異世界でウサギダンジョン始めました

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第31層 はじめての感情



腹へった・・・

ソレが最初に感じた感情は空腹だった。
ソレは空腹を満たすために自分の周りを漂う魔力を喰らい。自身の体を大きくさせていく。

腹へった・・・

しかし、周りを喰らうだけではソレの空腹を満たすことは出来なかった。
この空腹を満たすにはもっと大きな餌が必要だ。
ソレは本能にしたがい、自分の中にダンジョンを作り、モンスターを増やしていった。
この辺りから、それには自我と呼べるものが形勢されていく。

お腹すいた。

ソレは自分の体内でモンスターが育ってくると、地上に出口を作り、隣のダンジョンを襲い、ダンジョンコアを破壊。吸収した。

おいしい。もっと食べたい。

ソレはダンジョン内にどんどんモンスターを作り、一定数が貯まるごとに他のダンジョンを攻撃して、吸収していった。

もっと、もっと食べたい。

ソレが次に目を付けたのは新しく出来たダンジョンの1つだった。まだまだ小さなダンジョンだけど、秘めた魔力はなかなかのものだ。食べたらきっとおいしいだろう。

食べたい。食べたい。あれを食べたい。

最近ボウケンシャとかいう生物が、ソレの中に入ってモンスターを殺していくせいで、モンスターが貯まりにくくなっていたが、なんとかモンスターを貯めたソレは小さなダンジョンへ向けてモンスターを向かわせた。

食べる。お腹いっぱい食べる。

途中にボウケンシャの巣があるみたいだけど、ボウケンシャは食べてもお腹が膨れないからいらない。でもモンスター達は好んで食べるので、食事を許可した。
お腹は膨れないがおいしいらしい。おいしいなら食べてみようか。最近モンスターの姿になる事が出来るようになったから。この姿ならボウケンシャを食べられる。

ボウケンシャ。食べる。

モンスターの姿になったソレはボウケンシャの巣に着く前に2体のボウケンシャを見つけた。ボウケンシャの大きなメスと小さなメスだ。
ニンゲンはソレに魔法を使ってきた。でも、ダンジョンの主たるソレには生半可な魔法は効かない。無視してボウケンシャに近づくと、大きなメスが小さなメスを抱えて蹲った。
ちょうど1口で食べられる大きさになったボウケンシャをソレは大きく口を開けて丸呑みにする。

いただきます。

「死ね」

しかし、ボウケンシャを味わう前に、ソレの意識は暗転して消滅する・・・



それから繰り広げられたのはダンジョン同士の喰らい合いだ。

敵の種類はウサギのみ。ソレのダンジョンにも居る最下級のモンスターだ。
敵の数は2千。ソレのモンスターの5分の1にも満たない。

なのに、目の前で繰り広げられているコレはなんだろう。
仮初の体が滅せられ、ただ見ていることしか出来ないソレは考える。

ウサギの耳が生えたニンゲンのメスの形をしたモンスターが駆ける度に、ソレの軍勢が2つに裂ける。
ボウケンシャのメスが拳を振るう度に、ソレの軍勢に穴が開く。
ありとあらゆる属性の魔法が宙を舞いとび、ソレの軍勢を爆散させる。
津波の様に押し寄せる色とりどりのウサギの軍勢が激突する度に、ソレの軍勢が押し潰され叩き伏せられる。
植物の花びらで形成された薄桃色の竜巻が軍勢を縦断する度に、ソレの軍勢が舞い上げられ切り刻まれる。

・・・こんなものは戦闘とは言わない。戦争などでは断じてない。これは狩りだ。圧倒的強者による。殲滅だ。

現に、最初こそ抗う姿勢を見せていたソレの軍勢はあっという間に統率を失い。我先にと逃げ出し始めた。
群れのボスが一撃で殺され、残った仲間も訳が分からないうちにどんどん消え去っていく。
逃げて当然だ。恐れて当然だ。なにせ、ソレでさえも刻一刻とソレの本体であるダンジョンコアへ迫ってくる死神ウサギの足音に恐怖しているのだから。

これが、恐怖・・・

他者を恐れる感情。未知を恐れる感情。
ソレは思う。あぁ。何故もっと早くこの感情を知る事が出来なかったのだろうか、と。
もっと早く知っていればこんな結末にはならなかったかも知れないのに、と。

だが、後悔とは往々にして全てが手遅れになってから生じるものであり、”たられば”に意味など無い。

何故なら死の足音はソレのすぐ後ろにまで迫っているのだから。

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