異世界八険伝
2.勇者リンネ誕生
「召喚されし勇者よ、この世界を救ってくれ! 」
「えーっ!? ゆ、勇者なの!? 」
「召喚された者は、自らの記憶を失うと聞く。過去は不要、未来しか必要がない運命だからじゃろうが――自分の名前すら思い出せないのは不便じゃな。何なら儂が名付けてやろうか? 身体がずっと銀色に光り続けているから――」
「いえ……心配なので、自分で考えます」
こんな不合理なこと、普通ならば納得できないはず。
でも、記憶が無いからなのか、それ故に失ったモノの大きさが実感できないためか、過去に対する執着心が思ったより湧かない。
僕が日本に何を残してきたのか、今まで僕は何を頑張ってきたのか、これから何をしようとしていたのか――それが分からないことが、過去への執着心を希薄化させ、絶対に日本へ帰るんだという意志を押さえ付けている。
「召喚早々、今のお主には名前どころか、年齢も性別もないはずじゃ。ステータスにも書かれていないじゃろ? 」
「ステータス、ですか? 」
「あぁ、ステータスが分からんのか。やはり異世界人じゃのぅ。この世界の生物やアイテムは全てが数値化されておる。お主、頭の中でステータスを思い浮かべてみよ。話したり、読み書きは問題なくできるじゃろ? 等価交換の魔力法則により、記憶を失う代わりに言語置換力が与えられておるからな。それ故、儂らは異世界人同士でありながら、話ができておる」
「確かに……」
僕は落ち着いて目を閉じ、頭の中でステータスを思い浮かべる。
すると――頭の中に文字が浮かんだ!!
『あなたのキャラクターを設定します。1.名前、年齢、性別を設定してください』
なるほど、これじゃまるでゲームだね。
ならば、割り切って効率良く作るべきだ!
M属性なんて欠片もないし、なるべくチヤホヤされたいので、確実な美少女キャラクターを作るぞ!
下心なんてない! 女に生まれ変わりたい何て願望も……ない。ちょっと、スカートでクルクル回ってみたいというささやかな願望があるくらいだ。
可愛い女の子なら、パーティにも誘われやすいし、通りすがりのファンからアイテムを貰えるかもしれない。それは下心ではない、効率だ。社会の常識だ。可愛いは正義なんだ。
名前は――[リンネ]にする。輪廻転生から思い付いただけで、深い意味はない。転生じゃなく転移だろって細かいツッコミもいらない。
年齢は――長生きしたいからなるべく若くしよう。かと言って幼女だと戦力的に詰む。ある程度は……そうだ、花のJS[12歳]だ。最高学年に君臨する小6というのは、小学生の頂点に立つ存在! 凄く偉いんだぞ。キャピキャピしても誰もドン引きしないんだぞ。
当然、性別は[女性]だ。慎重に、慎重に、慎重に。よく、英検とか漢検の性別のマークシート欄を間違えてマークしちゃう人いるよね、いないか。
よし、次へ進もう。
『2.キャラクターの容姿を設定してください』
そうきたか。ここもミスは許されない。この世界の価値観がどうだか分からないけど、自分の感性を信じる! ブサ子にならないよう、確実な美少女キャラクターを作るぞ!
見た目はとても大切だ。イジメの原因はルックスだ!と豪語する奴も、強ち間違ってはいないはず。僕は人生で初めて本気を出す!
