音楽初心者の僕がゲームの世界で歌姫とバンドを組んだら
Track.07 バンド『カナリア』結成!
「以上で御終いや。ご静聴ありがとな」
彼女の演奏はあっという間で、気がついていたら終了していた。あまりの素晴らしい演奏に、僕とリアラさんは思わず拍手をしてしまう。
「これは天才って呼ばれてもおかしくないよね」
「そうですね。私も納得です」
「そ、そんなに褒めても何にも出えへんで」
率直な感想を言う僕たちに、恥ずかしそうにそう言うナナミさん。でも、これは本当に天才レベルに近い。リアラさんとは全く正反対の音が彼女から奏でられていて、この二つがもし混じり合ったら果たしてどんな音楽が奏でられるのかちょっと楽しみになってきた。あとはこの二人にいかに僕が追いついていけるかにかかっている。
(でもその前に、メンバーをもう一人集めないと)
それよりも最優先事項なのは、まずメンバーを集めることだ。ナナミまでは偶然集めることはできたけど、最後の一人はそう簡単に見つけることはできないんじゃないかと思っている。
「そういえばうちはまだ、リアラはんの歌聞いてへんわ。よかったら聞かせてくれへんか?」
「わ、私ですか? ナナミさんの演奏の後だと少しやりづらいんですけど……」
「噂の歌姫の歌声がどんなもんか、うちも一度は聞いてみたいんや。お願いできへんか?」
「そこまで言うなら……」
恥ずかしそうにそう言いながらも、リアラさんは一昨日と同じように始まりの唄を歌ってくれた。
(やっぱりすごいな……)
誰もが一度は聞いたら惹かれてしまうような歌声。聞くだけで心が落ち着き、そして思わず時間を忘れてしまう。それは僕だけが例外だけでなく、ナナミさんも同じだった。
「何やこの子、天才の領域を超えとる」
彼女が歌っている途中、そんな事も呟いていた。それほど彼女の歌声は、人の心を揺さぶり、そして感動を与える。
そして全てを歌い終えると、ナナミさんはひたすら素晴らしい、天才など色々な言葉で彼女を讃えていた。やはり彼女には人を惹きつける何かがあるのかもしれない。だからもしかしたらかもしれないけど、
「あの、今の歌は君が歌っていたの?」
僕達と同じように惹きつけられてやってきた人がまた一人。そう話しかけてきたのは、一人の男性だった。背中には大きな何かを背負っていて、髪型はショートヘアーの茶髪。僕の第一印象は真面目な人っぽい感じだった。
「あ、そ、そうですけど」
「やっぱりそうなんだ。今たまたま近くを通ったら聞こえてきたから、何だと思ったんだよ。そこにいる君達は同じバンドの人?」
「うん。一昨日結成したばかりのちっぽけなバンドだけどね」
「へえ。じゃあよかったら俺もバンドに入れてくれないかな。昨日ゲーム始めたばっかりなんだけど」
「本当に?! ちなみに楽器は?」
「一応ギターやっているんだけど、まだまだ初心者なんだ」
まさかここまで偶然が重なるとなんて驚きだ。もはや奇跡に近いかもしれない。
「大丈夫。僕も一昨日始めたばかりの初心者だから」
「私達も似た者同士の集まりですから、よろしければ入ってください」
どこが似た者同士なのかイマイチ分からないけど、どうやらリアラさんも大歓迎らしい。小心者の僕にとっても、同じレベルの仲間がいるととても心強い。一緒に練習できるし、何より同性が一人いるのは友達としても接しやすい。
「そういえばあんたの名前聞いてへんかったな。名前はなんて言うんや?」
「あ、俺ですか? 俺はアタルって言います。へったっぴだけど、これからよろしくお願いします」
こうして本当に偶然が重なって、ギターを演奏するアタルが新しくバンドに加入することになった。
■□■□■□
この後全員がそれぞれ自己紹介を済ませ、目標人数のの四人が揃った。という事で早速バンド名を決め、正式に登録することになった。
「いよいよか……」
「まさか三日で結成できるなんて、ビックリですね」
「即席バンドみたいになっとるけど、本当に大丈夫なん?」
「多分大丈夫だと思う。特に僕たちが頑張れば」
「俺もできるだけ努力します!」
で、今何をしているかというと、バンドの登録届けの手続きをしている最中。それぞれ色々な思いを込めて、メンバー欄に自分達の名前を書いていき、最後に僕が書く番になった。僕の名前を書く場所は代表者の欄、つまりバンドリーダーの所だ。
「ねえ、こんな僕が本当にリーダーで大丈夫なの?」
