魔界帰りの劣等能力者

たすろう

注目株



「16名は出そろったわけだが、明日からのスケジュールはどうなっているのか。明良」

「はい、明日からは当初の予定通りトーナメントせいで、一対一の対戦になります。明日の朝食後に参加者たちにその対戦相手のくじ引きをしてもらうようにしてもらいます。場所は今回の会場と同じく西側の敷地を広くとって用意しました。また、これからは各参加者の吟味も本格的にしていくつもりですので、左馬之助様たちにも対戦会場がよく見渡せる西館三階のベランダに席を用意しています。また、今日の反省も含めましてモニターも三倍に数を増やしていきます」

「ふむ、これからは実力者たちの戦いになる。その能力も見逃したくはないしな」

「はい」

 瑞穂や朱音が席を外した後も左馬之助や早雲、そして明良たちは今後の大祭の進行を確認していた。

「それと、やはり魔力系能力者は少ないな」

「はい……そこはやはり四天寺ですから」

 これは四天寺にまつわる有名な話で、四天寺家及び四天寺の分家である大峰、神前でも同じことが言えるが、これら四天寺ゆかりの家では霊力系能力者しか生まれない。
 数代離れた者たちはそうでもないが、これらの家の者と婚いで生まれた子たちはすべて霊力系の能力を得る。
 通常、霊力系能力者と魔力系能力者との間に子が生まれた場合には、その引き継ぐ系統はランダムと言われている。だが、四天寺ではその統計からは異常と呼べるほど霊力系能力者しか生まれず、かつ精霊との感応力の高い人間が生まれるのだ。
 これは解明されてはいながいが、四天寺家そのものに何かしらの加護、もしくは精霊との契約がなされているとも言われている。
 ここで言われているのは、魔力系能力者たちにしてみれば、自分の子が必ず霊力系能力者として生まれてくるために、自身の能力やスキルの継承が難しくなる。
 そういったところから抵抗感が出てくる可能性は高い、という話だ。
 しかし、霊力系能力者と魔力系能力者はすべて違う職種やスタイルを持っているわけではない。
 霊力と魔力のその関係は激しく互いに反発することは知られているが、その力の特性に関して言えばほぼ等質なのだ。
 つまり、霊力系にしかできない職業というのはない。魔力系精霊使いも魔力系司祭もいる。
 だが、系統が変わってしまうと、手取り足取り教えづらいことが言える。
 能力者たちの修行は口で言って分かるものは少ないこともあり、己の磨いてきたスキルがその代で終わってしまう可能性が高いのだ。

「それにしても……面白い、と言っては不謹慎ですが、今回勝ち抜いた能力者だけをとっても興味深いのが結構いますね」

「何がだ? 早雲」

「いえ……ただ、四天寺の大祭に参加し、先ほどのバトルロイヤルを勝ち抜くのも大したものです。相手の能力が分からない状況で、しかも周りは全員敵という状況、実力もそうですが神経も使う。そのような状況で勝ち抜いた者たちであれば、普通に考えて名のある者たちが多かろうと思っていましたが、聞き及んだことのない者たちもいるな、と」

「ふむ……」

 左馬之助は早雲にそう言われて、今回勝ち抜いた参加者の名簿を確認する。

「確かに……そうだな。しかも、三千院のこせがれのことは聞いておったが、機関に所属していない能力者もいる」

「はい……特に私が考えていましたのが、先の予選……と言っていいでしょうが、バトルロイヤルで勝ち抜いていながら、その手の内も大して見せていない連中です。余裕なのか、もしくはそういった能力なのか。モニターの場所を確認しながら戦っていると思われる者たちもいます。中々、出来ることではありません。そう考えれば期待以上の実力者たちが集まっていると思いますね」

「……」

 左馬之助は改めてその勝ち抜いてきた者たちの名簿を確認した。

「早雲が気にしているのはどれだ?」

「そうですね……以下の7名でしょうか」

・グループ1 三千院水重
・グループ3 ジュリアン・ナイト
・グループ5 ダグラス・ガンズ
・グループ7 ヴィクトル・バクラチオン
・グループ9 黄英雄
・グループ10 てんちゃん
・グループ16 堂杜祐人

 早雲は名を一人ずつ上げる。

「これらのメンバーは、まだ底が知れないと感じました」

「なるほどな……三千院、ジュリアン・ナイト、ヴィクトル・バクラチオン、黄英雄以外はモニターにもほぼ映ってないな。それに機関の所属がない者も三千院の他にジュリアン・ナイト、てんちゃん、か。ジュリアン・ナイトはあのナイト家の系譜だとは想像つくが、このてんちゃんという者は、確かに一体どういう者なのか皆目見当もつかん。明良は知っているか?」

「いえ……私にもまったく分かりません」

「どんな勝ち抜き方だったのだ?」

「はい……報告によると、このてんちゃんなる参加者は全グループの一番最後に勝ち抜いてきたようです。事前に待合で用意した軽食を食べ過ぎて、ずっと会場のどこかで寝ていたようです。それで時間が過ぎ、時間ギリギリで起きて、慌てて膠着していた戦いの中に入り勝利した。と……すべて、聞いてもいないのに本人がうちの綺麗どころに自慢げにそう言ってきたと、困っておりました」

「「……」」

「まあ……世の中は広い、ということだな。能力者もまだまだ色々といる。機関の目指すところはまだまだ遠い」

「……はい」

 左馬之助が腕を組み、早雲に目をやる。

「……これらの者は、まだまだ何かある、と感じます。まあ、黄家の者は苦戦しているようにも見えましたが、力を隠さんとするばかりに少々、柔軟性を欠いていたように見えました。何はともあれ、明日からの大祭が楽しみです」

