負け組だった男のチートなスキル

根宮光拓

第十五話 目覚めると

「うぅん……」

 気を失ってからどのくらいの時間が過ぎただろうか。
 元々が真っ暗なこの洞窟では、正確な時間を計ることなんて出来ない。

 とりあえずコウスケはステータスを確認することにした。気絶する前に色々変な言葉が聞こえたためだ。

「ステータス」


名前  コウスケ・タカツキ
種族  異世界魔人
レベル 1
スキル <技能創造> 隠蔽 鑑定 強化 超感覚

『スキルスロットが足りません。外すスキルを3つ選択してください』

 ステータスを開くなり言葉が脳内に響く。その言葉が意味するとおり何故かレベルが初期化されていた。

「レベル1!?」

 今までの努力が一瞬で無に返ったのだ。誰だって驚く。だがその声は動揺しているコウスケに考える暇を与えず、再び言葉を発した。

『スキルスロットが足りません。外すスキルを3つ選択してください。なお選択しない場合は全てのスキルが消失します』

 先ほど言った言葉に今度は脅し文句が追加された。早くしろ。そう言うかのように。

「えっと、それなら隠蔽と超感覚、鑑定で」

 コウスケはさほど重要ではないと判断したスキルを選択する。超感覚に至ってはついさっき作ったばっかりのスキルなので複雑な心境になったが、仕方がない。
 もしかすると今まで食べたものに原因があるのかもしれないが……キノコのせいだろうか?

 何故レベルが戻ったのかは不明だが、レベルが1になったことで、スキルスロットが減ったということは理解できた。では他の値はどうなったのだろうか。それさえも戻っている可能性が高いのは分かってはいるが、それでも少しは上乗せされていて欲しいと思うコウスケだった。


名前  コウスケ・タカツキ
種族  異世界魔人
レベル 1
体力  普通
魔力  異常
攻撃力 普通
防御力 異常
敏捷力 普通
スキル 技能創造 強化


「……おい」

 コウスケは表記されたステータスを見て思わず呟く。
 レベルが1だった頃のステータスを正確には覚えていないが、かなり壊滅的だったという記憶がある。それに比べるとまし。いやかなり良い。本来であれば喜ぶべきなのだろうが、表記されたステータスがおかしいと思わざるを得ない仕上がりになっており、誰だってこんなのを見れば目を疑うだろう。
 まず異常という言葉が褒められているのか貶されているのかまるで分からない。異常なほどあるのか、異常なほどないのか、はたまたそのものが異常状態であるのか。たった二文字では判別がつかない。
 とはいえ、ステータスそのものは前ほど壊滅的ではないと思われるので、コウスケは戸惑いながらも満足していた。

 レベルの初期化、ステータスの意味不明表記。色々分からないことがあるが、一つだけ確かな事があった。それは今までコウスケを蝕んでいた身体の痛みが嘘のように跡形もなく無くなっていたのだ。
 そのことについて考えられる理由は痛みを感じなくなるほどの間寝ていた可能性があった。だがそれでは飢餓、又は魔物に食われるかして、今頃永遠の眠りについているはずだ。

 今の状態を簡単に説明できる便利な言葉がある。
 死後の世界。
 とても信じられないが一番納得できる。神だっていたのだ。無いとはいえない。
 そんな事を考えながらコウスケは状況を理解するために起き上がった・・・・・・
 そしてスキル『強化』を五感に使い、身の回りを確認する。先ほど外してしまったが、強化に似たスキル『超感覚』を使うという手もあったが、あえてそれはしなかった。なぜなら改めて体の状態を確認しようと思ったため、感覚が鋭くなる『強化』にした。その思惑通り、強化を使った箇所の全ての感覚が鋭くなる。だが気絶する前に襲ってきた痛みなどは一切なく、身体が健全であることを再確認することができた。

