異界の勇者ー黒腕の魔剣使いー

心労の神狼

1-14 魔法適正

さて、朝日達は再び国王の間の前まで来たわけだが...
(((相変わらず扉デカ!)))
こればかりはどんな時でも変わらない三人の総意である。
先頭に立つメイドが扉の前に立つ騎士に一礼をする。
騎士はかるく頷くと扉の前で声お張り上げる。
「国王様、勇者様方が到着いたしました!」
するとすぐに国王の声が返ってきた。
「御苦労、通せ」
その国王の言葉に大きな扉がゆっくりと開いてゆく。
そこには王座に座る国王とその横に控えているウィリアムと昨日の神官風の男がいた。
国王の間に入ったとたん周りのメイドたちが一斉に国王に対し礼をする。
朝日達も礼をしようかと思ったが国王が手で制す。
「いや、頭を下げなくともよい、それより昨日はよく眠れたか?」
その問いに勇二と未希は頷き、朝日は肩をすくめる。
「ふむ、アサヒ殿は朝から晩まで寝ずに番をしていたと聞くが…どうかこの城のモノを信用してはくれんかのう?」
こんな時に勇者に手を出す者はおらんだろうしな、と国王が言う。
対して朝日はなぜ知っているのか、といった顔をしていたが。
「さて、昨日はできなかったが自己紹介をさせてもらおう。我は人間国ノイドの国王シュバルツ=クラウズ=ノイドだ」
「今回、来てもらったのは他でもない勇者殿たちの実力を確かめるためだ」
しかし、と国王は続ける。
「戦闘能力についてはウィリアムから聞いている、特にユージ殿、そなたの腕前はなかなかのものだとウィリアムが引っ切り無しにほめていたぞ?」
国王のその言葉に思わず背筋が伸びてしまう勇二。
国王は構わず続ける。
「さて、今日測らせてもらのは魔法の適性だ」
魔法、という言葉に三人がピクリと震える。
「確か伝承によると勇者様方の世界には魔法が存在しないとあるがこの世界では当然のように存在し人々の生活を支えておる」
それは知っている、女神から与えられた知識にあったものだ。
「そして、召喚された勇者たちは世界を渡るとき魔法を授かるとある」
そこまで聞いて朝日はこれからのことを把握した。
「成程、今回測定する適性ってのは『どんな魔法を持っているか』、『どれだけの規模の力か』ってのを測ろうってわけだ」
朝日のその言葉を聞いた国王は感嘆の声をこぼす。
「ほぅ、たったこれだけでそこまでわかるか。その通りだ」
国王はそういうと自分のすぐ近くに控えている神官風の男に目配せをする。
すると目配せされた神官風の男は朝日たちの前まで歩み一礼する。
「どうも勇者様方、わたくしはこの城の専属の神官をしております。ルシフル=マジェスタにございます、以後お見知りおきを」
すると神官の男、ルシフルは着込んだローブの袖から何やら円のようなものの書かれた紙を取り出した。
ルシフルは紙を広げ国王の間の床に敷いた。
その紙に書かれていたのは巨大な魔法陣。
「この魔方陣は魔力を流すことでその者の魔法適性の有無や属性などがわかるものとなっています」
魔法の属性には基本五属性の火属性、水属性、風属性、土属性、雷属性の五つがあり。
さらに、上位属性とも呼ばれ、とても珍しい新生五属性の光属性、闇属性、無属性、治癒属性、そしてユニーク属性の五つがあるらしい。
例えば、とルシフルは魔法陣の端に手を置く。
すると彼の周りに光の粒子のようなものが飛び交う。
そして...
「うわっ、燃えた!」
「でも熱くないよ?」
「ほぅ?」
魔法陣の真ん中から炎が噴き出した。
「まぁ、私には火属性の適性がありますのでこのように炎が噴出します」
ちなみにこの魔方陣で発生したものに実態はありません、と付け加える。
「さて、ではさっそく誰かやってみますか?」
その問いに朝日と未希はサッと勇二のほうを向く。(未希はいまだに勇二と顔を合わせようとはしないが)
そんな二人に苦笑しつつ、未希が自分のことに反応してくれたことを喜びつつ魔法陣のもとに近づく勇二。
「えっと、触れるだけでいいんですか?」
勇二の問いに頷くルシフル。
勇二がしゃがみ魔法陣に触れた瞬間それは起こった。
それは光と炎と雷の演舞。
それぞれの属性が激しく自己主張し起こった光景。
その演舞は数秒にしか満たなかったがその場にいた全員に感動を与えていた。
一番先に再起動したのはルシフルだ。
「ほほぅ、これはまた見事なものですなぁ。ふむ属性は光に炎に雷ですか」
彼は研究者らしく先程起こった事象を引き起こした属性を言い当てていた。
「なるほど、面白いものが見れました、さて次はどな「私が行きます!」…ではどうぞ」
彼の言葉を遮り未希が元気良く手を挙げる。
ルシフルは若干押され気味だ。
勇二と入れ替わる形で魔法陣の前にしゃがみ込む未希。
そして魔法陣に手を置く。
するとまたもや異変が起きた。
それは優しげな光に包まれた水が宙を躍る光景だった。
「おぉ、次は水属性に治癒属性、さらには風属性ですな」
「へぇ、きれいだね」
その光景もすぐに消え魔法陣の前には満足そうな表情の未希が立っていた。

to be continued... 

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