音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら
Track.41 衝突
僕が突然リアラさんとデュエットを歌う事になってから二日。本番までが残り少なってきた中、僕はリアラさんや皆に沢山のことを教えてもらいながらも少しずつその歩みを進み始めていた。
「お疲れ様ですカオル君。今日はこの辺りにしておきましょう」
「はい」
この日もバンドとしての練習が終わった後も、夜遅くまでリアラさんと練習をしていた。僕も二日前までは歌う事に抵抗を感じていたけど、今はリアラさんが隣にいる安心感もあって、その抵抗も減り始めていた。
「そういえばリアラさんに一つ聞きたかったんですけど、どうしてこんな一週間前にデュエットをしたいって言ったんですか? 確かに新曲の鮮度は大切かもしれないですけど、もう少し時間を空けたって良かったんじゃないですか」
それでもやはりなぜ一週間前になってあんな事を言い出したのか、僕には理解できなかった。別に他の機会に回したってよかったのに、何故リアラさんはこんなに急いだのだろう。
「カオル君は嫌でしたか? 私と歌う事が」
「え、いや、別にそういう訳ではないんですけど」
「確かに今回は皆さんに無理な注文をしてしまった事はお詫びします。でも私はどうしても今回に間に合わせたかったんです」
「それは、何か特別な理由があるからですか?」
「特別というほどの理由はありませんが、ちゃんとした理由はあります。ただそれは、お話しする事はできません」
リアラさんはまた僕に隠し事をした。別に隠し事の一つや二つ、何も悪い事ではないのは分かっている。でもリアラさんの場合、隠し事をするたびにどこか悲しい顔をする。それは今もそうだ。
「あの、リアラさん」
「何ですか?」
「こんな事を聞くのはおこがましいのは分かっているんですけど、リアラさんどうしてそんなに悲しい顔をするんですか?」
「……え? あ、えっと、私そんな顔をしていましたか?」
「はい。それはこの前の時もそうでした」
だから僕はそれをどうしても無視する事なんてできなかった。向こうからした触れないでほしい事なのかも知らないけど、僕はそれを見て見ぬ振りはできない。
いつしか犯してしまった罪から目を逸らしてしまいそうだから。
「ごめんなさい。そんなつもりなんてなかったんですけど、私隠し事をするのが苦手なのかもしれないですね」
「リアラさん?」
「理由については詳しくは話す事はできませんが、一つだけ言うなら約束ですかね。私がこんな無茶を言った理由は」
「約束?」
「巻き込む形になってしまったのは申し訳ないのですが、今回だけは許してください」
「別に僕は怒ってなんかいないので、そんなに真剣にならないでください。それに隠し事なんて僕の方が沢山していますから」
リアラさんには申し訳ないけど、僕の方が沢山隠し事をしている。竜介達とのこと以外だった沢山……。
(誰かに話せたら気が少しは楽になるかもしれないけど)
それは結局逃げているだけで、何も解決しない。
「カオル君?」
「あ、えっと、すいません。今の事は気にしないでください。それよりもうこんな時間ですから、今日はログアウトしないでこのまま泊まっていっていいですか?」
「は、はい。それは構いませんが、カオル君は大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。いつもの事ですし」
「いえ、そう言う意味ではなくて」
僕は練習していた部屋からリアラさんより先に出ようとする。
「本当はあの日からずっと私に聞きたいことがあるんじゃないですか?」
だけどリアラさんのその言葉を聞いて、足を止めてしまった。あの日からというのは、きっと一週間前のデートもどきの時のことを言っているのだろう。
「それならリアラさんの方が本当は僕に言いたい事が沢山あるんじゃないんですか?」
「質問を質問で返すなんてずるいですよ。答えてください」
「それは確かに聞きたい事なんて沢山ありますよ。けど」
それはきっとリアラさんを傷つける。それだけはどうしても僕は嫌だった。
「二ヶ月前、あの場所でカオル君と出会って、カナリアを結成して、また新しく始められると思っていました。でもそれはやっぱり難しいんですね。結局お互い隠し事ばかりしているんです」
「僕だって好きでしているわけじゃないんですよ! 本当なら僕だってこんな事したくないんです。でもそうするしかないんです」
リアラさんの事、歌姫の事を沢山知って、ただリアラさんを助けてあげたい。ただその気持ちだけで僕は動いていた。
「リアラさん、ごめんない……。してはいけないと分かっていたんですけど、僕はもう後には引けなくなってしまったんです」
それに引き寄せられるかのように、現実の世界ではこれまでには考えられないくらいの出会いもしている。その情報がすべて正しいのかは分からない。
「カオル君はそこまでして何がしたいんですか? 私を傷つけたいんですか? あなたがしようとしている事は間違っています。だからあなたが傷ついてしまう前に、お願いですから引いてください」
リアラさんの声が少しだけ強めだった。それはリアラさんが本気で僕に警告している証。
「……引きたくないです」
「それは……どうしてですか?」
「そんなの……リアラさんを助けたいからに決まっているじゃないですか!」
でもそれを僕は聞き入れる事なんてできなかった。それはリアラさんを思っているからこその、僕の想いだった。
「余計なお世話です」
「え?」
「カオル君は無関係なくせに何でもかんでも知ろうとしすぎなんですよ! 周りの気持ちも一切考えないで、自分勝手で……。私は、そんな貴方が……」
