魔界帰りの劣等能力者

たすろう

すれ違い


「本っ当に大丈夫なんでしょうね!? 祐人」

「う、うん、大丈夫じゃないかな?」

「なんでそんなに頼りないのよ! あなたの契約人外でしょ!」

「あはは……そう言われましても」

 燕止水の事実上の人質がいるというマンションに向かう途上、明良の運転する車の中で瑞穂はずっとこのような様子だった。学校を出立する前に見せた嬌子の変化の術による自分の姿が思い出されると不安で仕方がないらしい。祐人は助手席で後部座席からの質問攻めにあっていた。

「でも……私も不安です。もし、あんな格好で学校でいられたら……あんなにスカート短くして……」

「マリオンさん、それはきつく言っておいたから、さすがにもうしないと思うから」

「でも……ちゃんと伝わっているか心配です」

「マリオン、私なんて水着よ! 水着! 学校で水着姿をして歩いてたら、退学ものよ! 一体、契約人外にどういう教育してんのよ! あんたは!」

「きょ、教育と言われても……最初から、あんな感じだったんだって」

「教育……祐人さん、あの女性型の人たちの姿は最初から、ああだったんですか? まさか! 祐人さんの教育であの姿に!? それで、お色気お姉さん、おっとりお姉さん、無邪気な妹にゴスロリまで……」

「何ですって!? 祐人! あなたはぁぁ!」

「そんなわけないでしょ!! どんな人間だよ、僕は!」

 ワナワナしている瑞穂に、その横で「じゃあ……やっぱり私はメイド……でいくしか」とわけの分からないこととつぶやいているマリオン。
 祐人も二人の心配も分からなくもない。嬌子たちのことを知らない二人にしてみれば、思いもよらない格好で自分に化けられたのだ。気にならないわけがない。
 だが、祐人も健康男子。

(嬌子さんが変化した二人の姿は、こう何というか……良かったなぁ)

 ふと、あの時の嬌子が化けた二人の姿をふにゃけた顔で思い出してしまう。

「……」

「……」

「ハッ!」

 鼻を伸ばすような顔になった途端に、静かになった後部座席を祐人が振り返る。
 そこには怒りと羞恥と……喜び? が混じったような真っ赤な顔をしている少女二人と目が合い、すぐに顔を整える祐人。

「あ! 今度、みんなには講義をしようと思ってるんだよ! 世間の常識みたいなやつ!」

「事前にしろぉぉ!!」

「それ最優先事項です! 祐人さん!」

「のほ! ぐ、苦じい……ひ、痛い」

 祐人は後ろから首を絞められ、頬をつねられた。
 その横では笑いを堪えて運転する明良が体を震わしている。

「ほら、皆さん、着きますよ。おそらくあれですね」

 明良がそう言うと、祐人たちは街の中心地にある好立地の高層マンションに顔を向けた。



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