異世界でウサギダンジョン始めました

テトメト@2巻発売中!

第12層 ダンジョンを作ろう②

 
「ダンジョンを作るぞー!!」
「なのー!」

初めて町へ行って冒険者を惨たらしく瀕死にして逃げてきた日から1週間経った。
愛用のウサギ幼獣人ボーパル抱き枕でぐっすり眠って、なんか色々な体液が顔から漏れているおっさんの悪夢を振り払った俺はダンジョンの拡張を決意していた。
具体的には新エリアの増設だな。
今までは最初に作った草原エリアの拡張しかしてこなかったから、新しい階層を作って新しいエリアも作ってみたい。その方がいろんなウサギが出来そうだしな。

町で見てきた冒険者。酔っ払った上に手加減されてあれだけ強かったんだ。普通の冒険者はあのおっさんよりも強いのは確実。
そんなのが何十人も一気に攻めてこられたら見晴らしのいい草原じゃ、一方的にボコられて終わる可能性もあるしな。
そうじゃなくても、火を放たれたら詰んでしまうしな。ウサギの丸焼きが大量に出来ちゃうからね。

というわけで新しいエリアを作ろう。
今いる草原フロアは戦闘目的には作ってないから暫定的に最下層って事にして、上に新しいエリアを作っていこうかね。

「えーっと、とりあえず草原エリアと同じ直径1キロの球体から始めようか。エリア作成に必要なDMは・・・」

草原エリア(属性 風) 1000DM
森エリア (属性 風) 3000DM
洞窟エリア(属性 土) 5000DM
海エリア (属性 水) 10000DM
火山エリア(属性 火) 10000DM

「うん。草原か森エリアしか作れないな」
「なの~」

地上にエリアが繋がったから、ダンジョンの拡張の為にちまちまと小物を召喚するのを止めて、DMを貯蓄させていたのに洞窟エリアには全然足りねぇ・・・
森じゃあ、どのみち火をつけられて終わっちまうよ。

ちなみに今日の収支報告書は・・・っと

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葉の月10日 DM収支報告書

前日持ち越し分 3472

エリア維持費 -50 (前日比+0)
モンスター維持費 -303 (前日比-3)

DM生産 +753 (前日比+20)

翌日持ち越し分 3872(前日比+400)

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維持費がだいぶ増えてきたな~。1匹ずつなら小数点第2位以下の維持費しかかからないんだが、塵も積もればなんとやらで出費がだいぶ膨らんできた。
まぁ、生産量の方が上昇率が高いから、収支がマイナスには”今の所は”ならないんだけどね。だから問題なし。

・・・いや、違うんだよ?
俺だって”ちょっとヤバイかな~”とは、思ってるんだよ?でもさ。産まれた時から一緒に居て、寝食を共にした家族同然の存在であるウサギ達に差し迫った危機も無いのに「死ね」とは言えないじゃん・・・

ハーフを産むのが強いウサギを作るのに必要な条件だから子供を産むなとも言えないし、お腹を痛めて産んでくれた子供をハーフ以外は殺せとも言えないしさ・・・

1回オオカミを召喚もしてみたんだよ?5匹ぐらい召喚したんだけど、ウサギを襲おうとした瞬間にフルボッコにされて死にました。
燃えたり、細切れになったり、ツノで刺されたり、押し潰されたり、首が落ちたりしました。産まれてすぐは1レベルだからね。仕方ないね。

オオカミをウサギから守るために柵で囲ったりもしたんだけど、オオカミを野に放つならまだしも、餌になるためにオオカミの柵の中に入れとウサギに命令することがどうしても出来なくてさ・・・

オオカミさんは経験値になったのだ・・・

そして、最終的にオオカミウサギと、吸血ウサギと、首狩りウサギが残りました。
やったねボーパル!仲間が増えるよ!

さて、不遇なオオカミさんはさておき。新エリアの増設だ。
んー、でも。森を作ってもなぁ・・・ウサギが木に登って攻撃できるわけでもないだろうしなぁ・・・後3日ほど待てば洞窟エリアが作れるしそれまで待つかね?
でも、洞窟エリアじゃ、食事の為に毎回ここに戻ってこないといけなくなるし、やっぱり森にするかね?むむむ・・・

「悩んでるならとりあえずやってみるの!らなくて後悔するよりも、って後悔したほうがいいって言うの!」
「そう・・・だな。なんか漢字がおかしかった気もするが、森エリアは作ったことが無いんだし、作ってみる価値はあるよな!」

現場の独断で強行に変革を進められそうなセリフで背中を押されたので、森エリアを作ろうか。
森ならハズレってことは無いだろうしな。

「なの!なにか問題が起きたらそのときに考えればいいの~」

ジッと止まって画面を見ているのに飽きたのか、両手を広げてクルクル周りながらボーパルがそう言った。
回レ回レ回レと幻聴が聴こえるレベルの回転速度だな。スカートと髪の毛が翻って、ボーパルのいい匂いが俺へと届いてくる。
楽しそうでなによりだが、俺がお土産であげた髪飾りが吹き飛ばないかが心配だな。まぁ、ボーパルなら吹き飛んだ髪飾りにダッシュで追いついてキャッチすることぐらいできるだろうけど。

