異世界でウサギダンジョン始めました

テトメト@2巻発売中!

第48層 燈火は燈火だなぁ


「お客さん来ないね~」
「だな。ここ交通の便が悪すぎるんだよな。むしろ一組来てくれたのが奇跡だった可能性すらでてきたぞ」

今いるのはウサギレンタル店受付。元クロのダンジョンの範囲内だったため、吸収した後はうちのダンジョンの一部になった場所に建てたお店だ。
ボーパルとクロは本丸をずっと留守にしておくのもちょっと心配なので先に転移で帰り、他所のダンジョンマスターなので家のダンジョン内を跳べない燈火と一応店長という事になっている俺の2人だけがお店に残っている。
まぁ、店長と言っても名前だけだし、今日一日でお店番の仕事は飽きたから明日からは別の人に投げるけど。
たしか擬態やら変形から幻惑やらが得意なウサギもいたはずだし、なんなら燈火の服でも着せてれば兎人とかに進化しそうだしな。

「道が悪いってのはそうだよねぇ。私ならぴょんぴょんすれば5分もかからないけど、歩いていくのは大変だと思うよ?」

「ぴょんぴょん」に合わせて燈火も頭の上に両手を添えてピコピコさせながらぴょんぴょんする燈火。
あざといわ~。細かいところで好感度を稼ぎにいこうというあざとい考えが透けて見えるわ~。そして、燈火も俺に見透かされているのが分かりながらやってる辺りがさらにあざとい。思わず頭をなでなでしちゃう。よしよし。かわいいぞ、もっとやれ。

「なんなら土魔法や、土木作業が得意なウサギ達に頼んで町までの道を作ってもらおうか。穴掘りはみんな得意だし、簡単な石畳の道ぐらいなら兎海戦術ですぐに出来るだろうしな」

山をブチ抜き、谷を埋め立てて作る最短距離の道と最高傾斜角度5度くらいの蛇行する道を作っておけば移動もしやすいだろう。
町までダンジョンが伸びているなら一括で「PON☆」と終わらせられるんだが、まだそこまでは伸びてないから地道にやるしかないな。まぁ、半日あれば余裕で終わるだろう。

「むふ~、じゅんにぃだっこ!」
「・・・いい終わる前には既に飛び乗っているんだが、その宣言には何か意味があるのか?」

燈火の頭をすりすりと撫でていると、テンションが上がってきたのか、俺の膝の上にぴょんと飛び乗ってきた。
シュワッチ!と飛んだあと空中で身を捻り、すっぽりと俺の股座に収まる高等技術だ。

・・・うん。こっちの世界に来て俺の体もそこそこ強化されているからなんの痛痒も感じなかったからいいけど、出来ればその技は封印して欲しいかな~?俺の体の前面に結構な衝撃がきたからね。生前の俺なら確実にひっくり返ってたからね。いろんな意味で。

「えへへ~・・・あ、そういえば・・・えっと、名前忘れちゃったけど、あの人達は助けに行かなくていいの?そろそろ落とし穴に嵌って半日ぐらいだけど」

ズリズリとお尻でバックして、俺に背中をぴったりと合わせた燈火が、俺の両手を取っておへその下辺りで交差させて満足げな表情をしてる。
いや、俺には燈火の頭頂部と思いっきり顔に当たっているウサミミカチューシャしか見えないが、絶対緩んだ顔をしているのは分かる。なんかそんなオーラ出てるし。幸せオーラ的な?リア充爆発しろ的な?いや、別に俺自身はリア充に思うところは無いけどね。思うところどころか興味も無いし。

