異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー
2-14 想定外の事態
空が僅かに白み始めた頃。
ようやく朝日達の戦闘に一つの区切りがついた。
「あ”ー、流石に疲れた」
そういって朝日は近場の石に腰かける。
「激しく同意。て言うか、返り血がすごいことになってるね」
そういうのは勇二だ。
未希も無言で同意している。
彼らは先程討伐したゴブリンの返り血で血塗れになっている。
後方にいた未希ですらそれなりの血を浴びている。
「にしても結構倒したね。大体十分の一くらいかな?この数だと」
そう言ってちらりと討伐部位の耳を入れた麻袋を見る勇二。
そういった勇二の足元に転がっているのはゴブリンの死骸だ。
その数、約二十五体。
「これだけ倒せば報酬も期待できるだろ」
そう言って腰かけていた石から立ち上がり、軽く伸びをする朝日。
「んー?ゆうじー、なんかあっちの方で声がするよー」
そういったのは草むらの方で寝っ転がっていた未希だ。
「ホントだ。何だろう?」
「さぁな、大方これから帰還するぞっていうのを伝えに来ただけかもしれんが。行って見るか」
「「りょーかい」」
そう言って人の声のする方、集落の真ん中のほうに行って見るとそこには小さいながらもベースキャンプのようなものができていた。
「……これは?」
思わずつぶやいた朝日の声に反応したのは討伐隊の隊長、ジョウだった。
「お、来たか。お前さん方で丁度四十一名。よかった全員生き残ってたな」
「えっと、これは一体何なんですか」
今度は勇二が面を向って問う。
「ん?あぁ、これか?簡単なものだが休憩場のようなものと思ってくれればいい」
見たところ簡易的だが診療所のようなものもあり、道端で寝ている冒険者に毛布を貸し出したりもしているようだ。
「ってことは討伐作戦は?」
「あぁ、無事終わったと思っていいぞ。いくらか漏らしもあるだろうが、数は減ったんだし問題はないだろう」
そういうと、ジョウは仲間からお椀のようなものを受け取り朝日たちに差し出す。
「ほれ、もう夜明けだ。日が完全に登ったら出発するからこれでも食っておけ」
差し出されたのは温かいスープだった。
「あぁ、感謝する。ほら、お前ら飯だってよ」
「え!?ご飯!?よかったー、またあの微妙な味の干し肉を食べる羽目になるかと…」
「おぉ、スープだー。でもそんなことより眠いよぉ」
「寝るのは後だ。まずは食え」
そんな朝日たちのやり取りを、ジョウが少しニヤニヤしながら見てくる。
「……なんだよ」
「いや、君がまるでその二人の保護者のように見えてな」
「…反論できねぇ自分にむかつく」
それを聞いて快活に笑うジョウ。
「それよりあんたちょっといいか?」
「ん?どうした?」
「いや、少し聞きたいことがあってな」
言いづらそうにしている朝日にジョウは何か感じ取ったのか真剣な顔になって朝日を見返す。
「今回の件の被害者はどうなった」
「ん?犠牲者か?それならゼロ人だが」
「そうじゃなくて、攫われた方のだよ」
朝日の脳裏には出撃前に話した男の顔が浮かんできた。
その言葉にハッとした表情になるジョウ。
そして...
「わかった。場所を変えよう、ついてこい」
ジョウは被害者たちの遺体が安置してある場所に向かい歩き出す。
「朝日?」
移動しようとしていた朝日に気付いたのかウトウトしていた勇二がこちらを見てくる。
「大丈夫だ。すこし話をしに行くだけだ。お前は未希と一緒に休んでろ」
「うーん、わかったー」
そういうと勇二は再び舟を漕ぎ始め、数分としないうちに眠りに落ちていった。
「すまない、待たせたな」
一度朝日はジョウに謝罪するが、当のジョウは気にした様子も無く、こちらをニヤニヤしながら見つめてくるだけだ。
「いやいいってことよ。じゃあ行くか」
-------------------------------------------------------------
そこにあったのは布のかけられた数体の遺体。
一番近くにあった遺体の布をめくってみる。
そこには顔の形が変形するまで殴られ続けたのであろう女の顔があった。
「ッ!?こいつはひどい。あいつらを連れてこなくて正解だったな」
そういって静かに布を掛け直し合掌する朝日。
「……被害者の遺体はこれで全部か?」
朝日のその言葉に軽く首を横に振るジョウ。
「いや、集落中探してギルド長からもらった名簿に照らし合わせたが数人の遺体が足りない。どれも全部女だ。恐らく捕食されたんだと思うが」
「そうか……」
そういって朝日はあたりを見渡す。
(あの男はいない、か。遺体がここになかったのか?)
朝日がそんなことを考えていると、少し遠くから叫び声のようなものが聞こえてきた。
「これは、悲鳴か?」
「あぁ、恐らくな。行ってみよう」
そういって朝日たちは駆け出した。
-------------------------------------------------------------
「おい、どうしたっ!?」
「おいおい、冗談だろう?こいつは…」
朝日たちは目の前の光景を見て言葉を失った。
悲鳴を聞きつけたどり着いた場所には......
