魔界帰りの劣等能力者

たすろう

任地へ出発

 

 日曜日の朝、祐人は居間でそれぞれに好き勝手に寛いでいる人外の友人達に声を掛けた。

「みんな聞いて。今日から数日、家を空けるけど心配しないでね。ちょっと仕事があるから行って来るよ」

「えー? 何でー? じゃあ、一緒に行くー」

「私もお供いたします。御館様」

「(コクコク)…………」

「あっしも!」

「だめだよ。ほんの7日間だから、家は勝手に使ってていいから」

 7日間開けても、人外である彼女たちは実体化しなければお腹はすかない。そのため、その辺を心配しなくて済むのは祐人にとって気楽だった。

「ええー、じゃあどっか遊びにでも行って来ようかなあ。いつ帰って来るの?」

「もう、みんな結局、入り浸りなんだから……」

「でも、祐人」

「うん? 何? 白」

「もし、何か困ったことがあったら私たちを呼んでね! すぐに駆けつけるから!」

「そうよー、祐人。お姉さんも祐人のためだったら、すぐに行くわ。祐人を困らせる奴がいたら根絶やしにするから」

「嬌子さん、良い笑顔で怖いこと言わないでよ……。でも、ありがとう。まあ、でも今回はちょっと、遠いから難しいね」

 それを聞いて、皆、キョトンした顔をした。そこに目の覚めるようなイケメンである傲光が前に出てきて、祐人の正面に来ると神妙な面持ちで跪いた。この扱いは慣れないから止めてと言っているのだが、傲光はこれだけは引かなかったので、祐人は諦めた。 

「御館様」

「な、何? 傲光」

「私たちを呼ぶのに距離は左程、関係はありません」

「え? そうなの?」

「はい、御館様が強く願えば、願うほど、私たちはそれだけ早く親方様のところへ行くことが出来ます。ここにいない者達も同様です」

「えー!? 本当に?」 

「はい」

「でも今回は外国だし……さすがに」

「関係ありません。ですので、御館様が困った時はお呼び下さい。いえ、呼んで欲しいのです。本来は御館様のお傍にいたいのですが、親方様が駄目と仰るならそれは従います。ですが、私たちは御館様に頼って頂けるのは非常に幸せな事なのです。これを迷惑とは思わないで頂きたいのです」

 そう言うと、傲光は懇願するように顔をあげる。
 祐人は、傲光の真剣な言葉に顔を引き攣らせる。

(相変わらず、傲光は固いし重いよ!)

 と思ったが、周りを見渡すと白もスーザンも、そしてサリー、玄、嬌子も真面目な顔で祐人を見ている。これが全員の総意であると言うように。
 そこに足元にウガロンまで、じゃれた様に祐人に前足を預けてきた。

「ウガ!」

 その様子をみて、祐人は大きく息を吐いた。

「分かったよ。僕が困った時は皆を頼るから……」

「ありがとうございます!」

 傲光は感動したように、頭を下げ謝意を示す。

「でも!」

「は!」

 祐人の思ったより強い発声に傲光は頭を上げた。祐人はこの人外友達を見渡すようにして、

「皆が困った時も僕を頼るんだよ? 何ができるか分からないけど、できる限りのことはしたいと思うから。僕らは友達でしょう?」

 と言って祐人はニッコリと笑った。

「は……、はい! 承知致しました!」

 傲光は頭を下げて、震えている。
 その姿に祐人は、呆れたように苦笑いし、

「もう、まったく傲光は一々、大げさなんだよ。もっと気楽にしてくれれば良いのにー。ねえ、みん……な?」

 と周りに目を向けると、祐人はギクッとした。
 嬌子やサリーが頬を赤くして祐人を見ている。良く見ると白やスーザン、玄も同様だ。

 何か不穏な空気が流れていると感じて、祐人は後ずさる……が、

「「「「祐人――!!」」」」「親分―!」「ウガ!」

「わー! またこれかー! こら! 抱きつかないでって! こら! 嬌子さん! サリーさん! どこ触ってるの! 白もスーザンもキスはやめてキスは!」

「「「「「祐人、大好きー!!」」」」」「ウガ、ウガ!」

「ちょっとー! 離れてー!」

 最近は事あるごとに、この調子だった。



 祐人は、揉みくちゃにされるがようやく脱出し、全員を落ち着かせて空港に出発した。
 そして、空港に着くと祐人の顔中のキスマークを辺りの空港利用客に一斉に注目され、祐人は止む無く、大きなマスクとサングラスを購入する羽目になった。


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