異世界でウサギダンジョン始めました

テトメト@2巻発売中!

第44層 ウサギレンタル店

「あっ!お姉ちゃん見て見て!あそこになんか建物があるよ!きっとあれがダンジョンの入り口だよ!」

テクテクと登っている山道の先を指差したシルフがピョンピョン跳ねながら嬉しそうに歓声をあげている。
一方俺は死んだ魚みたいな目でボヤ~っとした目で傾斜の上を眺めている。

なんていうかさぁ・・・前々から思ってたけどさぁ・・・このドレスふく山登りには致命的に向いてない!!

ワイヤーとかが入っている訳でも無いのにふんわりと広がるスカートに、体はピッタリなのに何故か袖だけがちょっと長くて、手を持ち上げても指よりも先で下を向いた袖がぷらんぷらんするほどなんだよ。
形状記憶スカートはともかく、袖は長いなら詰めればいいんだけど、魔法の服は内蔵魔力が無くなるまで破れないし、破れたら効果が無くなるから切る訳にもいかない。
着替えを持って行くのは意外と嵩張るし、いつ襲われるか分からない外で着替えるのもなぁ。盗賊が襲い掛かってきてるのに、「ドレスに着替えるから待ってて」とは言えないよなぁ・・・

・・・つまり俺はこれからも山登りの度に体中に葉っぱを貼り付けて、「寒いよ~」とか言うシルフに袖の中を冷たい手で蹂躙される運命なのか・・・なんてこったい・・・

「食べもの屋台とかかなぁ?ダンジョンに入る前にちょっと休憩と情報収集を・・・お姉ちゃん!?大丈夫!?目から光が消えてるよ!?レイプ目になってるよ!?」
「何故言い直したし・・・いや、大丈夫。ちょっと運命に絶望してるだけだから」

あと、お姉ちゃん言うな。レイプ目も若干女の子よりな表現な気がする。

・・・逆レイプ目?うん。何かが致命的に違うな。

「とても今からお宝を探しにダンジョンへ潜ろうと言う冒険者の心境じゃないよお姉ちゃん!そこのお店でちょっと休ませてもらお?ね?なんならお姫様抱っこしようか?」
「運び方のチョイスがおかしいだろ・・・まぁ、俺の分の荷物も背負ってるから前しか開いてないのは分かるけどさ」

そして普通の抱っこだとシルフの突き出た胸部装甲に頭が埋まって悲しい気分になるからもっと嫌だ。後ろから抱きつかれたときの不快感ときたら・・・もげればいいのに。
女性冒険者ってなんなの?なんで俺を見たら抱きしめるの?胸を押し付けて俺を煽ってんの?自分だけ成長してるって自慢してんの?ちっちゃかわいくて悪かったな!!

「あ、あわわ。お姉ちゃんの瞳から病み色・・・もとい闇色の光が溢れてる・・・ほ、ほら。もうちょっとで着くから。ね?私のオヤツを1個あげるから元気になって!」
「はぁ・・・分かった分かった。もう大丈夫。ネガテイブな気持ちでダンジョンに潜ったら死にかねんからな。切り替えていくよ」

悲観論で備え、楽観論で行動せよ。
準備の段階ならあんな事が起こるかも。こんな事が起こるかも・・・って悪いことを色々と想像して準備をするのも大事だけど、実際行動する段階になったら、全てが上手くいく!って気持ちで行動したほうが結果が着いてくるものだからな。ダンジョン内にまではマイナスの感情を持ち込まない様に切り替えていこう。

「気持ちは切り替えるけども、ちと疲れてもいるから休憩はしていこうか。魔法職にこの坂道は地味にキツイ」
「そうだねぇ~。私もダンジョンに入る時は万全の体調で行きたいからね。お姉ちゃんにも私のオヤツを1口分けてあげるね♪」

シルフが疲れてるのは絶対俺の周りをグルグルスキップしながら歩いてた所為だと思うんだよなぁ・・・犬の散歩か!鬱陶しいわ!
俺が同じ事やったら即ダウンする自信があるけど、シルフは戦闘中は常に全力ダッシュしてるぐらいの運動量だからなぁ。そりゃあ俺のペースに合わせて歩いてたら体力余るわな。

「ふふん。町で美味しいカップケーキのお店を見つけたんだよ♪お姉ちゃんにもひとつまみ分けてあげるね♪」
「さっきから分け前がどんどん減ってるけど・・・別に無理して分けてくれなくてもいいんだよ?」

ひとつまみだけ貰ってもなぁ・・・嬉しくないとは言わないけど、かなり微妙じゃね?

「いらっしゃいませなの~!」
「かわいい!!」

シルフの相手をしつつ山道を登り続け、屋台というかちょっとした小屋が近づいて来た所でカウンターになっているのだろうお店の前面から身を乗り出した少女が俺達にぶんぶん手を振っている。

いらっしゃいませって・・・まだお店に寄るとは言ってないんだけどなぁ・・・まぁ、寄るつもりだったけどさ。

「お客さん?いらっしゃ~い!」
「・・・いらっしゃいませ」

「増えた!増えたがかわいいよお姉ちゃん!!」
「落ち着け!俺の体を揺さぶるな!転ぶから!いやまじで!筋力差考えて!」

お店の影から頭と片腕を出している少女の下に更に2つ”ちょこんちょこん”と別の少女の頭が出てきてシルフのテンションが天元突破してる。
というのも、その少女達が3人ともすごく可愛いのもあるけど、3人ともの頭にウサギの耳の飾りが付いている所為でもあるだろう。
シルフはかわいいの大好きだからなぁ・・・俺も好きだけど。