ちなみに、ギリギリな高さまでスカートが捲れ上がっているが、ボーパルは今も履いてない。
この間、DMで出したしましまパンツをプレゼントしたんだが、素肌にピッタリと張り付く感覚が嫌だといって脱ぎ捨てられてしまった。
同じ理由で、ボーパルは少女形態の時に汗をかくと服を脱ぎ捨てるんだよね。俺が紳士じゃなかったら危なかったぜ。
遊びたがるボーパルの全身を、隅々まで、余すところ無く、徹底的にタオルで拭くだけで済んだのは俺の鋼の精神のおかげだな。感謝してもいいんだぞ?

・・・蛇足だが、ボーパルが脱ぎ捨てたしましまパンツは気がついたら1羽のウサギが頭に被ってた。
彼が”何”ウサギに進化したのかは、彼の名誉の為に伏せておくことにする。彼とはうまい酒が飲めそうだ。

まぁ、俺は未成年で、彼はウサギだからお酒は飲まないけど。

「・・・はっ!新しいエリアを作るんだった!見惚れてて忘れるところだったぜ・・・これが孔明の罠か・・・」

孔明さん何も関係ないけどね。

もうなんか、新しいエリアなんて作らなくても、今が幸せだしそれでいっか。って気分になりかけてるけど、”せかいとーいつ”はこの世界に転生させてくれて、ボーパルまで与えてくれた幼女神様テメトトちゃんの依頼だからね。
幼女のおねがいを無視するような、人外外道に成り下がる気は俺には無い。
まぁ、体はモンスターになっちゃったから人外だけど。心まで化け物になるつもりは無いさ。

「ぐるぐるぐるぐる世界が回るの~。世界があたちを中心に回ってるの~。つまり世界の中心はあたちなの~。世界はあたちのために回ってるの!あはははは~!」

地面へと”きゅーそくせんこー”しそうなほど、高速回転しているボーパルからSAN値が心配になりそうなぐらいの高笑いが響いてくる。

・・・ボーパル実はお酒飲んでない?まぁ、じきに回転酔いはするだろうけどもさ。

ちなみにボーパルのワンピースの裾はチラリズムどころか、遠心力で引きちぎられそうになりながら胸元近くまでズリ上がっている。
もっとも、回転が速すぎて俺には肌色の残像にしか見えないけどね。

くっ!俺の目にスパースロー再生機能があればっ・・・!!一時停止機能でも可!録画機能でもいいぞ!●REC!アニメ化希望!

・・・スカートが捲れて見えるおへそって、なんであんなに”えっちぃ”んだろうね。
スカートの端を口で咥えてくれるとなお良し!

まぁ、今は見えてるのに見えないんだけどさ。哲学かな?

「・・・なんでDMでカメラが売ってないんや・・・はっ!新しいエリアを作るんだった!くそぅ。孔明め・・・!」

特に理由のない風評被害が孔明を襲う!!
まぁ、孔明に関しては今更だろうけどさ。

「んじゃ、ポチポチっとして、エリア作成ポチっとな!」

DMをドーンと消費して森エリアがバーンと出来る。ついでに上へ行くためのグルグル坂道も。当ダンジョンはウサギにも優しいバリアフリー構造でございます。

・・・何故俺はこれだけの作業に何時間もかけたのか・・・

だいたいは回転のし過ぎで足から火が出て、タップダンスを踊っているボーパルの所為だな。
裸足なのに何に引火しているのかは謎。「ほあちゃー!」とかカッコイイセリフを叫びながら高速で足踏みをしてるけど、火は一切消えないし、燃え上がりもしない。ついでに熱そうでもない。

・・・うん。一応水は用意したけど、問題無さそうだからこのまま見てよう。というかあの炎って普通の水じゃ消せ無さそう。

あ、ボーパルが足踏みしながら回転しだした。
ま、まさかアレは・・・ファイ○トルネード!?ボーパルは超次元ウサギだったのか・・・

・・・うん。否定できる要素が無い・・・今もファイアーダンスを残像を残しながら踊ってるしな。違和感がログアウトしました。
いや、目の前の光景には違和感しか無いんだけどね。

新しいエリアを作ったのに、クリエイトルームから出る様子がまったく無いっていうね。
まぁいっか。ボーパルが正気に戻ったら森デートへ行こうっと。

「あたちのあんよが真っ赤に燃える!勝利を掴めと、轟き叫ぶぅ!」
「いや、あんよでどうやって掴むんだよ・・・」

くそう!さっきとは別の理由でカメラが欲しい!後でボーパルともう一緒に見たい!

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