「ふむ……あ、朱音様ご推薦の堂杜祐人も……か。朱音様が注目しているといってもランクDなのだがな……。いや、実際、勝ち抜いたのだから、大したものと言えるか。やはり早雲のそれは朱音様の巫女としての眼力を信じてのものか?」

「いえ、違いますよ、左馬之助様。ランクDだからです」

「……?」

「このバトルロイヤルをランクDで勝ち抜けるというのは普通に考えて難しいはずでしょう。たとえば相当な実戦経験があって戦術眼に秀でているというのであればまだ分かります。ですが、彼は瑞穂様と同い年で機関では同期の少年です。ですが……勝ち抜いてきた」

「……」

「もちろん、あの朱音様が推薦してきたのです。何かある……もしくはその潜在能力を見抜いて、その将来性を買っているのかとも思いましたが、私はそうではないと感じました。明良君、ちょっとグループ16のモニターを流してくれるかい?」

「はい、分かりました」

 何故か、ちょっとだけ嬉しそうな表情を見せた明良がグループ16の記録映像をメイン画面に映し出した。

「見てください。彼はモニターにはほとんど映っていません。映っていたのは会場に入ってきたところだけです。それで……」

 映像はグループ16の祐人以外の参加者の戦闘を映しだしている。それぞれに自分の特徴に沿った戦いを繰り広げており、乱戦のようになっていた。
 そして、一人の参加者が倒れ、全体の戦闘の均衡が破れるのが見てとれる。

「ここです」

 早雲が指摘すると同時に、祐人がモニターの前に忽然と姿を現した。
 そして気づけば参加者が全員、一番最初に倒れた参加者を中心にして再起不能に追い込まれている。

「……! どこから出てきた!?」

「分かりません。ただ、一人目が倒れ、全員がその者のバッジを手中に動こうとした瞬間に、このようになっています。実際、私たちも他の動きのあった会場に気をとられていて、しかも、あっという間に決まっていたため、グループ16の様子にはまったく気づきませんでした。もし、この堂杜君でしたか……その堂杜君がこれを狙っていたのだとすれば……」

「まさか……と、言いたいところだが、早雲はそう感じたのだな?」

「はい、恐ろしい少年だと思います。もちろん、私の勘ではありますが」

「……」

 横で明良は目を細め、ニンマリとした表情でこの話を聞いている。その姿に早雲は目を移し、苦笑いをした。

「明良君……随分、嬉しそうだね。何か知っているようだ」

「いえいえ」

「……明良、お前、何を知っている? 言ってみろ。そういえば、お前もこの少年を推している風にも見えたな」

「……いや、この映像がすべてですよ。これが堂杜君です」

「……」

「あはは、そんなに睨まないでください。そうですね、先日、瑞穂様が闇夜之豹とやり合ったのは覚えておられますか?」

「うん? ああ……我々も数人派遣して軽く懲らしめてやったやつか。まったく、お嬢も色々と厄介ごとに巻き込まれるもんだと思ったが」

「その闇夜之豹が壊滅したのはご存知ですよね」

「はん!?」

「それは本当ですか!?」

 明良の話に驚いた左馬之助は組んでいた腕をほどき、早雲は珍しく表情を大きく動かしす。

「あ、申し訳ありません、伝えてませんでした。瑞穂様がうるさいから、と言うので……ではなくて、お二方もお忙しそうでしたので伝えてなかったことを忘れてました。申し訳ありません」

「ななな! ちょっと待て。まま、まさか、お嬢が一人でやったのか!? 何故、止めなかった!? 知っておれば神前も総出で! いや、本当に一人でやったのか?」

「四天寺にちょっかいを出してきたというので、朱音様の要請に応じて私も数名、大峰の者を送りましたが……」

「いえ、一人ではありません。瑞穂様を含めて3人です。3人で闇夜之豹を完膚なきまで叩きのめしました。中国に乗り込んで数日で壊滅させたようです」

「……!」
「……何という」

 言葉を失う神前、大峰の両当主を前に、笑いを堪えるように明良は顔を下に向けた。
 その様子を見て顔をいつもの冷静な表情に戻した早雲が問いかける。

「それで……明良君、瑞穂様以外の二人は誰ですか? 一人は恐らく客人のマリオンさんですか……。ではまさか、もう一人というのは……」

「はい、それが堂杜祐人君です。その時の闇夜之豹を壊滅させたときの布陣では前衛に堂杜君を配置して、その補佐にマリオンさん。そしてその後方から瑞穂様が強力な援護をしたようです」

「「……」」

「ちなみに闇夜之豹を直接、打ち倒していったのはほとんどが堂杜君だそうです」

「「!?」」

 明良がもう一度、笑いを堪えるような仕草をした。
 さすがにその態度に不愉快そうな表情をした大峰、神前の両当主。

「ふん、そうはいえどもお嬢がほとんど、敵の戦力を削ったのであろう……」

「あ、言うのを忘れていました。闇夜之豹はこの時、死鳥の止水を雇っておりました」

「はん……死鳥? 誰だそれは……死鳥!?」

「止水!? あの若き日の天衣無縫に傷を負わせた止水ですか!?」

「はい、堂杜君はあの死鳥の止水と一騎打ちの果てにこれを破っています」

「「!?!?」」

 顔を強張らした大峰、神前の両当主は完全に言葉を失い、それ以上、次の言葉が出てくるまで長い時間を要したのだった。




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コメント

  • 龍牙レット

    更新が待てないよ〜笑

    4
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