ユエとリィアンの冒険

ノベルバユーザー173744

ママはお掃除が苦手なので、お掃除をします。

色々とユエとリィアンたちは話し合い、掃除が大の苦手なママの代わりに掃除をすることにした。

ママは片付けると必要なものほど奥に溜め込んでしまい、行方不明にする。
それともうひとつ、ママは、捨てることができない‼
捨てる服のボタンを全部取り、雑巾に使って捨てる。
Tシャツやセーターも、袖を切って縫うとくたびれクッションカバーにして、袖もゴムを通して、家事の時の腕カバーにする。

もっと恐ろしいのは、

「ま、ママ……何してるの?」
「ん?財布の解体」
「いや、それはわかるけど、何のため?」

リィアンが問いかけると、にっこり笑う。

「テディベアの手の平と足の裏に使えないかなぁと。柄がかわいいからいいと思うんだ~‼」

人工皮革の布、ゴワゴワを何に使うんだろう……と思っていたリィアンは立ち尽くす。

「財布の手の平……金運が欲しいの?」
「うーん。テディベア用の、手のひらの布が売ってなくて……。フェルト布はくたびれると裂けるんだよね……ネットで買ってもいいけど、高いし……はぁぁ……」

ため息をついたママは、ゴワゴワ布を使って、テディベアを作った。

「ひっくり返すのが大変だったけど、出来たよ~‼」

に、ユエすら返答はできなかった。



ママとユエとリィアンたちの家は、ママには十分の3段の軽い脚立がある。
実家に放り出していたのをもらって帰ったのだと言う。
それをえっちらおっちらおろして、クローゼットの中身を確認すると空っぽ……。

「駄目じゃない。ママは……出したら戻す。しなきゃ」

兄弟たちのかくれんぼ用の箱を出して、部屋中にあるママに必要なものらしいものを仕訳する。

『筆記用具、メモ帳』
『通帳、印鑑等の重要なもの書類』
『薬』
『お店でもらったと言う、小物』
『本』
『裁縫道具』
『化粧品……と言っても、リップと、ベビー乳液のみ。ついでに試供品の化粧品とシャンプーとコンディショナー。……何故か、なしの妖精のパックがあった』
『懸賞葉書、切手、封筒、便箋類』

これだけでも十分なのに、ママには恐ろしい裏があり……。

「ねぇ。これなに~?」

ユエが持ってきたのはCD。
リィアンは見てはいけないような気がして目をそらす。

「知らない」
「『オネェのお、お、?』」
「大声で言わない~‼見なかったこと‼」
「あーそれ、懸賞で当てたんだと。封が空いてないってことは聞いてないってことだ」

せっせとアルが動きながら言う。

「ママの本当の好みはこれだ‼」

引っ張り出したのは、DVD。
しかも初回限定版である。

「『恋する神父』……?神父って、牧師と違って恋とか駄目じゃなかったっけ?」

トリスタンの声に、

「純愛ラブコメだ‼それに乙女ゲームをしてモエモエしてる」
「ここに隠してるんだよね。ママ。時々『萌えが足りん‼萌えをくれぇぇ‼萌え‼』って、言ってた萌えって燃えちゃうの?」

ユエの一言に周囲は撃沈するが、何とか、

「いや、ママは、恋愛音痴とか言うけど、ものすっごく恋愛に夢を持ってる感じ?」
「あ、発見‼『同人誌』……?『竜の盾』筆者、村咲遼むらさきはるか。『三国志革命』……清野水葉きよのみずは?」

ユエは、見てはならないものを発見した‼

「それもダメ~‼」
「何で?」
「ママに内緒だよ~‼」
「三国志って書いてる」

ページをめくり、ユエは首をかしげる。

「……わかんにゃい」
「それでいいんだ……ユエ。誰しも隠そうと思う黒い歴史があるものだ」

トリスタンは呟き、アルも、

「若気のいたりって奴だ。笑って隠しておけ」

と言いつつ、ユエは次々にママの黒歴史に、初恋の少年の写真、ある事件がきっかけで日記を書かなくなったママが唯一書き込んでいる古いスケジュール帳とネタ帳を発掘していったのだった。



帰ってきたママが、箱の中の黒歴史と、棚に並ぶ乙女ゲームの数々に、映画のDVDに、

「ウギャァァ~‼ななな、なんでぇぇ‼」
「お掃除してたの。この本なぁに?」
「……あぁぁ。ばれちゃった……」

ガックリ、肩を落とす。

「村咲遼名義でオリジナルを書いていて、一冊だけ友人がその世界観を借りるって同人誌書いたんだよぉ……で、これ」
「じゃぁ清野水葉は?」
「それは清野水葉さやのみずはって読むの。三国志の小説を書いてて、自分達や友人に配るような本で……実家にはおいとけないし、見つかるとは思わなかった」

うなだれるが、はっと、

「ママはBL書いてないから‼歴史物だから‼」

必死に訴えるママに、

「他に心配することはないの?」

リィアンは問いかける。
と、思い出したように頭を抱えて叫ぶ。

「ごめんなさい~‼ゲームの同人誌を作ろうと原稿を集めたけど、本にするためのお金のことや受験のゴタゴタで、干支二つ巡っちゃった~‼原稿は無事だけど、出版する方法にお金がない‼書いた友人の半分は連絡不明~‼これこそまさしく黒歴史‼ママが悪い~‼」

思い出したことに、ママは顔色を変え、

「きちんとした、表装ではなくて良いから、出版して配ろうか?お金どうしよう……どれだけかかるのかな……何冊から作ってもらえるんだろう……今さら、お金もらえないし……」

と頭を抱えたのだった。

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