水色の縞パンを着たアユナパパが振り返った瞬間、ぶるぶるっと首を振り、変な妄想を振り払う。

 妄想と激闘を繰り広げていると、パンツが近づいて来た――。

 ドライアードとの契約が終わったらしく、アユナちゃんがゆっくり降りて来ているようだ。


 3mくらいの高さから華麗にジャンプしたアユナちゃんを、ボクが全身でがっちり受け止める。軽すぎだよ。ゆっくりと地面に降ろしてあげると、顔を上気させながらドライアードを召喚してくれた。

『あなたが勇者リンネ様ですね? わたしはドライアード、樹木の中級精霊です』

「あ、はい! リンネと申します。宜しくです」

『事情はアユナ様から伺っています。わたしたち精霊も魔の奔流になすすべなく、滅びの時を待っておりました――この出逢いも世界のご意思だと思います。ぜひ、力を合わせて戦いましょう』

「はい! まだ見習い勇者ですが、頑張ります! 」

 挨拶を終えると、優しい微笑みだけを残してドライアードさんの姿は忽然と消えてしまった。緑髪の綺麗な女性の姿がまだ瞼に焼き付いている――服の露出度が高過ぎて、実は凄く緊張しました! 気持ち的には、興奮じゃなく羨望かな。もうボクの心は8割くらい女の子なのかも?

 そう言えばニンフも半裸に近かったような。シルフちゃんはきっちり服を着ていたよ? 身体の大きい精霊ほど露出がアップしている? 身体が大きくなると服のサイズが合わなくなるのかな――それとも単なるロリ規制?


 ボクたちは森を走り、馬車まで帰還した。

 2時間の遅れなら頑張って取り戻せるよね!



 ★☆★



 その後、大きな戦闘もなく順調に馬車を進ませて行くと、街道沿いの町が見えてきた。チロル程ではないけど、立派な城壁を持つ比較的大きな町――。

 ティミーさんの説明によると、ここは最北の町ヴェルデらしい。小さいながらも冒険者ギルドがあるそうなので、立ち寄ることになった。


「旅の方、ヴェルデにようこそ。すみませんが身分証を見せてください」

 この世界に来て、初めて身分証の提示を求められたよ。

 アイテムボックスから身分証代わりの召喚石を出そうとすると、ラーンスロットさんが慌てて止めてきた。どうやら冒険者カードで良いらしい。ボクも無用なトラブルは避けたいので助かった。ラーンスロットさんありがとう!

 全身鎧を着込んだ門番っぽい兵士さんが、カードを1枚ずつ何かの装置に当てて確認していく。ギルドの装置の簡易版? 犯罪歴とかが見れるのかも――。

「はい、確認できましたのでお返ししますね。最近、魔族が出たという噂があったんでね、みなさんも気を付けてくださいな」

「分かりました! ありがとうございます」

 ここにも魔族が? もしかして、数ヶ月前にニンフの町を襲ったという魔人!? 今戦いになったとしたら勝機はあるのだろうか。相手は町を丸ごと滅ぼせる力がある――そう考えていた時、メルちゃんが耳元で囁いてきた。

「敵意を持った気配を感じます。数は4、距離は60m――」

 ボクはさり気なく辺りを見回す。

 朝9時という時間帯だからか、人の数はとても多い。大勢の人の波を見ていると、どうしてもフィーネでの出来事を思い出してしまう。勇者は嫌われ者だ――ボクの正体を知っている人が、町の人々を扇動して襲ってくるかもしれない、そんな疑心暗鬼がボクの心を狂わせる。

 路地にしゃがみこんだ柄の悪い連中、黒のローブを纏った魔法使い風の連中、グレーの外套のフードを被った冒険者風の連中、あちこち目を光らせているスリをしそうな若者、下心剥き出しに見てくる男たち、逆に嫉妬の眼差しを向けてくるオバサン集団――意識しちゃうと、通り過ぎる全員が怪しく思える。メルちゃんが言う4人なんて、特定できないよ。

「一先ず冒険者ギルドへ向かって移動しようか」

 ボクたちは、世間話をしながら歩き始めた。

 気配に気付いているのはメルちゃんだけ。他の3人はあくまでも自然体だ。アユナちゃんはラーンスロットさんと仲良くなったみたいで、楽しそうに話している。ティミーさんはギルドの厩舎へ馬車を運び込んでいる。大丈夫、気付かれていない。


