異世界でウサギダンジョン始めました

テトメト@2巻発売中!

第21層 2人で町へ

 
「それじゃ、行ってきまーす」
「行ってくるねー!」
「きゅい!」

「留守番は任せるの!」
「「「きゅい!!」」」

結局燈火やウサギ達も登れるように地上まで急勾配のスロープを新しく造ることにした。
スロープは最初に空けた垂直な穴の周りをグルグルと回る様に螺旋状をしており、道の断面は綺麗な円形だ。
棒に巻きつく蛇の胴体が通路になっている感じだな。

そしてこのスロープには、踏むと道の上から道幅ギリギリの大きさの岩が転がってくるトラップを仕掛けてある。もちろん手動でも落とせる。
言わずと知れたアレだな。1回やってみたかったんだよね。

しかし、俺がお茶目で追加したこのトラップにボーパルと燈火が魔改造を加えた結果、転がってくる岩が強酸入りの鉄球に変わり、単なるスロープが踏んだら発動する罠だらけになった。もちろん鉄球が踏んでも発動する。なんたるマッチポンプ。

というわけで、直線距離10キロ。螺旋スロープなのでそれ以上の距離をマラソン感覚で登ってきた燈火とボーパル含むウサギ達にテレポートで地上に移動して合流して出発した。

・・・結構な速度で急勾配を爆走していたはずなのに、一切息が切れていない件とか、トラップはすべて作動状態にしてあったような気がする事とかは突っ込んだらダメなんだろうな。
でも、ほんのりと香る程度にかいた健康的な汗の匂いは大変よろしいと思います。

「じゅんにぃとデート♪じゅんにぃとデート♪ふふ~ん♪ふんふん♪」
「きゅいきゅい♪」

ダンジョンを出発してから真っ直ぐ街道へと出て、今は前行った町の方へと足を進めている。

始めて遊園地に遊びに行く幼女みたいにテンションがアゲアゲになってる燈火は、街道の中心を歩いて移動している俺の周りをグルグルと周りながら、自作の歌を歌っている。頭の上に乗せているサクラが時々入れる合いの手も合わさって暴力的なかわいさが出ている。
邪気が含まれていない心の底から楽しみだという。純粋な気持ちに溢れていることが分かる燈火の笑顔がやばい。かわいい。あぁ~心がぴょんぴょんするんじゃ~。

「お~い。楽しみなのはいいけど、あんまりはしゃいでると転ぶぞ~。それに、今からはしゃいでて町に着いたときに”おねむ”になってても俺は知らないからな~」

目的地に着いたときにおねむになってるのは、幼女あるあるだよな~。

「ふふん。私の身体能力を舐めちゃだめだよじゅんにぃ!じゅんにぃのダンジョンを見つけるまでの間にずっと1人で旅をしてきたんだから、私のステータスは結構高いんだよ!言うなれば私はスーパー幼女なんだよ!」
「スーパー・・・幼女・・・だとぉ!?」

なんだその可能性を感じる単語は!?幼女力が53万以上ありそうな名前だな!

「だから私は転ぶことなんて無いからじゅんにぃは心配しなくても・・・はっ!ちょっと待ってて!今すぐ手ごろな石を探してくるから!」
「きゅい?」

「待て燈火。どこへ行こうというのかね」

また何か良からぬことを思いついたであろう燈火が、街道を外れてダッシュしそうになったので、燈火の細い腕を掴んで止める。

「3分間待って!転んで頭をぶつけたらいい感じに意識を失えそうな石を見つけてくるから!」
「その前になぜそんな凶器を探しに行く必要があるのかジュンお兄ちゃんとお話しような」

なんの用途に使うのかは今聞いたけど、何故そんなものが必要なのかはサッパリわからん。

「じゅんにぃが転ぶぞって注意してくれたでしょ?これは注意じゃなくて”ふり”だったんだよ!押すなよ?絶対押すなよ?ってやつ!だって、私が転んだらじゅんにぃは助けてくれるでしょ?私の敏感なところきずぐちをぺろぺろしたり、体と体を重ねあったりおんぶしてくれるでしょ?もし私が気絶したら、それに加えてじゅんにぃはディープキッス人工呼吸までしてくれるはずなんだよ!つまりはそういう事なんだよ!」
「つまりどういうことだよ。おい、燈火。一旦落ち着け。ネタで体を削るような真似は許さんぞ」
「きゅい!」

