音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら
Track.31 変化の中にある悩み
平野さんから渡された箱の中に入っていたのは、一枚の紙と花冠。
紙にはただ一言、『私を見つけて』
あまりに理解しがたいその箱の中身に、僕はただただ戸惑う事しかできない。
(てっきり音楽に関係があるものとかが入っていると思っていたけど)
これだと何が何だか理解ができない。
「あれ、薫じゃん」
喫茶店でしばらく過ごした後、其処を出ると聞き覚えのある声に声をかけられる。
「珍しいな一人で喫茶店だなんて」
「竜介こそどうしてここに?」
「学校帰りだよ」
「それにしては早くない?」
「今日だけ早かったんだよ」
「ふーん」
折角なので竜介と二人で家まで帰る事にする。
「何か久しぶりだな、二人だけで歩くの」
「そうかな」
「だってお前、ずっと引きこもってただろ?」
「最近は外に出るようにしているよ」
今日だって今までだったら無視するような誘いを、断らずにやって来たわけだし、自分の中でも少しずつ何かが変わっているのは分かっていた。
(これも全部リアラさんのおかげなのかな)
でもそれと同時に悩みも今まで以上に増えている気がしなくもない。
「なあ芳、この前も言ったけどお前最近なんか無理していないか?」
「え? 別に僕は無理なんかしていないけど」
「千由里もお前の事を心配していたし、俺も心配している。確かにあのゲームを始めてからお前は少しずつ変わり始めたけど、その分悩みも増えているんじゃないか?」
「そうでもないよ。あのゲームは楽しいし、悩みなんか一つも」
「だったらお前のその手に持っているものは何だ」
「これは、その」
「どうして喫茶店に行っただけなのに、箱なんか持っているんだよ」
「別に何にも関係ないよ」
「本当か?」
疑いの目を向けられる。竜介が言っていることは図星ではあるのだけど、僕も少しだけ意地を張ってしまった。
「あまり無理するようならいつでも俺達に相談してくれよ。そのための親友なんだからな」
「その気持ちだけありがたく受け取っておくよ」
僕の中で今回の件だけは二人に黙っておこうと決めていた。信用をしていないとかではなく、単純にこれは僕だけの力で調べて行った方がいいと思ったからだ。きっとこの箱の中に入っていたものの意味が分かった時、リアラさんの力になれるはず。
確信がないかもしれないけど、あの人が僕にこれを渡してきたということは、何かしらの事がリアラさんに関係していると僕は思っていた。
「じゃあ僕家こっちだから」
「あ、おい薫」
「心配してくれてありがとうって千由里にも言っておいて。それと僕は大丈夫だから、これ以上心配しなくていいから」
「お前やっぱり……」
僕は竜介の次の言葉を聞く前に、早足で自分の家へと向かった。少しだけ良心が痛むけど、変に心配させすぎるとかえって二人に申し訳なくなってしまう。
(ごめん、二人とも)
そしてここから二日後、ようやく体調も回復した僕は再びマセレナードオンラインへとログインする事になる。
そしてそこで僕を待っていたのは、
「か、か、カオル君。あ、明日二人でどこかへ出かけませんか?」
僕の心配とは裏腹な様子のリアラさんと、
「チャンスやでカオル」
何故かニヤニヤしているナナミの姿だった。
「いや、チャンスって何だよナナミ」
「男になるためのチャンスや」
何が一体どうしてこうなった。
■□■□■□
リアラさんの異変の数時間前。朝早くから起きた僕は、体調のチェックをした後、久しぶりのログインへの準備をしていた。
「ここにメモしておけばゲーム内でも同じデータが見れるし、またリアラさんに見てもらって」
ログインをしていなかった間も僕は少しずつだけど作詞の作業を進めていた。それと同時に、音楽を作る勉強も少しだけ進めてみた。まだ見よう見まねではあるけど、こういう所でもカナリアに貢献できればと考えていた。
(休んだ分、しっかりとしないと)
リアラさんにも心配かけないためにも。
「よし、じゃあログインしよう」
三日ぶりにログインしたマセレナードオンラインは、ゴールデンウィークが終わったばかりなのか、いつもより人が少なかった。恐らくゴールデンウィークの間に沢山遊んだから……という事もあるのだろう。
「あ、カオルさん、体調の方は大丈夫ですか?」
いつもの場所へ向かう途中で、アタル君と会う。彼もやはり心配してくれていたらしい。
「心配かけてごめん。無事体調も良くなったから、今日から復帰させてもらうよ」
「それならよかった。他の二人もすごく心配していましたから、早く向かいましょう」
アタル君に急かされるように僕もリアラさんの家へ早足で向かう。
「僕がログインしていない間に何かあったりした?」
その途中で僕がいない間に何かあったか尋ねる。一度ナナミとは会っているとはいえ、カナリアのメンバーとは本当にしばらく会えていなかった。だから何か変わった事があれば、教えて欲しかったんだけど……。
「何かあったといえばありましたけど、それは直接見た方がいいと思います」
「見るって何を?」