「あぁ、あのお客さんね。えっと、名前は思い出せないけど金髪と男の娘の」
「そうそう。って、じゅんにぃも名前覚えてないの?友達になったんじゃなかったっけ?」

燈火が俺の膝に乗ったまま、頭だけを上に向けて俺の顔を上下逆さまに見ながら聞いてくる。
仕草は可愛いんだけど首が痛くなりそうな格好だなぁ。

「いや俺、男に興味は無いしな」
「幼女以外興味無いの間違いでしょ?まぁ、私もじゅんにぃ以外に興味は無いけどね!」

うん。知ってる。
でも、燈火は口でそう言ってるだけで本当は覚えてそうだけどな。なんだかんだ言ってもスペックはめっちゃ高いもん。

「話を戻すけど、あの2人はしばらく様子見る感じでいいのね?」
「ん~、そうだなぁ。どうせなら最もピンチなタイミングで助けに入った方がいいだろうしな。でも、あんまり遅すぎても不自然かな?」

「いや~。今でも大分ピンチだとは思うけどね。乙女的な意味で」

そう言いながら燈火がカウンターの下に隠してあるあの冒険者達のライブ映像のモニターへ、指をプルプルさせながら必死で手を伸ばしている。
そんなに取りにくいなら一回降りればいいのに。

「っ!はぁ。取れたぁ~」
「別に無理しなくても言えば取ったのに」

「え~?だってこっちの方がかわいいでしょ?」

そう言ってパチンとウインクをする燈火。あざとかわいい!
て言うかはいはい。いつものね。

「ちょっとジュンにぃ!そんな『はいはい。いつものね』みたいな顔しない!こう言う細かい好感度稼ぎがじゅんにぃ攻略には大事なんだからね!」
「・・・いや、俺に俺の攻略法を教えられても・・・というか、俺にはバレちゃいけないやつじゃないのかそれ」

それに攻略できた試しは無いんだから攻略法と言っていいのか?
まぁ、俺は気にしないけども。

「どうせじゅんにぃは気にしないでしょ?それよりもこっち見てよ。ほら!」
「ん~、どれどれ」

見てよとか言いながら自分の胸の前辺りからモニターを動かす気配の無い燈火の肩に顎を乗せて胸元を覗きこむ。
ふむふむ。金髪の方は前衛の身体能力を活かして高速で穴の中をグルグル回っていて、男の娘の方は壁に寄りかかって座ってボーっと相方の奇行を眺めてるな。

「ふむ。確かに金髪の方は色々限界っぽいなぁ。心なしか顔色も悪い気がするし。これ以上時間をかけて開き直られるぐらいなら今行った方がいいかな?・・・ん?燈火?」

燈火も俺と同じボティーソープとシャンプーしか使ってないのに、どうしてこんなにいい匂いがするんだろうな~。と思いつつモニターを見ていたんだが、急に燈火の反応が無くなった。

燈火の肩に寄りかかったまま顔だけを燈火の頭へと向けると、何故か耳まで真っ赤になってぴくぴくと震えている燈火の姿が。

「はぅっ、はぅぅぅ。じゅ、じゅんにぃがこんな近くにいるよぅ。じゅんにぃの声が直接私に入ってくるぅ。私のナカがじゅんにぃでいっぱいに」

「はむっ」
「はにゅう!?」

最初は純粋に照れていたのに、俺に見られている事を思い出すと調子に乗り出した燈火へのお仕置きとして真っ赤に熟れて美味しそうな燈火の耳たぶを甘噛みしてやった。

あむあむ。ふむ。燈火の耳はぷにぷにしていて癖になりそうな食感だな。どれ、味もみておこう。ぺろぺろ。う~ん。燈火の味がする。これも好きな味だな。まぁ、これでボーパルの味がしたらびっくりどころの話じゃないが。

「あっ、ぁぁ・・・じゅんにぃが、じゅんにぃの唇がふにふにしてるぅ・・・ひゃん!ぬるってした!舐められた!ど、どうしよう。このままじゃ私じゅんにぃに食べられちゃぅ♡あぁ、じゅんにぃと私が1つになってるよぅ♡じゅんにぃが私と繋がって」