 ギルドに到着早々、すぐに買い取りカウンターへと並ぶ。

 入口からは完全に死角になっていて、もし怪しい奴等が入ってきたら気付けるはず。

「気配はギルドの外です、数は5――」

「入って来ないね。ギルドで時間を潰して様子を見よう」

 ただの勇者嫌いか、美少女狙いの誘拐犯か、もしかしたら魔族か――緊張が高まり呼吸が苦しくなる。



「買い取りお願いします! 」

 何も知らないアユナちゃんが元気一杯に受付のお姉さんに絡んでいく。

「では、冒険者カードをお預かりしますね」

 ボクたちはそれぞれのカードを手渡し、大量の魔結晶をカウンターに並べていく。受付の人も周りにいた人も喫驚の表情を浮かべている。そりゃそうでしょ、あれだけ魔物をやっつけたんだから。

「えっと――魔結晶は上級2、中級76、下級が670個で、24300リルになります。ドロップアイテムの方は16700リルですね、両方合わせた合計は――41000リルです」

 41000リルってことは、日本円に換算するには1000倍すれば良いから――4100万円!? うわっ、大金持ちだ!!

「あ、ありがとうございます」

 周囲でどよめきが上がる。ボクはそそくさとお金をアイテムボックスにしまった。

「魔結晶の確認が取れましたので、アユナさんのギルドランクがDに上がります。メルさんはBランクへの昇格試験が受けられます。リンネさんはあと上級魔結晶8個でAランク昇格ですね。頑張って下さい」

 そう言えば昇格試験ってのがあったね。ランゲイル隊長は無事にミルフェちゃんを王都に送ってBランクに上がったのかな。

「私はまだ昇格試験を受けなくて大丈夫です」

 メルちゃんが俯いて首を左右に振ると、水色の髪が左右に揺れる。可愛いから余裕で受かるのに。ただ、事件解決や迷宮攻略したりすればマスターが上げてくれるでしょ。アユナちゃんだけは終始ガッツポーズをしている。エルフっ娘も可愛い。

「分かりました! いつでもお申し込み下さい」

 ボクたちはカウンターのお姉さんに手を振って別れる。さぁ、ここからはお楽しみの買い物タイムだよ!

 お金を計画的に使うためには、メルちゃん先生のアドバイスは必要不可欠だ。装備にはどうしてもお金が掛かるものだし。


(メルちゃん用)

[グリフォンメイス:攻撃:5.20、特殊:風弾/中級]
 14700リル。グリフォンの牙や爪を加工した魔法武器。パワーを十分に生かせる鈍器系統で、かつ魔力を注ぐと風属性の遠距離攻撃もできると言う優れモノ!

 棒2号は、またボクが引き取った。近接戦闘用に役立つからね。


(リンネ用)

[水魔法/初級]
 13000リル。生み出した水をイメージ通りに扱う魔法。戦闘だけでなく、飲み水や料理、洗面やお風呂にも役立つだろうということで、ちょっと高いけど、みんなで悩んだ挙句に決めた。

 これで攻撃のバリエーションが増えるよね。ボクが雷と水と風属性(棒2号の風刃)、アユナちゃんが光と風属性、そしてメルちゃんも風属性の風弾! 風属性は3人ともお揃いだね!


(アユナちゃん用)

 アユナちゃんは、精霊さんが増えたから大丈夫だよ、と言うので今回は装備更新なしになった。ワガママを言わない良い子に育ってるみたい。


 メルちゃんの提案で護衛さんたちに、1人2000リルの臨時ボーナスを支給。とっても喜んでくれた。子どもたちからお小遣いを貰えて幸せだね!

 ついでに3人分の上の下着も購入。レベルが上がると胸も大きくなる――と言う噂の真偽はいかに!?

 その他、食料なども買い込んで、みんなでお昼ご飯を食べたら残金が7000リル(700万円)になってしまった! まぁ、また増えるでしょ――。


 次にギルド職員さんからの情報収集だ。竜神の角の付近には結界があるので魔物が出ないらしい。東京湾アクアラインみたいな、ただの交通設備だ。しかも、“勇者様御一行”ということで、無料にしてもらえるらしい! 護衛さんたちとはここでいったんお別れし、出発前に馬車で落ち合うことになった。


 受付のお姉さんに呼び出されて行ってみると、びっくり! ミルフェちゃんからの伝言が入っていた! 魔導通信という100文字までの伝言板――全ギルドを繋ぐ、要するにFAXでの伝言だった。

『リンネちゃんへ。ノースリンク行きの件は聞いたよ。北は魔物強いから要注意! 私たちフリージア王国使節団は王都を出たよ! 後10日で西の国境に着くらしい。安全で暇だけど頑張るよ! 連絡ちょうだいね! 』

 返信しなきゃ!

『ミルフェちゃんへ。魔族が現れたらしいので気を付けてね! ボクは青の召喚者メルちゃん、エルフ村のアユナちゃんと竜神の角を目指してる。女神様やドライアードに会ったんだよ! 8日後にはチロルに戻る予定! 』

 ちゃん付けで大丈夫かな? うわ、96文字――結構ぎりぎりになっちゃった!


