人の為に死ぬことは辛いだろうか

スガル

人の為に死ぬことは辛いだろうか


「すばしっこいわよ、アンタ」

 俺は観客が見守る円形のドームの中を逃げ回る。

『おぉっと! ハルヒ選手! シイナ選手に手も足もでないぃぃ!』

 そう俺は逃げ回っているだけ。

 シイナと呼ばれた女は俺の状況を無視して氷の剣を振るとその剣が地面に触れた瞬間に俺の真下から氷の彫刻が姿を表す。

 その彫刻は紛れもなく剣だ。

 なんで俺がこんな事をしてるんだ! それもあの時逃げなかったせいだ。

 逃げられなかっただろうけど。


 それは俺が教室で授業を受けていた時に起こった。

 周りが一気に無音になる。

 俺以外の時間が止まった?

 ふとその異変に気づいた時には遅かった。

 視界が歪み真っ暗な闇へと飲まれる俺。

 目を覚ますと……。

 観客が見守るドーム状の何かの中に居たのだ。

 そして振り出しに戻る。




 急に女が俺に氷で出来た見たこともない剣を振っていたのだ。

 そりゃ逃げるだろ!

 必死で逃げ回る俺は気づいた……。

 女が涙を流して居たのだ。

「さっさと死んでよ、お願いだから」

 俺は困惑していた、なんで泣いているんだ? と。

 そしたら実況が熱く語りだした。

『シイナ選手はこのバトルコロシアムで勝った場合、その資金で病気の妹が助かる! さぁシイナ選手! ハルヒ選手をその手で殺すのだぁぁぁ!』

 病気の妹だと?

 俺に家族はもういない。

 それは天災という人間では抗えもしない物に奪われたからだ。

 だけどこのシイナという人物の妹は薬があれば助かるのかもしれない。

「お願い、お願いします」

「その、妹は、お前にとって、どういう、存在だ!」

 俺は必死に氷を避けながらシイナに問い掛ける。



『大事な家族なの!』



 大粒の涙で顔をくしゃくしゃにしながら俺の問いに即答するシイナ。

 逃げ回っていた俺は足を止める。

 ズブリと冷たいのか、熱いのかわからない痛みが身体中を駆け回る。

 氷の彫刻の全貌が俺の血で赤く染まる頃に。

「なんで……」

 シイナの口から零れた言葉。

 予想外だったのだろう、俺の行いが。

 俺は真っ暗になる視界に生を諦めながら。



『妹を大事にしてやれよ』



 最後はキザったらしく決めることにした。



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