3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

176章 溶け合う世界

 それからしばらくデルス、ケイズ、エイベスは開発にかかりっきりになっていた。
 ワタル達は自分の世界に戻り政務や子育てに忙殺される日々に戻っていた。
 穏やかにして平穏(?)な日々が訪れていた。

 『ワタル君聞こえる!? 例のシステムの試運転やるからもし都合がつくなら使いをよこすよ』

 デルスからの通信がそんな忙殺された日々にはいった。

 「絶対行きます! すぐにでも使いをよこして下さい」

 ワタルはデルスに呼ばれたから仕方がなく、という体でその忙殺の日々からの脱出を図った。
 まぁ、流石に女神ヴェルダンディよりも高位の神からの呼び出しだと言われて、
 それに口を挟める人間はいない。

 「いやー、デルス様に呼び出されたら仕方ないよなー、いやー、仕方ないわー、これデルス様だもん」

 「ワタルのここまでの笑顔は久しぶりだね」

 「ワタ兄最近死んだ魚みたいな目をしてた」

 「ワタルさんは特に忙しいですからねー、なんでも万能にこなせるから……」

 「私達がもっとお支えできればいいのですが子どもたちもいまして……申し訳ないです」

 「しょーがないわよーパパが頑張りすぎちゃった結果だし、身を粉にしてはたらかないとね」

 「ワタル君には感謝しています」

 「ところでうちの下の子がまた可愛くて、あ、もちろん上の子が可愛いくないわけではないんだぞ、
 しかしやはり小さい頃というのはあっという間に過ぎていくからこその可愛さという物があって、
 聞いておるか?」

 ほんとうに久々に女神の盾のメンバーが集合する。
 ワタルはさらに子供が増えている。全ての奥さんに同じタイミングで子供ができるワタルの熱意には脱帽である。それを支えているのは女神の盾商会印のバイアングの実。大好評発売中です。
 バルビタールのところにも双子ができてさらにめんどくさい馬鹿親っぷりが加速している。
 バッツは服飾部門をどんどん発展させている。貴族や王族相手でバッツデザインの服を持っていることが社交界でのステータスとなっており、特にバッツ自身が手がけて作った物には国家予算級の価値になっている。
 女神の盾のメンバーや家族、幹部スタッフにはバッツ自身の手で作り、カイとカレンによる魔装が施された移動要塞と言ってもいいほどの高機能な服を与えられている。
 魔道具もどんどん充実しており、一般家庭にも広く便利な魔道具が行き渡り始めている。
 それら流通の中心は女神の盾商会であり、今後新たに開かれる世界でもその立場は揺るぎないものになると思われる。
 余談ではあるが、新大陸実装に先立ってワタル達は街を作った。
 ウェスティア帝国のさらに西、島々が連なる群島エリアに女神の盾商会本拠地を建築した。
 それは商会の本拠地というよりも国家と言っていい規模だ。
 ワタルとカイによる建築はあらゆる建築物をドラスティックに作ることができる。
 貿易の要である巨大な港町、そこから続く城下町、そして商会本館、まぁ巨大な城が作られている。
 土壌改善による巨大な農地、畜産、充実した教育と医療。
 ワタルが忙殺される理由はそこら辺に起因する。
 ゲーツが上に立って陣頭指揮をとり、その下にも優秀な文官が多数選出されている。
 女神の盾の大学で幹部候補を目指して日々勉学に学ぶものもどんどん増えている。
 世界全体の人口増加も飛躍的で、しかし、それを支えるライフライン開発にも女神の盾は積極的に支援している。ワタルのもとで土壌開発や建築を学び納めるものも増えている。
 それでもまだワタルやカイの技術は圧倒的であるため会長自ら飛び回って働いている。
 各大陸とゲートをつなぎ海運の安全も確保できている。
 まだ物資の運搬において量的な意味では海運が最も優れている。
 陸路のゲートは主に人の移動に用いられている。
 各国の人の行き来が過去に比べて用意になったことで文化交流や人の交流も増え、
 世界全体として爆発的な発展を迎えている。まさに黄金期である。
 新大陸開発は4カ国+女神の盾による協定を結び、共同開発を行っている。
 いずれは世界会議を正式にその地に築き、この世界の平和と発展の屋台骨としていく予定だ。

 「ワタル様、それに皆様ご無沙汰しております。わが主がお呼びです。
 どうぞこちらにお乗り下さい」

 執事さんが約束の場所に迎えに来てくれる。
 雰囲気をあわせてきれいな真っ白な馬車でのお迎えだ。
 実際には全員が乗ると次元転送でデルスの研究所のある島までひとっ飛びだ。

 「やあ久しぶりだねワタル君」

 デルスさんはぼっぼさの髪に薄汚い白衣を纏ってワタルたちを出迎えた。
 ケイズも同じようなカッコだ、エイベスは全く変わらず相変わらず神々しい見た目を維持している。
 バッツが二人を浴室へと連れて行き、二つの悲鳴がこだましてしばらくして出てくるとふたりともこざっぱりとした髪型、おしゃれな部屋着に変わっていた。すこし涙目だったのは気になるが二人のためにもだれもそのことを問う人はいなかった。

 「はぁ、やっぱりワタル君の入れてくれる紅茶は美味しいね。
 それに栄養は完璧に取っているとは言え、この料理はやはりたまらないね」

 久々のマトモな食事を嬉しそうに平らげる。
 あまりに夢中になりすぎて総合栄養タブレットだけで過ごしていたそうだ。
 もう1年半位たっているんだぞ……研究馬鹿は怖い。

 「あれから3人で【世界樹】のシステムの大幅刷新を行い、
 それに伴い巨大情報ネットワークを構築した。【真・世界樹】といったとこかな。
 すべての世界を同列管理維持可能。さらにエイドスの世界やこの世界までも統括管理していく。
 正直、なんでそんなことができるのか開発した僕にもわからないレベルだよ」

 「開発には協力したが、何をしてなぜこの結果になっているのかさっぱりわからない」

 エイベスの分体も多数【世界樹】に組み込まれ、本当に枝の伸びた木々のような姿になっている。

 「デルスは何かに取り憑かれたかの様に一気にプログラムを組み立てて【世界樹】を作り上げていった。私が仕込んでいたプログラムもあっという間に掌握されて利用された。本当の天才とはまさにデルスのことだな」

 ケイズもただただ関心しっぱなしだったようだ。

 「いやー、二人も優秀でどんどん開発が進んで本当に楽しかったよ。
 もちろんこれをきっちり稼働させるまで成功させたい」

 「それではさっそく行うか」

 「【中央】からという形でこの世界へのアナウンスはすでに準備されている。
 それが流れ終わって、世界は新たな形を見せることになる!」

 興奮したデルスが執事へと合図する。
 今、世界が一つになる。 

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