「主にリアラさんが」
「リアラさんが?」
一体何があったんだろう。
紙にはただ一言、『私を見つけて』
あまりに理解しがたいその箱の中身に、僕はただただ戸惑う事しかできない。
(てっきり音楽に関係があるものとかが入っていると思っていたけど)
これだと何が何だか理解ができない。
「あれ、薫じゃん」
喫茶店でしばらく過ごした後、其処を出ると聞き覚えのある声に声をかけられる。
「珍しいな一人で喫茶店だなんて」
「竜介こそどうしてここに?」
「学校帰りだよ」
「それにしては早くない?」
「今日だけ早かったんだよ」
「ふーん」
折角なので竜介と二人で家まで帰る事にする。
「何か久しぶりだな、二人だけで歩くの」
「そうかな」
「だってお前、ずっと引きこもってただろ?」
「最近は外に出るようにしているよ」
今日だって今までだったら無視するような誘いを、断らずにやって来たわけだし、自分の中でも少しずつ何かが変わっているのは分かっていた。
(これも全部リアラさんのおかげなのかな)
でもそれと同時に悩みも今まで以上に増えている気がしなくもない。
「なあ芳、この前も言ったけどお前最近なんか無理していないか?」
「え? 別に僕は無理なんかしていないけど」
「千由里もお前の事を心配していたし、俺も心配している。確かにあのゲームを始めてからお前は少しずつ変わり始めたけど、その分悩みも増えているんじゃないか?」
「そうでもないよ。あのゲームは楽しいし、悩みなんか一つも」
「だったらお前のその手に持っているものは何だ」
「これは、その」
「どうして喫茶店に行っただけなのに、箱なんか持っているんだよ」
「別に何にも関係ないよ」
「本当か?」
疑いの目を向けられる。竜介が言っていることは図星ではあるのだけど、僕も少しだけ意地を張ってしまった。
「あまり無理するようならいつでも俺達に相談してくれよ。そのための親友なんだからな」
「その気持ちだけありがたく受け取っておくよ」
僕の中で今回の件だけは二人に黙っておこうと決めていた。信用をしていないとかではなく、単純にこれは僕だけの力で調べて行った方がいいと思ったからだ。きっとこの箱の中に入っていたものの意味が分かった時、リアラさんの力になれるはず。
確信がないかもしれないけど、あの人が僕にこれを渡してきたということは、何かしらの事がリアラさんに関係していると僕は思っていた。
「じゃあ僕家こっちだから」
「あ、おい薫」
「心配してくれてありがとうって千由里にも言っておいて。それと僕は大丈夫だから、これ以上心配しなくていいから」
「お前やっぱり……」
僕は竜介の次の言葉を聞く前に、早足で自分の家へと向かった。少しだけ良心が痛むけど、変に心配させすぎるとかえって二人に申し訳なくなってしまう。
(ごめん、二人とも)
そしてここから二日後、ようやく体調も回復した僕は再びマセレナードオンラインへとログインする事になる。
そしてそこで僕を待っていたのは、
「か、か、カオル君。あ、明日二人でどこかへ出かけませんか?」
僕の心配とは裏腹な様子のリアラさんと、
「チャンスやでカオル」
何故かニヤニヤしているナナミの姿だった。
「いや、チャンスって何だよナナミ」
「男になるためのチャンスや」
何が一体どうしてこうなった。
■□■□■□
リアラさんの異変の数時間前。朝早くから起きた僕は、体調のチェックをした後、久しぶりのログインへの準備をしていた。
「ここにメモしておけばゲーム内でも同じデータが見れるし、またリアラさんに見てもらって」
ログインをしていなかった間も僕は少しずつだけど作詞の作業を進めていた。それと同時に、音楽を作る勉強も少しだけ進めてみた。まだ見よう見まねではあるけど、こういう所でもカナリアに貢献できればと考えていた。
(休んだ分、しっかりとしないと)
リアラさんにも心配かけないためにも。
「よし、じゃあログインしよう」
三日ぶりにログインしたマセレナードオンラインは、ゴールデンウィークが終わったばかりなのか、いつもより人が少なかった。恐らくゴールデンウィークの間に沢山遊んだから……という事もあるのだろう。
「あ、カオルさん、体調の方は大丈夫ですか?」
いつもの場所へ向かう途中で、アタル君と会う。彼もやはり心配してくれていたらしい。
「心配かけてごめん。無事体調も良くなったから、今日から復帰させてもらうよ」
「それならよかった。他の二人もすごく心配していましたから、早く向かいましょう」
アタル君に急かされるように僕もリアラさんの家へ早足で向かう。
「僕がログインしていない間に何かあったりした?」
その途中で僕がいない間に何かあったか尋ねる。一度ナナミとは会っているとはいえ、カナリアのメンバーとは本当にしばらく会えていなかった。だから何か変わった事があれば、教えて欲しかったんだけど……。
「何かあったといえばありましたけど、それは直接見た方がいいと思います」
「見るって何を?」
「主にリアラさんが」
「リアラさんが?」
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