 暗闇の中に薄っすらと様々な輪郭が浮かび上がる。その光景は気絶する前の洞窟そのものだ。初めからこの洞窟と思われる場所が死後の世界であったならば、ここが死後の世界であるということは否定できないが、そんなことを考えていても先には進めない。コウスケはここを洞窟だと思うことにした。そして早く脱出するために、奥へ進むことを決める。

 『強化』によって視界を得たコウスケ。一先ずこの空間から抜け出すべく、穴へ向かう。 
 その過程でも、小さな魔物が地面を這っていたり、飛んでいたりしていた。そのため経験値としてしっかり役立てる。
 穴の前に立つと、その穴がかなり奥深くまで続いていることが確認できた。強化した視力でも行き止まりが見えなかったからだ。
 そうして長い間痛みに耐えたこの空間からコウスケは脱出した。

「あれ? そういえば……」

 洞窟の穴。通路を歩いている最中、コウスケは先ほどから感じていた違和感。そのことについて、脳裏をよぎった。何か忘れている気がする。そもそも何であんなにあの空間で苦しんでいたのか。

「グルアアアア!」

 もう少しでそれが何か思い出せそうなところで、魔獣型の魔物が現れた。残念ながら鑑定スキルは手放してしまったので、そいつが何者かは分からない。

「全身強化」

 早速、全身に強化を施し、この通路に入る前に拾っておいた魔物の骨を手にする。強化状態で肉弾戦は愚作と考えての判断だ。
 その魔物はすぐさまコウスケへと飛び掛る。それをコウスケはバックステップで避け、持っている骨を魔物目掛けて振るう。
 その骨は見事に魔物に当たり、魔物はあっという間に気絶した。
 強化を使っての攻撃なので当然と言えば当然なのかもしてない。もちろんその骨を伝ってくる振動はコウスケの腕に伝わり、強化による鋭い痛覚が襲うが、いまさらその程度の痛みに怯むコウスケではなかった。
 トドメとして骨を魔物へと突き刺す。
 そしてカッと赤い目を見開くが、すぐに力尽きた。

 横たわる魔物。このまま放置しても良いのだが、それはそれで勿体無い気もする。とはいえ物を収納するようなものは持ち合わせていない。であればここで食うしか選択肢はなかった。

「ファイア」

 ボオッと魔物の死体が燃え上がる。
 てっきり、強化に加え、久々の光源に目が痛くなると思っていたコウスケだったが、そんなことはなかった。どういうわけか、コウスケが発動した炎は、光という光をほとんど発しない摩訶不思議な炎だったからだ。とはいえしっかりと熱を帯び、魔物を燃焼させていることからそれが炎であることは間違いない。
 コウスケは化学の授業で習った気のする炎の色について思い出してみる。だがそもそも魔法が存在するこの世界で、科学の常識がまともに通用するとは思えない。そう思ったコウスケは目の前で燃え盛る、赤黒い・・・炎をぼんやりと見つめていた。


「やっぱまずいな」

 焦げた魔物の肉を食べながら呟く。何も味付けをしていないため、素材その物の味がするのだが、その素材が決して良い肉ではないため、結論としてまずいのだ。
 以前の世界の食と比べたら、どの食事もこの世界では少し見劣りをしてしまう。一刻も早く肥えてしまった舌を改善していく必要がある。それを改めて思ったのだった。

 食事を終え、洞窟の通路を進む。
 そんなコウスケの頭には、先ほど脳裏を掠めた違和感について考えていた。

「いてっ」

 考え事をして歩いていたためか、コウスケはどう来るの岩肌へ腕を掠めた。
 それはとても小さな痛み。生命に何ら影響しない痛みだ。
 だが、その痛みがきっかけとなって、コウスケは思い出した。

「腕、足が……」

 そうコウスケの体には、なくなった筈の腕、引き千切れた筈の足が、何事もなかったかのようにそこにあったのだ。
 気絶する前に聞いた「更新」という消費スキルが頭をよぎった。

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