 結局、3時間くらい掛けてギルドでの用事を全て済ませた。メルちゃんいわく、この間ずっと怪しい気配はギルドの外で現れては消え、消えては現れるという感じだったらしい――。

 ギルドの外で待ち受けるのは何者か? ボクたちは覚悟を決めてギルドから出た――。



 ★☆★



「俺は西の勇者レオンだ。付いて来い! 」

「「えっ!? 」」



 ★☆★



 今ボクたちは、とある屋敷の一室に居る。

 質素なこの部屋の中には、西の勇者を名乗るレオンという男性――金髪サラサラな10代後半の爽やかイケメンと、その仲間と思われる3人――黒髪の長身剣士、水色髪のお姉さん僧侶、白髪のお爺さん魔法使いが、ボクたちと向かい合って座っている。

 何この典型的な勇者パーティ!? 鑑定は控えるけど、勇者レオンを含めた4人全員が凄まじい力を秘めているのが感じられる。もしかしたら、西の召喚石から召喚したんだろうか?

「初めまして、リンネです。西には勇者が召喚されていないと伺っていましたが――? 」

 緊張しながらも、無事に自己紹介ができた。

「あぁ、俺は最近ここに来たばかりなんだ」

 前髪を手で掻き上げるポーズ――何気にボクにアピールしてる? あれっ!? アユナちゃんが蕩けそうな目で見てるよ! そうか、エリ村にはパパしかイケメンが居なかったから免疫ないのか! メルちゃんは勇者を睨み付けている。いきなり新品メイスを試さないよね!?

「そうなんですか。もう残り87日くらいですね、お互いに頑張りましょう! ところで、ボクたちに何のお話が? 」

 ナンパくるよ! 一緒にパーティ組もうとか? けど、それも良いかも? 西の勇者と召喚者が仲間になれば北の大迷宮だって余裕かも!!

「ノースリンクへ行くんだろ? なら、赤の召喚石を必ず破壊してくれ」


「「えっ、なぜ!? 」」

 ボクとメルちゃんがハモった! アユナちゃんは――まだ西の勇者さんをうっとり眺めてる。ダメだこの小学生エルフっ子。

「あれは――呪われているからだ」

 ちょっと言葉に詰まった後で出てきた“呪い”という言葉に、何となく違和感を感じる。

「召喚石が呪われている!? どういうことなんですか? ボクは何も聞かされていませんが――」

「すまんが、情報源は伏せさせてくれ。あとは、信じてくれとしか言えん」

「ちょっと待ってください! 呪いとか、実際に自分の目で見ないと分かりませんし、魔人の呪いを解くアイテムを持っていますし――」

「なるほど、君たちがニンフの呪いを? 」

「はい、運よく通り掛かって――」

 なぜか西の勇者の仲間たちが睨んできたよ! もしかして手柄を奪ってしまった? 怒鳴られそうで怖い――。

「召喚石の呪いは強力だ。君たち程度では解呪できないだろうよ。ではこうしよう、召喚石をそのまま持ってきてくれ。俺が解呪してやるから」

「なら、一緒に行きませんか? 急げば今日中にノースリンクに到着可能ですよ」

 アユナちゃんが嬉しそうだ。メルちゃんは恐い顔で首を振っている。

「すまない、行けない理由があるんだ――」

「それなら――」


『ガシャーン!! 』

 突然、部屋の窓が割られた!!

「レオン様、奴等です! 」

 仲間の僧侶が耳打ちするのが聞こえた。

「勇者リンネ――残念だけど今日はさよならだ。分かってると思うが、俺たちのことは秘密にしてくれ。それと、赤の召喚石の件、くれぐれも頼んだぞ!! 」

 そう叫ぶや否や、勇者パーティは風のように去って行った――。


 えっ、ここ2階なんだけど――誰かが壁を上ってきてるみたいだよ!? もしかして魔人!? ボクたちも逃げるべきじゃない?

「ボクたちも逃げる? 」

「そうですね! ほら、アユナちゃんもしっかり! 」

 西の勇者パーティから遅れること僅か数秒――部屋から出ようとしたボクたちを、白装束の5人が取り囲んだ!! 手に持つ剣や槍の刃が物騒に煌めいている――。

「リンネちゃん、ギルドで感じた気配です! 」

 えっ!?


