異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

2-8 フォレストウルフ討伐

フォレストウルフ討伐の依頼を受けた三人は現在、リザーブの街の南にある森に来ていた。
「見つからないねー」
「最近数が増えてきてるって依頼書には書いてあったんだが……外れだったか?」
思わずそんなことをぼやく朝日。
すると......
「朝日、未希!ストップ。あそこ見て、何かいるよ」
その言葉を聞いた二人は一度立ち止まり勇二の指さす方向を見る。
そこには茂みがあり僅かに揺れているのが窺えた。
「お前ら、構えとけ」
朝日の言葉に二人は頷き武器を構える。
「それじゃあ、こいつを使って出てきてもらいますか」
そういって朝日はポケットから魔法陣の描かれた羊皮紙を取り出す。
そして、それと同時にコートの袖をめくり右腕につけた腕輪を露出させる。
朝日はその腕輪にはめ込まれた茶色い石に触れる。
そして...
「発動しろ『ストーンバレット』」
朝日がそう発すると、あたりに転がっていた石が宙に浮き、土属性初級魔法・・・が発動した。
発射されたこぶしサイズの石はそのまままっすぐ茂みに向かい飛んでいく。
そして、その意思が茂みに当たった途端、そこから一匹のフォレストウルフが飛び出してきた。
「よし!今だ、かかれ!」
「朝日!今のどういうことか後で説明してもらうからね!」
そんなことを言いながらもフォレストウルフに斬りかかる朝日と勇二。
未希は後方で魔法の準備をしながら待機している。
まず先に勇二が剣を縦に一閃するが、躱される。
続いて朝日が数本の投げナイフをフォレストウルフに投げつけるが、またしても躱された。
「二人とも避けて!風さん!『ウィンドバレット』!」
フォレストウルフが躱したその場所に未希が風魔法を放つ。
「ギャン!?」
未希の放った魔法は無事命中しフォレストウルフをよろめかせる。
「……やっぱり対人戦をするのとではだいぶ違うね」
「あぁ、流石動物というべきか予想ができん。さらに言えば動きも機敏だ」
朝日達がそう話しているうちにもフォレストウルフは体勢を立て直しこちらを見てくる。
その瞳には明らかな怒りの色があった。
「グルルルル!」
それを見て勇二は冷や汗を流す。
「怒らせちゃったみたいだけど、どうする?」
その言葉を聞き、同じく冷や汗を流している朝日が答える。
「どうするって、倒すしかないだろ」
朝日がそう言い終るとほぼ同時にフォレストウルフが飛び掛かってきた。
朝日と勇二はそれを後ろに跳び、避ける。
自分の攻撃が当たってないのを確認したのかフォレストウルフは次の行動に出た。
「アオーーーン!」
それを聞いた朝日はわずかに焦る。
「っち、遠吠えか。仲間を呼ぶつもりだな?面倒な…!未希、魔法の準備!勇二はタイミングを合わせるぞ!」
「りょーかい!」
「OK!カウントは任せるよ!」
そういうと朝日は剣を構えなおしフォレストウルフをじっと見据える。
「三、二、一、今だ!」
その言葉を合図に二人は同時にフォレストウルフのもとに駆けだす。
「しっ―――!」
勇二が今度は剣を横に一閃するが再び避けられる。
しかし避けた先い待っていたのは...
「っは、これでもくらえ!『フォースバレット』発動!」
それは朝日の攻撃魔法だった。
「キャン!?」
それをまともに食らったフォレストウルフは綺麗な放物線を描き未希のいるほうに飛んでいく。
「よし、いっくよー!風さん!お願い!『ストーム』!」
未希の滅茶苦茶な詠唱によって発動したのは小さな竜巻。
朝日の魔法によって飛ばされたフォレストウルフは勢いを殺すことなく未希の作り出した竜巻に激突し絶命した。
こうして、ようやく朝日達は無事に初の魔物討伐を迎えることができたのだった。

to be continued...

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