異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

2-13 激戦

朝日たちは今、リザーブの森にて待機していた。
時刻は午後八時ごろ、奇襲にはもってこいの時間帯だ。
「諸君!用意はいいか?」
Bランクパーティ『世界樹の木陰』のリーダーであり、この討伐隊の隊長でもあるジョウが声をかける。
その場にいた者たちは一斉に頷く。
「ゴブリンたちの拠点は森の奥地、すでに斥候が発見し、地図に記載してあるが夜の森は昼の森よりも危険度が増す。注意するように。」

「全員生きて帰るぞ!進軍開始!」

その言葉とともに冒険者達は雄叫びをあげ、次々と夜の森に突っ込んでいく。
「これ奇襲の意味なかったんじゃね?」
思わずぼやく朝日。
「はは、まぁまぁ」
苦笑する勇二。
「それより早く行こうよ!皆行っちゃたよ!」
未希がそう言って慌てているが朝日は動じない。
「はいはい、わかってる。勇二、光魔法で照明を頼む」
「オッケー、万物を照らす光『ライトボール』」
勇二の詠唱に呼応し浮かび上がったのはバスケットボール程の光球。
「よし、それじゃあ行くか」
「「りょーかい!」」
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朝日の能力は実に使い勝手がよい能力だ。
一度見たものは絶対に忘れることはない。
故に地図を見ればその後は持ち歩く必要もないし、方向なども併せて覚えていれば道を迷うことはない。
よって、朝日たちは順調に夜の森を進むことができている。
道中でフォレストウルフや小型犬サイズのウサギ、ラージラビットに襲われこそしたものの無事に撃退している。
ちなみに余談だが、フォレストウルフやラージラビットなどは魔物にカテゴライズされる。
魔物にもランクが存在している。
多くの場合はその魔物を討伐するために必要な冒険者ランクがその魔物のランクとなっている。
そのため、フォレストウルフやラージラビットはランクE、今回の討伐目標であるゴブリンはランクDの魔物ということになる。
閑話休題。
襲い掛かってくる魔物を倒し、討伐部位を回収しながら先に進むと人だかりが見えた。
「ん?なんだろう、あれ」
一足先に勇二がそれに近づく。
「おい、何かあったのか?」
朝日も近くにいた冒険者の男に話を聞く。
「あぁ、あれを見てみろよ。おそらくだがゴブリンたちの集落だ。この大きさだと二百はいるんじゃねえか?」
男の指さす先にあったのは集落。
そこには見回りのためか数体のゴブリンたちが徘徊している。
「恐らくだがあそこに俺の仲間がいるんだ」
「…被害にあった冒険者ってのはあんたの仲間だったのか」
「あぁ、その中には俺の婚約者もいてな。近いうちに引退して結婚する予定だったんだ」
「…そうか」
「……ゴブリンってのは人間だろうがエルフだろうが関係なく襲ってきやがる。たぶん俺の嫁ももう手遅れだろうさ。でもせめて遺体だけでも取り戻さなきゃいけねぇからな」
「それがあんたがここにいる理由か」
「あぁ、それに仲間の敵も討たなきゃな。ほら、そろそろ突っ込むみたいだぜ」
「そうみたいだな。俺は仲間の元に戻る……敵、討てるといいな」
「おう、あんがとよ」
すっかり話し込んでいる内に討伐隊のメンバーが集まってきたようだ。
「あ、朝日。そろそろ突撃だってさ」
「知ってる。それよりも勇二、未希」
「ん?どうしたの朝日」
「なぁーに?」

「生きて帰るぞ」

その言葉に勇二は苦笑する。
「朝日、それは死亡フラグだよ?」
「ふんっ、フラグブレイカーが言ってくれる」
「よーし!それじゃーガンバロー!」
朝日たちのこのやり取りより数分後、討伐隊は進軍を始めた。
それは長い長い夜の始まりの合図でもあった。
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激戦の始まりを告げた最初の一手は魔法による総攻撃だった。
三人もそれに参加する。
勇二は光属性初級魔法『レイボルト』、朝日は無属性初級魔法『フォースバレット』、未希は風属性初級魔法『ウィンドバレット』を放つ。
他の冒険者達も、それぞれの得意としている魔法を放った。
立ち込める砂埃。
その中から飛び出す小さな影があった。
六十センチ程度の小さな体躯、緑色の肌、わずかに飛び出たツノ、この作戦の討伐目標であるゴブリンだ。
「全員構えろ!来るぞ!」
討伐隊長のジョウが大声をあげ呼びかける。
次々と飛び出してくるゴブリン達。
討伐隊の冒険者たちは各自連携を取りながらそのゴブリン達を討伐していく。
朝日達も例に漏れずゴブリンとの交戦を開始した。
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出てきたのは棍棒をもって武装した四体のゴブリンだ。
朝日は軽く二人に目配せをする。
「お前ら、やり方はいつも通りだ。行くぞ!」
そういうや否や一気にゴブリンのもとに詰め寄る朝日
「おら!」
そして瞬時に斬りつける。
それは寸分狂わず首を切り落としゴブリンの息の根を止めるに至った。
「朝日、後ろ!」
「分かってる!『フォースバレット』発動!」
後ろから殴りかかって来たゴブリンに魔法を打ち、後ろにすっ飛ばす。
「未希!」
「おっけー!風さん!お願い!『ストーム』!」
朝日が合図したところに未希が魔法を放つ。
朝日の魔法により飛んできたゴブリンはさらなる追撃を食らいはるか上空に飛ばされる。
「あ、どっか行っちまった。あれじゃ討伐部位の回収ができないなっと!」
暢気にそんなことを呟きながらもゴブリンを相手取る朝日。
「朝日結構余裕だねっ!」
そういう勇二の方も中々に余裕があるように見える。
「まぁなっ!んでもってこれで最後っと」
朝日は再び自分のもとに来たゴブリンを勇二のもとに吹っ飛ばす。
「よいしょ!」
その吹っ飛んできたゴブリンを勇二は小盾で防ぎ蹴り上げる。
「風さんもっかいお願い!『ウィンドバレット』!」
さらに、蹴り上げられたゴブリンを未希の魔法が撃ち抜き、ゴブリンは絶命した。
「ふぅ、何とか片付いたね」
「あぁ、そうだな」
そういって一息つこうとした朝日の目に新たな刺客が映る。
「おいお前ら、残念ながら休んでいる暇はないらしいぞ」
「えー、うっそー」
「ははは。まぁ何とかなると、いいね」
朝日たちは新たに現れたゴブリンたちを相手取る。
その後、同じようなことが四、五回あったので割愛することにする。

to be continued...

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