3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

179章 アイツら

 洞窟のひんやりとした空気、薄暗い道の先、自分の足音が反響するような静けさ、
 その一つ一つがダンジョンを探索している気分を盛り上げてくれて、
 気を引き締めてくれる。
 心地よい緊張感に包まれワタルは気分良くダンジョンを進んでいく。

 『ワタル様』

 カレンの魔法通話で敵の接近を知らせてくれる。
 前衛はワタル、バッツ、リク。
 中衛がクウ、バルビタール、
 後衛がカレン、カイ今はいないがカレンになる。

 ダンジョンの通路はそれなりの広さを確保されており、
 5人位が横になって歩いても余裕がある、天井は4mほどかバッツが大剣を振りかざすと当たるかもしれない、こういう空間を認識しておくことは非常に重要だ。

 『正面にいます、私が撃ってよろしいでしょうか?』

 『そうだね、様子見で攻撃してみてくれ』

 『分かりました』

 通話が終わると同時ぐらいにフッと風が揺れるような感覚を覚える。

 『終わりました、どうやら倒せたようですね』

 音もなく見えてもいない敵を撃ち抜くカレン、その技術は達するところまで達している。
 仕留めた的に近づくとワタルの予想していたアイツとは似ても似つかないゴブリンのような形をしていた。
 エイベスいわく食べたものの影響を受けて千差万別な変化をする、共通するのはみぞおちのところにコアがあって、それを破壊するとエネルギーへと変化する。だそうだ。
 確かにみぞおちに真っ黒なコアがある。ワタルが槍で一突きするとその体は霧のように消えていく。
 残されたのは数百ゼニーと牙だ。

 『ゴブリンの牙Gですね、ギルドに持っていくと買い取ってもらえるそうですよ』

 冒険者へのアメとしてのドロップ品だ。

 『おーい、ユウキー見た目はまったくアレじゃなかったよー』

 なんとも緊張感もない通信をユウキに入れるワタル。他のダンジョンと違い通信魔法阻害はないようだ。

 『ほんとに? 嘘だったら絶対許さないよ? ホントだねワタル君!?』

 『完全ゴブリンだった、みぞおちにコアがある以外ゴブリンだね』

 『……じゃあ、今行く』

 その通信を終えて5分もすると入り口の方からユウキが宙に浮いたプレートに乗ってやってくる。

 『信じてるよワタル君……』

 まだ不安を払拭できてないようだ。

 『大丈夫ですよユウキ様私が確認していますので……』

 『うん……』

 こうしてフルメンバーで探索を再開する。

 やはりその後に現れるモンスターもゴキ、おっとアイツらみたいなものではなくゴブリンだったり、
 巨大なネズミだったり、虫的なのと言えばムカデが現れたくらい、
 ムカデはムカデで嫌だったみたいですがユウキもようやく本調子を取り戻している。
 戦闘に関してはあっけない、カレンの弓で全て殲滅してはリハビリにならないからと、
 近接戦闘なども行ってはいるが、大体一撃必殺。
 ワタル達が攻撃する、敵は死ぬ。みたいな展開だ。
 そりゃワタル達女神の盾は世界最高のパーティなんだから第一階層で苦戦はありえない。
 ただ、あまりに単調になっていた。
 丁度そんなときにエイべス達から連絡が来る。

 『やっぱ楽勝すぎるよね、てか、皆強いね。想像以上だよ。
 正直アイツらの変異体でも苦にならないと思う。
 とりあえず、このままこんな状態のデータいくらとってもあんまり意味が無いから
 95階の闘技場に行ってもらってちょっと多目の敵相手にしてもらっていいかな?
 こう言っては何だけど、強制転移のテストもしたいなーって……』

 『って言ってるけど皆はどう?』

 「構いませんよ」

 魔法通話じゃなく答える、全員同じ考えみたいだ。

 『それではデルスさんこちらは大丈夫なので転送お願いします』

 『それじゃぁ頑張ってねー』

 ワタル達の足元に魔法陣が浮かび上がりその魔法陣が全員を包み込むと、
 その場から人の気配は消え去っていた。

 ワタル達が目を開くとここが地下ということを忘れてしまうような広い空間、
 しかも天井には広がる青空、煌々と輝く太陽。
 闘技場と言っていた円形の場に転送されていた。
 観客のいない闘技場はある種雰囲気があって気分を高揚させる。

 「おー、まさにコロッセオだな……」

 「地下のはずなのに青空が……」

 「実際には地下95階らしいよー」

 そんな話をしていると前方の巨大な鉄門がゴゴゴゴゴと音を立てながら開いていく、
 扉が開くと同時にハァハァ、だのグルルルル、だのいろんな生物の息吹が聞こえてくる。

 「多い、ですね……」

 「不穏なこと言ってたもんなー緊急転送も試したいとか……」

 「結構ピンチにならないと発動しないんですよね?」

 「彼らの良心に期待しよう」

 「まったく期待できないわ、ねぇ!!」

 目の前の扉の奥から飛ばされてきた槍をバッツが叩き落とす。
 それが合図になり扉から魔物が溢れ出てくる、
 まさに溢れ出るという表現がぴったりだ、まるで津波のように敵が現れる。

 「やりすぎだろ……」

 ワタルは出し惜しみを止めて自身が持つ最高のバトルスタイル「リビングウェポン(ワタル命名)」を取る。ワタルの周囲には様々な武器が浮遊している。
 各人とも全力戦闘用のスタイルになる。

 「全員生きて帰ってデルス達ぶん殴るぞ!」

 それぞれ散開して敵の波に突っ込んでいく。

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