魔界帰りの劣等能力者

たすろう

試験開始③

 
 夕方からの第二部の試験は基礎霊力・魔力測定。

 測定方法は能力者機関専属のイーラとドーラという女性が行うことになっている。
 イーラは霊力専門でドーラは魔力専門との事だった。普段は調査と研究が主任務だそうだが、彼女らはその特殊能力で霊力、魔力の強さを測ることが可能なのだそうだ。

 一端、集められた受験者達は霊力部門と魔力部門に分けられ、説明を受けた後にホテルの自室に待機。連絡が来たら一人ずつ、計測専用の会場に行くことになっている。
 やたら待たされて、部屋に寝転がりながら待機していた祐人にもようやく呼び出しの電話が鳴り、言われたとおりに会場に向った。
 会場前には機関の職員が二人立っていて、祐人を確認すると中へ案内された。

 促されるままに会場に入ると、中には特に何も無く、意外と狭く薄暗い。
 そして、その何も無い薄暗い部屋の前方に、肘掛椅子に白髪の女性が座っているのがおぼろげながらも分かった。怪しい雰囲気に祐人はゆっくりと前に進み、その女性がしっかり見えるところまで近づく。
 そこで気付いたのだが、その女性は白髪といっても見た目は幼く、十代半ばより下に見える少女であった。ちょっと驚いている祐人に、その白髪少女は気だるそうに目を向けた。

「はい、堂杜祐人君ですね。私が基礎霊力を測定するイーラといいます。はあー、やっとこれで最後ね……。それでは早速測りますけど、その床にあるいんの上に立って霊力の続く限り全開で開放してください。あ、ちゃんと結界を張ってあるから心置きなくお願いします」

「あ、はい。あの……僕のこの霊力なんですが、実は僕……」

 祐人は正直に自分の特異体質を説明しようとするが遮られてしまう。

「はいはい、早くして下さいね。毎年、霊力部門の方に人が多くて、とっくに魔力部門の方は終わっているんだから。絶対にもう飲みに行っているし、ドーラの奴! それに今回は優秀な新人が多くて、もう既に時間オーバーなの。私も早く飲みに行きたいの!」

 途中から声が小さくて祐人には聞えなくなるが、不機嫌そうなのは伝わってくる。説明ができそうに無いその雰囲気に、祐人は仕方なく床に施してある今まで見たことの無い魔方陣のような印の上に立った。

(僕は霊力のコントロールも出来ないし、能力も霊力を使わないんだけど……いいのかな?)

「はい、今から魔力を出すけど、驚かないでね。確かに霊力と魔力は反発し合うからぶつけ合えば危険だけど、私はむしろ、その特性を使ってあなたの霊力を測るの。あ、勝手にその印から絶対出ないでね。出たら、あなたの霊力と私の魔力が直接触れて部屋ごと吹き飛ぶから」

 そう言うイーラの言葉の端々には、早く終わらしたいというニュアンスが伝わってくる。

 イーラの言う霊力と魔力の反発は、能力者達の間では教科書的な常識の話である。
 霊力と魔力はその力の根源が違う、と言われている。その関係は水と油、表と裏と対極を成している。そのため、能力者は必ずどちらかの一方の力だけを体に宿している。両方宿してしまえば、その個体はその姿を保ってはいられないと考えられているのだ。

 考えられている、というのも、そういった能力者の存在は今まで認められておらず、確認することもできないからである。
 祐人が床にある印の上に立つのを確認し、イーラが目を瞑る。イーラの髪が風も無い部屋の中で揺れ動くと、それに呼応するように床の印が青白い光を発し始めた。

「ああ、これはすごいです。ビリビリきます。今年の新人達は本当にすごいですね。でも、その中でもこれは……質が違います。なんという濃さですか。それにこれだけの霊力なのに、広がる範囲が狭いですね。素晴らしいコントロールです。結界を張る必要はあなたには無いですね」

「あはは……(立っているだけなんですけど……)」

 三十分後……。

「はあはあ。ちょっと、まだいけるんですか。くっ……私の方がイってしまいそうです」

 祐人はこれ以上意味が無いのでは? と思うのと、何か妙に色っぽくなってきたイーラの反応に戸惑いだした。紅潮させて悶えるイーラと視線が重なり、祐人も頬を染める。

(か、帰ろう……うん、その方が良さそうだ。じゃあ、反発しないよう霊力の周りに仙氣を……)

 祐人は椅子の上で艶っぽく悶えるイーラを見て、印の上から体を外した。
 途端にイーラは椅子の片方の肘掛に上半身を乗せて、息も絶え絶えになってしまっている。
 イーラのトロンとした目と祐人の目が合う。

「あ、あの。それじゃあ! 僕は部屋に戻ります! 有難うございました!」

 そう言うと、逃げるように部屋を出る祐人を疲労困憊の体でイーラは見つめていた。


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