魔界帰りの劣等能力者

たすろう

ランク試験 幸運と実力③

 
 剣聖の姿が見えなくなると日紗枝は目を伏せ、踵を返すと改めて自室に向うと携帯に着信が入った。発信者は秘書の垣楯志摩だ。
 彼女はこの試験の直前にロンドン支部に日紗枝の代行でシスター・ソフィア・サザーランド殺害についての会議に出席している。
 内容は随時、報告を受けていたが会議終了後も日紗枝の判断で引き続き調査をさせていた。

“大嶺様。犯人について重要なことが分かってきました。最近の能力者失踪もやはり犯人の吸血鬼ヴァンパイアが関係しているようです”

「え? じゃあ、やはりそいつの仕業だったのね。でも何故、能力者ばかり……」

“どうやら犯人の能力に関係しているようです。高い確率で犯人の吸血鬼は血を吸った能力者の能力も吸い取るようです。能力者達を狙ったのはそういう理由かと……”

「まさか! 吸血鬼はそれぞれに能力も弱点も固体差が激しいというのは聞いているけど、そんなのは聞いたことがないわ……」

 吸血鬼は非常に固体差の激しい種族であることが知られている。
 一般的に知れ渡っている太陽の光、十字架、大蒜、純度の高い水等々に弱いというのは、はるか昔に人間社会を脅かしたある一固体での情報に過ぎない。

 また、彼らは別に血を吸わなくても生きていける。
 彼らはそれぞれに多種多様な個性と弱点、能力を持っている種族であり、ある情報が全ての吸血鬼に同じことが言えるとは限らない。
 だが、ただ一つだけ……一つだけ全ての固体に言えることがある。

 それは彼らが不死者ノスフェラクと呼ばれ……人智を超えた強力な人外である、という事だけである。

“はい。確かに吸血鬼は血と一緒に記憶や知識、姿を吸い取るというのは数百年前の記録で確認されていますがこういう能力は珍しいようです”

「吸血鬼のコミュニティからは? 何か報告は?」

“いえ。ただコミュニティも責任を感じているらしく、捜索部隊を出しているとのことで何か分かれば、すぐにでも機関に報告するとのことです。現在まで五人の被害者が出ていますが、その内、四人が機関所属の能力者です”

「ふむ、で、そのノスフェラクの格は?」

“コミュニティからによると名はガストンと言い、その存在は千五百年クラスだそうです”

「千五百年クラス!! ……准魔神クラスじゃない。しかも能力者の能力を吸い取っているとなると事実上、魔神クラスと考えて……。血を吸われた能力者の能力は?」

“はい、確認されているのはシスター・ソフィアのサトリ能力を筆頭に戦闘系のものはほとんど無いです。他の被害者では有名どころではロンドン支部所属ジョン・ラーキンズの【イクイヴォーカル】等々ありますが、ただ厄介なのはその中に【ポジショニング】があります”

「それはエドモンド・スタンの! あの厄介者がやられたの?」

“はい。主に潜入、情報入手を主目的に活動していた無所属の能力者エドモンド・スタンの能力です。一週間前にデュッセルドルフのホテルでやられました。この能力はどこにいてもそこにいるのが自然、というように感じるので、どのような組織に侵入しても疑われません。この能力のせいで吸血鬼側も捜索に相当苦労しているようです。元来、吸血鬼同士は近付けばお互いが分かるはずですが、この能力のせいで……”

「サトリの能力にポジショニングの能力か。厄介ね……」

“はい”

「申し訳ないけど志摩ちゃん。引き続き調査をしてくれる? こちらもあとは認定証の手続きと懇親パーティーで終わるから。私もシスター・ソフィアのお墓に花の一つでもあげたいし、その犯人には私が直接手を下したい気持ちすらあるのよ……」

“……分かりました。実は私に心当たりがあって、これから、ある者と会う予定です。誰とは申せませんがその者と話せば何か情報が手に入るかもしれません”

「分かったわ。常に携帯を持っているから、そちらに連絡お願いね」

 日紗枝は早速、職員達に指示を出しながら懇親パーティーの準備をすべく歩き出した。



 その同時刻……新人試験事務局のある会議室。そこにあるノートPCに保存された新人達の試験結果のファイルが開かれていた。

「ククク、ご丁寧に能力の特性、有用性とリスクまで記載されているのか。やはり能力者の解析は能力者の方が良く分かっている……」

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