異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー
2-9 命
「ふぅ、何とかなったね」
勇二は思わず近場の岩に腰かけながらそう呟く。
その周りには八体ほどのフォレストウルフの死体があった。
「阿呆、いいから討伐部位の収集手伝え。牙ってだけあって硬ぇんだよ」
そんなことを言いつつ朝日は倒したフォレストウルフの討伐部位である牙を集めていた。
「でも、やっぱり動物の命を奪うのって結構くるよね」
勇二の腰かける岩に背をもたれかけさせながら未希が言う。
「まぁね、こうしてみると本当に異世界に来たんだなぁって実感するよ」
「……それだけじゃねぇだろ」
そういうと朝日は一度作業の手を止め二人の方を振り返る。
「お前ら、オレたちがこの世界に来た理由、覚えてるよな?」
その言葉に勇二は重々しく頷く。
「うん…魔王を倒すため、だね」
「その通りだ。そして魔王を倒すということは魔王を殺すということでもある。わかるか?」
朝日の言葉にうなずく二人。
「これからオレたちはもっとたくさんのイキモノを殺すことになるだろう。人間だって殺すことになるかもしれない」
一息ついて朝日は続ける。
「たぶんこの世界じゃ、命の扱いなんてモンはとてつもなく軽い。だからこそ魔物だって人間だって必死に生きてる。他の、誰かの命を奪いながら、な」
そういって一度二人の瞳を真っ直ぐに見つめる朝日。
二人の瞳はとても真っ直ぐで、純粋な光を放っていた。
それを見て、わずかに朝日の表情が柔らかくなった気がした
「別に進んでたくさんの命を奪えとか、そんなことは言わねぇよ」
だけど、と朝日はさらに続ける。
「絶対に道を踏み間違えるな、お前たちはあの女神が賭けた最後の希望で救世主なんだから」
この言葉だけでも覚えておいてくれ、と言い朝日は締めくくり牙を収集する作業に戻る朝日。
だが、そこに勇二が異議を唱えた。
「朝日、‘お前たちは,じゃなくて‘オレたちは,でしょ?」
その言葉に朝日は一瞬だけ照れたような顔をし、寂しそうな表情になる。
「あぁ、そうだな。それよか、さっさと手伝え。取り分減らすぞ」
「っあ、今照れたでしょ!絶対照れた!そうだよね勇二?」
「うん、今のは完全に照れ隠しだね。でも未希、あまりしつこく言うと後が怖いからやめようね?」
「……もうどうでもいいから手伝え。ホントに硬ぇんだよこの牙」
そんな感じでいつも通り騒ぎ始めた三人のもとに近づくものがあった。
そのものは背に身の丈もあるバトルアックスを背負た大男だった。
「よぉ、昨日のクソガキどもぉ。借りを返し来たぜぇ?」
to be continued...
勇二は思わず近場の岩に腰かけながらそう呟く。
その周りには八体ほどのフォレストウルフの死体があった。
「阿呆、いいから討伐部位の収集手伝え。牙ってだけあって硬ぇんだよ」
そんなことを言いつつ朝日は倒したフォレストウルフの討伐部位である牙を集めていた。
「でも、やっぱり動物の命を奪うのって結構くるよね」
勇二の腰かける岩に背をもたれかけさせながら未希が言う。
「まぁね、こうしてみると本当に異世界に来たんだなぁって実感するよ」
「……それだけじゃねぇだろ」
そういうと朝日は一度作業の手を止め二人の方を振り返る。
「お前ら、オレたちがこの世界に来た理由、覚えてるよな?」
その言葉に勇二は重々しく頷く。
「うん…魔王を倒すため、だね」
「その通りだ。そして魔王を倒すということは魔王を殺すということでもある。わかるか?」
朝日の言葉にうなずく二人。
「これからオレたちはもっとたくさんのイキモノを殺すことになるだろう。人間だって殺すことになるかもしれない」
一息ついて朝日は続ける。
「たぶんこの世界じゃ、命の扱いなんてモンはとてつもなく軽い。だからこそ魔物だって人間だって必死に生きてる。他の、誰かの命を奪いながら、な」
そういって一度二人の瞳を真っ直ぐに見つめる朝日。
二人の瞳はとても真っ直ぐで、純粋な光を放っていた。
それを見て、わずかに朝日の表情が柔らかくなった気がした
「別に進んでたくさんの命を奪えとか、そんなことは言わねぇよ」
だけど、と朝日はさらに続ける。
「絶対に道を踏み間違えるな、お前たちはあの女神が賭けた最後の希望で救世主なんだから」
この言葉だけでも覚えておいてくれ、と言い朝日は締めくくり牙を収集する作業に戻る朝日。
だが、そこに勇二が異議を唱えた。
「朝日、‘お前たちは,じゃなくて‘オレたちは,でしょ?」
その言葉に朝日は一瞬だけ照れたような顔をし、寂しそうな表情になる。
「あぁ、そうだな。それよか、さっさと手伝え。取り分減らすぞ」
「っあ、今照れたでしょ!絶対照れた!そうだよね勇二?」
「うん、今のは完全に照れ隠しだね。でも未希、あまりしつこく言うと後が怖いからやめようね?」
「……もうどうでもいいから手伝え。ホントに硬ぇんだよこの牙」
そんな感じでいつも通り騒ぎ始めた三人のもとに近づくものがあった。
そのものは背に身の丈もあるバトルアックスを背負た大男だった。
「よぉ、昨日のクソガキどもぉ。借りを返し来たぜぇ?」
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