「さぁ行くよ!早く行くよ!レッツゴーだよお姉ちゃん!!」
「分かった。分かったから押すなって」

シルフにグイグイと背中を押されながらお店の前までやってきた。
え~っと・・・”ウサギレンタル店”?
ウサギを借りるお店?ってことは・・・

「この子達を借りられるの!?欲しい!お持ち帰りしたい!」
「いや、多分違うと思うぞ・・・」

こんな所でウサミミ少女限定の風俗店なんかやってないだろ・・・

「ねぇ、お穣ちゃん達―――」

「ジュン!お客さんなの~!!」
「ジュンにぃお客さんだよ!」
「・・・出番」

「―――このお店ってなんの・・・行っちゃった」

にっこにこしながら俺達の様子を見ていたウサミミ少女達にシルフが声を掛けようとしたところ、3人とも店の奥に引っ込まれてしまった。
誰かを呼びに行ったみたいだけど、3人居るんだから誰かは残ろうよ・・・
まぁ、元々休憩するつもりだったからいいけどさ。

「いらっしゃいませ」

お店自体もちっちゃいからだろう。たいして待つ事も無くドタバタという足音が戻ってきて、1人の男性が3人の少女に連れられてやってきた。この人が店長さんなのかな?
ちなみにこの人はウサミミを着けていない。代わりにウサギさんをデフォルメしたバッチを胸に付けてるけど。あれはあれで可愛いなぁ。

「こんにちわ。えっと、ここって何のお店なんですか?」
「はい。この”ウサギレンタル店”はですね・・・」

シルフはウサミミ少女達をチラチラ見て無言で悶える作業に忙しい様なので俺が店長さんに何のお店なのか聞いておく。

ザックリ言えば傭兵のお店だな。目の前にあるダンジョンに入る際に足りない職種のパーティメンバーを貸してくれるらしい。
但し貸すのは人間じゃなくて、テイムしたウサギたち。だから゛ウサギレンタル店゛なんだって。
なんでウサギなのかは分からないけど、1日分のウサギの食料と水をセットで持っても人間を借りるよりも圧倒的に安いし荷物も少ない。費用はレンタルする時間にのみ依存するから戦利品の分配で揉める事もない。
これで戦闘能力があるなら確かに優秀かもな。実際俺達のパーティーに足りないのはウサギが得意だと言う斥候職だ。渡りに船と言えなくもないけど、ウサギ達が弱くてピンチになって可愛いもの好きのシルフが庇って大怪我~とかなったら目も当てられないんだよなぁ。

「う~ん・・・」

「おいしい!なにこのクッキー!すごくおいしい!!」
「うぅ・・・カップケーキはあんまり美味しくないの・・・」
「・・・パサパサする、甘くない・・・」
「砂糖は貴重だからね。仕方ないよ」

俺がウサギを雇うのと、雇わないのでどっちが生存率が上がるのか頭を捻ってる横で楽しそうにオヤツタイムを楽しんでいるシルフとウサミミ少女達。
というかシルフのカップケーキ不評じゃん。少女達にオヤツを分けてあげるつもりが、お返しのクッキーの方が美味しかった所為で少女から美味しいオヤツを分けてもらったみたいになってる。むしろ餌付けされてるまである。なにやってんだか・・・

「今なら開店サービスでお得になってますよ~」(チラッチラッ)
「むむっ、じゅんにぃが新しい女の子に意味深な視線を送っている!!邪魔しなくては!」

「いや燈火邪魔だから、カウンターの上に立つなし。お客様が見えないから!あと、理由が言いがかりも甚だしい!」
「あはは・・・」

俺はいったいどんな顔をしてればいいんだろうか・・・とりあえず笑っておこう。
いや、確かに赤髪の少女の言う通り店長さんがチラチラと俺に視線を送ってきてはいるんだけど、その視線は町を歩いてたら時々受ける不快な視線では無く、何か不思議な物を見るような、感心している様なそんな視線だった。
この服の価値が分かってるのかな?値踏みしている視線とはまたちょっと違う気もするけど、同じ男から向けられるネチャネチャした視線よりはずっとマシだ。アレは無い。マジで無い。シルフを生贄に捧げて逃げるレベルで無い。

「むぅ。じゃあ、じゅんにぃはなんでお客さんをチラチラ見てたの?理由によっては・・・ね?」
「ね?じゃねぇよ。そこボカされたら逆に怖いわ・・・いや、な。服似合ってるなぁ・・・と思ってな。こっちの男の娘はレベル高いなぁと感心してたんだよ。あ、いい意味でな」

「へ?男の子?」

店長さんにカウンターから抱えて下ろされた少女が可愛らしい大きめの瞳を更にまん丸に見開いて俺の方を振り返ってきて・・・同じくまん丸に見開いた俺の目とバッチリ視線があった。

男の子・・・?あれ?俺今ドレス着てるよな?実の妹にすら女の子扱いされる呪われた装備を着けてるよな?いや、最近だと男物着てても女の子扱いされてるけどそれはどうでも良くって、この店長さんはドレスの呪いを突破して俺が男だって気付いたって事でそれはつまり・・・

「心の友よ!!」
「ふぁっ!?えっと、お客様・・・?」

カウンターの上にお腹を乗っけて、店長さんの両手をガッシリと掴んだ。
店長さんが困惑しているのが伝わってくるけど、知ったことか。俺達は今この瞬間からズッ友だよ!

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