異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

2-15 救援

ベースキャンプで仮眠をとっていた勇二は喧噪の中目を覚ました。
「んー?なんだろう?」
疲れが抜けきっていないのか数分間ぼーっとしていたが、だんだんと意識が覚醒していくにつれ、周りの状況が少しづつ見えてきた。
自分達の近くでは冒険者たちがせわしなく動き回っている。
何かトラブルでも起きたのだろうか。
「なんかパニックっぽいね。ってそうだ未希!起きて!」
そこまで状況の確認をした勇二は慌てて未希を起こす。
「んー、ゆうじー?どうしたのー?」
「どうしたって言うかちょっと緊急事態っぽいよ。一度朝日と合流しなきゃだから起きて。ってそういえば朝日は?」
そう言ってあたりを見渡す勇二。
しかし朝日の姿は見当たらない。
すると...
「おい、アンタ」
「へ?僕?」
勇二に話しかけてきた男がいた。
「アンタ等の仲間ならもう諦めろ」
「…どういう意味?」
「ついさっき森のほ方で討伐隊長と一緒にいるのを見たんだ。だけどその近くにはゴブリンキングがいやがったのさ」
「…彼らはまだそこに?」
「助けに行こうってなら、やめておけ。どうせ犬死だ。ついさっき討伐隊長のパーティメンバーが撤収命令を掛けた。もうじき出発だ」
先程のざわめきはそれだったのか、と一人納得する勇二。
「未希、朝日がこっちに逃げてくる可能性は?」
「んー、ゼロだね」
「じゃあ僕たちに残された選択肢は?」
「朝日を見捨てて逃げる、もしくは朝日の応援に行く」
「まぁ、そうなるよねぇ」
そういって朝日がいるであろう森のほうを見る。
「「とりあえず、やれることをやれるだけやってみろ。ダメだったらその時だ」、か」
思わずつぶやいたのは、勇二が人助けに行き詰ったとき、朝日が口癖のように繰り返していた言葉だ。
「勇二ってば朝日みたーい!」
「ははは、朝日が聞いたらきっと怒るよ?」
そんなやり取りをしながらも二人は身支度を整えていく。
「おい、まさか行く気か」

「当然でしょ?友達なんだから」

そう言って勇二は体の関節をほぐすように準備体操をする。
「……アンタ等の仲間と討伐隊長はこの先を直進したところにいた。たぶん今でもそこで交戦中だろう」
そういって男は背を向ける。
「ゴブリンキングはCランクの魔物だ。油断すると死ぬぞ」
男はそれだけ言うとその場を去っていった。
残ったのは勇二と未希の二人だけ。
「それじゃ、行こうか」
「うん!」
二人はその言葉を合図に走り出す。
未だ戦い続けてるであろう友人の元に。
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「おいおい、この規模の集落だったからもしやと思ったが、マジかよ」
討伐隊長のジョウは唖然とした表情でその三メートル近い巨体を見上げる。
「おい!逃げるぞ!」
そう言ってアサヒはジョウの首元をつかみ後ろに飛ぶ。
するとそこにはゴブリンキングの振り下ろした鈍器が地面に小さなクレーターを作る。
「っとあぶねぇな。って、ん?」
見事躱した朝日だがそこであるものに気づく。
それはゴブリンキングの振り下ろした鈍器。
それは、人間の死体だった。
片方は女、片方は男の死体だ。
そして朝日はさらなる事実に気づいた。
男の死体、彼は討伐作戦開始前に話をした男だったのだ。
ならば女のほうは恐らくあの男の婚約者だろう。
それに気づいた瞬間、朝日の頭の中から逃げるという選択肢は消えていた。
「おい、ジョウ」
「いきなり呼び捨てか。まぁいい、どうした?」
「お前は先に行け」
そういってアサヒはゴブリンキングのもとに近づいていく。
「はぁ!?何を言って」
ゴブリンキングが死体を自分のほうに振りかざして来たが、よける。
そして一度ゴブリンキングを睨み付ける。
「アレをブチのめさなきゃいけない理由ができた」
「お前なぁ!そしたらお前の仲間は!」
「安心しろ」

「今ご到着だ」

to be continued...

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