「何を心配しとるねん。うちらを集めてくれたのは、あんたやないかい」
「でもそれは単に偶然が重なっただけだし……」
「偶然かもしれませんけど、きっかけを作ったのはカオル君ですよ? カオル君があの時私に話しかけていなかったら、こうしてすぐにバンドを組むこともなかったんですから」
「うーん、それはそうなんだけど……」
なんか僕はそういう柄じゃないんだよな……。
「ほら、いつまでくよくよしてるんや。そんなんだとリーダーとして務まらんで」
「そうですよカオル君。皆さんあなたを頼っているんですから、それに答えましょうよ」
「俺も頼りにしてます!リーダー」
けど、皆にそこまで言われちゃうと、断れないし……。ここは腹をくくるか。
「分かったよ、僕がやるよ」
もう迷っているのも面倒くさいし、僕は勇気を振り絞ってバンドリーダーの欄に自分の名前を書いた。
「よし、これで終わりだね」
これで後は運営側が色々してくれるだろうから、もう僕達が何かをする必要はない。つまりこれで、正式に結成となった。
「ちなみにバンド名は何にしたんですか?」
「全員の名前の頭文字を取って、カナリアって名前にしたんだけどどうかな」
「お、なかなかいいネーミングセンスやな」
「俺達の一体感を感じますね」
「私も気に入りました」
どうやらほとんど直感で考えたバンド名も気に入ってもらったらしく、これで第一段階の作業は全て終了した。あとはこれから、沢山あるであろうイベントに向けての練習に励むだけだ。
「じゃあバンドも結成したことだし、早速だけど練習しちゃいますか!」
「いいですね。アタル君の演奏も聞いてみたいですし」
「お、俺なんか人に聞かせられるようなもんじゃないですよ」
「何や恥ずかしいんか? ほれ、そこでちょっと弾いてみ」
「不良みたいな絡み方やめてくださいよー」
そう、これで僕達はようやくスタートラインに立てたのだ。ゴールが見えない長い長い道のスタートラインに。果たしてこの先にどんな運命が待っているのか、今はさっぱり分からないけど、きっと心配ないと思う。なんせ僕には、頼もしい仲間が四人もいるのだから。
僕達『カナリア』の物語がいよいよ始まる。
彼女の演奏はあっという間で、気がついていたら終了していた。あまりの素晴らしい演奏に、僕とリアラさんは思わず拍手をしてしまう。
「これは天才って呼ばれてもおかしくないよね」
「そうですね。私も納得です」
「そ、そんなに褒めても何にも出えへんで」
率直な感想を言う僕たちに、恥ずかしそうにそう言うナナミさん。でも、これは本当に天才レベルに近い。リアラさんとは全く正反対の音が彼女から奏でられていて、この二つがもし混じり合ったら果たしてどんな音楽が奏でられるのかちょっと楽しみになってきた。あとはこの二人にいかに僕が追いついていけるかにかかっている。
(でもその前に、メンバーをもう一人集めないと)
それよりも最優先事項なのは、まずメンバーを集めることだ。ナナミまでは偶然集めることはできたけど、最後の一人はそう簡単に見つけることはできないんじゃないかと思っている。
「そういえばうちはまだ、リアラはんの歌聞いてへんわ。よかったら聞かせてくれへんか?」
「わ、私ですか? ナナミさんの演奏の後だと少しやりづらいんですけど……」
「噂の歌姫の歌声がどんなもんか、うちも一度は聞いてみたいんや。お願いできへんか?」
「そこまで言うなら……」
恥ずかしそうにそう言いながらも、リアラさんは一昨日と同じように始まりの唄を歌ってくれた。
(やっぱりすごいな……)
誰もが一度は聞いたら惹かれてしまうような歌声。聞くだけで心が落ち着き、そして思わず時間を忘れてしまう。それは僕だけが例外だけでなく、ナナミさんも同じだった。
「何やこの子、天才の領域を超えとる」
彼女が歌っている途中、そんな事も呟いていた。それほど彼女の歌声は、人の心を揺さぶり、そして感動を与える。
そして全てを歌い終えると、ナナミさんはひたすら素晴らしい、天才など色々な言葉で彼女を讃えていた。やはり彼女には人を惹きつける何かがあるのかもしれない。だからもしかしたらかもしれないけど、
「あの、今の歌は君が歌っていたの?」
僕達と同じように惹きつけられてやってきた人がまた一人。そう話しかけてきたのは、一人の男性だった。背中には大きな何かを背負っていて、髪型はショートヘアーの茶髪。僕の第一印象は真面目な人っぽい感じだった。