サクラがぺちぺちと燈火の額を叩いて諌め、俺も珍しく真面目な顔をして燈火の目を見つめる。
目の前で幼女が危険な事をしようとしていたら全力で止めるぞ俺は。世界の宝に傷をつけようとする奴は例えそれが幼女本人でも認めん。

「あっ・・・ご、ごめんなさい。そうだよね。私の体も心も全てはじゅんにぃの物だもんね。勝手に傷つけるような事しちゃダメだよね!」
「・・・誰もそんな話はしてないんだが?」
「きゅいぃ・・・」

燈火さんや。頭の上のサクラにまで「やれやれ。ダメだコイツ」って感じで首を振られてるぞ。

「さぁ、じゅんにぃ!いつでも私の体にじゅにぃの証を刻んでいいんだよ!」
「はいはい。先進もうな~」
「きゅい~」

なんかまた変な事言いだした燈火をサクッと無視して足を進める。街が見えるまでもう少しだ。

「あ~ん。待ってよじゅんにぃ~!んもぅ!ここまでしても気づかないだなんてじゅんにぃはアレなのかな。鈍感系主人公なのかな」
「いや、お前のは鈍感とか敏感とかいう以前の問題だからな?人が寝ている耳元で『じゅんにぃは燈火が大好き』『じゅんにぃは燈火を愛してる』『じゅんにぃは燈火と子作りをしたい』って延々言い続けるのは止めろよ?起きだすタイミングを計るのが大変だったんだぞ」

あれは怖かった。睡眠学習と言う名の洗脳をかけられている気分だった。俺が燈火の事を大好きで、愛していて、子作りをしたいと思っていなかったら危ないところだったぜ。
洗脳は怖かったけどいつの間にかされていた燈火の膝枕はぷにぷにで気持ちよかったとも付け加えておく。幼女の膝枕もまたよいものだ。足が痺れそうだけど。

「え?なんだって?じゅんにぃが私の事を、大好きで、愛していて、今すぐ子作りしたいって?ふふん。こんなこともあろうと携帯マットを持ってきてある私に抜かりはないよ!」
「お前はほんと、都合のいい耳をしてるよな。難聴系ヒロインかよ」

いや、違うな。燈火のはわざとだ。

「愛のままに、わがままに私を襲ってもいいんだよ?」
「ボクはキミだけを傷つけないから無理だな」

一拍おいて、互いの方を向き合ってにやりと笑いあう。
ネタ会話が理解してもらえたときの嬉しさは異常。ボーパルだと、ちょっと分かり合えない部分だな。
なんだかんだ言いつつも、やっぱり幼馴染だから相性は悪くないんだよな。

「体の相性も確かめてみる?」
「だから人の考えを読むんじゃありません」

「読心術は幼馴染の必須スキルだよ!だってリアルにはギャルゲーみたいに心の声がウィンドウに書かれたりしないんだからね!」
とか、なんとか言ってる燈火の頭とサクラの間に手を突っ込み、わしわしとかき混ぜながら歩き続ける。
頭を撫でている間に燈火が落ち着いてきたので、蕩ける前に手を放して2人で前世のアニソンを歌いながら歩いた。

燈火の歌う歌がラブメロばっかりなのはご愛嬌だな。流石に登場人物を俺と燈火に変えるのはどうかと思うが、別に文句を言う程じゃない。
まぁ、俺としてはキュートでポップな歌を心ぴょんぴょんしながら歌ってくれたほうがポイントが高いわけだが、そういうのはボーパルの役目だしな。

・・・カラオケボックスはDPで買えないんだろうか・・・無理だろうなぁ・・・とか考えている間に町に到着した。

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