身長:高すぎず、低すぎずの[150cm]でいこう。
体型:よく分からないから[普通]で良いかな。
髪色:まぁ、自分が好きな[白銀色]に。プラチナカラーは綺麗だよね。
髪の長さ:長すぎると邪魔だし、短すぎるのも折角の女の子なのに勿体ない。肩くらいあれば、結んだり出来て楽しめるよね、ということで[ミディアムロング]にしよう。
肌:[透き通るような白]を選択。透き通るようなって、普通の白とどう違うのか気になっただけ。幽霊みたいに本当にスケスケだったらどうしよう。
眼の色:悩むね。折角だから日本人離れしておこう。[水色]くらいかな。
以下、容姿に関しては凄く詳細に選択させられた。
自分の身体だから妥協したくないけど、さすがに目の前の老婆を待たせるのも申し訳ないので、自分に素直にフィーリングでサクサク決めていく。
『3.スキルを4つ選択してください』
「スキル? 」
「あぁ、この世界の生物は、先天スキルを1つか2つ持って生まれるんじゃよ。後天スキルというのもあるにはあるが、取得するには数年間の厳しい修練が必要じゃ」
「なるほど。スキルを選ぶのでもう少し時間をください」
「そうか。後悔しないようじっくり考えなさい」
4つか――意外と多いね。
まぁ、いきなり異世界に連れて来られて、即適応しろというんだから4つくらいは必要だよね。
ざっくり500種類くらいある一覧表からメインを抜粋すると――。
戦闘スキル:剣術、槍術、斧術、弓術、鈍器術、棒術、短剣術、短刀術、二刀流術、投擲術、体術、気功術、呪術、毒術、隠術、盗術、幻術、火魔法、水魔法、氷魔法、土魔法、木魔法、光魔法、闇魔法、雷魔法、精霊魔法、召喚魔法、取得経験値2倍、必要経験値半減、クリティカル率2倍、物理ダメージ軽減、魔法ダメージ軽減、状態異常耐性、物理ダメージ増加、魔法ダメージ増加、体力値増加、敏捷増加、魔法詠唱省略、カウンター、アイテムドロップ率上昇――。
生活スキル:鑑定眼、基本生活魔法、食物超吸収、移動速度上昇、変身、照明、算術、基礎科学、念話、結界、病気耐性、解錠、アイテムボックス、占い、歌唱、探し物、危険察知――。
たくさんありすぎて訳が分からん。
ん?
どうやら、視線を集中すると簡単な説明が参照できるようだ。
まず、どういう路線でいくべきかを考えないと。
女の子キャラにしたんだから、魔物とのガチバトルは避けよう。なるべく離れて安全に戦えるのが理想だ。そうなると、弓職か、魔法職ソロでも攻略可能な“回復職”か“魔法使い系”だね。
弓は、矢を拾うのが正直ダルいしダサいしやめておこう。魔法職は正直どっちが良いのか悩ましい。できれば、良いとこ取りの“賢者”路線が理想だね!
そうなると、バランス的に戦闘スキル3つ、生活スキル1つかな――。
30分以上も悩んだ結果、[取得経験値2倍] [鑑定眼] [食物超吸収] [アイテムボックス] という4つに決めた。
結局、生活スキルを3つも選んでしまった。何だろう、このバランスの悪さは。後で泣くことにならなきゃいいけど――。
でもさ、戦闘ばかりに目がいくけど、大陸を行ったり来たりの長旅になりそうなんだよね。脳筋さんたちが旅の途中で力尽きてるイメージがポッと湧いたんだもん。日々旅にして旅を棲み家とすって松尾さんも言ってたでしょ。まずは旅に有利なスキルが必要でしょ! 
これで、美少女キャラ全開の脱脳筋路線の完成だよ!
目玉は“食物超吸収”だね! これは、すごい!
“世の中便利になったものだのぅ”という声が聞こえてきそうだ。
[食物超吸収:摂取した食べ物は体内で全て消化吸収される]
つまり、トイレ不要の神スキル! シャワートイレがない世界には必要、絶対に必要だ。
他は――。
[鑑定眼:ステータスを観ることができる。使用者より魔力の高い者には効果がない]
魔法職とは相性が良さそうだね。異世界で安全に生きるためには情報収集力は必要でしょ。
[アイテムボックス:レベル数×1平方メートル×高さ(自動調整)の異空間収納が可能な鞄。生きている物は収納できない。ボックス内の時間は停止する]