「リアラさん……?」
「そんな貴方が大嫌いになりました」
「お疲れ様ですカオル君。今日はこの辺りにしておきましょう」
「はい」
この日もバンドとしての練習が終わった後も、夜遅くまでリアラさんと練習をしていた。僕も二日前までは歌う事に抵抗を感じていたけど、今はリアラさんが隣にいる安心感もあって、その抵抗も減り始めていた。
「そういえばリアラさんに一つ聞きたかったんですけど、どうしてこんな一週間前にデュエットをしたいって言ったんですか? 確かに新曲の鮮度は大切かもしれないですけど、もう少し時間を空けたって良かったんじゃないですか」
それでもやはりなぜ一週間前になってあんな事を言い出したのか、僕には理解できなかった。別に他の機会に回したってよかったのに、何故リアラさんはこんなに急いだのだろう。
「カオル君は嫌でしたか? 私と歌う事が」
「え、いや、別にそういう訳ではないんですけど」
「確かに今回は皆さんに無理な注文をしてしまった事はお詫びします。でも私はどうしても今回に間に合わせたかったんです」
「それは、何か特別な理由があるからですか?」
「特別というほどの理由はありませんが、ちゃんとした理由はあります。ただそれは、お話しする事はできません」
リアラさんはまた僕に隠し事をした。別に隠し事の一つや二つ、何も悪い事ではないのは分かっている。でもリアラさんの場合、隠し事をするたびにどこか悲しい顔をする。それは今もそうだ。
「あの、リアラさん」
「何ですか?」
「こんな事を聞くのはおこがましいのは分かっているんですけど、リアラさんどうしてそんなに悲しい顔をするんですか?」
「……え? あ、えっと、私そんな顔をしていましたか?」
「はい。それはこの前の時もそうでした」
だから僕はそれをどうしても無視する事なんてできなかった。向こうからした触れないでほしい事なのかも知らないけど、僕はそれを見て見ぬ振りはできない。
いつしか犯してしまった罪から目を逸らしてしまいそうだから。
「ごめんなさい。そんなつもりなんてなかったんですけど、私隠し事をするのが苦手なのかもしれないですね」
「リアラさん?」
「理由については詳しくは話す事はできませんが、一つだけ言うなら約束ですかね。私がこんな無茶を言った理由は」
「約束?」
「巻き込む形になってしまったのは申し訳ないのですが、今回だけは許してください」
「別に僕は怒ってなんかいないので、そんなに真剣にならないでください。それに隠し事なんて僕の方が沢山していますから」
リアラさんには申し訳ないけど、僕の方が沢山隠し事をしている。竜介達とのこと以外だった沢山……。
(誰かに話せたら気が少しは楽になるかもしれないけど)
それは結局逃げているだけで、何も解決しない。
「カオル君?」
「あ、えっと、すいません。今の事は気にしないでください。それよりもうこんな時間ですから、今日はログアウトしないでこのまま泊まっていっていいですか?」
「は、はい。それは構いませんが、カオル君は大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。いつもの事ですし」
「いえ、そう言う意味ではなくて」
僕は練習していた部屋からリアラさんより先に出ようとする。
「本当はあの日からずっと私に聞きたいことがあるんじゃないですか?」
だけどリアラさんのその言葉を聞いて、足を止めてしまった。あの日からというのは、きっと一週間前のデートもどきの時のことを言っているのだろう。
「それならリアラさんの方が本当は僕に言いたい事が沢山あるんじゃないんですか?」
「質問を質問で返すなんてずるいですよ。答えてください」
「それは確かに聞きたい事なんて沢山ありますよ。けど」
それはきっとリアラさんを傷つける。それだけはどうしても僕は嫌だった。
「二ヶ月前、あの場所でカオル君と出会って、カナリアを結成して、また新しく始められると思っていました。でもそれはやっぱり難しいんですね。結局お互い隠し事ばかりしているんです」
「僕だって好きでしているわけじゃないんですよ! 本当なら僕だってこんな事したくないんです。でもそうするしかないんです」
リアラさんの事、歌姫の事を沢山知って、ただリアラさんを助けてあげたい。ただその気持ちだけで僕は動いていた。
「リアラさん、ごめんない……。してはいけないと分かっていたんですけど、僕はもう後には引けなくなってしまったんです」
それに引き寄せられるかのように、現実の世界ではこれまでには考えられないくらいの出会いもしている。その情報がすべて正しいのかは分からない。
「カオル君はそこまでして何がしたいんですか? 私を傷つけたいんですか? あなたがしようとしている事は間違っています。だからあなたが傷ついてしまう前に、お願いですから引いてください」
リアラさんの声が少しだけ強めだった。それはリアラさんが本気で僕に警告している証。
「……引きたくないです」
「それは……どうしてですか?」
「そんなの……リアラさんを助けたいからに決まっているじゃないですか!」
でもそれを僕は聞き入れる事なんてできなかった。それはリアラさんを思っているからこその、僕の想いだった。
「余計なお世話です」
「え?」
「カオル君は無関係なくせに何でもかんでも知ろうとしすぎなんですよ! 周りの気持ちも一切考えないで、自分勝手で……。私は、そんな貴方が……」
「リアラさん……?」
「そんな貴方が大嫌いになりました」
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