「ふぅ~」
「きひゃぁぁぁ!?」

お仕置きをしているのに一切反省する気配が無い燈火の耳の穴目掛けて息を吹き掛けると、ファイア□ーみたいな叫び声が返ってきた。
耳はむぐらいならぷるぷるぴくぴくしながらも耐えていた燈火も流石にこれには耐えられなかったようで、頭をふりふりして俺を振り払うと両手で耳を押さえてずりずりと後ずさった。

・・・この状況でも俺の膝の上から降りようとしない燈火にはもはや尊敬の念すら浮かぶわ。本能レベルで俺との接触面積を減らしたくないのか?まぁ、その気持ちは理解出来るが。

「じゅんにぃに汚された!私の(耳の)穴を犯された!私の奥の奥に届くほど勢い良く熱いのを出された!これはもう責任をとって結婚してもらうしか、いたっ!」
「人聞きの悪いことを言うな。ここはダンジョンじゃなくて公共の場なんだぞ?」

というか結婚の理由が耳に息を吹き掛けたからとか意味わからんだろう。お前は結婚式のスピーチでそう言うのか?そんなんで幸せ感じられるのか?まぁ、ある意味絶対に忘れられない結婚式にはなりそうだけれども。

「むむっ、確かにそれは嫌だね。じゅんにぃにはちゃんと私の事を愛して結婚して欲しいからね!だからほら、もっと私に触れて?私の心も体も、もといナカも外もじゅんにぃの物なんだからじゅんにぃの好きにしていいんだよ?」
「・・・何で態々言い替えたし。普通に心と体でいいだろう」

はぁ。なんというか・・・燈火は燈火だなぁ。

「え!?それを私の口から言わせるの!?じゅんにぃの鬼畜!えっち!くっ、でも私じゃじゅんにぃには逆らえないから説明しちゃう!えっとね。ナカっていうのはね」
「説明せんでよろしい。それより金髪がそろそろ限界っぽいから助けに行くぞ。ほら、準備して」

なにやらスカートを捲りあげて解説を始めた燈火を膝から下ろして冒険者っぽい服装に着替える。
流石に店番のエプロン姿で助けに行くのもおかしいしな。二次遭難待ったなしに見えるもん。
後は着替えさせてと甘えてくる燈火を手伝って、護衛様に何匹かウサギを連れたら準備完了だ。
本来は自分のダンジョンに入るのに護衛なんて要らないんだけど、折角戦力が居るのに連れていかないのも不自然だからな。
まったく。細かい配慮が面倒臭いよ。

「あ、そうだじゅんにぃ。救助に行く前に1つ聞きたかったんだけどさ」
「ん?どうした?」

いざ行かん!と気合いを入れてるところにするりと自然に俺の手を握って恋人繋ぎにしてにぎにぎしていた燈火が声をかけてきた。

「金髪ちゃん達を追い詰めたいのならモンスターを送り込むのじゃダメだったの?元々マッチポンプみたいなもんだし、今更気にする事も無いと思うんだけど・・・」
「・・・その手があったか」

「気づいてなかったの!?」

えっ?うわ、マジで?みたいな目で俺を見上げてくる燈火が、子憎たらしい顔なのにかわいくて腹立つわ~。
いや、違うからね?俺がバカなんじゃなくて、燈火が天才なだけだから。
やっぱ燈火さんは凄いわ~。

「いや、普通思い付くと思うけど・・・」
「よし!じゃあ燈火の案を採用で、何か近くにいるゴブリン的なモンスターを向かわせていいタイミングで助けにはいるぞー!おー!」
「「「きゅい!」」」

「あ、ちょっ、じゅんにぃ待ってよ~!」

燈火のあげる抗議の声を無視して、モンスター達に指示を出しつつダンジョンの奥へと入っていく。
今助けに行くから待ってろよ!えっと、名前は忘れたけど友達の男の娘!すぐに行くぜ!モンスターの後にな!

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