異世界お決まりの便利スキルだ。同様のアイテムがあれば買うんだけど、凄く高いんだよね。スキル枠が勿体ないけど、初期から使えたら便利だし――。
[取得経験値2倍:レベル上昇に必要な取得経験値が2倍になる]
レベルアップは重要だよね。何だかんだアイテムボックスとも相性良さそうだし。
戦闘面で不安あるけど、急がば回れの精神でレベルを上げていこう。
『以上でキャラクターメイキングを終了します、ステータスを確認してください』
◆名前:リンネ
年齢:12歳 性別:女性 レベル:1 職業:なし
◆ステータス
攻撃:0.25
魔力:0.80
体力:0.50
防御:0.25
敏捷:0.75
器用:0.80
才能:3.00
◆先天スキル:取得経験値2倍、鑑定眼、食物超吸収、アイテムボックス
◆後天スキル:
◆称号:
「数値、めっちゃ低い! てか、声が高い!! 」
「えーっ!? ゆ、勇者なの!? 」
「召喚された者は、自らの記憶を失うと聞く。過去は不要、未来しか必要がない運命だからじゃろうが――自分の名前すら思い出せないのは不便じゃな。何なら儂が名付けてやろうか? 身体がずっと銀色に光り続けているから――」
「いえ……心配なので、自分で考えます」
こんな不合理なこと、普通ならば納得できないはず。
でも、記憶が無いからなのか、それ故に失ったモノの大きさが実感できないためか、過去に対する執着心が思ったより湧かない。
僕が日本に何を残してきたのか、今まで僕は何を頑張ってきたのか、これから何をしようとしていたのか――それが分からないことが、過去への執着心を希薄化させ、絶対に日本へ帰るんだという意志を押さえ付けている。
「召喚早々、今のお主には名前どころか、年齢も性別もないはずじゃ。ステータスにも書かれていないじゃろ? 」
「ステータス、ですか? 」
「あぁ、ステータスが分からんのか。やはり異世界人じゃのぅ。この世界の生物やアイテムは全てが数値化されておる。お主、頭の中でステータスを思い浮かべてみよ。話したり、読み書きは問題なくできるじゃろ? 等価交換の魔力法則により、記憶を失う代わりに言語置換力が与えられておるからな。それ故、儂らは異世界人同士でありながら、話ができておる」
「確かに……」
僕は落ち着いて目を閉じ、頭の中でステータスを思い浮かべる。
すると――頭の中に文字が浮かんだ!!
『あなたのキャラクターを設定します。1.名前、年齢、性別を設定してください』
なるほど、これじゃまるでゲームだね。
ならば、割り切って効率良く作るべきだ!
M属性なんて欠片もないし、なるべくチヤホヤされたいので、確実な美少女キャラクターを作るぞ!
下心なんてない! 女に生まれ変わりたい何て願望も……ない。ちょっと、スカートでクルクル回ってみたいというささやかな願望があるくらいだ。
可愛い女の子なら、パーティにも誘われやすいし、通りすがりのファンからアイテムを貰えるかもしれない。それは下心ではない、効率だ。社会の常識だ。可愛いは正義なんだ。
名前は――[リンネ]にする。輪廻転生から思い付いただけで、深い意味はない。転生じゃなく転移だろって細かいツッコミもいらない。
年齢は――長生きしたいからなるべく若くしよう。かと言って幼女だと戦力的に詰む。ある程度は……そうだ、花のJS[12歳]だ。最高学年に君臨する小6というのは、小学生の頂点に立つ存在! 凄く偉いんだぞ。キャピキャピしても誰もドン引きしないんだぞ。
当然、性別は[女性]だ。慎重に、慎重に、慎重に。よく、英検とか漢検の性別のマークシート欄を間違えてマークしちゃう人いるよね、いないか。
よし、次へ進もう。
『2.キャラクターの容姿を設定してください』
そうきたか。ここもミスは許されない。この世界の価値観がどうだか分からないけど、自分の感性を信じる! ブサ子にならないよう、確実な美少女キャラクターを作るぞ!
見た目はとても大切だ。イジメの原因はルックスだ!と豪語する奴も、強ち間違ってはいないはず。僕は人生で初めて本気を出す!
