異世界でウサギダンジョン始めました

テトメト@2巻発売中!

第15層 真見 燈火 1

「うぇへっ♪じゅんにぃだぁ~。本物のじゅんにぃだぁ~♪じゅるり。おっと、よだれが」ふきふき
「おい、コラ。俺の服でよだれを拭いてんじゃねえ。ハンカチ使えハンカチ」

突然俺に抱きついてきてよだれを擦りつけようとしてきた赤髪の美幼女にポケットから取り出した”幼女のよだれを拭う用”のハンカチを渡す。
ハンカチを常備しているのは紳士の嗜みだからな。俺はいつも用途別に3種類のハンカチを常備している。俺が使う用のは無いが。

「ふふん。じゅんにぃは分かってないなぁ。私はただよだれを拭いたんじゃ無いよ?これは匂い付けだよ!野生動物が自分の縄張りを主張する行為だよ!つまりじゅんにぃは私の物なんだよ!」
「なんだその超理論は・・・そもそも、お前は野生動物じゃないし、俺はお前の物じゃないんだが?」

というかお前侵入者じゃん。敵対者じゃん。だからといって自分から抱きついてきてる(見た目)幼女を引き剥がすような事は出来ないけど。

「じゅんにぃ知らないの?女は好きな人の前ではオオカミさんになるんだよ?だからちょっとぐらい味見してもいいよね?」
「なるほど。分からん」

理論の跳躍をするのは勘弁してくれませんかねぇ。

「むぅ~。ジュンを食べちゃダメなの!ジュンはあたちが守るの!!」

と、そこへ復活したボーパルが跳んできて、俺の右手に抱きついてきた。

ボーパルの気持ちは嬉しいんだが・・・どうしよう。話がややこしくなる予感しかしない。まだ、この子が本当に燈火なのかの確認も済んでないんだが・・・まぁ、99.9%間違いないとは思うけど。

「じゅんにぃには私が匂いつけしたから私のものだもんね~♪」すりすり
「むぅ・・・じゃぁ、あたちも”においつけ”するの!」

ボーパルはそう言うと俺の右手の手袋を脱がせると自分の顔の前に持っていき・・・そのままパクっと咥えこんでしまった。

「ふむぅ・・・はみゅはみゅ」ぺろぺろ
「はぅ!」

咥えこんだと言っても俺の胸ぐらいしか身長のないちっちゃなボーパルだ。当然そのお口もかわいらしい物で、親指を除いた4本の指を入れるだけでちっちゃなお口はいっぱいになってしまった。
ボーパルのお口の中はしっとりと温かく、包み込むような柔らかさでもって俺の指を迎えてくれている。
また、燈火(仮)の所為でよだれを付けるのが匂いつけだと思い込んでいるボーパルは、俺の指全体に自分のよだれを刷り込むために、ちゅぱちゅぱと音を立てながら俺の右手をお口から出し入れしつつ、指の間から爪先までを丁寧に嘗め回している。
ボーパルのちっちゃな舌先がつつつと指の腹を舐め上げ、赤ちゃんみたいにちゅうちゅうと俺の指に吸い付かれる度に、くすぐったいような、気持ちいいような不思議な快感が右手から脳へと駆け上がってきて、ゾクゾクと背筋が震えてくる。

「ふぉふぇへひゅんはあひゃひのふぉのひゃの!(これでジュンはあたちの物なの!)」
「ひぁっ!ちょっ!咥えながら喋られたらくすぐったいって!」

ボーパルの口内が発声と共に蠢いて、ちょんちょんと俺の指を不規則に突っついてくるぅ。

「くっ!流石はじゅんにぃのパートナー!私達に出来ない事を平然とやってのける・・・恐ろしい子!」

おい、燈火(仮)ネタが混ざってるぞ。

「ふっ、でもね。私もそれぐらいで諦めるつもりは無いのよ!こんな事もあろうかと!むしろいつか起こしてやる!と練習していた私の舌捌きをついに見せる時がきたみたいね!」
「座ってろ。これ以上俺のボーパルに変な事教えるな」ぺちっ

