魔界帰りの劣等能力者

たすろう

偽善と酔狂の劣等能力者① 2度目の再会

 ミンラに到着するとすぐにマットウは状況確認のため、マットウ邸の会議室に幹部を集めた。マリオンは祐人の指示通り、マットウの護衛のためその会議に出席し、瑞穂は機関との連絡を早急にとった。

 瑞穂は宛がわれた自室でメールに目を通し、顔色を変え、国際電話の許可を得て機関の日本支部に電話をかけた。
 また、マリオンは会議場でのミレマーの現状の説明を聞き、みるみる顔色が変わっていく。

 そして、瑞穂たちが到着して30分後ぐらいに祐人はマットウ邸に到着した。
 祐人はまず、現状の把握のために瑞穂とマリオンを探すと、瑞穂とマリオンが屋敷の玄関に立っている。

「祐人! 無事? 大丈夫?」

「祐人さん! 怪我はないですか?」

「僕は大丈夫! 瑞穂さん、マリオンさん! 状況は?」

 戦いの後にここまで移動してきて、息も切らせていない祐人に呆れるが、今は事態が緊迫している。無駄な時間はかけられない。
 瑞穂は祐人の質問に悔しそうな顔をしつつ、機関とのやり取りの詳細を説明した。

「異常な事態よ。もう私たちの手に負える状況を超えているわ。機関からも指示を受けた。簡単に言うと私たちは、これから来る能力者と合流次第、交代になるわ」

「え!? それは!」

 瑞穂の話によれば、現在、機関の最高戦力の一角、ランクSSがこちらに向かっていて、その能力者がこちらに着き次第、交代だということだ。また、スルトの剣という組織がS級の危険性をはらむ組織であること、その目的が機関の存在意義の失墜であること、そして、スルトの剣の実力はランクAの二人を揃えても、敵う連中ではないということを伝えられる。
 その瑞穂の言う内容は祐人自身も理解は出来るが、どうにも心情的にスッキリしないところがあった。祐人はマットウ、グアラン、そして、ニイナと、この国の未来を切り開こうとした人たちと関わったことで、心の中に何とも言えない気持ちが覆っていた。
 そしてマリオンもミレマーの状況を説明する。

「こちらも大変です。今、ミレマーの主要都市に敵の召喚した数え切れない妖魔が迫っているようです。対象の都市は首都ネーピーを筆頭にヤングラ、ピンチン、タルケッタ、ソーロー、パサウン、そして、このミンラです。そして、敵は不可解なことに既に到着している都市もあるのですが、他の都市と歩調を合わせているのか、そちらでは街の郊外で待機しています。ミレマー中の軍隊が妖魔を迎え撃とうと大混乱です」

「それは! そんな数の妖魔を召喚できるなんてことが! 敵能力者は一体……しかもその動き……」

 祐人は敵の考えを推測する。恐らく、各都市に一斉攻撃を考えているのは明白だ、だが、何故、そのような遠回りな事をするのかが、不気味でもある。

「恐らく……これは敵のショーなんだよ」

「ショー!?」

「瑞穂さんの話と照らし合わせて考えると、このスルトの剣の目的にミレマーなんて関係ないはずだ。それを大規模に襲う理由は、ミレマーの各都市を一斉に襲うというショーを世界中に見せつけて、能力者の存在を誇示し、機関の存在も明らかにした後、その無力さをアピールしようとしてるんじゃないかな……」

 祐人の話を聞いて、瑞穂は怒りに震え、マリオンも顔を強張らした。

「何て奴らなの!」

「それだけの理由で、罪のない人たちを……許せない」

 それだけではない。
 このスルトの剣のしていることは、マットウ、グアランを始めとする、このミレマーを良き国にしようとする人たちの心を、何の関係もなく、何の意味もなく、脈絡すらなく、ただ、自分たちの目的のために横から現れ、これらを蹂躙、破壊するものだ。
 これらの自らの人生をかけた人たちの心、想い、そして決意を虫けらのようにあざ笑うもの……。
 祐人は心の奥底から煮えたぎった熱い感情が沸き上がる。
 瑞穂とマリオンは祐人の変化に気付いた。しかし、何故か二人はまったく驚いた風もなく、祐人を見守るように見つめている。
 もう、この祐人の顔を二人は知っているのだ。
 あのホテルのパーティー会場で祐人が見せた、他の人たちを守ろうと戦神のような気迫を放ったこの姿を。

「祐人……」
「祐人さん……」

「何? どうしたの?」

 瑞穂とマリオンは互いに目を合わすと同時に頷き、瑞穂が祐人の顔を正視する。

「私たちから祐人に言いたい事を言うわ」

 一瞬、祐人はあの丘で言われた説教がここで始まるのかと、身構える。
 だが、瑞穂とマリオンにそんな雰囲気はない。
 むしろ、二人は微笑すら浮かべていたからだ。
 瑞穂とマリオンのその真剣でいて、そして、その二人の優し気な表情に祐人はドキッとしてしまう。
 すると、瑞穂が先に口を開いた。

「祐人、今、あなたのしたいことをしなさい。私たち二人はそれを無条件に認めるわ。あなたには、それをするだけの力とそれを私たちに認めさせるだけの実績があるのよ? たとえ、誰もあなたのことを認めていなくても、覚えていなくても……少なくともそれを知っている私たち二人だけには」

「そうです、祐人さん。私たちは祐人さんを信じるだけの、出会ってからの積み重ね……があるんです。だから、これから何をするか、どうするか、祐人さんの中で決まったら私たちに言ってください。私たちは必ず、あなたの味方をします」

 思いがけない二人の言葉に祐人は目を見開く。

 祐人は二人を目を見つめ返し、二人の言う言葉の意味を探した。

 実績? 出会ってからの積み重ね? それはいつからの出会い? 一体、どんな意味で? 

 あの力を使って、祐人の存在の記憶がない人たちがこんなことを言ってきたことはないのだ。祐人はまるで、何かを期待をしているにも関わらず、でもそうでなかった時のことに怯えるような情けない顔を見せた。

 だが、二人はその情けない祐人の顔にも、反応も動じることもなく、この堂杜祐人という少年を正面からとらえている。

 祐人の体が無意識に震えだした。

 祐人は目頭が勝手に熱くなり、目の中に涙が溜まり出す。

 そして……祐人は二人の微笑した少女を交互に見つめ、何かを言いかける。

 だが、祐人はその答えを二人の少女に先に言われた。

「「私たちは…………」」





「思い出したわ……祐人を……」
「思い出しました……祐人さんを……」










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