「あ、そ、そうですけど」
「やっぱりそうなんだ。今たまたま近くを通ったら聞こえてきたから、何だと思ったんだよ。そこにいる君達は同じバンドの人?」
「うん。一昨日結成したばかりのちっぽけなバンドだけどね」
「へえ。じゃあよかったら俺もバンドに入れてくれないかな。昨日ゲーム始めたばっかりなんだけど」
「本当に?! ちなみに楽器は?」
「一応ギターやっているんだけど、まだまだ初心者なんだ」
まさかここまで偶然が重なるとなんて驚きだ。もはや奇跡に近いかもしれない。
「大丈夫。僕も一昨日始めたばかりの初心者だから」
「私達も似た者同士の集まりですから、よろしければ入ってください」
どこが似た者同士なのかイマイチ分からないけど、どうやらリアラさんも大歓迎らしい。小心者の僕にとっても、同じレベルの仲間がいるととても心強い。一緒に練習できるし、何より同性が一人いるのは友達としても接しやすい。
「そういえばあんたの名前聞いてへんかったな。名前はなんて言うんや?」
「あ、俺ですか? 俺はアタルって言います。へったっぴだけど、これからよろしくお願いします」
こうして本当に偶然が重なって、ギターを演奏するアタルが新しくバンドに加入することになった。
■□■□■□
この後全員がそれぞれ自己紹介を済ませ、目標人数のの四人が揃った。という事で早速バンド名を決め、正式に登録することになった。
「いよいよか……」
「まさか三日で結成できるなんて、ビックリですね」
「即席バンドみたいになっとるけど、本当に大丈夫なん?」
「多分大丈夫だと思う。特に僕たちが頑張れば」
「俺もできるだけ努力します!」
で、今何をしているかというと、バンドの登録届けの手続きをしている最中。それぞれ色々な思いを込めて、メンバー欄に自分達の名前を書いていき、最後に僕が書く番になった。僕の名前を書く場所は代表者の欄、つまりバンドリーダーの所だ。
「ねえ、こんな僕が本当にリーダーで大丈夫なの?」
「何を心配しとるねん。うちらを集めてくれたのは、あんたやないかい」
「でもそれは単に偶然が重なっただけだし……」
「偶然かもしれませんけど、きっかけを作ったのはカオル君ですよ? カオル君があの時私に話しかけていなかったら、こうしてすぐにバンドを組むこともなかったんですから」
「うーん、それはそうなんだけど……」
なんか僕はそういう柄じゃないんだよな……。
「ほら、いつまでくよくよしてるんや。そんなんだとリーダーとして務まらんで」
「そうですよカオル君。皆さんあなたを頼っているんですから、それに答えましょうよ」
「俺も頼りにしてます!リーダー」
けど、皆にそこまで言われちゃうと、断れないし……。ここは腹をくくるか。
「分かったよ、僕がやるよ」
もう迷っているのも面倒くさいし、僕は勇気を振り絞ってバンドリーダーの欄に自分の名前を書いた。
「よし、これで終わりだね」
これで後は運営側が色々してくれるだろうから、もう僕達が何かをする必要はない。つまりこれで、正式に結成となった。
「ちなみにバンド名は何にしたんですか?」
「全員の名前の頭文字を取って、カナリアって名前にしたんだけどどうかな」
「お、なかなかいいネーミングセンスやな」
「俺達の一体感を感じますね」
「私も気に入りました」
どうやらほとんど直感で考えたバンド名も気に入ってもらったらしく、これで第一段階の作業は全て終了した。あとはこれから、沢山あるであろうイベントに向けての練習に励むだけだ。
「じゃあバンドも結成したことだし、早速だけど練習しちゃいますか!」
「いいですね。アタル君の演奏も聞いてみたいですし」
「お、俺なんか人に聞かせられるようなもんじゃないですよ」
「何や恥ずかしいんか? ほれ、そこでちょっと弾いてみ」
「不良みたいな絡み方やめてくださいよー」
そう、これで僕達はようやくスタートラインに立てたのだ。ゴールが見えない長い長い道のスタートラインに。果たしてこの先にどんな運命が待っているのか、今はさっぱり分からないけど、きっと心配ないと思う。なんせ僕には、頼もしい仲間が四人もいるのだから。
僕達『カナリア』の物語がいよいよ始まる。
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