『武器を捨てて降伏しろ!! 』

 白装束のリーダーと思われる人が叫んだ。声色からすると、妙年の女性みたいだ。

「貴女方は何者ですか? いきなり武器を向けるとは! 」

 メルちゃんはメイスを持って完全に戦闘モードだ。アユナちゃんもシルフとウィルオーウィスプを召喚した。ボクは棒2号を構える、久し振りの感触――。

『我々は、自警団エンジェルウィングだ! 』

「自警団がなぜ勇者様の邪魔をするの? 」

 アユナちゃん、涙目で頑張って言った!

『勇者――だからだ! 』

 っ!!
 フィーネのパターンだ――逃げるしかない!

「2人とも、手を出しちゃダメ! アユナちゃん、ボクが合図したら風と光の精霊で隙を作って! ここは逃げるよ!! 」

 ボクが逃げるための指示を出した時、白装束の仲間がリーダーに耳打ちするのが聞こえた。

『アリス様、人数が足りません! どこかに1人隠れている可能性があります! 』

『おい、あと1人はどこだ!! どこかに隠れているのは分かっている! 無駄な抵抗はするなよ? 』

「何を言って――あっ! 」

 巻き込まれたか。
 エンジェルウィングが追いかけていたのは、きっと西の勇者パーティ4人。秘密にしてくれって言われたけど、どうすればいいの?

 メルちゃんがボクの方を見て頷いている。アユナちゃんは――ボクの合図待ちだ。隙を突くにしても、まずは誤解を解かないと!


「待って! ボクたちは今朝この町に来たばかりです。人違いだと思いますよ! 」

『なにをっ!? そんな嘘、誰が信じるか――』

『人違いかもしれません! 情報では女は1人のはず。しかもこの人――女神の加護持ちですよ! 』

 赤い瞳を持つ白装束の人が、泣きそうな声でリーダーに訴えかけている。

『なにっ!? す、すまない! こちらの勘違いのようだ――』



 ★☆★



 自警団エンジェルウィング――女神の加護を有する女性だけで組織され、魔の手からヴェルデの町を守り続けている実力派集団。リーダーのアリスさんは上級剣術を使い、他のメンバーも中級以上の魔法を使用する。中には称号に限定した鑑定スキル持ちも居るそうだ。

 ボクたちは屋敷の一室でお互いの情報を確認し合った。

 それにしても、ここは誰の家なの? 勇者の住居不法侵入――しかも、窓ガラスが割られてるし。号外でるよね! いや、某RPGでは推奨行為だっけ?

『こんな辺境の町に本物の勇者殿が来られていたとは! 改めて謝罪をさせてください。本当にすみませんでした――』

 リーダーに合わせて他のメンバーも頭を下げる。

「いえいえ、怪我をさせずに済んで良かったと思いますよ? 」

 メルちゃん、言い方にトゲがある! 3対5でも、こちらが楽勝する自信があったみたいな言い方――。

『青様は手厳しいな! 』

 アリスさん、苦笑いだ。それにしても青様って誰様?


 エンジェルウィングはある情報を掴んでいた。町の北西部に魔人の居城があるという情報だ。さらに言えば、勇者レオンを名乗る者の持つ称号――それは、魔神の加護。それらを勘案し、勇者レオンが魔人と何らかの関係があるのではないか、との結論に至ったとのこと。

 西の勇者は魔人かもしれない? 赤の召喚石を破壊してほしいとの依頼、結界のある竜神の角に行きたがらなかった事実――なるほど、可能性はあるね。こういう困ったときはメルちゃん頼みだ。

「メルちゃん、どう思う? 」

「西の勇者とエンジェルウィング、どちらが信じるに足るかと言う意味でしたら、それは後者です。しかし、私は両者とも信用していませんけどね! 」

『どうして我々を信じてくださらないのか、青様にお訊きしても? 』

「逆に聞かせてください。なぜ、魔人の居場所まで分かるのに戦わないんですか? 」

 メルちゃんが凄い剣幕で睨んでる――。

『……』

 やばい、一触即発の空気だよ! エンジェルウィングの人の眉間に青筋っ! どっちが青様か分かんなくなってきた!!

『何度も攻めた――でも、勝てなかったんだ。仲間は何人も殺された! 魔人の城には魔の結界があって、我らが女神の加護は無効化されてしまう。奴等が城から出て来ない限り、我々には勝機が無くなった――情けない話だがな、今となっては仲間の未練さえも漱ぐことができないのだ。くそっ!! 』

 あ、メルちゃんが泣かせた!

 魔人――あの町のことを思うと、絶対に許せない! 何とかしてこの人たちに協力できないかな――。

「ボクたちも魔人討伐に協力します。作戦があります! 」


 ボクたちはその後、作戦の詳細を擦り合わせて解散した。魔人――避けては通れない存在。勝てるのか分からないけど、ボクは逃げない、戦うんだ!

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