身長:高すぎず、低すぎずの[150cm]でいこう。
体型:よく分からないから[普通]で良いかな。
髪色:まぁ、自分が好きな[白銀色]に。プラチナカラーは綺麗だよね。
髪の長さ:長すぎると邪魔だし、短すぎるのも折角の女の子なのに勿体ない。肩くらいあれば、結んだり出来て楽しめるよね、ということで[ミディアムロング]にしよう。
肌:[透き通るような白]を選択。透き通るようなって、普通の白とどう違うのか気になっただけ。幽霊みたいに本当にスケスケだったらどうしよう。
眼の色:悩むね。折角だから日本人離れしておこう。[水色]くらいかな。
以下、容姿に関しては凄く詳細に選択させられた。
自分の身体だから妥協したくないけど、さすがに目の前の老婆を待たせるのも申し訳ないので、自分に素直にフィーリングでサクサク決めていく。
『3.スキルを4つ選択してください』
「スキル? 」
「あぁ、この世界の生物は、先天スキルを1つか2つ持って生まれるんじゃよ。後天スキルというのもあるにはあるが、取得するには数年間の厳しい修練が必要じゃ」
「なるほど。スキルを選ぶのでもう少し時間をください」
「そうか。後悔しないようじっくり考えなさい」
4つか――意外と多いね。
まぁ、いきなり異世界に連れて来られて、即適応しろというんだから4つくらいは必要だよね。
ざっくり500種類くらいある一覧表からメインを抜粋すると――。
戦闘スキル:剣術、槍術、斧術、弓術、鈍器術、棒術、短剣術、短刀術、二刀流術、投擲術、体術、気功術、呪術、毒術、隠術、盗術、幻術、火魔法、水魔法、氷魔法、土魔法、木魔法、光魔法、闇魔法、雷魔法、精霊魔法、召喚魔法、取得経験値2倍、必要経験値半減、クリティカル率2倍、物理ダメージ軽減、魔法ダメージ軽減、状態異常耐性、物理ダメージ増加、魔法ダメージ増加、体力値増加、敏捷増加、魔法詠唱省略、カウンター、アイテムドロップ率上昇――。
生活スキル:鑑定眼、基本生活魔法、食物超吸収、移動速度上昇、変身、照明、算術、基礎科学、念話、結界、病気耐性、解錠、アイテムボックス、占い、歌唱、探し物、危険察知――。
たくさんありすぎて訳が分からん。
ん?
どうやら、視線を集中すると簡単な説明が参照できるようだ。
まず、どういう路線でいくべきかを考えないと。
女の子キャラにしたんだから、魔物とのガチバトルは避けよう。なるべく離れて安全に戦えるのが理想だ。そうなると、弓職か、魔法職ソロでも攻略可能な“回復職”か“魔法使い系”だね。
弓は、矢を拾うのが正直ダルいしダサいしやめておこう。魔法職は正直どっちが良いのか悩ましい。できれば、良いとこ取りの“賢者”路線が理想だね!
そうなると、バランス的に戦闘スキル3つ、生活スキル1つかな――。
30分以上も悩んだ結果、[取得経験値2倍] [鑑定眼] [食物超吸収] [アイテムボックス] という4つに決めた。
結局、生活スキルを3つも選んでしまった。何だろう、このバランスの悪さは。後で泣くことにならなきゃいいけど――。
でもさ、戦闘ばかりに目がいくけど、大陸を行ったり来たりの長旅になりそうなんだよね。脳筋さんたちが旅の途中で力尽きてるイメージがポッと湧いたんだもん。日々旅にして旅を棲み家とすって松尾さんも言ってたでしょ。まずは旅に有利なスキルが必要でしょ! 
これで、美少女キャラ全開の脱脳筋路線の完成だよ!
目玉は“食物超吸収”だね! これは、すごい!
“世の中便利になったものだのぅ”という声が聞こえてきそうだ。
[食物超吸収:摂取した食べ物は体内で全て消化吸収される]
つまり、トイレ不要の神スキル! シャワートイレがない世界には必要、絶対に必要だ。
他は――。
[鑑定眼:ステータスを観ることができる。使用者より魔力の高い者には効果がない]
魔法職とは相性が良さそうだね。異世界で安全に生きるためには情報収集力は必要でしょ。
[アイテムボックス:レベル数×1平方メートル×高さ(自動調整)の異空間収納が可能な鞄。生きている物は収納できない。ボックス内の時間は停止する]
異世界お決まりの便利スキルだ。同様のアイテムがあれば買うんだけど、凄く高いんだよね。スキル枠が勿体ないけど、初期から使えたら便利だし――。
[取得経験値2倍:レベル上昇に必要な取得経験値が2倍になる]
レベルアップは重要だよね。何だかんだアイテムボックスとも相性良さそうだし。
戦闘面で不安あるけど、急がば回れの精神でレベルを上げていこう。
『以上でキャラクターメイキングを終了します、ステータスを確認してください』
◆名前:リンネ
年齢:12歳 性別:女性 レベル:1 職業:なし
◆ステータス
攻撃:0.25
魔力:0.80
体力:0.50
防御:0.25
敏捷:0.75
器用:0.80
才能:3.00
◆先天スキル:取得経験値2倍、鑑定眼、食物超吸収、アイテムボックス
◆後天スキル:
◆称号:
「数値、めっちゃ低い! てか、声が高い!! 」
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
37
-
-
39
-
-
3
-
-
34
-
-
17
-
-
4503
-
-
22803
-
-
238
-
-
2
コメント