異世界でウサギダンジョン始めました

テトメト@2巻発売中!

第26層 ギルドマスターとの会談

 
「という事で俺が冒険者ギルドのギルドマスターのギル・ドノマスだ。よろしく」

「・・・アメリアさん。頭の上が荒野なのに、頭の中がお花畑な人が居ます。なんとかしてください」
「はぐはぐ、うまうま」
「もぐもぐ、きゅいきゅい」

アメリアさんに案内され、冒険者ギルドに到着し、最上階のギルドマスターの部屋に通されたまでは我慢していたが、ギルドマスターを詐称されては流石に我慢しきれず、アメリアさんに強制退去をお願いした。
もちろん街中で突然泣き土下座してきた上に、ここに来るまでずっと俺たちの後を着いてきていたおっさんをである。
ちなみに燈火とサクラはアメリアさんが出してくれたオヤツに夢中になってるな。おいしそうでなによりだ。

「・・・いえ、まことに残念ながらこのハゲたバカはこのギルドのギルドマスターなのです・・・」
「うぉおい!ジュン君が折角ボカしてくれたのにストレートな言い方にするんじゃない!というか最近俺がハゲてきたのは確実にアメリア君とジュン君の所為だからな!?」

「「全く身に覚えがありませんが?」」

「ジュン君はともかく、アメリア君は身に覚えしかないだろう!?」

実にやかましいおっさんだな。ギルドマスターといったら会社の社長みたいなものだろ?こんな人で本当に大丈夫なんだろうか・・・いや、待て。社長・・・?

「なぁ、おっさん。1つ聞きたいんだが・・・」
「役職もセットで名前を名乗ったのに相変わらずおっさん呼びなのな・・・」

すまんな。人望と尊敬する要素が見当たらないんだ。

「おっさんの仕事ってどんなのなんだ?」
「ん?そりゃギルドマスターの仕事だぞ。書類にハンコを押したり、会議に出席したり、」
「・・・新人冒険者を苛めたり・・・」(ぼそっ)

「そこ!茶化さない!」
「・・・一般人を苛めようとして返り討ちにあったり・・・」(ぼそっ)

「ぐ、ぐむぅ・・・それを言われると何も言えん・・・」

仲いいなこの人達。
それはともかくギルドマスターの仕事って普通に考えたら書類仕事とかの事務職だよなぁ・・・

「・・・ダンジョン探索とかはしないので?」
「がっはっは!そりゃあギルドマスターじゃなくて、冒険者の仕事だな!出来るならば俺もダンジョン探索に行きたいものだが・・・」
「ダメです。ギルドマスターのハンコが必要な書類がいくつあると思っているんですか」

「むむぅ。ここは俺のハンコをもう1つ作ってアメリア君が持っていれば・・・」
「ハンコがいくつあろうと、押すのはギルドマスターなので変わりませんが?」

「ですよねー」

ギルドマスターはダンジョン探索をしない。
椅子に座ってハンコを押すのが仕事。

ならば事務職ギルドマスターの強さをダンジョン探索にくる冒険者の基準として考えて訓練していた俺たちは・・・

やばい!まずい!
「よろしい。ならば戦争だ!」ってなったら事務職ギルドマスターよりも確実に何倍も強いであろう戦闘職の冒険者が流れ込んできてダンジョンが駆逐されてしまう!

むぅ。まさか目にもとまらぬ速度で大剣を振り回すおっさんが、戦闘職ですらないとは。異世界恐るべし・・・

「た、たたたたたた、大変ですぅうう!!」

俺が異世界恐るべしと唸り、燈火とサクラがもりもりとオヤツをほおばり、ギルドマスターとアメリアさんがコントをしているギルドマスターの部屋に1人の女性が文字通り転がり込んできた。

もう、見るからに「私混乱してます!」って感じのグルグルした瞳をした女性は下の受付に座っていた受付嬢さんだな。
トビラをぶち破るように飛び込んできた後は、「大変ですぅ!大変なんですぅ!非常な非常事態なんですぅ!」と要領を得ない事を喚き散らしている。

