県立図書館のお話

ノベルバユーザー173744

夏蜜はちょっと目を覚ましました。

スヤスヤと眠っていた夏蜜なつみだが、目を覚ます。
御手洗いに行きたくなったのだ。
しかし、手を握ってくれている揚羽あげはに言うのも恥ずかしく、モジモジする。

「どうしたの?」
「あの……」
「ん?なっちゃん起きたんかいね。揚羽。看護婦さんを呼んどいでや」
「は、はい」

出ていったのを確認し、福実ふくみは微笑む。

「いかんねぇ……ぼんはそういう事が鈍いけんねぇ」
「お、お祖母ちゃん……」
「御手洗いやろ?その体では起きられん。看護師さんに手伝うてもらいなさい。その傷やけんね」
「動けんのが恥ずかしい……」

顔を真っ赤にする。

「何日間はおむつをするしかないなぁ。ばあちゃんも使いよるわい」
「お祖母ちゃんも?」
「ばあちゃんも90のばあちゃんや。なるべくは使いとうはないけどなぁ、遠出するときとかははいとらぁい。なっちゃんは、怪我が良くなるまでは、動いたらいけん。痛い思いをするんはいややろ?看護師さんに相談して、みたらえぇわい」
「うん、お祖母ちゃんありがとう」

恥ずかしげに頬を赤くする少女に、福実は微笑む。



素直な優しい子……。
初めて会ったときに感じたのは、苦労しているのに周囲に気を使える子だった。
親の身勝手で捨てられて、特別養護施設に預けられ会えるなんて偶然でもすごすぎる。
自分の父の再婚相手の弟と縁が出来るとは……。

そっと頭をなで、

「元気になったら、ばあちゃんとお兄ちゃんたちと遊びに行こうなぁ?」
「うん。おばあちゃんと手を繋いで、お兄ちゃんとも、で、お出掛けしたいなぁ」
「どこに行こうかのう?」
「動物園……ぞうさん見たいの。あ、お祖母ちゃんダメだったら……」
「かまんかまん。ばあちゃんは一緒にみたい」

その言葉にホッと安心する。

「大丈夫ですか?」

看護師に夏蜜を預け、出ていく。



「ジュースでもこうてこうかね。揚羽。動物園に行きたいて言うとったで?」
「動物園……パンダですか?熊はツキノワグマもヒグマも高齢で死んでしまったし……」
「そもそもここの動物園にはパンダおるまいがね」
「あ、そうでしたね。じゃぁ、レッサーパンダ、白熊……」
「ぞうが見たいんやと」

その言葉に、

「じゃぁ、元気になったら、父さんに頼んで車で行きますか?」
「そうやなぁ。お弁当もって」



しばらくして戻るともじもじと、

「お祖母ちゃん、お兄ちゃんありがとう」
「いいよいいよ。具合はどう?あ、そうだ。動物園と言えば、お兄ちゃんが学校で一回遠足に行ったんだけど、ちょうど誕生日だったからって、こんなぞうのぬいぐるみ、その場でくれてね……」

大きさを示す。
直径40センチ高さが30センチほどである。

「定期的にほこり払っているから、色褪せもないし、飾っているだけだから……今日の午後に帰ったら持ってきてあげようか?」
「ぞうさん?」
「そうそう。ぞうさんもお兄ちゃんの部屋より喜ぶでしょ。持ってくるね」
「わぁぁ……」

目をキラキラさせる夏蜜に、

「じゃぁ、今度動物園に行ったらペンギンさんが飛んでいるのを見ようか?」
「ペンギンさん、飛ぶんですか?」
「あぁ、ペンギンさんの水中での動きを見てもらうようにって、透明になってるんだよ。プールが」
「凄い‼」
「ビューンって水のなかで飛ぶからね。面白いよ」

揚羽は笑う。

「それと、猫科の大きなひょうとか、ライオン、とらもそれぞれ個性があって見ていて面白いし、楽しみだね」
「うん‼」
「じゃぁ、早く元気になりますようにって思って寝ようね?」
「はーい‼お兄ちゃん。ありがとう。おやすみなさい」

目を閉じて、すやすやと寝入ったのだった。

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