ボーパルは無自覚にえっちぃことをしちゃう所がかわいいんだよ。あんまり変な事教えると単なるエロエロウサミミ幼女になっちゃうじゃないか。

・・・ ・・・ ・・・いや。・・・ダメだ。うん。ボーパルはいつまでもそのままのキミでいてくれ。

「あいたぁ~!DVはんた~い!・・・はっ!まさかじゅんにぃはそっちの趣味が!・・・それなら・・・いいよ?」
「・・・何がどういいんですかねぇ・・・」

やべぇ。こいつと話してると疲れる。かわいいけど。あざとかわいいけど。

「・・・?ぷはっ!どうなったの?あたちが勝ったの?」
「そうだね~。ボーパルのおかげで助かったよ~。よしよし」

代わりに俺の右手がボーパルのよだれでべとべとになったけどね。
このまま手袋を付けたらもうちょっとボーパルのお口に咥えられてる気分が味わえるかも知れないけど、ボーパルが見てるからやめておくか。このまま乾かしておこう。
・・・ハンカチ?使うわけ無いじゃん。もったいない。

「えへへ~。じゅんが困ってたら助けるのは当然なの~」
「むぅ~、この子と私の扱いに明確な格差を感じる!格差社会反対!イジメよくない!私の待遇の改善を要求する!具体的には私の頭もなでなでするべき、そうすべき!」

「待遇を改善して欲しいなら態度を改めたらどうなんだ・・・」

そもそも燈火(仮)は褒められるような事は何もしてないじゃないか。

「今更だが燈火・・・で、あってるんだよな?なんか大分縮んでるけど」

酒の名前の黒服に変な薬でも飲まされたのかな?

・・・はっ!ひらめいた!その薬でバイオテロを起こせばこの世界には幼女しか居なくなるじゃないか!

・・・まぁ、ネタはもう分かってるから無理だって知ってるんだけどね。ダンジョンマスターは何百年と生きつづける存在だけど、不老不死では無いからね。寿命で死んだ場合、蘇生した瞬間寿命で死ぬっていう最悪のループに嵌らないように自分の歳を好きなだけ遡れるらしいんだよね。
ただし、確定している過去へと巻き戻すことは出来ても、不確定な未来へ進めることは出来ないらから戻しすぎには注意するように言われたんだが・・・

「そうだよじゅんにぃ!どう?じゅんにぃが私にデレデレだった時期まで巻き戻してみたんだけど。かわいい?抱きたい?押し倒したい?」
「いや、まぁ。かわいいけどさ・・・」

燈火はこの体でお供も連れずに地上を彷徨って、このダンジョンに落ちてきたのか・・・?
我が幼馴染ながら頭の中がどうなってるのかちょっと本気で心配になってきたぞ。

「じゅんにぃ?難しい顔してどうしたの?大丈夫?結婚する?」
「うん。選択肢がおかしいよな」

こいつの頭が変なのは今更な気がしてきた。
俺が絡まなければマトモないい子だという話をちょこちょこ耳にするけど絶対嘘だな。うん。

「この姿をしてると思い出すよね~。昔はじゅんにぃの方から一緒に遊ぼうってよく誘ってくれたよね」
「ん~。そうだなぁ・・・」

あの頃の燈火は性格が捩れてなくて、理論が跳躍しなくて、バカ力じゃなくて、大人しい性格の美幼女だったからなぁ・・・あれ?やっぱりこいつ別人じゃね?

「今でも目をつむったら思い出すよね・・・じゅんにぃが私のスカートにかくれんぼをしたり、大きくなったら結婚する約束をしたり、お医者さんごっこをしたり、将来を約束したり、幸せな家庭を描いたり、婚約したり、責任を取ってもらったり、一生の愛を誓ったりしたよね」
「うん。だいたい間違ってるな」

そもそも俺が大きくなったら・・・・・・・結婚する約束をするわけが無いだろうに。

「そういうわけだから。これからも末永くよろしくお願いします」
「何がどういうわけなのか全く分からないんだが・・・」
「なの~?ジュンの知り合いのダンジョンマスターだったの?なら仲間なの!大歓迎なの!」

「ホント!?わ~い!ボーパルちゃんありがとー!」
「なのー!1回遊べばみんな友達なのー!」

「そして俺抜きで話が進んでいくし・・・まぁ、幼女が増える分にはいいんだけどさ」

こうしてウサギダンジョンに自称”オオカミさん幼女”が居候することになりました。
精神年齢的には俺と同じぐらいの筈なんだが・・・肉体の方に精神が引っ張られてるのか?

多分そうだと思う。そうだと信じる。

「じゅんにぃ!一緒におふろは~いろ♪」
「あ、風呂はクリエイトルームにしかないわ」

「え・・・?」
「ついでにベットとトイレもクリエイトルームにしかないな」

「え?・・・ちょ、ちょっと待って!私はじゅんにぃと一緒に寝るよ!ちょー寝るよ!!」
「・・・今の話を聞いて真っ先に出る言葉がそれなのか・・・」

やっぱりこいつはもうダメかもしれない・・・

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