「・・・今はギルドマスターが大事なお客様との会談中です。それを邪魔する以上。邪魔するだけの価値のある報告なんですよね?」

アメリアさんがにっこりと微笑んで名前も知らない受付嬢さんの方を見ると、受付嬢さんがガクブルと震えだした。
俺も釣られてアメリアさんの顔を見たが、直ぐに目を逸らした。

怖い怖い怖い。アメリアさん口元しか笑ってない!目が全く笑ってないせいで、いつもの無表情よりもさらに怖い!目があったら石になりそう!実はあの人、人型のモンスターじゃないのかってぐらい怖い!

というか、大事なお客様との会談中というか、基本ギルドマスターとアメリアさんが駄弁ってるだけだった気がするのは気のせいなんだろうか。燈火達はオヤツを食べてるだけだったような気も・・・というか2人は今も食べてるな。この騒ぎの中気にせず食事を続けられる精神はある意味尊敬に値するぞ。

「は、はは氾濫ですぅ!氾濫が起こりましたぁ!!」
「氾濫・・・だとぉ!?」
「なんですって!!」

「「はんらん?」」
「きゅい?」

受付嬢さんが”はんらん”と口にした瞬間ギルドマスターが木製の机を粉砕する勢いで叩きながら跳ねるように立ち上がり、アメリアさんまでもが僅かに目を見開いて驚愕している。

はんらん・・・反乱?
冒険者が反乱を起こしてギルドをぶっ壊そうとしてるとか?
それとも川でも氾濫したのか?
いや、でも外は気持ちのいい晴天だしな。それはないか。となるとやっぱり反乱の方だよな。

「・・・規模はどれぐらいなんだ」
「は、はいぃ。さっき入った情報ですとぅ。ここに向かっているのは最低でも1万は居ると・・・」

「ふぁっ?」

急にシリアスな雰囲気になったギルドマスターに青い顔でビクビクと震えながら答えた受付嬢さんの言葉を聞いてつい変な声が出てしまった。

だって1万人だぜ?目の前の事務職のおっさんよりも強い戦闘職の冒険者が1万人とかヤバイなんてレベルじゃないよな。大変だな~。

「・・・お邪魔みたいだし俺たちはこれで。ほら2人共。帰るぞ」
「はーい。アメリアさんクッキーおいしかったよー。ありがとー」
「きゅいー」

アイコンタクトで意思疎通をした燈火もちゃっちゃと残ったクッキーをハンカチで包んでポケットに放り込むと、小走りで扉へ向かう俺の後ろに付いて来る。
よし。このままナチュラルに出ればきっと気づかれないはず。

「お待ちください」

しかしまわりこまれた!

俺が扉を開けて部屋を出ようとするその前に、俺と扉の間にアメリアさんが立ちふさがってきた。

「・・・俺がその頼みに応じるとでも?」

罠だとわかっていて飛び込むやつはいない。そんな奴がいたら是非見てみたいぜ。

・・・あれ?なんかデジャブ。

「せめて話だけでも聞いていかれてはいかがですか?決して無駄にはならないと思いますが」
「話を聞いている間に囲まれたらどうするんですか。そもそも俺は冒険者じゃないですし、戦う必要性も無いはずですが?」

反乱軍の鎮圧に俺たちを頼られても困るしな。俺と燈火は死んでも復活するけど、サクラは死んだら終わりなんだ。危険な橋を渡るつもりはない。

「それなら心配ありません・・・既に手遅れですから。ダンジョンが氾濫・・・・・・・・した以上。市壁の外へ出るのは愚策でしかありません。戦闘力を持っている全員が全力を出さなければ生き残れない。それはあなた様もご存知かと思われます」

・・・ん?ちょっと待って。今ご存知では無いことが言われたんだけど?
ダンジョンが氾濫?なにそれおいしいの?


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