「ランクC、ゴブリンキングっ!」
つい先ほどまで息を潜めていたゴブリンの王が姿を現したのだ。
to be continued...
ようやく朝日達の戦闘に一つの区切りがついた。
「あ”ー、流石に疲れた」
そういって朝日は近場の石に腰かける。
「激しく同意。て言うか、返り血がすごいことになってるね」
そういうのは勇二だ。
未希も無言で同意している。
彼らは先程討伐したゴブリンの返り血で血塗れになっている。
後方にいた未希ですらそれなりの血を浴びている。
「にしても結構倒したね。大体十分の一くらいかな?この数だと」
そう言ってちらりと討伐部位の耳を入れた麻袋を見る勇二。
そういった勇二の足元に転がっているのはゴブリンの死骸だ。
その数、約二十五体。
「これだけ倒せば報酬も期待できるだろ」
そう言って腰かけていた石から立ち上がり、軽く伸びをする朝日。
「んー?ゆうじー、なんかあっちの方で声がするよー」
そういったのは草むらの方で寝っ転がっていた未希だ。
「ホントだ。何だろう?」
「さぁな、大方これから帰還するぞっていうのを伝えに来ただけかもしれんが。行って見るか」
「「りょーかい」」
そう言って人の声のする方、集落の真ん中のほうに行って見るとそこには小さいながらもベースキャンプのようなものができていた。
「……これは?」
思わずつぶやいた朝日の声に反応したのは討伐隊の隊長、ジョウだった。
「お、来たか。お前さん方で丁度四十一名。よかった全員生き残ってたな」
「えっと、これは一体何なんですか」
今度は勇二が面を向って問う。
「ん?あぁ、これか?簡単なものだが休憩場のようなものと思ってくれればいい」
見たところ簡易的だが診療所のようなものもあり、道端で寝ている冒険者に毛布を貸し出したりもしているようだ。
「ってことは討伐作戦は?」
「あぁ、無事終わったと思っていいぞ。いくらか漏らしもあるだろうが、数は減ったんだし問題はないだろう」
そういうと、ジョウは仲間からお椀のようなものを受け取り朝日たちに差し出す。
「ほれ、もう夜明けだ。日が完全に登ったら出発するからこれでも食っておけ」
差し出されたのは温かいスープだった。
「あぁ、感謝する。ほら、お前ら飯だってよ」
「え!?ご飯!?よかったー、またあの微妙な味の干し肉を食べる羽目になるかと…」
「おぉ、スープだー。でもそんなことより眠いよぉ」
「寝るのは後だ。まずは食え」
そんな朝日たちのやり取りを、ジョウが少しニヤニヤしながら見てくる。
「……なんだよ」
「いや、君がまるでその二人の保護者のように見えてな」
「…反論できねぇ自分にむかつく」
それを聞いて快活に笑うジョウ。
「それよりあんたちょっといいか?」
「ん?どうした?」
「いや、少し聞きたいことがあってな」
言いづらそうにしている朝日にジョウは何か感じ取ったのか真剣な顔になって朝日を見返す。
「今回の件の被害者はどうなった」
「ん?犠牲者か?それならゼロ人だが」
「そうじゃなくて、攫われた方のだよ」
朝日の脳裏には出撃前に話した男の顔が浮かんできた。
その言葉にハッとした表情になるジョウ。
そして...
「わかった。場所を変えよう、ついてこい」
ジョウは被害者たちの遺体が安置してある場所に向かい歩き出す。
「朝日?」
移動しようとしていた朝日に気付いたのかウトウトしていた勇二がこちらを見てくる。
「大丈夫だ。すこし話をしに行くだけだ。お前は未希と一緒に休んでろ」
「うーん、わかったー」
そういうと勇二は再び舟を漕ぎ始め、数分としないうちに眠りに落ちていった。
「すまない、待たせたな」
一度朝日はジョウに謝罪するが、当のジョウは気にした様子も無く、こちらをニヤニヤしながら見つめてくるだけだ。
「いやいいってことよ。じゃあ行くか」
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そこにあったのは布のかけられた数体の遺体。
一番近くにあった遺体の布をめくってみる。
そこには顔の形が変形するまで殴られ続けたのであろう女の顔があった。
「ッ!?こいつはひどい。あいつらを連れてこなくて正解だったな」
そういって静かに布を掛け直し合掌する朝日。
「……被害者の遺体はこれで全部か?」
朝日のその言葉に軽く首を横に振るジョウ。
「いや、集落中探してギルド長からもらった名簿に照らし合わせたが数人の遺体が足りない。どれも全部女だ。恐らく捕食されたんだと思うが」
「そうか……」
そういって朝日はあたりを見渡す。
(あの男はいない、か。遺体がここになかったのか?)
朝日がそんなことを考えていると、少し遠くから叫び声のようなものが聞こえてきた。
「これは、悲鳴か?」
「あぁ、恐らくな。行ってみよう」
そういって朝日たちは駆け出した。
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「おい、どうしたっ!?」
「おいおい、冗談だろう?こいつは…」
朝日たちは目の前の光景を見て言葉を失った。
悲鳴を聞きつけたどり着いた場所には......
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