日常日記

ノベルバユーザー173744

第七話:大丈夫だと思ったんだけどなぁ……。

今日は、ガンについての勉強に行った。

じりじりと熱い中、講演会の会場に行ったのだが、すでに自分自身目が回りふらふらだった。
それでも行こうと思ったのは、期日前投票に行ってこようと思っていた。
選挙権を持っている人間である。
選挙に赴き、投票して、そして納得いかなければ文句を言えばいい。
せっかくの権利だ、存分に利用させてもらおうと思ったのだ。

私の選挙会場はあまり遠くはないが、わざわざ日曜日に行くなら、今日期日前投票会場の傍に来ているのだ、帰りに行こうと思っていた。

ガンについての講演会。
ガンの副作用に漢方薬を用いることが多いのだと言う。
開館が早かったので、テーブルや展示されている漢方の原料を見ていて、

「あ、陳皮ちんぴ甘草かんぞう大棗おおなつめ葛根かっこん……」
「知っていらっしゃるんですか?」

漢方の製造の会社の方が言われ、

「いえ、この間、大学の薬草園で見せていただいたので……それに、中国の歴史を勉強していて、三国志の華佗かださんは麻沸散まふつさん張仲景ちょうちゅうけいさんの幾つかのお薬は今でも使われているそうですね」
「詳しいですね‼」
「いえ、少しです」

と言うと、その人が、

「そう言えばご存知ですか?今使われている漢方薬と言うものは日本で作られたものが多いんですよ」
「え?そうなんですか?」

本気で驚く。

「えぇ、実は中国は大陸なので全体的に乾燥していると言う感じです。ですが、日本は湿地と言うか高温多湿ですので、乾燥で、水を取り込む要素が多い中国の薬と、逆に溜まった水分を排出した方がいい日本の薬は一緒ではいけません。ですので、中国で生まれた漢方でも日本で配合が違っていたり、別の薬になるんです。ですので中国よりも作られた種類が多いかもしれません。それだけ地域にも違いがあるのと、その人に合うように配合する場合もあるので……」
「はぁ……すごい‼素敵ですね。中国で生まれて日本で進化して、飲む人に合うようにされるなんて……」
「今回の展示は、ガンの副作用に調合される薬の原材料として実物と、その生成方法を展示しているんです。こんなにお詳しい……熱心な方は珍しいです」

三国志ネタのため~‼

とも言えず、

「いえ、実は、祖父が調子が悪いのを無視していたら、ガンだったらしく、それが肺に転移していて、末期と言われて亡くなったんです。猿のこしかけとかそういうのを飲めばなおるとか……でも駄目で……祖母も大腸がんで、でも、再発してもう一度手術をしたんですが、寝たきりになってしまって……何かできたかなと」

アハハ……と笑って見せる。

「そうだったんですね。じゃぁこの冊子に色々な漢方薬のことについてかかれていますよ」
「ありがとうございます‼」

と色々と冊子を貰ってきたが、段々視界がグラグラとしてきた。

ヤバイ……

実は今日はこの時期最高の真夏日34度越え。
と、丁度座席に座っていいと言うので席につくと、ホッとする。
座席は暑すぎず涼しすぎず、場所も良く……しかし、前の演奏会のように好きな席にではなく、主催者の人が、

「詰めて座って下さい‼前に‼」

と大きな声が響いたが、入り口に近い席に居座り、どっと疲れる。
後ろの席に誰もいないのを確認し、首をぐでーっと仰向けにする。



駄目だ……これは今日はだるい……。
でも話を聞かないと……。

と思い、首を前にしていた意識はあるのだが、ボールペンと講演会の冊子を膝に乗せたままフェードアウトしていた。

何度か意識が戻り、舞台で講演をしている人が6人いたような気がしたが、目を開けていられず、再び目を閉じる。



「では、講演を終わらせていただきます」

その声に意識が上昇する。

「うぇっ?」

他の人は外に出始めている。
慌てて荷物を確認し、人がいない間に行列に滑り込み、外に出ていった。
日傘を差しフラフラ歩き出しながら、

「……せっかく、講演会なのに寝に来たの……?ここに……」

勉強にならない……。

がっかりしながらよたよたと期日前投票会場に向かう。

「すみません、期日前投票に来たんですけど……」
「住所やお名前を……で、ご理由は?」
「へ?あ……体調悪いので、今日は近所に来たので……当日行けるか分からないので……」
「では……」

と、選挙を済ませ出ると、出口調査のお姉さま3人に取り囲まれた。
差し出されたものを拒否する気力もなく、同じような内容のものを3つ書き上げた。
どうせ、キャァキャァおしゃべりしているのに、そのまま、見て写してくれと思いつつ書いた。

そのまま、何故か徒労感に襲われつつ、帰っていった……。



勉強できなかったのが本気で残念でした……多分、誰かが、

『無理すんな』

といっているように思えたのだった。

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