異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

2-18 出発準備

ゴブリン討伐作戦の翌日。
朝日はドワーフの鍛冶師、ダグダの工房に来ていた。
「と、いうわけだ。なるべく早く仕上げてくれ」
そう言って朝日は店のカウンターに自身と勇二の剣と大銀貨二枚を置く。
「あぁ、任せろ」
ダグダはカウンターに置かれた代金と剣をカウンター下にしまい朝日を見やる。
朝日がここに来たのは昨日の戦いで消耗した武器のメンテナンスのためでもあるのだが...
「それより、いつ出るか明確な時間はきまってるのか?」
「いや、いろいろと揃えなきゃいけないものがあるんでまだ未定だな」
尤もな理由としては昨日、ジョウに教えられた街へ行く準備と行った方が正しかったりする。
「……稼ぐだけなら別にこの街だけでもいいと思うが?」
探りを入れるようにダグダが聞いてくる。
「この街の魔物たちじゃ少し物足りないんでな。それに冒険してこその冒険者だろ?」
そう言って朝日は軽く返す。
「……そこまで強くなりたいか?」
対してダグダは真剣な声音。
「………」
朝日は無言。
するとダグダは何かを諦めたような顔をしてある紙を取り出す。
「…これは?」
「伝説の勇者様とやらが使っていたと言われる二振りの名剣。その情報じゃ。餞別代りにくれてやる」
そこに書かれていたのは二つの剣。
片方はまるで物語に出てくるような白い直剣。
片方は柄や刀身のすべてが黒い漆黒の長剣。
「…なぜこれをオレに?」
訝しげな顔をして朝日が問う。
「ふん、さあな。今この紙を貴様に渡さなければならない。そう思っただけだ」
「なんだよそりゃ。はぁ、まあいい、とにかく助かった」
今度は朝日が先に折れ差し出された紙を懐にしまう。
「そう言えばあと二人はどうした?一緒じゃなかったのか?」
唐突にダグダに聞かれた朝日は少し疲れた顔をする。
「昨日の依頼が大分堪えたんだろう、まだ寝てるよ。オレは今からギルドに昨日の報酬を受け取ってから野営に必要なものとかを買いに行かなきゃならねぇ」
全く、何暢気に寝てやがんだ。と愚痴る朝日。
「ははは!そいつは災難だったな!」
「るせ。とにかくこの後も予定があるんで、行かせてもらうぞ」
そう言って豪快に笑いだすダグダ。
なんとなくイラっと来た朝日はそのまま店の出口に向かって行く。
「おう!剣に関しては三日後にお前たちの宿に遣いをよこす。後、街を出る前に、一度でいいから三人そろって店に来な!」
後ろから聞こえたダグダの声を聞きつつ朝日は店を出て冒険者ギルドを目指すのであった。

to be continued...

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