魔界帰りの劣等能力者

たすろう

動き出し

 
「さてと……どうしたものかな?」

 祐人は大祭の予選に勝ち抜いた者だけに与えられる部屋の中で思案していた。入家の大祭に参加してから、朱音に言われている怪しいと思われる人物はいないか観察していたが、今のところそう言った人物は特定できていない。
 今は四天寺家が部屋に用意してくれた夕食をとり、入家の大祭については明日の朝まで特に予定はない。
 だが、祐人は朱音から依頼を受けている身である。このまま、部屋に閉じこもり翌朝まで休んではいられない。

「よし、見回りにいくか。良からぬことを考えている連中がいれば、今日にも何か仕掛けてくる可能性もあるし……直接的でなくとも罠の設置やスキル発動の準備をしてくるかもしれない」

 祐人はそう決め、事前にもらった四天寺家の敷地内の地図をバックから取り出して広げた。今、自分のいる別邸には他の勝ち抜いた参加者たちや、その付き添いもいる。

(うーん、他の参加者に怪しまれたら本末転倒だからな、慎重に行動しよう。今のところ、怪しいと確証の持てる連中はいなかった……。まあ……そう簡単にしっぽを掴ませるような奴らなら大した連中じゃない……それなら四天寺の人たちで処理されるだろう。とすれば、僕のすることは厄介な奴と想定して動くべきだね)

 祐人は気を引き締めて、朱音からの依頼の内容を思い出す。

「四天寺に対する私怨……だけに囚われないでいこう。うーん? でも、そうなるとこれは結構……」

(これって思った以上に厄介だな。もしかすると……最悪、現行犯で押さえるかしかないか? いや、それじゃ後手に回る可能性もある。となると……見回りだけじゃなく、他の参加者と接触してみる必要があるな。ちょっとリスクがあるけど、それぞれを探っていくか)

 こう考えて祐人は携帯を取り出して、一悟に連絡を入れると、一悟はそう待たせずにでた。

“もしもし祐人? おお、どうだ? 状況は”

「うん、これから色々と調査していくつもりなんだけど、そちらで何か情報はない? 勝ち抜いた参加者たちの情報だけでもいいんだけど」

“ああ、分かった。ちょっと待ってろ。えーと、ちょうど今、ニイナさんがまとめた勝ち抜いた参加者のプロフィールとマリオンさんや明良さんが知っている限りの情報を入れ込んだ資料があるから、コピペしてお前にメールするわ”

「おお、ありがとう」

“まあ、これが実際、どこまで役に立つか分からないけどな。素人の俺が言うのもなんだが、表の情報しかない感じだった。中にはまったく情報のない奴もいたし”

「うーん、それは仕方ないよ。でも、何もないよりいいから助かるよ」

“そうか……とりあえず、出来る限りの情報は逐次メールするわ。あ、今言ったリストを送ったぞ”

「分かった、読んでおくよ」

“それとな……ちょっといいか?”

 突然、一悟の声色が真剣なものに変わる。

「……うん? 何?」

“実はな……ちょっとこちらも色々あってな、お前にも言っておかなくちゃならんことが……あ! こら! 痛てて!”

 話の途中、電話の向こうでバタバタする音が聞こえて、祐人も驚く。

「一悟! どうしたの? 何かあったの?」

“祐人? 何でもないわ! あなたはいいから依頼を続けて!”

「え!? あれ? 茉莉ちゃん? 何の話?」

“何でもないから! あとでまとめて話をするから! 気にしないでいいわ”

「う、うん、分かった」

“あ痛たたた、じゃあ祐人……また連絡するわ”

「あれ? 一悟? お、おお分かった」

“それと祐人、メールをよく読んでおけ! よーく! な。大事なことを送っているんだからな!”

「え? 分かってるよ」

 言われなくとも当然、確認するつもりだったが、やたら一悟が念を押してくるので祐人は首を傾げつつも返事をする。

“じゃあな、また連絡をしてくれ!”

 慌ただしく電話が切れる。

「何なんだ?」

 そう言いつつも祐人は早速メールを確認しようとメール欄を開けると、一悟から……2通のメールが来ている。しかも、2通目は件名に【超重要】と記されている。

「?」

 祐人は思わず2通目のメールから開けた。

「おおお! こ、これは!?」

 そこには……

『合コンの日時と場所のお知らせ』

 という文章から始まる案内状が書かれていた。




「袴田君」

「うん? 何だよ、水戸さん」

「さっき、妙にメールを確認しろと強調しすぎるくらいに強調してなかった?」

「!? し、してねーよ! こちらでせっかく作った資料を絶対に確認しろっていう意味だよ!」

「……ふーん、ならいいけど」

「ま、まったく……と、当然だろ? あ、とりあえず俺は部屋に戻るわ。何かあったら連絡くれよ」

 一悟はいつも通りの声色……を作り、そそくさと立ち上がると皆のいる部屋から出て行った。
 その様子をジト目で見つめる静香は、顎に手を当てながら暗い目でニヤリと笑うのだった。



「魔界帰りの劣等能力者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く