魔界帰りの劣等能力者

たすろう

召喚士2


「うーん……」

 祐人は腕を組み、軽く首をかしげる。
 要は、瑞穂は敵の居場所を感知し次第、敵を撃破することに拘っている、ということらしい。確かに、そうすれば今回の依頼は達成したことにもなる。
 だが、先程の話から、そのままの作戦では容易な事ではないようにも感じられる。

「何よ……何か不服なの? 堂杜祐人」

 瑞穂は祐人の反応に不機嫌そうに聞いてくる。

「いや、不服ではなくて……最終的には、それでいいんだけど……」

「じゃあ、何よ!」

「うん、その場合、前提条件があるでしょう? 敵の居場所を正確に把握しなければならないっていう。でも、さっきの話だと中々、上手くいってないって話じゃない?」

「前回は良いところまで行ったのよ! 私もマリオンも居場所を感知出来て! ただ、私が術を練ろうとした時に邪魔が入ったのよ! それにもう少し落ち着ければ、もっとましな探査風を作って、相手の居場所だって今までよりも精密に掴めるわ」

「う、うーん……ただ、そいつらは相当、戦い慣れた連中に感じられたんだよね?」

「だから、それが何よ!」

 瑞穂は祐人の煮え切らない様子にイライラして来ているようだ。相当、敵に対してストレスが溜まっていることもあるのだろう。
 マリオンは瑞穂を宥めながら、祐人に聞いてくる。

「祐人さんには何か引っかかるところがあるんですか?」

「うん。まず、敵の一人が召喚士なのは確定だよね?」

「はい、あの妖魔たちは間違いなく召喚された人外達だと思います」

「じゃあ、召喚士にとって一番気をつけなくてはならないことは?」

 マリオンは祐人の問いに即答する。

「もちろん、自身の居場所を知られないこと。それでいて、敵の居場所を常に把握しておくことだと思います。召喚士は召喚に大変な集中力を必要とするので、自身が襲われた時点で、召喚が解除されてしまう可能性すらありますから」

 祐人は大きく頷いた。瑞穂は「そんな当たり前のことを、何を偉そうに!」という態度で横に向き、テーブルの上で頬杖を付いた。

「うん、その通り。だから、召喚士になる者は必ず、召喚術の他に自身の居場所や姿を悟られないような隠密術も身につけていることがほとんどなんだよね。そうなると、対召喚士との戦いの勝敗は相手の居場所を如何に正確に見つけるか? になるよね?」

 マリオンは祐人の言葉に頷く。

「ということは、問題はどのようにしてその召喚士が身を隠したか?   ということに尽きると思うんだ。これさえ、事前に分かっていれば、四天寺さんの大技のための時間稼ぎすらいらなくなる……」

 マリオンはその祐人の発言に考えるような顔をする。瑞穂は頬杖を解き、祐人に体を向けた。

「それは確かに祐人さんの言う通りですが、隠密術となると周囲との同化がメインです。相手の召喚士はそんなに遠くにいない筈だと思いますから、それさえ看破できれば……」

「そうよ、あれだけの数を召喚しているんだもの。あまり遠くにいては召喚士の魔力のアンテナが届かなくなるわ。だから、私は周囲に探査風を送り、風の通りを阻害する空間を探したのよ」

「私は魔力の発信源を探りました。前回はそれで、敵を探知できましたし……」

 その二人の答えを祐人は考える。どうやら、色々と思い違いというより、召喚士について知らないことがあるように思えた。

(なるほど、だからその探索方法に終始したんだ……。確かに基本通りだけど……それと召喚士が常に同じ場所にいると考えてるのかな?)

「まず言っておくけど、隠密術は周囲との同化だけではないよ? 姿を変えて召喚された妖魔と同じ姿としているという手段をとる者もいるし、自身のダミーを置くときもある」

 瑞穂とマリオンは目を見開く。

「それに隠密術は常に一人で完結しているとも限らない。複数の能力者で行うことも多々あるんだ。さらに言うと、上級の召喚士は移動しながらでも召喚できるよ」

「な! 何ですって?」「本当ですか!?」

 瑞穂が思わず声をだし、マリオンも口に手を当てる。
 だが、瑞穂は祐人の言葉に懐疑的な顔をする。マリオンも若干、信じられないというような顔だ。

(魔界で会った召喚士たちは、そうだったけど……こちらでは違うのか?)

「あなた、適当なことを言ってるんじゃないでしょうね? 最初の話はまだしも、極度の集中力が必要な召喚士は、召喚をしたら最後、その場で魔力、霊力の続く限り、その場で動かずに集中力を切らさないようにするわ」

 その瑞穂の言葉にマリオンも続ける。

「はい、ですので召喚後は他のスキルは発動できませんので、必ず召喚前に同化の術で姿を隠します。確かに、召喚士は能力者として非常に希少な存在ですから、情報が少なく、その実戦スキルはあまり知られてはいませんけど……祐人さんの言うような事は聞いたことがありません」

「えっと、ちょっと分からないんだけど……二人のその召喚士の知識はどこから?」

「はあ!? こんなの常識よ!」

「あ、はい。私は主にバチカンの書庫で読みました」

「あなたこそ、その話は何なのよ! あなた、たかがランクDでしょう!? そのあなたが何を適当なこと言って……どこからの話なのよ!」

「あ、えっと、うん……」

(こ、困ったな……戦ったことがあると言っても信じてもらえないだろうし、その後の説明も面倒だし……うん? あ! そういえば、新人試験の時の試験官にいた……)

 祐人を睨む瑞穂に、祐人の説明を待つ感じのマリオンに説明する。

「ふ、二人とも、新人試験の時の試験官でドーラっていう召喚士のこと覚えてる?」

「!」

「あ……はい。『法術・能力の完成度』の試験官の……」

「うん、そう! あの人は召喚後も自由に動いていたのを覚えてる? あの人は、相当な召喚士だと思うけど……召喚後も適当に座って、あくびをしたり、お菓子とか食べてたよね?」

「あ……」「そういえば……」

(よし! あと、一押し……)

「それに四天寺さんやマリオンさんほどの実力者がいて、こんなに手こずるなんて……しかも、四天寺さんも戦い慣れた連中だと言っていたでしょう?」

「…………」

 徐々に瑞穂とマリオンは祐人の言うことを、受け入れ始めている。祐人の言うことに裏付けがあるように感じてきたのだ。
 だが、瑞穂とマリオンは、祐人の話が説得力があるからという、それだけで受け入れ始めている訳ではない……。
 それは二人にとっても不思議な感覚が湧いてきたのだ。
 この少年の話を聞いているこの状況に……まるで二人は既視感があるように……。
 そして、祐人はその二人の心持ちに気づかす、真剣な顔で、瑞穂とマリオンの話で気になっていることを告げた。

「ただ、一つだけ引っ掛かってるんだけど……二人が言っていた、もう一人の霊力系能力者の存在……」

 瑞穂とマリオンは、もう祐人の話に聞き入っている。
 祐人は目に力を込めると、二人にお願いをする。

「前回の襲撃のことを詳しく説明してくれないかな? できれば、簡単な地図もあるとありがたいんだけど……」

 瑞穂とマリオンは祐人の問いに、目を合わせ……頷いた。




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